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⑥章[リンゴバッド★ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の四

⑥章


★リンゴバッド★


[ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の四







「リンゴちゃん! そ、そんなぁ……うわああああああああ! だ、誰だ! お前は!」

 クラブの中のステージの上で、美しい女性は体中に血を浴びていた。そして、リンゴちゃんは血で染まり倒れていて、ピクリとも動かない――その隅で僕等を攫った太った男が震えながら縮こまり、顔を伏せて呻いていた。

「俺は悪くない……ゔ―ゔ―、なんでこんな事になってしまったんだ……あの女は何だ! ここは呪われている……俺も殺される! リンゴの様に……し、死にたくねぇよ! グハッ!」

 怯える男にステージにいた女性が銃を突きつけ弾丸を放った――男の頭に風穴があいた。

 返り血を浴びた女性が「ケハハハ」と、言う笑い声と共に僕らの方に近づいてきた、今まさに人を殺したばかりの銃を片手にゆっくりと歩きながら……それを見てケロベロスが震えて言った。

「キ、キスメット……天元! この女はスカルが天使の頃の体だ! №4に奪われたキスメットの体だ! それが動いていると言う事は……№4が肉人形を完成させたという事だ……肉人形には人間の命を生贄に捧げないといけない……リンゴの命が生贄にされてしまった……これが完成していると言う事は、もうリンゴは助からない……遅かったんだ、俺達は……」

「おい、な……なんだよ……それ、もうあそこにいるリンゴちゃんは死んでいるのか? 僕達が遅かったから……こんな悲劇が完成したって言うのかよ。なんだよ、それ……なんなんだよ!」

 冷静を保てずに僕は肉人形めがけてケロベロスをかまえると、肉人形が笑いながら僕の顔を覗きこんで、銃をむけた。

「ケハハハ……コワイカ? ニンゲン……オマエハダレモスクエズココデ……シヌ……ソレハトテモヒゲキテキデ……ステキナモノガタリ……オマエゴノミナエンディングダロ……」

 バキュン! と銃声が響いた――頭部を狙われて、撃たれた瞬間に咄嗟に反応した僕であったが、その一撃は僕の頬の肉をだいぶ掠め取っていき、僕の頭の中を恐怖でいっぱいにした。

「ぎゃああああ! 痛ええ……駄目だ……。僕はもう、死ぬ……スカルの体は壊せないし、リンゴちゃんは死んでしまった。に……逃げようケロベロスもう、ここまでだ……」

「天元! 大丈夫か!? ちくしょう……。よくもキスメットの体でこんな酷いことを……隠れている№4! 俺達は必ずお前を倒しに戻ってくる。これはなぁ……勇気の撤退だ!」

 僕は血が吹き出る頬を抑えて、肉人形に背中を向けクラブの出口へと、走り出し外に出ようとした。そして出口の扉にさしかかろうとした時だった――頭上から、黒ずくめの服装にハットをかぶった銃を持つ女が降りてきた。間違いない、こいつが№4マジョルカジエンドだ!

「リップクリームより、この姿の方がやっぱりいいわねぇ~、ケハハハ! お前らさっきは殺し損ねたからねぇ~! こんな所で帰らないでよ、まだまだまだ夜は長いんだから……ここはクラブよ! たっぷりと踊り狂いましょうよ! 音に合せてね! ミュージック、スタート!」

 バキュン! バキュン! バキュン! ズドドドドン! バキュン! バキュン! と、№4が前方から、肉人情が後方から僕に向けて銃を放った――その眩い火花の中僕は、銃弾を何発も体にくらいながらも頭だけは守り、生きる為……過去をやり直す為に、無我夢中でクラブの扉をこじ開け、外を逃げてスカルの羽を使い近くの一番高いビルの屋上へと飛びたった。

「ゲハッ! うっ……ゔ……ゔ……だめだ、死ぬ……撃たれ過ぎた……ケ、ケロベロス無事か?」

「ああ……天元が急いで逃げてくれたおかげでなんとか無事だ……助けられなくて、すまん……この体の俺は無力だ……ろくな戦闘ができない……本当にすまない、こんな痛い目にあわせてしまって、俺はお前の相棒なのに……」

 その場に崩れる様に倒れ込んだ僕はもう殆んど眼が明かず、体力も限界にきていた。

「もういいよ、ケロベロス……お前は僕の大事な相棒だ……もうどうせ、僕はすぐ死ぬ、最後の骨オリをするにはもってこいの命だ……雨……止んだなぁ……。ハハハ、見て見ろよケロベロス……僕らが二人では最後に目にする景気だ、雨で洗われた渋谷の夜景だ……こんな高いビルから見られるのは、羽を貸してくれたスカルのお陰だな、絶景すぎて涙が……でるぜっ!」

 ハハハ……僕が最後に見る光景が相棒と渋谷の夜景なんて、やっぱり僕はカッコイイな……とんだ主人公体質だぜ、神に愛されているなぁ……と、言う中二病な呟きを心に残した。








 衰弱しきった僕を見てケロベロスが語り始めた――これからの事、そして、これまで隠していた事を全て話さなければ、僕達はお別れできないからであろう。全ての秘密が解かれた。

「天元……聞いてくれ、俺が最後に話しておかなければならない話を……俺が犯した罪の話しと、そして……俺はお前を……皆を騙していたという話しだ……。俺の骨を使えと言った意味をお前に知ってほしい」

 な、何を言っているんだ……ケロベロス……。

 声を出そうとも、もう声が僕はでなかった――早く手紙を忍足さんに、そして石榑さんにも手紙を書かなければ……いや、もう大丈夫か……きっと、僕の相棒が全部話して上手くやってくれる……でも、手紙、最後に書きたかったな……死ぬ前に皆に書きたかった。スカル、モコちゃん、現先輩、メイカちゃん、リンゴちゃん……ああ……僕は幸せだったんだ、こんな可愛い女の子に囲まれて、こんな中二病ヒーローみたいなことができたんだからな……本当にスカルと、ケロベロスには頭が上がらないよ……ありがとう……。

 せめてこのケロベロスの話を全て聞いてから、お礼を言って骨オリをしよう。

「こんなボロボロになるまで……天元、お前はよく戦ってくれた! 俺は相棒としてお前を誇りに思う。そしてこれから話す事は俺からの最後の贈り物だ! お前は死ねない……こんな所で死んでいい訳がないんだ……。俺はお前や、スカルもとい、キスメットを今までずっと騙していた。途中、忍足はその事に気づいたのであったが、奴には悪いがお前に隠れて『ヘビ』の弾丸を使って騙してその事を隠し通した。だから、俺の本当の正体を知る者はいない……キスメットは悪魔に姿を変えられた時に記憶が曖昧になったから騙しやすかった。もちろん『ヘビ』の弾丸も使ったが、俺を親だと信じて疑わなかった。俺は……本当は――」

 ケロベロスは涙を流し、震えながら……だけど覚悟を決めた様子で僕に全ての秘密を伝えた。

「――スカルの親父ではない。天元の中にある骨は実は俺のものではない……。その骨は俺が昔に命を奪った天使の骨だ……そう、俺が殺したスカルの本当の親父の骨だ。俺は元から記憶もなにも失っていない……悪魔魔神ケロベロスだ。だから、俺の骨は今もまだ俺の中にある」

 ケロベロスがスカルの親ではない……それにスカルの本当の親を殺しているだと……ハハハ、なんて悪い冗談だ! こんな時に……僕が弱りすぎているからへんな気を使わせてしまったのかも知れない……僕は最後の最後の力を振り絞りケロベロスに微笑みながら声をかけた。

「ハハハ……。お前の冗談のお陰で覚悟ができた、やり直そう……後は頼んだぞ、ケロベロス、ありがとう。これは僕の物語だ、だから僕はここで死ななければ……いけないんだ! 未来はお前に託すぞ……。ああ、ごめんよ……モコちゃん。お兄ちゃん不器用だから、こんな方法しかもう浮かばないわ……さようなら……骨オ……!?」

 僕が最後の力でスカルのネックレスを握り骨オリの呪文を唱えようとした時――ケロベロスがいきなりスカルのネックレスを握る僕の手を撥ね退け、ケロベロスがぴったりと、スカルのネックレスにくっついた。そして、彼が僕の代わりに呪文を唱えた。

「ああ! そうだ! これは天元お前の物語だ! だけど……それと同時にこの物語は俺の償いの物語でもあるんだ! 安心しろ、俺は骨を失っても地獄に返るだけだ……何も失わんよ、これが俺のできる相棒への最後の贈り物だ……。なんとか俺の魔力なら弾丸3発ぐらいは置いていけるだろう……後は頼んだぞ、必ずスカルを天使に戻してやってくれ……それが唯一の俺ができる罪滅ぼしだ! ようやく全て打ち明ける事ができた……後は、忍足に聞いてくれ、奴にかけた俺の魔力が解ければ、奴が全て思い出す……色々奴には話しといた上で『ヘビ』を撃ち込んだからな、正解だった。これでやっと俺は救われた。ああ、幸せだった――骨オリ」

ゴリゴリギリバリ! ジャガジャガギリバリ! ――強靭な骨の折れる音が響き渡った。












★リンゴバッド★――完。

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