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現代人の異世界戦記  作者: 甲 乙丙
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第四話 初戦闘

「急げ!すぐ戦闘配置に着け!モタモタしてんじゃねぇ!!!」


サヴァテリは叫びながらヘルメットを被り、短機関銃を持って陣地の塹壕に走った。貞雄はどうしようもなくその場で立ちすくんでいた。が、砲弾が着弾して炸裂音と地面が揺れた瞬間に伏せていた。だが外がどういう状況なのか見たいと思ったので貞雄は、


「…よし、行ってみようっと」


こっそりと壕から出て戦闘態勢に入っていた塹壕に向かった。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


塹壕はまさに戦場だった。

兵士達が小銃や機関銃を構えている。塹壕の外や近くでは砲撃によってできたクレーターだらけで、着弾によって相変わらず炸裂音と地面が揺れていた。兵士達が塹壕をあちこち動いているが、貞雄を誰も気にしていなかった。そんな塹壕の中にサヴァテリもいた。彼は短機関銃を構えていた。


「バレたら絶対怒るよな…。別のところに行くか」


貞雄はサヴァテリに気付かれぬようにこっそり反対方向に移動した。その時ふと塹壕の外を見ると、砲撃は続いていた。が、塹壕から1メートル位先には小銃が落ちているのが見えた。


「あれって…ライフル、だよな?敵が落としていったのかな…?」


サヴァテリ達の兵士達が持っていた小銃と似ているがよく見ると少し違う。だが武器は武器だ、と貞雄は考え、手を精一杯伸ばすが届かない。


「いくぞ、せー…」


少し身を乗り出して取ろうとした時、近くで飛んできた砲弾が炸裂し、砲弾の破片が頬の近くを飛んでいった。


「!」


貞雄はすぐに塹壕の中に引っ込んで頬を触ったが、少し切れただけだった。


「あっぶねぇぇぇぇ…あと少し横にいたら顔吹っ飛んでたかもな…」


砲弾の恐怖を改めて確認しつつ、手で血をぬぐい、もう一度身を乗り出して、懸命に手を伸ばした。


「…んおぉぉぉぉりゃっ!!!」


奇声とともに、ついに貞雄はその小銃を手に入れた。

小銃は見たこともある機構だった。彼の持っているエアガンと同じ、ボルトアクション式である。


「ボルトアクション式か。まあいいや、弾は入っているかねっと…」


すぐに塹壕に引っ込んで、早速遊底を開いて弾が入っているかを見ることにした。


「よいしょっ…と、あ」


遊底を開くと弾が一発出てきて、落ちた。恐らく装填したばかりだったのだろうか。とにかく落ちた弾を拾ってまた薬室を覗くと、弾はちゃんと入っていた。


「…おおー、弾入ってるな。…じゃ早速」


その拾った弾を入れて遊底を閉じて、貞雄も小銃を構えた。だが貞雄は小銃の異変に気がついた。


「…ライフルって、こんな風だったっけ?」


その小銃はトリガーガードが広く、引き金も大きかった。しかし手袋をして撃つためにトリガーガードを広くした銃もあるから、これもきっとそうだろうと思った。

その時、沢山の足音と声が聞こえた。銃声も聞こえる。

塹壕の外をゆっくり覗くと、大勢の敵らしき人達がこちらに向かって走っていた。だが人間とは何かが違った。よく見ようとした時、


「撃ち方始め!撃て撃て、撃ちまくれ!!!」


貞雄のいるところから離れたところでサヴァテリの怒鳴り声とともに他の兵士達が撃ち始めたので、一応銃を構えた。だが一つだけ不安があった。


「…俺、実銃撃ったことねえよ…大丈夫かこれ…」


そう、貞雄は銃を射撃経験がないのだ。海外に行けば撃てるらしいが、貞雄は海外に行ったことが一度も無い。エアガンは持っているが、エアガンと実銃は明らかに違う。なので撃てるかどうかが一番不安だった。

だが敵はもうやってきている。撃たなければ殺される。貞雄はそう思って勇気を振り絞って敵に銃を向け、引き金に指を当てた。あとは引き金を引くだけなのに、手が震えた。人に撃つのが怖いのだ。だが誰でもそうなるはずである。

だが、固まっているところに撃てば外れるのでは無いかと思うと気が少し楽になり、取り敢えず引き金を引いた。大きな銃声と共に反動が来る。


「うぉおっ!?」


貞雄は人生で初めて、実銃を撃った。だが構え損ねたらしく、発砲時に銃が上を向いてしまった。それと同時に肩に衝撃が走る。しかも目を瞑ってしまい、何処に飛んで行ったのかわからなかった。

そして遊底を開けると、空薬莢が綺麗に飛んでいった。


「…お、おおー!すげぇぇぇぇ!!!」


貞雄は思わず感激して叫んでしまった。構え方さえしっかりすれば銃を撃てるのだ。

だが、感激している場合ではなかった。敵がかなり近づいていた。慌てて銃を構えて狙いを定めようとしたら、その敵が塹壕に入ってきた。だが貞雄は敵を見て驚いた。


「…は?」


目の前の敵は人ではなかった。身体は人そのものだが、顔はネズミだった。つまり、そのままであるが、『ネズミ人間』なのである。ネズミの顔と人の身体のコラボレーションはとても奇妙であった。


「…」


「…」


敵も貞雄の姿(ジャージ姿+裸足)を見て不思議に思ったのだろうか、唖然としていた。互いに何もしない時間が流れた。が、それもすぐに終わった。『ネズミ人間』が後ろから撃たれたのだ。恐らく射手は短機関銃だったのだろう。


「…短機関銃?」


貞雄は嫌な予感がした。その予感が、的中した。


「…サダオ、無事か?」


貞雄は恐る恐る見上げると、サヴァテリの怒りに満ち溢れた顔が見えた。


「…はい、無事です」


「無事です、じゃないわ馬鹿野郎!銃も触ったこともねえような民間人が何やってるんだ!死ぬところだったんだぞ!!!」


やはり怒られてしまった。だが当然である。一般人が碌な訓練もせずに戦場に出るなどまずあり得ないし、もし敵、つまり先ほどの『ネズミ人間』がそのまま襲ってきたら、近接武器も無く、殴り合いの弱い貞雄は確実に死んでいただろう。だが話している場合ではない。敵は大勢来ているのだ。サヴァテリは短機関銃を速やかに塹壕の外にいる敵に構えて、


「とにかくサダオ、お前は一般人なんだから銃を置いとけ。んでさっきのとこに隠れてろ。民間人が戦闘に参加してるのは、国際的に不味いことになるから」


と貞雄に言って、敵に向けてすぐに発砲した。綺麗に3連発ずつ撃っている。だが此処でノコノコと去りたくはない、命を救ってくれたのだからお礼を兼ねた行為をせねば日本人失格だと思った。そして貞雄は常識外れなことを言った。


「…あの、突然なんですけど、ここの部隊に志願するのってアリですか?」


サヴァテリはその言葉を聞いて唖然とした。


「…はぁ!?何言ってやが…」


サヴァテリは貞雄にそう言いかけた時、別の『ネズミ人間』が向かってきてサヴァテリに襲いかかろうとしていた。


「っとぉ!?」


だがサヴァテリは後ろを向きながら瞬時にベルトからナイフを抜き、その後ろにいる『ネズミ人間』の首にナイフを刺した。『ネズミ人間』が短く唸り声を上げながら倒れた。


「ふぅ、あっぶねぇ。後ろから来るなんて常識のなってねぇ野郎だ。…とにかくサダオ、バカ言ってる間に隠れてろ!」


サヴァテリはまた貞雄にそう言い放って銃を構えて発砲した。貞雄も銃を構えて撃とうとしたが、敵が退避している最中だった。それでもサヴァテリは、


「撃て!一人残らず撃ち殺せ!!!」


と怒鳴りながら短機関銃を撃っていた。貞雄も小銃を構えて撃とうとした。だが弾が詰まったのか、遊底が動かなかった。


「…あ、ジャムった…って、これは自動小銃とかに使う言葉か」


貞雄は早く撃とうとして遊底を動かしていたが、全く閉まらなかった。そうこうしているうちに敵が退却してしまった。


「逃げられた…誰かに機関部の掃除の仕方、教わらなきゃあな…」


そう呟きつつさっきの所に戻ろうとすると、サヴァテリが


「まてサダオ、どこへ行くんだ。まだ話は終わってねーぞ。」


と薄笑いで話しかけてきた。


「ついてこい。話しの続きだ」


貞雄どうやらゆっくりできるのはまだのようだと悟った。


最近更新が遅れてきた気がする…

見てるかわかりませんが、応援よろしく願います。

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