表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

雨は好き? だったら嬉しいな

 雨の日は嫌いだ。

 まるで体が借り物のように重くて、言うことを聞かないように感じられる。

 雨の日は嫌いだ。

 服が湿っぽくて、張り付いてきて、なんだか体が粘っこく感じる。

 雨の日は嫌いだ。

 雨が降って、傘をさす。ただそれだけなのに、大好きな後ろ姿が見えなくなる。

 ――雨の日は、嫌いだ。


 \゜\、\・、\、\・。゜、\・\。゜\、、


 雨が降った。

 そんな日は電車の遅延を言い訳にして、どこか寄り道をする。

 小さな冒険だけれど、新しい発見だってある。

 一本外れた道にあるパン屋は、通学の時の香ばしい芳醇な匂いの正体だ。

 向かいのマンションの三階に住んでいる女性は、雨の日は油断してネグリジェのままで窓際に寄ってくる。

 僕が好きな君は、雨になるとなんだか悲しそうな顔をする。

 今日も雨が降った。


「別に一緒にサボらなくたってよかったのに」


 君はそう言って僕を追い払おうとしていたけれど、僕には君が壊れそうに見えてならなくて、どうしてもそばにいたかった。


「雨の日は一人でいたいの」

「僕の事は気にしなくて構わないよ」

「ついてこないで」

「サボったもの同士、仲良くしようよ」


 そんな言い合いをしていたからか、はたまた雨音にかき消されていたからか。僕も君も、君に接近する物体に気づくことが出来なかった。

 僕はたまたま君の方を見ていたから、咄嗟に君の手を引くことが出来た。だけど、予想外に力強かった君の抵抗や地面の状態の悪さも相まって、君をその物体から引き寄せることは出来たけど、僕がその物体の前に放り出される形になった。

 作用反作用の説明に使われるような、綺麗な正反対の運動をして、僕は、トラックに引かれた。


「――し――また――の……?」


 薄れゆく景色の中で僕は彼女の泣き顔を初めて見た。


 ◇ ◇ ◇


 気がつくと真っ白な空間にいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ