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第十七話 赤いのは三人

詳細は活動報告にも上げてありますが明日から入院となります。そのため明日は朝の更新となりますが明後日10月18日からは退院してもどってくるまでこの時間の予約投稿となります。

「もう疲れた~疲れた疲れた疲れた~」

「お前なぁ……」

 

 あの馬鹿伯爵(ヴァンパイアロード)を倒した後、俺たちは学園のあるモンストルの都に向けて旅を再開させた。

 

 結果的にその旅の同行者としてローシーと彼女に懐いたピーが追加された。それ自体は構わないんだが、いきなり泣き言を口にされてもな。


「まだ城で皆と別れて対して経ってもいないのになさけない。それでもBランクの魔物か?」

「5日も経ってるわよ! しかも寄り道寄り道で野宿の連続じゃない! 途中でダンジョンも見つけて潜ったりしてるし!」

「ダンジョンといっても規模の小さなものばかりだっただろ? それにダンジョンにしか現れない魔物もいるからな。少しでも多くティムするには仕方がない」

「でも、結局一体もティム出来てないじゃない」

「ぐむむ……」


 全く、気にしていることをずけずけと。確かにダンジョンにしてもどこにしても、現れる魔物は全て下から水分を漏出させながら逃げていってしまう。おかげで未だに俺の従魔数はゼロだ!


「きっかけだ、ちょっとしたきっかけがあれば、きっとティムは上手くいく!」

「本気だとしたらかなりおめでたい気がするわね。これだけやって失敗するんだから、根本的に何かがおかしいとか思わないの?」

「うむ、だからこそ、俺は日々の修行を欠かしていないのだ」

「修行って、あの見てて頭がおかしくなりそうなのよね?」


 失礼な。だが、仕方ないか。ローシーも結局は女だということだ。男が修行に励む姿を見てもいまいち理解が出来ないのだろう。


「コウンは思うんだ。テムはもう色々手遅れなんじゃないかなって」

「ぴっ!」


 何を言っているんだ? 全くローシーの肩に止まってるピーまで同意するように鳴いているしな。


「とにかく、このままずっと野宿じゃ体も痛くなるし、旅にも支障が出るわ。そろそろどこか町によりましょうよ」

「全く仕方のないやつだ」


 しかし、そろそろちゃんとしたベッドで寝て疲れを癒やしておくのも手か。


「ここのところティムも上手くいってないしな。気持ちをリフレッシュするためにどこか探して寄るとするか」

「ここのところというよりずっとだよね?」

「疲れを癒せばうまくいくこともあるだろう」

「スルーしたわね」

「ぴぃ」


 うるさいな。集中できないではないか。

 とにかく、大千理眼によって近くに町があるかを確認する。


「見つけたぞ。ここから少し上り道になるが、その先に町がある」

「やった! なら急いで行きましょう!」

 

 ローシーの足取りが軽くなっていた。全く現金なものだな。


 暫く進むと随分と荒涼とした地にたどり着いた。湿原地帯のようであり、周囲は岩山に囲まれている。背の低い草木が多い。


 視線の先には街道らしき一本道が続いている。途中に道標が設けられており、この先アーツの町、と刻まれている。


 俺たちはそのまま道なりに進んでいった。これといった障害になるようなものはなく見晴らしが良い。標高は六二八メートル程度の位置で涼しい気候なようでもある。


 更に進むと町が見えててきた。手前に赤い妙な格好をした三人組もいる。


「おいちょっと待てよ」

――スタスタスタスタスタスタ。


「ねぇテム? 何か呼び止められていたわよね?」

「そうか?」

「ちょっと待てと言ってるだろうがテメェ!」

 

 今度は赤い三人組に回り込まれた。どうやら俺たちにようがあるらしい。

 それにしてもこの格好、武道着か。武道を志すものが着る衣類で、主に素手での格闘術を重んじる門派が着ていることが多い。


 上衣と股下で構成されており、上下セットで着用し帯で占める。

 色は各門派によって統一されていることが多いが、この三人は全員が赤。それに龍の刺繍が施されている。


 しかし武術を志すものは卓越した精神の持ち主であることも多いのだが、こいつらはとてもそうは見えないな。


「そこに立たれると邪魔なんだがな」

「邪魔してんだよ! だいたいテメェ! 誰に断ってこの道を通ってやがる!」

「俺だ。判ったな? それじゃあいくぞ」

 

 俺たちは脇にそれた後、連中の横をすり抜ける。


「テム、それで良かったの~?」

「俺が通りたいから通る。ただ、それだけだ」

「ぴ~」

「あんた、絶対厄介事に巻き込まれるタイプよ」

「だからいい加減にしろテメェら!」

「ほらきた」

 

 また俺達の前に出てきたな。一体なんなんだこいつら?


「やれやれ、俺たちはこの先の町に寄ろうとしてるだけだと言うのに一体なんなんだ?」

「だからだよ!」

「俺たちはアーツの町に向かう連中から通行税を取る役目をレッド様から与えられてるんだよ」

「判ったら金目のものとそこの女を置いてけ」

「嫌だ断る」


 どうせそんなこったろうと思ったが、見た目通りの連中だな。それにしてもレッド様とは誰だ? まぁどうでもいいか。


「ふざけんじゃねぇぞガキ!」

「俺たち赤龍会に逆らってただで済むと思ってんじゃねぇぞ!」

「こうなったら少し痛い目を見せて!」

「排除の突風――」

「「「え? うわ、どうわぁあああぁあああぁあああぁあ!」」」


 いい加減うざったいなと思っていたら突風が起きて三人組をふっとばしてくれた。


「これが神風というやつか。見事にゴミを吹き飛ばしてくれたな」

「いや、それ絶対あんたがやったでしょ?」

「バレたか」

「テムってば隠す気ゼロだよね~」

「ぴ~ぴ~」

 

 そんな都合よく神風が吹くわけもないしな。今のはラールシバトという怪鳥タイプの魔物が使用するスキルだ。ラールシバトは非常にものぐさな性格で、腹をすかしている時以外は極力動かないようにしてじっとしている。


 そんな時に敵となる相手が現れた場合、この排除の突風で遠くへ飛ばしてしまうのだ。今回みたいな相手するのも面倒な連中がいたときには便利な技である。

 

 それから間もなくして町についた。町は壁、というよりは塀か。それに囲まれていて更に外側には堀があり水が張られている。

  

 堀には川も流入してきているな。橋がありそれを渡ると門があり、門番らしき人間が立っていた。


「町に入りたいのだが」

「ふむ、あんたらは旅のものだね。なら悪いことは言わない。今、このアーツの町に入るのはおすすめ出来ないよ」


 おすすめできない? 妙な言い方だな。入るのは問題なさそうだが。


「そもそも、お前たちもここに来る途中嫌な思いをしたのではないか? 赤い格好の連中がいただろう?」

「いたが吹っ飛んでいったぞ」

「え? 吹っ飛んで?」


 門番が眼をパチクリさせている。一体どういう意味なのか? と更に質問が重ねられたが、そのまんまの意味なんだがな。


「あの連中、確かに私達に金目の物を置いてけとかそんなふざけたことを言っていたけど、何か魔物が飛び出してきて慌てて逃げちゃったのよ」

「なんだそうなのか。ははっ、それはザマァ見ろだな」


 ローシーがそれっぽい説明をしてくれた。それにしても、どうやらあの連中は町の人間からは相当嫌われてるようだな。


「一体何なんだあいつらは? 赤龍会とか名乗ってたが」

「あぁ……事情があってな。とある道場の師範を倒し、この町を牛耳りだした連中だ。その道場は町の北東にある泊梁山の上にあったんだがな。連中はそこを牛耳った上、勝手に町中にも姉妹道場を建ててしまったのさ。しかもいつのまにか領主面して好き勝手やりだして参ってるのさ」

「ふむ、しかし妙な話だ。そこまで好き勝手してるなら本家の領主に相談すればいいのではないか?」


 一体どれほどの連中か知らんが、勝手に領内の町を牛耳られ半ば占領されたような状況だというなら領主も黙ってはいられないだろう。


「本来ならそうなんだが、なんというか赤龍会のレッドはドラゴ男爵家の長男でな……色々あって領主は今、弟のほうが継いでいるんだが」

 

 なるほど。そういうことか。同じ血族な上、兄とあっては中々強くは出れないといったところなのかもしれない。勿論たとえ血を分けた兄弟でも容赦はしないという貴族も多いが、その辺りは性格や家としての考え方もあるのだろう。


「全く、あのレッドと言う兄が来てからすっかり暮らしにくくなった。だから、あんたも出来ればこの町に寄るのはやめて他を当たったほうがいいぞ」

「いや、話はわかったが、特に問題はない。寄らせてもらおう」

「本当にいいのか? どうしてもというなら止めはしないが、どうなっても責任はとれないぞ?」

「心得てるさ。自己責任で入らせてもらうよ」

 

 こうして俺たちはアーツの町に足を踏み入れた。ふむ、それにしても王国内でもかなり独特な雰囲気漂う町並みだな――

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