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第四話 旅に出よう、トレーニングをしよう、ティムし、あれ?

「もう行ってしまうんだな」

「まぁ、のんびりいくつもりだから今から行くぐらいが丁度いいからな」


 明朝、俺とコアンは大従魔学園に向かうことにした。学園は王都より東の都市モンストル内に存在する。


 モンストルは魔物使いの集う都市としても有名でおよそ五千万人の人々が暮らす巨大都市だ。城壁の代わりにSSランクの魔物である大金剛(グランドティア)壁虎(ミュールジェコ)が都市を囲うように鎮座している。


 虎とはあるが見た目には爬虫類そのものだったりする。そして鱗がダイヤモンドの如く輝きを放ち、両目もダイヤの瞳という魔物であり、高い物理耐性と魔法耐性を誇るのが特徴だ。


 俺も下見で何度か見ているがあれは中々に壮観だ。当然強さも相当なのでモンストルは鉄壁都市という異名も併せ持つ。

 

 メインの目的は学園への入学だが、魔物闘技場や魔物レース場などの興行も有名な都市だ。あまり一つの都市に長居したことはなかったから今から着くのが楽しみだ。


「でもテム、一応コウンが一緒だが、ティムからの従魔契約をしていないだろ? 大丈夫なのか?」

「それもあるから早めにでるんだよ父さん。途中で遭遇する魔物をティムしてみたいから」


 この辺りの魔物はさっぱりだったからな。こうなったら途中でティムするしかない。


「お兄ちゃん頑張ってね!」

「あぁ、今度戻ってくる時は土産話をたっぷり持って帰るぞ」

「楽しみにしてるよ~あと新しい魔物もね」

「そうだな。次戻る時には魔物を一億匹ぐらい増やしておきたいもんだ」

「無理だと思うよ~」

 

 コウンが俺の頭の上でピョンピョン跳ねながら口を挟んできた。失礼なやつだ。


「そもそもテムって……魔物をティムする必要あるの?」

「あるに決まってる。当たり前だろ? 魔物使いのセンスまで持っているのに、魔物をティムしないでどうする」

「「…………」」


 ん? なぜか両親が口を噤んだぞ?


「ま、まぁ頑張れよ」

「途中、盗賊には気をつけてね」

「母さん、おそらくそれは無用の心配だと思うぞ?」

「いや、確かに体は鍛えたが、そうはいっても魔物使いの範疇だからな。熟練した盗賊のセンス持ちには気をつけようとは思う」

「お前の場合、センスとはかけ離れた何かを感じるんだけどな……」


 面白いことをいう。流石父さんだ、キレキレのジョークだな。


 とにかく俺は故郷を旅立ち、モンストルへ向かって歩き始める。普通は馬車で町や宿場を経由しながら五日ぐらい掛けていくのだが、俺は余裕を持って徒歩で行く。勿論ただ目的地だけ目指して駆け足で行くのであれば1時間もあればつくかもしれないが魔物使いとして力をつける必要があるし、魔物もティムしないといけないからな。


 ちなみにコウンは頭の上だ。コウンはピョンピョン跳ねて移動するしかないし、それだと流石に遅いからな。


 よし、とりあえずこの辺りで始めるか。

 故郷を出て昼になった。平原地帯を抜け、山に入り、ここで一旦立ち止まる。


「何するの~?」

「日課のトレーニングだ」

「おお! トレーニングかっけぇ~!」


 コウンのテンションがあがる。それにしてもとりあえずなんでもかっこよく見えるんだなコウンは。

  

 まぁとにかく、コウンを安全な場所でおろし、先ずはスクワットから始める。


「……テム~それ、何してるの?」

「岩を背中に背負ってスクワットしてるんだ。これぐらいやらないと体がなまるからな」

「……岩?」

「どうみても岩だろ?」


 コウンが不思議そうな顔をしてるな。岩がわからないのか? まぁ確かに少し大きいかもしれないが。


「ねぇテム」

「なんだ? トレーニング中は集中したいんだが?」

「ごめんね。でもさ~それって岩じゃないよね~」

「だから、どう見ても岩だろ?」

「う~ん、ぼくには崖にしか見えないよ~」


 この岩が崖に? やれやれインテリスライムといってもやはりスライムか。


 確かに多少大きいかもしれないが、所詮高さ五千メートル、外周十数キロメートル程度の大きめな岩じゃないか。崖とは程遠い。


「よし次はジャンピングスクワットだ」


 俺はそのまま足に力を込め飛び上がる。準備運動だから大気圏までは突入しない程度で落下。それを一万回ほど繰り返す。


「よし、準備運動は終わりだ」

「テム、やっぱり頭おかしいよ」

「コウン、たまにすごく口悪いな……」


 すごく失礼な気がするぞ。


「よし、とりあえずトレーニングはここまでにしておくか」

「ぼくヒトのトレーニングを見たのは初めてだけど、丁度よい器具だといって山脈を振り回すのはやっぱりおかしいと思うんだ~」

「コウンはわかってないな。俺は所詮魔物使いのセンス持ちだからこの程度だが、戦士のセンス持ちならこの程度は髪の毛一本で出来てしまうもんだぞ?」

「絶対にそれはないよ」


 全く、ヒトの社会のことはよく知らないだろうから、世間知らずなのは仕方ないんだろうけどな。


「まぁいい。お昼食うか?」

「本当? わ~いお昼お昼~」


 全く現金なやつだな。





 母さんが持たせてくれた弁当での腹ごしらえも終わり、俺たちは先を進む。

 トレーニングが終わったら俺の目的はティムだが――


「グウウッゥウゥウウ……」

「おお! ガウファングオーバーティルか!」


 谷間の道を進んでいたら出くわした。捕獲ランクBの魔物だ。二本足で歩く蜥蜴といった見た目の魔物だが、顔は扁平してて口が横に長い。牙の一本一本が大剣なみにでかく、それが数十本上顎と下顎から外に伸びている。 


 この見た目から噛みつきが得意と、そう思えるが――


「え? うそ! ヒトってしっぽが生えるんだ!」

「いや、獣人でもなければ本来生えないが、俺にはメタモルフォーゼがあるからな」


 これのおかげで姿形は自由自在だ。あぁ、そうだ折角だから。


「フンッ!」

「うわ! 凄い! テムが大きくなったよ!」

「じゃなくて尻尾以外はこれが本来の俺だ。この姿だとちょっとだけ目立つからメタモルフォーゼでさっきの数年前の姿に変化していたんだよ」

「ちょっとどころじゃないよ! 質量保存の法則に真っ向から喧嘩をうってるよ!」


 こいつ、そういう事には細かいんだな。あと、コウンだけじゃなくて、何故かガウファングオーバーティルも後ずさりしてるな。


 何だろう? 後ろに大事なものがあるのか、それともトイレか?

 ま、いっか。俺が尻尾をわざわざ生やしたのはこいつが得意としているのは実は噛みつきではなく、その強靭な尻尾を振り回す一撃だからだ。


 だから俺も尻尾の一撃で勝負してみることにする。とりあえずメタモルフォーゼの尻尾がどんなものか知るために。


「フンッッッッッ!」


――ズドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!


「うん、試し振りはこんな感じかな」

「……テム~」

「うん? どうしたコウン?」

「谷がなくなったよ~相変わらずだね~」


 ん? そう言われてみると、左右にあった岸壁が消えたな。まぁ近くにもし魔物などの生物がいても俺は条件反射的に逃してやるし、相手しているガウファングオーバーティルも無事だけどな。


「ま、細かいことはいい。さ! やろうか――」

「フルフルフルフルフルフル……(ジョボボボボボボボボボボボボドボボボボボボボボビッシャーーーーン)


 何故か涙目でガウファングオーバーティルが顔と尻尾をブンブンと左右に振り出した。しかもまたもや下半身から大量の水漏れだ。お前もかガウファングオーバーティル。


 しかもすぐさま踵を返し、スタコラサッサと逃げてしまった。


「また、ティム出来なかった……」

「むしろ本気でティムする気があるのかぼくは疑問だよ」

「何を言う、本気に決まってるだろ!」

「そっか~」


 頭の上でピョンピョン跳ねるコウンだが、何かすごく適当にあしらわれている気がする。


 ふぅ、とにかく、吹き飛んだ谷はスキルでもとに戻してっと。


「よし戻った」

「やっぱりテム普通じゃないよ」

「なんでだ? これぐらい普通だろ?」

「普通谷を粘土細工みたいに直さないと思うよ?」


 それはコウンが世間知らずなだけだ。ネンドーロザイクロスという魔物がいる。この魔物はあらゆるものを粘土に変えこねくり回した上で好きな形に作り変えることができることで有名な魔物だ。


 だからこれぐらいのことは魔物使いにとっては普通のことなのである。

 

 とは言え、またティムしそこねたわけだが……。


 がっくりしながらも谷間を抜け、また森に入る。そして暫く進んで――振り返り声を掛けた。


「お前、さっきからついてきてるだろ? 姿を見せたらどうだ?」

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