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「ちっちゃい頃、わたし、変な夢見たことがあって。
自分が、猫になっちゃう夢なんだけど。
昔ね、親は離婚しちゃうし、学校ではいじめに遭うしで、もう一時期散々だったことあるんだけど、
あ、もう今は全然大丈夫だよ、うん。
・・・そのときは、すごいなんか・・・孤独感っていうか、いっつもひとりでさ、
とにかく寂しくて。
そんな頃に見た夢なんだけど。
ひとりで山奥まで行ってさ、たまたまあった竹やぶの中に入って、ぼーっとしてるの。
そしたらすごい悲しくなってきて、
急になんだか、無常観ってのかな。とにかくすごい寒くなってきて。
おかしいんだよ、そしたらね、気付いたら猫になっちゃっててね。
たまたま出会ったくまさんと一緒に暮らすんだよ。
あ、テディベアじゃなくて、ほんとの熊。くまさんと。山の中で。
魚捕ったり、果物集めたり、冬眠の準備したりして。
それがなんか楽しくてさ。
現実ではずっとひとりだったから、夢だとしても、誰かと一緒に過ごすってのが、すごい嬉しくて。
・・・でもね、最後ね、くまさん、死んじゃうの。
猟師に撃たれて。
すんごい悲しくてさ、もうわんわん泣くの。
そしたらさ、もうこのへんが夢っぽいんだけど、いつの間にかくまさんが人間の男の人になってるんだよねえ。
ほんとに熊みたいに、おっきな男の人。
で、その男の人も、ずっとひとりだったみたいで・・・
わたしに会えてよかった、ありがとう、って言って、死んじゃうの。
そこで目が覚めるんだけど。
えへへ、いい話でしょ?泣けるでしょ?
・・・それで、わたしも、くまさんに会えてよかったなあって思って。
目が覚めてからも、今でも、思うの。
そのおかげかなあ、こうして今、琢磨くんと一緒に、笑って過ごせるのは。
うん、なんでこんな話、琢磨くんにするかって言うとね、なんかね、くまさんが死んじゃう前になった、人間の男の人の姿がさ、琢磨くんによく似てたような気がするから・・・
え、何?どしたの、急に頭ぽんってしたりして。
えー、なでなでもしてくれるの?恥ずかしいよ・・・
うん・・・」
「おかえりなさい、くまさん」
ただいま。




