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②章[うつつトゥルー☆冷血吸血鬼ギャンブルジャンキーの鉄仮面を撃ちぬけ! 戦慄の豪運キングとインディアンポーカー対決!? 僕はここまでだ…… ――――№3黒色ブラッド]   其の一

②章


☆うつつトゥルー☆


[冷血吸血鬼ギャンブルジャンキーの鉄仮面を撃ちぬけ! 戦慄の豪運キングとインディアンポーカー対決!? 僕はここまでだ…… ――№3黒色ブラッド] 其の一







港区六本木――会員制カジノ内。

「おい、小僧……他の店でも随分勝ちまくっているみたいだが、俺はここのカジノを任されている立場なんでねぇ! てめぇが、石榑の連れで来てようと、もうタダでは返せねぇぞ! 俺にはその責任がある……死ぬ気でやらせてもらうぞ、ガキ!」

 立場だか責任だとかは知らないが、死ぬ気でやるお前と、過去に一度死んで、救われ蘇った――その対価を支払う使命を背負う僕の覚悟と、お前の覚悟どっちが強いかね? ――『ヘビ』。










 救いなんて、ないじゃない……――僕は最後、現先輩にそう言われたのだ、無念だった。

 もしも、あの時、僕がギャンブルに勝利していても、もう手遅れだったと僕は今になって思う。僕の肉を咀嚼する彼女の表情はもう手遅れであった。手遅れの顔と言うと、変な表現に思われるが、でも、まさにあの時の彼女の表情はそれであった――人間の顔をしてはいなかった。

 ピッカ!! 閉じた瞼に反射するストロボが、眩しい……――何度か体験したこの感覚、スカルの力で骨が輝く瞬間。そして、僕の骨が折れる瞬間だ……僕は戻ったんだ。一体どの瞬間に戻ったのだろうか……ここがターニングポイントなのだろうか? 僕は何処で間違えたのだろうか……何にせよ、もうあんな無念な結末は繰り返さないと、強く思い僕は目を開けた。

「ハッ!!――――ここは……パソコン室だ……現先輩に、日陰さん!」

「――明日までの秘密よ……フフフ、私も色々まとめて準備しないといけないし――ん? 天元君どうかしたの? いきなりそんな驚いたような顔して……まぁ、いいわ」

 キーンコーンカーンコーン! キーンコーンカーンコーン! と、その時予鈴がなった。

「おっと、予鈴のチャイムだわ。みんなに連絡よろしくね、日陰さん。頼りにしているわ、じゃあ教室に戻りましょう、明日よろしくね、羽屋里君もよろしくね」

 そう言い残し、現先輩はパソコン室を去って行った――ここか……今思うと、嫌な言い方をするが、ここで僕達が現先輩の事を信じたのが間違いだったのだ。№3が現先輩を支配しようとしているのを、手助けしているのと同じだ。念の押し方も不自然でおかしかった。

「日陰さんちょっといいかな、お願い……と、言うか僕に任して欲しい事があるんだ」

「うん? どうかしたの? 羽屋里君。何を任せればいいの?」

 現先輩に頼みごとをされ、少し嬉しそうな顔をしていた日陰さんに僕は話を切り出した。

「さっきの現先輩の頼みごとなのだけど……あれ、協力しないで欲しいんだ! お願いします」

「え? なんで? 意味分からないよ、羽屋里君。平和的解決法があるんなら……私は現先輩に手を貸したいよ……なんでそんなこと言うの? さっきまでは羽屋里君も協力するって言っていたよね? 現先輩がいなくなったらいきなりそんな事を言い出すなんて……どうしたの?」

「頼む! 頼むから……自分でも滅茶苦茶な……なんかこうトリッキーな事を言っているのは分かっているよ……だけど、このことは全部僕に任せて欲しいんだよ! 僕はこの先の展開を全部知っているんだ……そこに救いなんてないんだ……。お願いだ、必ず現先輩を元に戻して、不良達の事件も解決させる。だから僕を信じて、任せてくれないか? 聞いていたんでしょ? 日陰さん――必ず僕が現先輩を救うから、次は負けないから……必ず救ってみせるから!」

 もう日陰さんには一度ヘビの呪文を使っている以上、彼女を騙す事はもうできない。僕にはもう、運命を変えるには、ただただ、気持ちを込めてお願いすることしかできなかった。

「必ず救って見せるからかぁ……――うん。分かったよ、なんだろうね……何故か羽屋里君に任せた方がいい気がしてきたよ。それにまだ、現先輩には恐ろしい力がある可能性が高いしね、部員のみんなは集めないし、私も行かないよ。だから羽屋里君――今度はちゃんと、現先輩を救ってあげてね……って、なんだろう! 私……ははは、こんな言い方じゃ前に羽屋里君が現先輩を救うのに失敗しているみたいだね。ごめんね、変な言い方して、頑張ってね、羽屋里君!」

 たまに思う事がある――骨オリを使った後の世界でも、使う前の世界の記憶を僕とケロベロスそして、スカル以外の人も、少しだけ持っていたりするんじゃないのかと……。これもまさにそうだと思う。前の日陰さんが託してくれた強い意志の記憶だ、ありがとう。

「大丈夫だ! 日陰さん! この世界最大の主人公補正をもつ僕が、必ず現先輩を救ってくるから! 任せておいてくれ! 僕に賭けてくれ、必ず次は勝つから」

 僕が主人公と言わんばかりの中二病なセリフを吐いた時、スカルのネックレスから小さな声が聞こえた――『天元、お前ならやれる、早く私達を救ってくれ』、と。期待は裏切れない。

こうして、僕と日陰さんは明日ここに集まらないと約束し、パソコン室を後にした。2年の教室に向かう道中、僕のお願いを聞き入れてくれた日陰さんの表情はとても嬉しそうにみえた。







 日本屈指の大人の街港区六本木――とある大通り。

「久しぶりだね、天元君。いやはや、早いもんですっかり春だな! 元気にしていたかい? 直接会うのはクリスマスぶりだね! ケケケ! お互い生きているんだ! 今宵は楽しもう」

 高身長に長髪で瞳孔の開いた様なギョロ目、アイコニックなネックレスをつけたその男は僕が前に会った時より涼しい顔で登場し、そして、僕を以前苦しめた能面を首にぶら下げていた。

「こんにちは、石榑さん。今日はよろしくお願いします。忍足さんに色々聞いていますかね?」

「ああ、鋭兎から色々聞いているよ! 苦戦しているようだねぇ、№達に……ケケケ」

 鋭兎とは、忍足さんの下の名前だ。二人は仲が良く、下の名前で呼び合っているとの事だ。

「ははは、すみません。見事やられて、殺されかけて、骨オリで戻ってきました……」

「いやいやいや、それは、それは、まぁ……鋭兎に聞いた限りだと、現アヤの土俵で戦った事が天元君の敗因だねぇ~! だってほら、君には君のやり方って言うのがあるだろ? 僕と戦った時みたいにさぁ! それで戦わなきゃ……君にベットしているスカルとケロベロスに示しがつかないだろ……って、分かっているか! だから、俺を呼んだのだろうからね! ケケケ」

 かつての敵、そして今は僕の仲間と、言っていいのだろうか? 石榑いしぐれ 鬼旗ききを僕は忍足さんに呼んでもらい、今宵この六本木へと、繰り出していたのだった。

「彼女にギャンブルに勝たない限り彼女の心の隙間は埋まらない。だが、彼女には絶対に勝てない……だから№3を彼女から追い出せない。なら……そのギャンブルの場所を――居場所を奪えばいいのではないかと、考えたのか天元! 自分のやり方で勝つそれでこそ天元だ!」

 今回の僕の作戦のキーパーソンであるケロベロスが、僕のやり方を――考えを読み切った。

「ああ、そう言う事だ、ケロベロス――僕とお前のカジノ狩りを始めるとするぞ! そして、石榑さん、あなたの名前と肩書きを貸して貰えば僕はどこの会員制カジノにでも入れる!」

 僕にはケロベロスと言うギャンブルにおいて、最強であろう相方がいるではないか! 最強のイカサマが成立する……そして、そのイカサマは現アヤ以外には決してばれない――ケロベロスの弾丸呪文『ヘビ』があるではないか。騙す事それはギャンブルにおいて鉄の魔法である。

 イシグレカンパニーと、言う今巷で大ブームのお菓子会社がある――そこの社長、それが石榑鬼旗なのである。とどのつまり彼は成功者であり、セレブであるがゆえに、このような非合法カジノやクラブに入り放題、好き放題、遊び放題できる……そんな選ばれた人間なのである。

「まぁ、俺としてはこうやって君に頼ってもらって嬉しいよ、君とこれで改めて仲直りするきっかけになったからね、これで僕が君の相棒達を殺そうとしていた件については全て不問としてくれるんだろうからなぁ! 優しい世界で安心したなぁ! 困った時はお互い様だしなぁ! そうだよなぁ! ケケケ――もっとも、最後に殺されかけたのは俺だったがね、まぁあの時は殺されかけたおかげで俺は逆に助かったから、君等に借りがあるからなぁ! 返すぜ、ケケケ」

 石榑は自己啓発本やらもだしていて、社会的知名度もそれなりにある。そんな人の顔パス機能を利用できるなんて、これほどこの作戦のパートナーとしてベストな人はいないだろう。たとえ、僕達の過去にすれ違いの時期があろうと、今は仲間なら、是非協力してもらいたいと思える人物であった。そして、今の彼は前の不気味なイメージとは違う、親しみ易いキャラだ。

「そうだ、天元君。まずは何か食べないかい? 丁度、この辺に美味いラーメン屋があるんだ。1.3.5が魔法の言葉のラーメン屋がね、硬い、しょっぱい、油っこいってこと! ケケケ、まぁ、百聞は一見にしかず! 腹が減っては戦がなんとかって、言うしね! 行こう、ケケケ」

 目的地に行く前に石榑さんにラーメンを奢ってもらい、食べた後、僕達はカジノに向かった。

「腹も一杯になったし、ほんじゃ、ここのカジノから行くとするか……天元君のお手並み拝見といこうかな……夜は敵が強いからね! 楽しみだ。張り切っていってみよう! ケケケ」

 






 会員制クラブ『五臓六腑』――そう小さく表札が掛かっているこの店のドアを開けると、中には超大型2メートル級のカリブの男が2人立っており、その先には地下に続く階段があった。僕と石榑は入念なボディチェックをカリブの男らに受け、石榑の顔パスにより入店を許可された僕達は地下に続く階段からカジノロビーにでると、そこには無数のバニーガールとBARカウンターそんな煌びやかな店内に、ハイブランドに身を纏った人達が大勢いた――このカジノの特徴は著名人がいりびたる極秘カジノなのだという。ゆえに入店チェックは厳しく、一見さんお断りは勿論のこと、あまりのセレブか、芸能人でもない限り中には入れてくれないとのことで、店の客の危険度は低いが、金持ちは多い。上客潰しが基本のカジノ狩りには絶好の店とも言える。

 そしてこの店は石榑が一番この辺りで知るカジノらしく、1件目としてこの店を選んでくれた。どのカジノでも色々なゲームがあるのだが、1対1のお客同士のギャンブルになると決ってこの辺りでは――そう、以前僕が養分となったインディアンポーカーでの戦いとなっている。それはこの店でもそして、六本木にある全ての裏カジノ共通の掟だという。

「さぁ、天元君。どうしようか? ここにいるのはみんな金持ちだ。そして、著名人とセレブ達は『豪運』を産まれもって持つ。まずは誰とギャンブルがしたいのかな? 僕がうまくマッチングさせてあげるから遠慮なく言ってよ、ケケケ。それかまずルーレットでもして遊ぶかい?」

「石榑さん、悪いが僕には遊んでいる暇はないんだ。今からここの全員を敵にするからね……」

「え! 全員を敵にするって一体何をする気なんだい? まぁいいか、好きにしなよ、ケケケ」

 現アヤに勝てないなら、彼女をジャンキーにするこの環境を潰す。それが僕の考えたやり方であり――君を救えるかもしれない希望。君が笑ってくれるなら、僕はこの人達を養分にする悪魔にでもなる。そう決意し、僕はケロベロスを握り、ロビー全体に響き渡る大声で叫んだ。

「僕の名前は羽屋里天元! 選ばれし者であるがゆえ、冥界で生まれし、天才博徒の高校生だ! お前らバカで、がめつい、人を見下す、薄ら笑いが気持ち悪い、偉そうな大人達が大嫌いだ! 金ならいくらでもある! 賭け金MAXで相手になってやる! 文句がある大人はかかってこい! 一人ずつ相手をしてやるぞ、バーカ! そして、もし、僕に勝てた奴がいたら、僕を好きにして構わない……煮るなり焼くなり好きにしろ! 誰が相手だろうと、僕は必ずかーつ!」

 僕のいきなりの大口に、賑やかだったロビーが一瞬、静まり返ったが……すぐに湧いた。

「ケケケ! いいね、天元君、ハハハ痛快だねぇ、いいよ。資金は僕が持とう。みんな! この若人にどんどん挑戦してくれ! なんなら僕は会社ごと賭けても構わないよ、ケケケ」

 石榑さんもそう言いながら能面を付け、ギラリと面の奥の目を輝かせた。ハイ、全員敵のカジノ作りいっちょうあがり! ってところか……その方がやりやすい、なぁケロベロス。

 ドスン! ドスン! と、勝負のテーブルについていた僕らの体をビクンと、揺らした大きな体の挑戦者がすぐに現れ、テーブルについた。その挑戦者は僕も見た事がある人物だった。

「お! ケケケ、挑戦者のお出ましだ……って、あれ? むささびママさんですよね! おねえ系料理専門家の! いやあ、僕あなたのファンなのですよ、マジリスペクトですわぁ……」

「あら、私の事をご存じですのね、光栄だわ。私もあなたの事は存じていますのよ、石榑さん。ぜひ、あなたのところの商品のお菓子を私のプロデユースでコラボ商品を作って頂きたいと常々思っていたわ。夜のお菓子としてカフェイン、アルギニン、ニンニクエキス、をたっぷり入れた大人のお菓子をね! まぁ、その話は置いといて……今日はすごく可愛い子を連れているわね、おほほ、私の好みだわ……さっき勝ったら好きにしていいとか、どうとか言っていたけど……それって……本当かしら? なんでもOK? 私は捕まらない? なにしても……」

 卑しい目で僕を見るその大柄の男の威圧感に、ゴクリと、僕は息をのんだ。

 むささびママ――テレビで活躍する、巨体のおねえ系タレント、レペゼン上野。

「どうぞ! どうぞ! 勝てたらこのトロフィはあなたの物ですよ! 塗るなり、揉むなり、射られるなり、しゃぶるなり、好き放題できますよ! 彼がそれを望んでいますから、ケケケ」

「の……望んでいる!? おほほ、いい世の中になったわね、優しい世界だわ……じゃあ私と1発打ちましょう……おほほ、勝った後の一発が楽しみだわ、あら、私ったら下品ね、てへ」

 こうして羽屋里天元VSむささびママ――僕の記念すべきカジノ狩り第1戦目の幕が開いた。






「えっと、それじゃあ……1戦を始めましょうか、レートはいくらにしますか?」

 僕がレート相談に入ると、顔に煙が飛んできた――その煙は煙草を咥え、いきなり機嫌が悪くなったような口調で怒鳴り変貌した……むささびママから飛んできたものだった。

「レート? そんなのはお前が決めればいいわ、私が勝つまでやるわよ、坊やはもう私の物よ!」

 僕はこの時安堵した。これから始まるカジノ狩りは恐らく長期戦になるだろう、自信があるとは言え初戦はやはり緊張していた。このぐらい短気な相手の方がやり易い、なぁケロベロス。

「わかりました……じゃぁ――最低1億円から青天井でお願いします。あ、あと先行どうぞ」

「ゲホッ! 1億って……あんた本気? トラッシュトークも大概にしなさいよね!」

「いえ? 僕はさっきからずっと本気ですよ。さぁカードをドローして下さい、始めましょう!」

 チッ! と舌打ちをして、むささびママはカードをドローし額にあてた。交渉成立。僕もカードをドローし額に当てた。僕は自分の額のカードをケロベロスに覗いて貰った、イカサマだ。

「天元のカードは5だ! ぐぬぬ、奴のカードはKではないか……どうする天元?」

「ああ、大丈夫だ! ケロベロスまずは、奴の発声を聞こう。一番いい場面で僕はヘビを撃つ」

 むささびママにはケロベロスは見えない。よってこのイカサマがバレる事はありえない。

「おほほ、あなたのカードとても惨めなカードよ! 私は豪運なの……こんなカードには負けないわ……少し苛めてあげるわ! 2億にレートアップよ! さぁ、1億で降りてもいいし、コールしてもいいわよ、カードを替えて逃げてもいいし……楽しいわね、駆け引き! おほほ」

「ふーん、なら僕も上乗せだ。カードも交換しない。10億にレートアップだ! 僕のカードそんなに弱いか……じゃあ、案外いい勝負になるかもしれませんよ、この戦い。楽しみだ」

「な、なんですって! いきなり私のレートアッブの5倍ですって……。いくらテレビや、料理本が売れている私でもその額は……破産ギリギリよ……ここは、勝負するしかないのね……」

 相手の数字はローカードの『5』私が負けるはずがない。と、むささびママが勝負と、コールしようとした瞬間僕は呪文を唱えた――『ヘビ』と、弾丸がむささびママの巨体に命中した。

「ねぇ、むささびママ……本当に僕のカードは弱いんですかね? もう一度考えてください」







 私はむささびママ――本名は月岩つきいわ みのると言うわ。この勝負は私の勝ちだわ。相手のカードは『5』である限り、私の勝ちは必然……と思っていたが、この天元とかいうガキの自信はどこから来ているのか……そして相手の思考は本当に痩せた考えで、今もガキの粋がりでレートを上げたのか……それとも、私のカードが本当に弱いカードなのか……もし、負ける事があったら……私の人生は終わる。2億ならまだしも、10億は無理だ、絶対に負けられない……そもそも、『5』って本当に弱いカードかしら? A~4と4枚のカードに勝てて、『5』とは引き分けするカードだわ、あれ……なんだか、とても強そうね……嘘、私……え? じゃぁ……どうすれば――勝負する? カードチェンジ? それとも……う、嘘でしょ。

 むささびママは思考を巡らす……これが僕の鉄のイカサマ。この弾丸を使えば必ず相手は疑心暗鬼になり、そして……自ら詰んでいく。思考の闇を彷徨った挙句に破滅していくのだった。

「お……降りるわ……2億円で勘弁して頂戴……。ふぅ、危なかったわ、ちなみに私のカードは……あ……ああああ! な、何よ……Kじゃない……そ、そんな馬鹿な……あわわわわ……」

 WIN天元2億円――僕はケロベロスの『ヘビ』により、相手を騙し、降ろす事に成功した。

 むささびママが泡を吐きながら倒れ込んだ。その後、僕はこのカジノの御用達のセレブ達とインディアンポーカーをし、その全てに勝利した。僕がこのカジノの客を養分にし、客を店から全員追い出すことに成功した時、もう外は日が昇って朝になっていた――このような1日を僕は4月中毎日学校が終わると、目を$にした石榑さんと繰り返し送っていた。そうすると、カジノ狩りをする僕の名前が六本木界隈のカジノ中に広まるのに、そう時間はかからなかった。

 あれから学校で現先輩を見かけない。どうやら僕は約束を破った裏切り者の薄情者として彼女に避けられているようで、当然の如く僕が行くカジノにも彼女の姿はなく、いつも僕がいない他のカジノでギャンブルをおこなっているとの噂がカジノ内で僕の耳にも入ってきた。日陰さんやパソコン部のみんなも僕と同様にあれから、現先輩の姿は見ていないと言う事だった。

 カジノ狩りもいよいよ大詰め、六本木にある殆どのカジノを客不足の休業中に追い込んだ僕は、この日、対戦相手に出てきた店側の人間である髭分に大勝負をもちかけられた。






髭分ひげわけ 男吉だんきち――戦後70年彼は博打のみで生きてきた裏プロの怪老。

 遂に僕のカジノ狩り……つまり、カジノで客を打ち負かし続けカジノから人を消す事にカジノ側が痺れを切らせて、商売の邪魔をする僕を懲らしめる為に店側の人間が出てきたのだった。

「おい、小僧……他の店でも随分と勝ちまくっているみたいだが、俺はここのカジノを任されている立場なんでねぇ! てめぇが、石榑の連れで来てようと、もうタダでは返せねぇぞ! 俺にはその責任がある……死ぬ気でやらせてもらうぞ、ガキ!」

 乱暴な脅しを僕にかけるこの男は、ギャンブル界隈では有名な百戦錬磨の凄腕だという。

「わかりました……ではレートはどうしますか? 全てあなたが決めて頂いて結構ですよ」

「ほぅ! それなら全て賭けようや! 俺はこの店と俺自身の命を賭けてやる! お前は石榑の全財産とそれと……あとお前死んでくれや! はん! 今頃ビビるなよ……このガキ!」

「天元君、俺は君に全て任すから好きにしてくれ、かなり儲けさせてもらったし! ケケケ」

「はい、分かりました石榑さん、ありがとうございます。それじゃあ髭分さん、賭ける物はそれで結構です。先行はあなたでいいですよ、一発勝負でいいですよね。カードを引きましょう」

「ふん、可愛げがないな……お前も随分冷たい奴だ! 雪の女王そっくりだな。まぁそんな雪の女王もあの、キングには敗れたみたいだからな! それにお前なんぞはキングや、雪の女王に比べたらまだまだ明らかに格下や、たちの悪いカジノ荒らしのお前ごとき! 俺で十分だ!」

 髭分がポロリと、言ったその情報に僕は耳を疑った。雪の女王――つまり現先輩が僕の知らないところでキングを名乗る者に敗れたと言う事だ。そんな事が本当にあるのかと、僕は信じられなかった。こんな情報を耳にしたら僕はいち早く現先輩の所に行きたいと、№3が暴走していないか心配になって、居ても立っても居られなくなった。この勝負は早々に終わらす必要がある。僕と髭分はお互いカードをドローし額にあてた。天元VS髭分の戦いが始まった。




 僕のギャンブルは腐ったものである――ただ目的を……現先輩を救い、そして、№3からスカルの血を取り返すだけの手段としてやっている。イカサマを使い真剣に戦っていないそれゆえ、僕がする発声は――ギャンブルの世界で生きる者達の居場所を奪うただの兵器だった。

「天元のカードはQで相手はJだ! 撃ちこめ、天元の勝ちだ……これでいいんだよな」

「ああ、ケロベロス……これでいいんだ。もうすぐ終わるぜ、こんな事はな――ヘビ」

 弾丸が髭分に命中し、僕は苦い顔をしながら震え、ぐにゃっ~と、した表情で言った。

「な……なんでこんな時に……ちくしょう! 理不尽だ……負けられないのに……」

「ふん! どうやらツキのでかさと年季がわしとお前じゃ違うんじゃ! ほら勝負だ!」

 思考停止――僕の言葉を信じこんで、『Q』なのを知っているにも関わらず無謀の勝負に出てきた。呆気ない幕切れで、とてもつまらない腐ったギャンブルこれが僕のやり方か……僕らはお互いカードをチェックする。当然の事だが僕が勝っていて、髭分の顔がぐにゃっ~と歪んだ。

「な……なんでじゃぁ……なんで俺はこんな安易に勝負したんや……死にたくなぃぃ!」

「髭分さん、あなたは何も失わなくていい……ただ裏プロの貴方の顔が効く店にはもう、雪の女王こと、現アヤをカジノに入れないと僕と約束してくれればいいです……それじゃあ」

 そう、約束を提示すると髭分は泣いて喜んでその条件をのみこんだ。そうして僕と石榑さんはカジノを後にした――この勝負の次の日、僕のクラスに現先輩がやってきて僕を呼びだした。






其の二に続く――――。

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