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プロローグ

 伝説の偉大なる魔物使いはこんな言葉を書物に残した。


――魔物使いたるもの、満身こそが最大の敵。魔物使いは魔物を使役できる唯一の職業、だからこそ魔物におんぶにだっこではなく己自身も鍛え上げなければならない。


 魔物使いという職業がある。多くは十歳の時に行われるセンス判定により、魔物使いのセンスに満ち溢れていたものがなる職業だ。


 センスはその人によって様々だ。農業のセンスもあれば戦士のセンスもある。

 これらのセンスは大体の人はその身に一つが基本だ。


 そして俺、テム・テイムに与えられたセンスは――魔物使いだった。


 その時の俺の喜び用と来たら無かった。思わず周りがドン引きするほどのはしゃぎよう。だけど、それも仕方ない。


 だって俺はずっと魔物使いという職業にあこがれていたのだから。

 そう世界中の魔物を使役できる唯一の職業、それが魔物使い。

 スライムがいればプニプニし、獣タイプの魔物がいればモフモフし、人間タイプの可愛い子ちゃんタイプがいればゴホンゴホン。


 とにかく、そんな夢に溢れた職業が魔物使い、それに俺はこれで半歩近づいた!


 だが、あくまで半歩だ。センスはたとえあると判ったところでそれはあくまできっかけでしかない。センスを下地にどれだけ才能を伸ばせるかは本人次第。

 

 だからこそ成人の儀は十五歳であるにもかかわらずセンス判定は十歳の段階で行われるのだ。

 そうやって自分のセンスを知った上で、成人になってからなりたい職業を見据え、それぞれが動き出すのである。


 だから、俺も動く! 偉大なる伝説の魔物使いフィフス・ドラックェン。

 彼は魔物使いにとって慢心こそが敵と記し、そして魔物を使役する魔物使いだからこそ己自身が強くなければいけないと後世に書き遺している。

 

 しかし、これは理に適っていた。何故なら使役できる魔物は結局のところ本人の実力によって決まるからだ。


 それがレベル、この世界で誰もが閲覧できるステータスによって確認出来る数値。己の実力を客観的に表記したものそれがレベルだ。


 そしてこのレベルこそがここの能力を判定する絶対的な指針となる。


 だから俺は今日旅に出る。そう、世界最強の魔物使いの座を勝ち取るために、先ずは己の肉体を限界まで鍛え上げ、レベルを上げるんだ!


 そして俺はその日、長年お世話になった村を出た。両親や妹には立派な魔物使いになるべく修行のため暫く旅に出ますと置き手紙を残し。


 そしてそれからの俺の行動は早かった。先ずは山に篭り、己に課した課題を一つずつクリアーしてく。


 レベルを上げるのに一番早いのは魔物を倒すことと聞くが、俺は魔物使いになる男。世界最強の魔物使い、そう魔物使いマスターになるのが俺の夢。世界中の魔物をコンプリートすることこそが俺の目標。


 そんな俺が、いくらレベル上げの為とは言え魔物を狩ってレベルを上げるなんて考えられないことだ。


 だから俺は、もう一つの方法を試すことにする。それは、トレーニングだ!

 魔物を倒すことでレベルが上がると知れた昨今では、古代の人間が行っていたトレーニングなど非効率以外の何物でもないと言われているが、それでもトレーニングによってレベルアップが見込める事は確かだ。


 それは世間一般で知られるように非効率なやり方かも知れない。だけど、非効率だというならその分、量をこなせばいいだけだ。


 俺は大陸で一番険しいと言われる山脈まで(村から二千五百km程先)先ず移動し、そこで修行に明け暮れた。


 この山脈は夏と冬が交互にやってくることでも知られており、夏状態で気温が二百五十度まで、冬状態で絶対零度まで下がる。


 まさに厳しい環境だが、その山脈を俺は毎日先ずは全力で往復(延長二万五千km)した。

 そのうち往復しても午後には余裕が残るようになったので、その後は絶壁を指一本で十往復、それを脚を含めて二十本分。

 そして小さな岩山を背負ってのドラゴン飛び千往復、戦闘を想定した素手でのトレーニング、これには近くのマウンテンタートルに協力してもらい背中に背負った状態(六万五千トン)で行う。


 その内に午前中だけで山脈を十往復ぐらいできるようになり、徐々に余裕が出てきたことでトレーニングの種類も千種類を超え、それらを半年続けたところで山を降りた。


 別に山脈でのトレーニングに飽きたのではなく、物足りなくなってしまったからだ。


 それに魔物使いたるものやはり知識を身につけることも必要だ。


 だからこそ、世界中の魔物を知るために、俺は全方位世界一周を行うことにした。


 全方位世界一周というのは、通常世界一周というのは直線状に一周すること。だが、それでは真の意味の世界一周にはつながらないと考え、俺は全方位で一周ずつ行った。これが全方位世界一周である。


 そして、これを俺は一年半で百周(全方位一セットで)終わらせた。魔物を観察したり、知識を保管するために全ダンジョン踏破したりしながらだから、この程度しか出来なかったのが少々残念ではある。


 そんなわけで、俺は戻ってきた! 再び生まれ故郷へ。俺はまもなく誕生日を迎え十二歳となる。成人は十五歳になってからだが、実はその前にやっておくべきことがあった。その為には一旦この段階で俺は山を降りる必要があった。

 そう! 俺は誓ったのだ! 必ず世界一の魔物使いになると! だからこそまずは入らなければいけない。この世界一と称される由緒ある魔物使いの学園、大従魔学園に!


「ただいまー」

 

 とにかく先ずは実家に帰った。修行を終えたことを両親にしっかり伝えないといけない。


「……え?」

 

 すると、玄関に俺の母さんがやってきた。山ごもりの修行を始めてから一年半つまり十八ヶ月たった。十六で俺を産んだ母さんは、今は二十八歳。


 流石に一年とちょっとじゃ見た目は変わらないか。昔から町で評判の美人だったらしいが、今も十代でも通じるぐらいには若々しかったりする。


「あ、あの、どちら様で?」

「はい?」


 だが、母さんから返ってきた言葉。これに俺は少し涙が出そうになった。

 確かに見た目には若々しい母さんだが、まさかわずか十八ヶ月で記憶力がここまで落ちているとは……息子の顔を忘れるなんて、まさか何かの病気じゃないだろうな?


「母さん、俺だよ、テムだよ。忘れちゃったの? 大丈夫?」

「え? え? え? テム? え? 息子のテム?」


 やばいな、本当に俺のことを覚えてないみたいだ。もしかしたら医者に連れて行った方がいいのかもしれない。もしくは回復魔術師のいる教会に……。


「あ、あの、ちょっと待っていて貰えますか?」


 うん? ま、まぁ別にそれはかまわないけど、なんだろ? 完全に忘れているってわけでもないのかな?


「うん、俺は大丈夫だけ――」

「あ、貴方! 大変なの、貴方~~~~!」


 何だせっかちだな~。でも貴方って、つまり父さんを呼んでるわけか。いつもならこの時間は冒険者として活動していたりするけど今日は休みなのかな。

 

「なんだ騒々しい」


 すると奥から姿を見せた父さん。まだ一年しか経ってないけど、相変わらずのたくましい肉体だ。父さんは戦士のセンスもちだからな。


 しかも肉体派だから筋肉がすごい。レベルも30を超えている。この世界、レベルは20を超えるだけでも一流と評される。農民で生涯を終えるものなどはレベル1のまま上がらないなど普通の事だ。


 ただ、なんだろ? 少し小さくなったような気がするな?

 もしかして最近サボってるのだろうか? 駄目だな。あれだけ毎日筋トレしてたのにたった一年で怠け癖がつくなんて。


「……え~と、どちらさんかな?」

「はい? いや、父さんまで何言ってる? 俺だよ。息子のテムだよ」

「あっはっは、何を馬鹿な。息子のテムがこんなにでかいものか。前までせいぜい百五十センチぐらいしかなかったのだぞ? それがたった一年と少しで二百センチを超えるなんてアホな話があってたまるか。筋肉だって私より多いぐらいだし」


 うん? 二百センチ? 筋肉?


「え~と、鷹の目!」

「は?」


 父さんは目を丸くしていたけど、俺はもしやと思ってコンドルキングが所持しているスキルを使用した。最強の魔物使いを目指す以上、当然だが全ての魔物の持つスキルを熟知し自らも使用できないと仕方ないからな。

 

 そして鷹の目は空中から俯瞰するように、周囲の状況を確認できるスキルだ。これを使えば自分の姿も客観的に見ることが出来る。

 

 そして確認してみたが、なるほど――確かに自分でも少し成長したかな~とは思っていたけど、どうやら今日まで鍛えた結果筋肉が多少ついたようだ。


 身長も百五十センチ以上伸びてるし、背中も随分と大きくなった。どうりで父さんが小さく見えるわけだ。


 う~ん、でもこれは困った。多少の変化とは言え両親は訝しげに俺を見ている。

 あ、そうだ。


「メタモルフォーゼ!」


 スキルを使用すると俺の肉体が徐々に変化していく感覚を覚えた。

 そして筋肉も縮小していき、身長も低くなり、目線も父さんより下がっていく。


「よし、これでオッケーかな? どうかな皆?」

「へ? て、テム? 確かにテムだ!」

「確かにどっからどうみてもテムね……」

「頭が沸騰しちゃうよ~」


 どうやら両親は納得してくれたようだ。ちなみに頭から湯気を出しているのは妹だ可愛い。


「……しかしテム、一体どうやったんだ?」

「別に難しいことじゃないさ。一部のフェアリーが使用するメタモルフォーゼのスキルを使ったんだ」


 フェアリー系上位のプリテンスミューが使用するスキルがこれだ。いたずら好きのこの魔物はメタモルフォーゼで姿を変えて旅人を騙したりするわけだけど、それを利用して修行前の自分の姿に戻したんだ。


 尤も戻ってるのは姿だけで、身体能力は変わらないんだが。


「メタモルフォーゼのスキルって……それ人が扱えるスキルじゃないわよね?」

「え? そんな事無いよ。現に使えてるし」

「ま、まぁそうなのかもしれないが……」

「それに世界一の魔物使いを目指すわけだしこれぐらい出来ないと」

「世界一の魔物使いって、魔物使いはそんな事も出来ないと駄目なものなのか? そうだったか?」

「あまり記憶に無いけど、でも折角テムが戻ってきたんだし今夜はご馳走ね!」

「本当? わ~いご馳走だ~ご馳走だ~」


 そんなわけで、家族も納得してくれたし今日は俺も家族と久しぶりの夕食を楽しんだ。はしゃぐ妹が可愛い。

この作品を読んでいただきありがとうございます。


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