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⑥章[リンゴバッド★ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の三

⑥章


★リンゴバッド★


[ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の三





 太った男に捕まった僕は、そのまま担がれ外に連れだされた――荷物は取られてしまったが、ケロベロスは浮遊し、僕の傍にぴったりとついているのが分かった。声と、それに僕の頬にあたるゴツゴツとしたケロベロスの感触がそれを教えてくれた……って、言うか! 近すぎる!

「天元! このまま捕まったふりをして、あいつらにリンゴのもとへ案内させよう! なに!安心しろ、俺には全て見えているし、どうやらあいつ等には俺が見えていない。さっき感じた魔力はあいつ等からは感じない。だからいざとなったらこいつら程度なんざ、ヘビで騙してしまえばどうとでもなる……うん? トラックが止まっている。どうやらあれで向かうらしいな」

「ああ、わかった。ケロベロス、じゃあ僕はこのまま、あのデブが言っていたクラブとやらに着くまで大人しくしていよう。恐らく、リンゴちゃんもそこにいる筈だ……いない場合はすぐにヘビで吐かせよう……ここは僕一人逃げてリンゴちゃんの身に何かが起こるのが一番厄介だからな……」

 僕が小声でケロベロスに話すと、太った男が僕を担ぐ部下らしき仲間に命令を下した。

「おい、ガキをトラックに入れたらお前も見張り役で一緒にトラックに乗れ! 絶対に逃がすなよ! こいつは俺が飼いならし、ドラッグ漬けにするまで大人しくしていてもらう! 警察にもかけこめなくなるぐらいのドラッグ漬けにしないとなぁ! てか、殺すけどな! ふん、なんか小さく独り言を呟いているぞ……全く、キモイガキだな、おい、早くトラックに入れろ!」

「ヘイ、オヤビン! ヨイショ!」

 僕はトラックの中へと乱暴に放り込まれた――放り込まれた際に頭を強く打ち「ウゲッ!」と声がでた。痛いなんで……目が霞む……僕ばかりこんな目に……不幸だ……さっきまで、楽しくデートをしていたのに……楽しく? いや、そもそも楽しかったか……現に今こんな目に合って最悪じゃないか……暗い、怖い、寒い、うるさい……ん? うるさい? ……ハッ!

「おい! 天元! 聞いているか! おい! 天元! 返事をしろ! 目を覚ませ!」

「ケロベロス! いったい僕は今、どうしていたんだ!? なんだろう……不安な気持ちになって……そして、周りが見えなかった……うん? 顔の袋が取れている……僕を掴んでいた奴は何処にいったんだ!? うわあああ! な、なんだああああ!」

 突然、トラックが大きく揺れ、僕の体がトラックの中で転がった――すると、僕の転がって倒れた先に、先程まで僕を捕まえていた見張り役の男が気絶をして倒れていた。

「天元……お前がそいつにトラックに乗せられる前に俺が気づくべきだった……このまま運ばせようと、俺も油断していた。№の魔力に……ちくしょう! あの親玉らしきデブは他のルートで向かったらしく、このトラックには乗らなかったが、そんなのはどうでもいい……俺達と、そこにいる男の他に1人だけこのトラックに乗っている奴がいる……そいつが何故か……№の魔力を纏っている! 間違いない№4の魔力だ……そいつはさっきあの場所にいなかった……リンゴを誘拐した後このトラックの中で待機していたんだ……運転席に……。そいつが今、このトラックを運転している! こいつが放つ魔力の臭気で天元も、悲劇的な気持ちになるように、さっきまでおかしくなってしまっていたんだ! 目が覚めて良かったが……このトラックは№4が支配しているんだ! 早くなんとかしなければ! うわあああ!」

 またもやトラックが大きく揺れ、僕達はトラックの中を転がった――どうやら運転手は完全に№4の魔力にやられてしまった様だ。自ら事故を起こそうと言わんばかりの運転がそれを物語っていた。

 僕らは密室のトラックのボディに閉じ込められているが、トラックのキャブにいる運転手をどうにか正気に戻さなければならない。でなければ、こんなところでジ・エンドを迎える破目になる……ケロベロスを握り僕は立ちあがった。そして、弾丸を放った。

 先程まで気絶していた見張り役の男が立ちあがり、トラックのボディの後ろの扉を自らの屈強そうな身体を使いこじあけてくれた。そして彼はまた気絶したのであった――№の魔力の臭気と、この乱暴な運転による転倒で頭を打って気絶をしていたこのデカブツの彼を僕は利用した。

 気絶する彼の体に僕は『ヘビ』の弾丸を撃ち込んだ。「お前は気絶なんてしていない、この扉をこじあければお前の故郷に帰れるぞ!」と、何でもありのこの魔力で彼を騙して、トラックのボディの扉を開かせた。

 しかし、僕に騙された彼は先程の気絶とは違う満足そうな、表情を浮かべ気絶をしている。その笑顔をみて僕は必ずこのトラックから彼も救うと誓った。

「マミー、パピー、ブラザータチ……モウスコシデカエレルヨ……オカネタマルヨ……」

 と、言い残すと、彼は気絶した。そして彼が開いた扉から僕はケロベロスを握りスカルの羽を使いトラックのキャブの運転席めがけて飛びだした。

「まさか、ヘビが気絶している人間にも効果があるとはなぁ……誰だか知らないが、ありがとう異国の人! ゆっくりそこで休んでいてくれ、後は僕に任せろ! 行くぞ、ケロベロス!」

「おう! きっと、№は何か物に化けている筈だ、そこにカラスを撃ち込むぞ、天元!」











 暴走するトラックのキャブのドアの外になんとかしがみついた僕が目にしたのは、唇にリップクリームを塗りたくりながら、独り言を呟くホスト風の男の姿だった。

「あ~あ! リンゴちゃんのリップクリームは最高だなぁ!? ゲハハハハ! 油の中で一番うめぇわ! さっき誘拐した時に盗んどいて正解だったぜ! だけど、なんだろう……俺はこんなに満たされたのに……このリップクリームを舐めるたび、悲しい気持ちになる……しかし、このリップクリーム減らねぇ~な、あ~あ! なんか、全てどうでもいいや、こんなこき使われる人生なんて、鬱だしなぁ……ふん~♪ふふふ~ん♪リンゴちゃんぺろぺろ~♪そうだ今、俺は幸せだ……この幸せの内に死のう! ここで適当に事故って死のう! 肉の塊になろう!」

 常軌を逸する言動をしていた運転席の男が握るリップクリームめがけて僕はケロベロスをかまえて、カラスの呪文を唱えた――そして、ドアの窓の隙間からカラスの銃弾が放たれた。

「うわああ! あ、リップクリームが窓から飛び出した……なんかへんな感じがしたが、ひとりでにリップクリームが俺の手から飛び逃げた感じがしたぞ……うん? 俺はいったい、今まで何をしていたんだ……。たしかクラブにガキを運ぶよう頼まれて……うん? うわあああ! 危ねえ! ぶつかる! なんて乱暴な運転をしていたんだ、俺は! 死ぬ気かよ、止まれええ!」

 ケロベロスがカラスの弾丸を放った瞬間――運転する男が持っていたリップクリームが逃げるように窓から外に飛び出していった。そして運転手の男はリップクリームが手から離れると、まるで呪いから解けた様に我を取り戻し、運転する暴走トラックに急ブレーキをかけた。

 リップクリームがカラスの弾丸を避けた時、きっと何かの間違えだと思った――まるで僕達の事を知っていて対策は万全、あわよくばここで殺せたら良しと、いう考えで行動されていた様に思えた。

 否、そうなのであろう。あのリップクリームはリンゴちゃんが所有しており、僕は勿論の事、ケロベロスの事も見て知っていたのだ。僕達はご丁寧にリンゴちゃんに自己紹介もしている。リップクリームに化けた№が僕等を知るには十分な時間があったのだ。

 まんまと№には逃げられ、リンゴちゃんは何処かに連れ去られてしまった。原因は結論から言って全て僕にある。

 僕が№の事を積極的に調べず、デートを楽しんだ結果この最悪な事態になった――爪が甘すぎた。

 自分の事が僕は可愛かったのだろう……彼女に嫌われるのを恐れ、彼女に№が憑いているという危機を知りながら、僕は彼女との楽しいデートを優先として、№の事を少し後回しにした。慎重にやったと言えば聞こえはいいが、僕はきっと、楽しそうにする彼女に嫌われたくなくて、№の事を保留していたんだ……僕は最低だ。

 №に弾丸をあてる事に失敗した僕がそう自分を責めていると、トラックの急ブレーキで正気に目覚めた――このままでは振り落とされ大ケガしてしまう、僕とケロベロスはトラックの掴んでいたドアから手を離し、地面に着地した。トラックは僕達がいた原宿から渋谷のファイヤー通りまで移動していた。

 急ブレーキをかけて止まったトラックは電信柱にぶつかり、ゴミ捨て場に突っ込んだ。運転手の男はその衝撃で気絶し、トラックに乗る2人の男達は気絶状態だ。

 すぐに警察がやってきた、。僕はこんな所で足止めを喰らっている暇はない、リンゴちゃんの捕えられている場所まで行く手段も手がかりもなくなってしまったが、僕とケロベロスは、この騒ぎで集まったヤジウマに紛れてその場を後にして僕を攫った太った男が言っていた「クラブ」を探す事にした。リンゴちゃんがまだ無事な事を祈って……僕は渋谷を彷徨い始めた。











 携帯電話も財布もあの太った男に盗られた僕は、ただ渋谷中をがむしゃらに駆け巡る事しかできなかった――あの男を探し出しクラブにどうにか潜入しなければ、リンゴちゃんが危ない。そして№も逃がしてしまった事でもう彼女に何があろうとおかしくない……あの男とリンゴちゃんの関係なんて今はどうでもいい、ただただ僕は、早くリンゴちゃんを見つける為に街中のクラブと名がつく場所に向かった。

 トラックを離れてすぐに雨が降り出した。辺りも暗くなってきて、あっと言う間に夜の渋谷になってしまった。雨が僕の体力を奪う中、走り続けた。

「ちくしょう……いったい何処に行けばいいんだ……早く! はやくぅぅ……救いに行かないと……僕はいつもそうだ……。肝心な所でいつも負ける……初見で勝てない主人公なんてかっこ悪いよな……皆を痛いおもいから助けられないで、何が特別な存在だ……キモイな、僕」

「天元……お前は毎回よく戦っている……。今回も元はと言えば俺がぬるかったから、こんな事になってしまったんだ! 決して自分を責めないでくれ! もし、万が一の事が、リンゴにあれば……その時は俺の骨で骨オリをしてやり直すんだ、どうやら俺らはその運命らしい……」

「そうだな……その時は僕の中にあるケロベロスの天使の骨を使わせてもらうよ、酷い未来を生きるぐらいなら、潔く死のう。最後の骨オリと共に僕は死ぬ、その時は忍足さんと、石榑さんに手紙を書いて残すよ、悪いが引き継いでもらおう……その時はケロベロス! お前がその手紙を渡しにいってくれ、スカルは僕が救ってやりたかったけど、もうどうなるか分からない」

「俺が言ったのはそう言う事じゃないんだ、天元……実は俺は……うん? なんだ! 凄まじい魔力を感じるぞ! 向こうの方から……凄い魔力を感じる! 行くぞ、天元!」

「お、おう! №の魔力か!? あっちだな? 行こう!」

 僕はケロベロスが感じた大きな魔力を放つ場所へと向かった。そこにあった建物は、小さな箱型のクラブでまだ営業してない様子であり、明かりが全く点いていなく、近日オープンするとの張り紙が貼ってあり、クラブの名前は『魔女の呻き』と、書かれてあった。

「ケロベロス! ここで間違えなさそうだな! 行こう、必ずリンゴちゃんを救おう、そして№を捕まえスカルを天使に戻そう! 頼むぞ……ケロベロス!」

「おう! 天元、これが終わったら俺はお前に言わなければいけない事がある……俺が犯した罪と、そして……いや、今はいい! 行こう! 必ず救おう!」

「おう! 何か分からないが、後で聞かせてくれ! お前が居てくれたからこの場所が分かったんだ! ありがとう! お前に罪があるって言うなら、僕が一緒に背負ってやるぜ、相棒!」

 そんな会話を交わし、雨で冷え切った僕等はクラブの中へと覚悟を決めて入った――そして僕等は絶望する。

 目の前の……美しい女性と、その女性の足元で倒れるリンゴちゃんの姿を見て。








其の四に続く――――。


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