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⑥章[リンゴトゥルー☆受け継いだ弾丸で戦え、天元! 鬼畜に利用された玩具のリンゴの生贄カウントダウンパーティを阻止しろ! 悲劇を喜劇に変える時――№4マジョルカジエンド] 其の二

⑥章


☆リンゴトゥルー☆


[受け継いだ弾丸で戦え、天元! 鬼畜に利用された玩具のリンゴの生贄カウントダウンパーティを阻止しろ! 悲劇を喜劇に変える時――№4マジョルカジエンド] 其の二









 №との因縁に終止符を打つため、僕はケロベロスがいない今、単独でクラブの中に乗り込んだ――敵が待つこの地で、スカルの体を取り返す為に覚悟を決めて中に入ると、黒ずくめの女が銃を2丁両手に持ちステージの上に立っていた。僕に気づくと彼女は笑い始めた。

「クククク……戻って来てみればリンゴちゃんがいないじゃない! せっかく生贄にする為に悲劇のヒロインに育て上げたのに……お前を始末しようと少し私が離れているうちに逃げられてしまったか……これじゃあ、天使の肉で作る肉人形が完成しないわ!」

「お前の思い通りにはさせないぞ! №4マジョルカジエンド! お前を必ずここで僕が倒して捕まえる……キスメットの肉体を返してもらうぞ! それが、ケロベロスが僕に託した未来だ! ケリをつける……かかってこい! 必ず救ってみせる……!」

「ふ~ん。いい目をするわねぇ~、主人公きどりの恥ずかしい目だわ! 肉人形の生贄はお前に変更だ、天元! さっきトラックの中では感じなかったが、今あなたからとても悲劇の匂いを感じるわ……さっきまでの短時間でどんな悲しい目にあったって言うのかしら? あれ? ケロベロスとか言う、私達が天使を悪魔に変えた時に、私の奪った肉人形ちゃんの親父を名のっていた銃が一緒じゃないみたいだけど、どうしたのかしら……まぁいいわ、死になさい……中二病主人公……お前には残念で悲劇的な死がお似合いだわ! クハハハッハハ!」

 両手にかまえた2丁の銃で№4は僕に容赦なく引き金を引き、牙を剥いた――№4の笑い声と共に悲鳴の様な銃声音が響き渡って、クラブ中を敵意の弾丸ミュージックが木霊した。その敵意の火花が僕に降りかかった。

 ケロベロスの弾丸は僕に優しく、いつも僕を守っていてくれた……。だけど、僕を襲うこの鉛玉は痛い……怖い、怖いけど……――弾丸を託して、僕に未来を託してくれた相棒……ケロベロスとの約束を破ってここで№の恐怖に平伏し……逃げる方が怖い! 僕はどんなに痛くても怖くても逃げない、そして……逃がさない! ケロベロスが託してくれた想いに応える為なら……いくらでもこのぐらいの意地を張ろう……そんな、中二病なセリフを頭の中で呟くだけで……漲ってくるんだ! 漲ってきたぜ……ケロベロス、ありがとう。

「お前のお陰で僕はもう一回り強くなれた……ケロベロス。お前の牙は僕が届ける! くらえ! №4! これが僕と……僕の相棒の魂の1発だ! お前が放った何発もの弾丸なんかより、比べ物にならないぐらい強烈な1発だぜ! 1発でいいんだ、僕達は! カラス!」








 ぞっとした! それが、弾丸を浴びようが真っ直ぐに進んで行き№4の目の前まで辿りついて、目を見てニヤリと笑い、手に握った弾丸を投げつけてきた天元の姿を見ての№4が抱いた衝撃の感想であり――狂気の覚悟を目の前に覚えた初めての恐怖感だった。

「ひぃ……ハハハ、こいつはやばい……初めてだよ、こんな気持ちは……体中が血だらけじゃないか天元……それなのに君は向ってきた……こんな人間の姿を見る事が出来た私はもしかしたら、幸せなのかも知れないな……お前の相棒とやらはさぞかし幸せだっただろうな……ちくしょう!」







 №4にカラスの弾丸が命中した――意識が遠くなってきた……やったよ、ケロベロス……僕達の勝ちだ。だけど……少しやられ過ぎた。でも、あと少しだけ無理をするとしよう。

 №4の魔力にカラスの弾丸が作用し、力を消耗した№4は女の体から元のちっぽけなリップクリームの姿に戻った。そして弾丸をあてた後に力尽きその場に倒れた僕の前にコロコロと転がっている。

「良い悲劇のヒーローだな……お前のお陰で私の魔力はもってかれた……絶体絶命だ。救えたか? お前が救うべき者達を……。守れたか? お前の相棒との約束を……。だけど、残念だ。この傷ではお前は助かるまい……結局私の好きなジ・エンドだ」

 リップクリームとなり転がりながらそう言うマジョルカジエンドに、僕は右手で最後の力を振り絞り『番犬』の弾丸を上から落とした――小さな№4を番犬の弾丸が拘束し捕まえる事に成功した……こうして、僕の役目は終わった。

「悲劇のヒーローか……カッコイイな僕……だけど、それは違うな、こんな報われて、支えられている僕はおこがましくて悲劇のヒーローなんて名乗れねぇよ……喜劇なヒーローだったよ、僕は……恵まれていた、怖いぐらい恵まれた日々だった……さようならだ№4……」

 僕は拘束した№4をブレザーのポケットの中にしまった――早く天国のオリハルコンにこの№を届けなければ……。だが、体はもう言う事をきかない。

「駄目だ……目が霞む……うん? な……なんで……」

 なんで……肉人形が動いているんだ――目の前に信じられない光景が映った。誰も生贄にされていない筈なのに……誰の魂も入っていない筈なのに、肉人形が動いている。そして倒れる僕の方へと近づいてきたのである。

 霞む目で何とか僕は確認した……そして、目の前の光景に納得し、安堵した――その肉人形は僕とケロベロスを攻撃してきたあの時の姿とは違った。

 肉人形なんかじゃない……天使だ! その美しい天使には翼があった! そして、僕の首もとが軽くなっていた! あの日から……スカルが僕を救ってくれたあの日から……肌に放さず身につけていたドクロのネックレス……そう彼女自身が僕の首もとから消えていた。いつも祈るように握って唱えた骨オリ……僕の縋った悪魔の魔力それを全て失った事に気がついた。

 目の前にいる天使の彼女を見て、その意味に安堵し、僕はゆっくりと意識を失っていた。

 僕がこの世で最後に目に焼き付ける事ができた光景が、僕と相棒が救おうとした最愛の天使の優しく、救いを感じる笑顔である事に感謝した――大量出血で体が寒くなり、心細くなっていた僕を救ってくれるその天使の笑顔を目に焼き付けて終われる最期でほんとに、良かった。と、遠ざかる意識の中で、そんな中二病なセリフを頭の中で呟けた事に、僕は満足した。











 目が覚めると僕が良く知る天国にいた。だが、いつも来る天国とは今回は意味合いが違うのだろう――そう、僕は死んでしまった……。今思うと、中二病を拗らせた恥の多い人生だったな、おまけに友達も多い方じゃなかったし、どうせ死ぬのなら相棒のケロベロスがいる地獄にでも落ちた方が死後の世界での生活が捗ったのに……折角、天国に来られたのにそんな罰当たりな事を思う僕は、天国に慣れ過ぎてその奇跡が当り前に感じるようになっていたのだろう、だから天国に召された感謝の気持ちを忘れて地獄行きを希望するなど、アバンギャルドな考えが芽生えたのだろう、そんな事を思っていると、1つの疑問に僕は気づいた。

 なぜ、僕はすぐに……ここが天国だと分かったのだろうか? いや、天国と言っても様々な場所があり、雰囲気が各々まるで違う。いくら僕が中二病を拗らせていると言っても天国を全て把握している訳ではない。そうだからこそ……その答えは単純なのだった、そう――僕が寝ているこのソファーはそして、上に見える天井は、僕が天国で一番見慣れているオリハルコン株式会社のオフィスの中の光景そのものであったからだ。

「おっ! 天元君、起きておったか! いやいや、よかったで、ホンマに。キスメットが力を取り戻せたから、その天使の力でお前さんの傷を癒してからとりあえずここに運んだんや! キスメットの魔力は癒しの魔法やで! お前さんすごい傷だったらしいんだが、なんとか傷が残らんよう治療できたみたいやで! そう言っとたわ、今はちょっと神様の元へキスメットは出てるんやけど、戻ったらお礼を言うとええや、まぁ……その前にお前さんに感謝するやろうな、なんせキスメットを救ったのは天元君、お前さんや! そしてケロベロス……あいつがいなければ、こうはいかなかったやろうな……聞いたで、ケロベロスの最期の事をキスメットにな、キスメットがスカルのネックレス時に何もできなかったみたいやけど、見ていたと言っとたわ、そして、わしもケロベロスの『ヘビ』の魔力から解放されて、色々思い出したわぁ……」

「お……忍足さん……本当だ……体の傷が治っている! 痛みもない! スカル……いや、キスメットか、良かった……やっぱり戻れたんだ。やったよ……ケロベロス……ありがとぅ……ありがとぅ……忍足さん、ケロベロスについて知っている事を……思い出した事を教えてください! 僕はケロベロスからあなたから聞くように言われました」

 目を覚ました僕に駆け寄ってきてくれた忍足さんが、体が無事な事に気づいて起き上がりソファーに座る僕の前に来て、ケロベロスの話を語ってくれた――過ちを犯し、苦しみ、苦悩の日々を送っていた強靭な気高き魔神の話を、僕の相棒の過去と、罪滅ぼしの話を語ってくれた。








⑥章


☆リンゴトゥルー☆


[受け継いだ弾丸で戦え、天元! 鬼畜に利用された玩具のリンゴの生贄カウントダウンパーティを阻止しろ! 悲劇を喜劇に変える時――№4マジョルカジエンド] 其の一








 お前なら託せる。俺の最高の相棒だからな……決着をつけて来てくれ、この物語を……お前と過ごしたこの日々を俺は一生忘れない――意識が朦朧とする中、そんな声が聞こえた。僕も同じ気持ちだよ……ケロベロス。僕はお前になら託せたんだ……行かないでくれケロベロス!

 暗闇の中でケロベロスが遠ざかって行くのが分かった……ケロベロスが暗闇に溶け消えると……辺りがだんだん明るくなった。そして、声が聞こえた。また会えるといいな――相棒、と。









 ピッカ!! 閉じた瞼に反射するストロボが、眩しい……――体がどこも痛くない、さっきまで全身を襲っていた痛みは消えて、目を開けると人ごみの山の中にいた。

 ここは、トラックから脱出した後の時間帯だ、リンゴちゃんが捕えられてまだ間もない。僕はクラブの場所をもう知っている! 急いで迎える絶好なポイントだ。

 そんな中、手の中を見ると、この時、確かに握っていた筈のケロベロスの姿はなくなっていた……。そして代わりに『ヘビ』『カラス』『番犬』の弾丸が僕の手の中に3発しっかり握られていた。

「ハッ!!――ケ、ケロベロスぅ……。本当にいなくなってしまったのか……嫌だ! やめてくれ……お前がいてくれたから今の僕があるんだ……お前がいない未来なんて、僕もう……つまんねえよ、怖いよ……死ぬことよりずっと怖い……会いてぇよ……ケロベロス……ゔゔ……」

 弾丸を見つめながら涙を流したが、ケロベロスが帰ってくる奇跡は起こらない――覚悟を決め弾丸を強く握り締め胸にあて、№4の待つクラブへとスカルの羽で飛んでいった。

「頼むぞ……ケロベロス! 僕に力を貸してくれ……お前に託されたこの未来、僕が必ず救いがあるものにしてみせる! さぁ……№達! これで最後だ……この長い因縁に僕が必ずケリをつけてやる……ケリをつけなきゃ……気が済まない!」

 クラブに到着すると、僕等を誘拐した太った男が入口に立っていた――僕は勢いよく男の前に着地し、驚いた表情の男に『ヘビ』の弾丸を思いっきり投げつけた、そして言ってやった。

「だからお前は! デブなんだよ! リンゴちゃんを開放して早くここに連れてこい! 僕達に二度と関わるな! 僕はお前の上司だ! お前は僕が言った事は絶対守る奴だ!」

「えっ……!? 上司って……俺がこのクラブの社長なんだが……えっ……なんだ……」

 男は一番上に立つ人物らしく混乱し始めたが、僕はケロベロスの残してくれたこの弾丸の魔力を信じて、一歩も引かずに騙しきるため声を荒げて続けた。

「言いか! よく聞け! だからお前は……デブなんだよ!! お前はもう社長でもなんでもないんだ、僕の部下のイベントスタッフ1号だ! バーカ! いいから早くリンゴちゃんをここに連れてこい! そしてお前はここから消えろ! 死ぬぞ、デブ! この中にリンゴちゃんがいるのは分かっているんだ! 直ちに解放しろ! ほれ、早く! 5,4,3、2、1!」

「わぁ! カウントダウンしないでください! わ……分かりました。今すぐ連れてきます……そして、私は消えればいいんですね? おぉー怖い、怖い。おい、お前ら早く連れてこい!」

 太った男はそう言うと、中から仲間を呼びリンゴちゃんを連れてこさせた――まだ生きていた! 良かったと、僕は胸をなでおろしていると……リンゴちゃんは僕に抱きつき泣き始めた。

「天元くぅ~ん……怖かったよぅ……すぐ助けにきてくれてありがとう……私は幸せだ……」








 この太った男にとって私は商品の玩具だ――私はこの男にこのクラブのDJになるよう誘われていた。

 最初は面白いと思った、色んな人を紹介してくれるし、読モの仕事もコネを使い増やしてくれたらしく私の周りは輝き出したと思った。いや……本当は暗い闇に迷い込んだだけだった。

 兎に角、私はお洒落な場所に行きたくてしかたがなかった、初めてこの男にクラブに誘われた時も私はいってみたくて、快くOKしてしまった。

 未成年がクラブに出入りする事は禁じられている、私は出来るだけ大人っぽい格好をして男に「煙草を吸いな、便利だから!」と、言われ煙草を吸って大人を演じた……。

 ところがその写真をとられ、私はこの男の玩具となってしまったのだ。言う事を聞かないとこの写真をばら撒くぞと、脅されている……ああ、私はバカだった、これで楽しい青春を全て台無しにしてしまうかもしれない、当然彼氏も作れない、私は奴の玩具なのだから、そう思ったらなんだか可笑しくなって、とても悲しくなった。

 私はこの悲しい思いを全て天元君に伝えた。すると、彼は微笑み、私を縛るこの男に言った。

「じゃあ、その写真返してもらおうか? そして、二度とリンゴちゃんの前には現れるな、僕の前にも現れるな……このゲスやろう! 今、僕は機嫌が悪い……早く写真をだせ!」

 天元君の表情にはとてもその時、凄味があるように感じた。そして男は写真を取り出し、天元君に渡した――私は開放されたのである、悲劇のヒロインから解き放たれた。

「これが写真です……あれ? おかしいな、懐に写真と一緒に入れておいた銃がない……うん? クラブの中に置いといた銃もないだと!? やばい、だれかに奪われたか……まずいぞ、お前ら! 急いで街中を探せ! 俺はクラブの中を……」

「待て! クラブの中は僕が探す……これは僕の戦いだ、お前はもう失せろ! デブ!」

 そう天元君が言うと、男は逃げるように去っていった――そして、天元君は回収した写真を破り捨て、胸で泣く私に優しく声をかけてくれた。

「リンゴちゃん、もう君は悲劇のヒロインなんかじゃない、これからは沢山の輝いた未来が君を待っている。君にはハッピーエンドが相応しいよ、後の事は僕に任せて、また明日学校で会おう! デート楽しかったよ、ありがとう! じゃあ、僕はまだやり直した事があるから、これから先は危険だからリンゴちゃんは付いてこないでね! 必ず無事に戻るから! 安心して」

 爽やかな笑顔で天元君はそう言うと『魔女の呻き』の中に入って行った――私は彼の願い通り後を追わなかった。

 明日また会えると信じて、私を救ってくれた王子様の言葉を信じた。短かったけど、こんな救われるデートをできた私は幸せだなぁ……と思った。ケロベロスが見当たらなかったが、それを聞いては何故かいけない様な気がして、私は走って家に帰る事にした。











其の三に続く――――。


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