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「ふっ、うちの可愛いリルに挑んでくるとは身の程知らずが」
邸に戻っての晩餐の席で。団らんついでに今日の出来事を話したら、アドリアンが眼を不吉な色にきらめかせた。
「安心するといい、即刻、ラ・サーファスの予算は差し止め、リルの組は倍額するから」
「そういう問題じゃない!」
案を真似っこされたのは腹が立つけど、そんな勝ち方をしても嬉しくない。
「そもそもそれじゃ、卑怯の濡れ衣、はれないじゃない。私たちのほうが真似っこだって言ったのよ、彼女たち!」
「相手に罪の告白をさせるのは、相手を叩き潰すより難しいよ。代償もともなう。リルにそんな面倒な真似はさせられないよ。そんな時間があるなら僕と遊んで」
駄目だこりゃ。アドリアンはさっそくティルマンに裏工作の準備を指示している。
こういうのを見ると、裏でどろどろ貴族社会というのが実感を帯びてくる。そうか、アドリアンもやる時はやる人だったのか。さすがは侯爵閣下。
でもこのままでは大人の介入を許したと失格になってしまう。アドリアンのことだからそこらもうまくやりそうだけど、どうせなら自力で勝負したい。
(しょうがない、何度も使いたくないんだけどな……)
私は席を立つと、すたすたと歩いてアドリアンの側に立った。
「どうしたんだい、リル」
「お兄様、お願い。リルのお願い、二つ聞いてくれないかな」
思いきって、アドリアンの腕にきゅっと抱きつく。
アドリアンの全身がこわばる。そして爆発した。
「もちろんだとも、なんでもしてあげるよ、リルーーー!」
ちょろい。ちょろすぎて涙がでてくる。生まれ(召還され)てくる場所を選べなかったとはいえ、もう少し毅然とした兄が欲しかった。
まあ、とにかく、要求だ。
「予算増額とか妙な介入はしないでね」
「うん、わかったよ、もう一つは?」
「ロザの提案なんだけど。あのね、アドリアン、仮装してくれない?」
「仮装?」
「うん、オーギュストさんと一緒に。どうせ模擬店に入り浸るだろうから、仮装してもらって客引きになってもらえればって」
取りだしたのはクラス女生徒有志とジョルジュ制作のびらびら装飾過多なマント付のすばらしくファンタジーな衣装だった。
「アドリアンが王子様兼放浪の騎士で、オーギュストさんが不滅の暗黒魔王なの」
放浪の騎士というわりにえらく派手やかな衣装だが、地味な泥臭い扮装よりこちらのほうがきらきら人目を引くのは確実だ。アドリアンにも似合う。
「お客様が仮装して模擬店にきちゃいけないって規則、なかったでしょ。だから協力して」
勝負に勝つためには使えるものはすべて使う。合法の範囲で。
総司令官、ロザの命令の元、私は無事、アドリアンを巻きこむ策を成功させた.




