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第十四話 すべて偶然だ

 なんということでしょう。なんと話も上手くまとまり、平和的解決で済むかと思ったその直後。

 なんと丁度タイミングよく伯爵の頭上に巨大な太陽が出現してしまったのです。しかも一般的な太陽の数千億倍の熱量を秘めている太陽だったものだから太陽が弱点のヴァンパイア族はひとたまりもありません。


 こうして運悪く、ブラッド・ハニバル・インモラス伯爵と伯爵を守ろうとしたセバスチャンはこの世から消滅してしまったのです。


「というわけで事故死で片付いたわけだが」

「「「「「「「「いやいやいやいやいやいや!」」」」」」」」


 何か声を揃えたサキュバス達に一斉に突っ込まれたぞ。

 

「テム、流石にそれは無理があるわよ……正直仲間たちもちょっと引いてるし」

「そうなのか? 別に太陽が突然あらわれるぐらい大したことでもないと思うんだけどな」

「ローシー、テムは基本常識知らずだから言っても無駄だよ~」


 酷い言われようだ。


「……正直常識知らずって意味ならコウンも十分その範囲内だと思うんだけどね」

「え~~そんなことないと思うけどな~~」

 

 否定するコウンだが、確かに神魔法は少々行き過ぎと言えなくもないかも知れない。少し気をつけさせた方がいいだろう。


「コウン、今回はもう仕方ないがやはり神魔法はやりすぎだぞ。今後は常識の範囲内で収まるように気をつけるんだ」

「どの口がそれを言ってるの~?」

「コウン、俺は真面目な話をしているんだ」

「いや、正直どっちもどっちだから」


 何故か呆れたような半眼でローシーが割り込んできた。どっちもどっちとは一体誰と誰を比べて言っているのか。勿論俺ではないと思うが。


「ねぇ、ところでテム」

「うん? どうした?」

「今後のことは勿論なんだけど、この子達どうするつもり?」

「この子?」

「「「「「「「「ぴー! ぴぴー! ぴー! ぴぴぴぴー! ぴー! ぴー! ぴっぴぴー!」」」」」」」」


 ローシーの視線が少し離れた床に向いていた。そこでは一箇所に固まった赤いコウモリ達が身を寄せ合って鳴きながら震えている。


「何だ寒いのか?」

「怖がってるのよ」


 ため息混じりにローシーが答える。ふむ、しかし一体何を怖がっているというのか。


「一応言っておくけど怖がっているのはあんたよ」

「何? 何故だ?」

「あんた本当に自覚がないのね。従っていたご主人様があんなにあっさりやられたらそれは怖がるわよ」


 ふむ、あれは偶然に偶然が重なった事故(ということにしている)なのだがな。


「キー……」

「なにか見ていて可愛そうになるぐらい不安そうよ? 今にも食べられるかもって空気を醸し出してるわ」

「テム食べるの~?」

「食べるか!」


 あいつは食べれるとか言っていたが、流石にこんなビクビクしてるコウモリたちを食べようとは思えん。


「ピー、ピピーピー、ピッピピー」

「ピ! ピッ! ピピッピ! キィキィ、ピー!」

「ピキッ? キピッピ、ピッピッピピー」

「「「「「「「「ピーピーピーピ♪」」」」」」」」

「え? ちょっと待ってこれ、どうなってるの?」


 赤いコウモリ達が嬉しそうに俺の頭上で回り始めた。それを見ていたローシーが不思議顔であるが。


「話したんだ。それでできるだけここで住めるようにしてやる、と約束した」

「は? いや話したって……コウモリと?」

「あぁ、このコウモリは中々賢いタイプだからな。鳴き声に超音波を混ぜてやればある程度意思疎通が可能だ」

「ごめん、何か頭いたくなってきた……」


 ローシーが額を押さえて呻き声を上げた。なんだ? 風邪でも引いたか?


「テム~話したのそれだけ~?」

「いや、後は吸血についてもだ。これが一番大事だったんだが、牙が取れたからもう吸血行為が出来ないし、何よりそもそも血が好きってわけじゃないらしい」

「え! そうなの!?」

 

 ローシーが驚いた。気持ちはわかる。


「吸血はあのヴァンパイアに命じられたから仕方なくやっていただけで本当はブドウが好きだそうだ」

「ブドウが好物だったんだ……」

「それでここにはいいブドウ園があるみたいだしな。ここで静かに暮らしているぐらいが丁度いいそうなんだ。だったら住めばいいだろう」

「住めばいいって……簡単に言うけどここってもともとあのインモラスの物よね? テムが排除しちゃったけど」

「あれは事故死だぞ」

「……本当にそれで通す気なのね。でも、たとえそれでいけたとしても好き勝手していいの? 私も人間社会とかにそこまで詳しいわけじゃないけど、領地とかってややこしいんでしょ?」

「まぁそこは何とかなるだろう」

「何か適当ね……それじゃあこの城はテムのものにしちゃうの?」

「建前はそうなるかもだが、そうだな。他のサキュバスを呼んでもらっていいか?」

「え? まぁ別にいいけど……」


 ローシーが母親も含めたサキュバス達を集めてくれた。一様に俺を見て真剣な顔をしている。


「ねぇテム。一応話しておいたから」

「うん? 何をだ?」

「ティムのことよ。皆あんたに感謝してるから、特に断る理由がなさそうよ」

「うん? 従魔契約ということか?」

「はい。この度は本当にありがとうございました。おかげでローシーも助けて頂きなんとお礼をいってよいか……」


 代表してお礼を言ってきたのはローシーの母親だ。どうやらサキュバス達のまとめ役らしい。

 流石母娘だけあってローシーによくにている。いやローシーが母親に良く似ているというべきか。


 当然だがローシー母の方がかなり大人びている。髪の毛はウェーブ掛かっていてローシーもかなり大きいとは思うが、母はそれより更に一回り大きい胸が特徴か。


「そこで娘からお話を聞いたのですが、何か今、従魔になる魔物を探しているとか? それでしたら私達サキュバス一同、助けていただいたお礼にというわけではございませんが、協力させて頂ければと……」

「それでも断る」

「「「「「「「「「「ええええええええぇえええええぇえええぇええええ!?」」」」」」」」」」」


 見事に声が揃ったな。チームワークバッチリだ。


「ちょ! テムどういうことよ? 流石に意味がわからないわ。どうしてことわるの?」

「テム頭おかしくなったの~?」

「コウン流石にそれは失礼だろう」


 全く、ローシーも疑問符が浮かびまくっているような顔をしているしな。


「ローシー、俺が前言ったこと忘れたのか? 俺は無理矢理であったり相手が望まないようなティムはしない」

「いや、だから今回は前と違うわよね? あのインモラスを倒してくれたお礼にと思っているわけだし」

「あ、もしかしてローシーに気を遣っているのですか? それなら娘を貰ってくれても……」

「ちょ! ママ! 何勝手なこといってるのよ!」

 

 何故か嬉しそうにローシーを差し出そうとする母。なんとも変わった母娘だな。


「……俺がティムしないのは望んで従魔になることとただ義務感だけで従魔になることは違うと思っているからだ」

「え? 義務感……」

「そうだ。俺が助けたからお礼にというのは結局のところそれと同じだ。それにだ、一度従魔として契約を結べばそこに主従関係が生まれる。だからこそ俺は相手の気持ちを大事にしているが――ローシーもそうだが、あのインモラスの血の刻印で苦しい思いをしたはずだ。いくら相手が違うとは言え、従魔契約だって似たようなもの。例え一見平静を装っていても、心に刻まれた傷はそう簡単にとれはしない」

「……テム、貴方そこまで――」

「当然だ。俺はいずれ世界最強の魔物使いになる男だからな」

「「「「「「「「「「え? え?」」」」」」」」」」


 うん? 何だ? 何故かサキュバス達が目を丸くしているぞ。


「え~と、テム様はこれからなられるのですか? 世界最強に?」

「あぁそうだ。とても長い道のりだ」

「…………ねぇローシー(ヒソヒソ)あれは本気で言ってるの?(ヒソヒソ)」

「それが(ヒソヒソ)彼、本気なのよ(ヒソヒソ)」

「(ヒソヒソ)嘘でしょ? 鈍感なの? ねぇ、鈍感なの?(ヒソヒソ)」

「……超鈍感だと思うわね(ヒソヒソ)」


「なんだ? 何をヒソヒソ話をしてるんだあいつらは?」

「なんとなくテムの非常識さが原因な気がするよ」

「馬鹿言うな。大体非常識なのはコウンだ。さっきそう言われていただろう?」

「テムの方がでっかい非常識だよ~」

「はいはい、不毛ないい争いはそれまでにしてね。でもテム、やっぱり何もお礼をしないのは気が引けるって皆言ってるんだけど」

「それなら丁度お願いしたいことがある。それを頼んでもいいか?」

「あ、はい! 勿論です! 私達に出来ることなら! 何でも致します。一体何を致しましょうか?」

「それならこの城と周辺を治める領主代理になってくれ」

「……はい?」

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