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ある朝眼が覚めると溺愛されていました  作者: 朱居とんぼ
第一章 召喚、されてしまいました
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閑話休題 男たちの独り言(アドリアン&ティルマン)

(視点が三人称に変わります。アドリアンと執事のティルマンのシーンです)

「リルはどうしてる、ティルマン?」


 さきほどの地下室でのくだけた姿とはうってかわって、華やかな装飾のジレとジュストコールをまとってやってきたアドリアンに、執事のティルマンは様子をうかがっていた扉から身を離した。


「お疲れだったのでございましょう、お眠りになられました」

「強引に界の境を越えさせたからかな。無理をさせてしまったな……」

「それもおありでしょうが、いきなり〈妹〉などと戯言をおっしゃって抱きつかれたりするからですよ。リル様はあれで精神的にかなり消耗なさったようですが」

「そう言うな、抑えられなかったんだ、嬉しくて。やっと会えたんだから」


 アドリアンは愛おしげにリルの眠る部屋を見る。ティルマンがため息をついた。


「本当にこのまま妹ごっこを強行なさるおつもりですか。こちらの事情も話さないまま。拝見したところ、リル様ならば話せば協力してくださいそうなお方で……」

「ティルマン」


 鋭くアドリアンは執事の言葉をさえぎる。


「言っておくけど、彼女にあのことを話したらいくらお前でも許さないよ」


 アドリアンの冷やかな瞳に、ティルマンが息をのむ。


「彼女は何も知らないままでいい。話せば彼女のことだからきっと自分が何とかしなくてはと考える。それは僕の本意ではない。いいね?」


 本気の脅しだ。

 顔を青ざめさせたティルマンを下がらせて、アドリアンは、そっと扉に手をあてた。


 この扉の向こうに、ずっと探し求めてきた人が眠っている。


「巻きこんでごめんね、リル。でも君しか思いつかなかったんだ」


 そっとささやく。


「愛してるよ、リル。やっと捕まえたんだ、だからもう少しだけ僕の傍にいて。僕に人としての温もりを思いださせて……」


 ことが為れば自由にしてあげるから。


 扉に額をこつんとあてて眼を閉じたアドリアンの顔は、せつなげで後悔に満ちていた。


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