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⑥章[リンゴトゥルー☆受け継いだ弾丸で戦え、天元! 鬼畜に利用された玩具のリンゴの生贄カウントダウンパーティを阻止しろ! 悲劇を喜劇に変える時――№4マジョルカジエンド] 其の三

⑥章


☆リンゴトゥルー☆


[受け継いだ弾丸で戦え、天元! 鬼畜に利用された玩具のリンゴの生贄カウントダウンパーティを阻止しろ! 悲劇を喜劇に変える時――№4マジョルカジエンド] 其の三






 これはまだキスメットが産まれたばかりの時の物語だ。

 産まれてきたキスメットを見て父親のグラシアスは幸福のベールに包まれ最高の気分であった。グラシアスは天国でも最大手と言っても過言のない会社に勤めていた。

 彼はその会社の幹部であり、とある大きな仕事を任されていた。その仕事とは地獄に潜入し、過去、仕事でしくじって悪魔達に捕えられた仲間の天使を救出すると言うミッションであった。そして、その仕事の途中に彼は一人の魔神と友達になった――これが天使と悪魔の友情を産む出会いの始まりであり、天使グラシアスの人生の終わりの始まりであるケロベロスとグラシアスの儚き運命の物語が始まった。

 このミッションのランクは言うならばSSランクの仕事と予想されていた――地獄の漆黒森の中に、強靭な肉体を持つケロベロスと言う魔神が番人を務める牢屋があって、その牢屋にグラシアスが救うターゲットの天使達は幽閉されていた。

 近づくものを確実に噛み殺すと、言う恐ろしい噂がある悪魔魔神ケロベロスと言えば有名であり、そのケロベロスが守る牢屋に近づいた者は決して生きては帰ってこられないと言い伝えられていて、現に助けに行き帰って来た天使はいなかったのである……。その恐ろしい話を聞いた者は誰もこの仕事を引き受けようとはしなかった――だけど、グラシアスは違った。

 漆黒の森に単身で侵入し、自然に……まるで家に帰って来てリビングのテーブルに着く様な自然な動きで牢に向かい、牢屋の前のテーブルに1人で掛けていたケロベロスの前に座ったのであった。









「やあ、ご機嫌はいかがかな? 初めましてケロベロス君! 僕の名前はグラシアスと言うんだ、よろしく! ところで……こんな暗い森に君は一人でいるのかい? 寂しくないの?」

「うわあ!? な、なんだ……貴様は! いきなり現れて……うん? お! お前天使か? なんだ……びっくりしたぜ! 本当にここは天使が沢山集まる場所だな! お前は牢屋に入らないのか? それに喋れるんだな! 天使は喋れないとベルゼブルから聞いていたが……お前みたいのもいるんだなぁ……まぁ、いい! ゆっくりしていけ! 茶でも淹れよう」

 なにかおかしい……。

 グラシアスはすぐにその違和感に気づいた――この目の前にいるケロベロスと言う魔神は一見凶悪な禍々しいオーラを放つ強キャラの見た目をしているが、天使であるグラシアスに嬉しそうにそして、気さくにお茶を淹れてくれると、いう見た目とは裏腹な善良的な対応をしてくれたのである。

 多分ここがどういう場所なのかと言う事を彼自身は知らない、そして恐らく自分自身が他の悪魔に騙されてこの牢屋の番人をさせられている事に、彼は気づいていないのだろうと、言うのがこの違和感の原因だと睨んだ。

 そう睨んだのには理由があった。ケロベロスはグラシアスにあまりにも人なつっこく喋りかけてきたからだ――ここにいる事を一度も寂しいと思った事がないと言い、その理由は牢屋に天使達が沢山いるから、みんながいるから寂しくないと言う。ケロベロスは天使達が捕まってそこにいるなんて、夢にも思ってもいない様子だったのだ。そう、彼からは悪意が一切感じられなかったのだ。

 白い翼を持ちキラキラとした天使に憧れがあると、ケロベロスは語った。だからここで番人をする事ができて……天使に関わり合う事のできる仕事につく事ができて良かったと、ケロベロスはグラシアスに楽しそうに話した。

 牢屋には案の定魔力がかかっていた――そのおかげで牢屋に入る天使達は何も喋れずに捕まっていた。声が発せなくなる魔力であった。

 恐らく先程、ケロベロスが言っていたベルゼブルと言う悪魔がかけた魔力であろう、それをグラシアスが解くと……ケロベロスは喜びそして、救出した天使達にお茶をふるまった。このケロベロスと言う魔神をグラシアスはどうしても敵とは思えず、むしろ友として接し、時が過ぎていった。2人が仲良くなるまでそう時間はかからなかった。

 こうして、グラシアスは仲間の天使を全員牢屋から救いだし……と、言うかケロベロスが牢屋の鍵を開け、あっさりとミッションがコンプリートされてしまったのだった――だが、まだ1つ大きな問題がある事をケロベロスからグラシアスは聞かされた。それは、この漆黒の森は一度入ると二度と出られない魔の森であると言う事だ。そしてそれはケロベロスとて、例外ではなかった。それから暫く何もできないまま時だけが立つ日々が続いた。







 ベルゼブルというケロベロスにここの番人を任せた悪魔がいる。そいつは時たま、天使をこの森に連れて来ては牢屋に入れ自分だけそそくさと帰って行くという。ケロベロスが知る限りこの森を抜け出す道を知っているのはそのベルゼブル唯一人である。

 グラシアスはケロベロスからその事実を聞き作戦を考えた――ベルゼブルを騙して森の外に案内させようと、言う作戦だ。それにはケロベロスの協力が必要不可欠だ、兎に角ベルゼブルとの不要な戦闘は避けたい。それには、どうしてもケロベロスにこちらの人質となってもらいそれを武器にベルゼブルに交渉をしかけてこの森から皆を出してもらうしかない。

 グラシアスはこの脱出作戦と、そしてグラシアスがこの森に来た理由と、ここは悪魔が捕まえた天使を入れる牢獄だと言う事をケロベロスに話した。すると、ケロベロスは泣きだし俺はそんな事は聞いていなかった……知らなかったんだ! と、悔しがり……そして、グラシアスに協力すると誓ってくれた。

 作戦決行の日が急遽やってきた。ベルゼブルが天使を連れて漆黒の森にやって来たのである、牢屋に来たベルゼブルは唖然として立ち尽くした――牢に捕えていた天使達は全ていなくなり、番人をしている筈のケロベロスまでもが、いなくなっている非常事態を見ての事だった。

 立ちつくすベルゼブルに、後ろからケロベロスの助けを求める声が聞こえ振り返ると、そこにはグラシアスと、天使達に拘束されるケロベロスの姿があった。

 ここからがグラシアスの交渉の腕の見せどころである。

 ケロベロスの強さをこの中で一番よくベルゼブルが知っていた。それを最大限に利用しようと、グラシアスは考えたのだ――ケロベロスは良い奴だ、だからこそベルゼブルもまさかケロベロスが天使側に寝返っているとは思ってもいなかった。そして、ベルゼブルの思考ではケロベロスが良い奴なのは悪魔の中でだけだと思っているに違いない。まさかこんなに天使に対しても良くするなんて、思ってもいないのだ。だからベルゼブルのその悪魔的な思考のミスにグラシアスは攻め込んだのである。

 ベルゼブルのその思考は悪魔的には正しい、むしろケロベロスが悪魔として異端な部類なのである――彼はただ地獄の魔神として産まれただけの良いヤツなのだから、この騒動に一番巻き添えをくらっているのは他でもなくケロベロスなのだとグラシアスは思っていた。

 だから、ケロベロスがこちらに協力している事をベルゼブルに何としても悟られてはいけないと、そこに一番重点を置き、ケロベロスの今後の安全な生活を大前提に交渉を始めた。その時グラシアスは自分自身も天使として異端な部類だと言う事に気づいた。何故ならこんなにも悪魔のこの後の居場所の事まで考えてこの危機を凌ごうとしているからだ。そんな自分にグラシアスは笑った。








其の四に続く――――。

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