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⑥章[リンゴバッド★ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の二

⑥章


★リンゴバッド★


[ネガキャラ悲劇のヒロインジャンキーの生贄クラブミュージック! リンゴは何にも言わないけれど~♪理想のデートに辿りつけ! ――№4マジョルカジエンド] 其の二









 放課後のB組の教室――教室では、部活動に所属していない、もしくは今日は部活が休みで暇な女子達が何人か集まり雑談をしていた。その中に天元が迎えに来るのを待つ、形良リンゴの姿があった。

「えー! リンゴちゃんが放課後教室にいるの珍しい! 部活も読モのバイトも今日はないの? 多忙なリンゴちゃんがこんな実もない雑談に参加するなんて! きゃはははは」

 私はこういった女子のダベりにいつも参加していなかったのだが、今日の私はいつもとはテンションが違った! 天元君を待つこの待ち時間! この特別な時間にいつもとは変わった事をしてみたい気分だった。それにこのダベりを選んだという訳だ。

「今日は完全オフ日なんだ! まぁ、これからデートなんだけどね。えっへん!」

 恋話は女子の大好物だ、私の発言がきっかけで、一気に話しが盛り上がった。

「あへっ!? リンゴちゃんって彼氏居たの? あわあわ、これは大ニュースだわ! どこにデートしにいくの? 彼氏はここに迎えに来るの?」

「いやいや、まだ彼氏とかじゃないんだけどね、へへへ……実は人生初デートです! それも今日決った突発企画だ! とりあえず私のホームである原宿に行こうと思う! もうすぐ迎えにくると思うぞ」

「ヒューヒュー! でも、リンゴちゃんをデートに誘えるような顔のレベルの男子って、うちの高校にいたっけ? まぁいいや、それよりリンゴちゃん! リンゴちゃんがよく遊ぶホームは原宿だろうけど、リンゴの住んでいる家ってどの辺にあるの?」

「ん? 私の家か? 学校を出てロックカフェとコンビニを抜けた坂を下った焼肉屋の向かいの家が私の家だ!」

「え! 嘘! じゃあ、新しくできたあの通りのかき氷カフェを知っているでしょ! すごい! リンゴちゃんの家の近くだね! 私、前に彼氏食べにいったんだ! 奇遇だね!」

「奇遇? あ、ああ……奇遇だね、うん、あそこはいいよね! ハハハハ……」

「だよねぇ~! リンゴちゃんもデートでいけば! そうだ! 今から皆でいこうよ!」

 なんだろう、急にテンションが落ちてしまった。私はノリでなんとかこの場は話を合せたが、私はいつのまにか、この実もない雑談に全く興味が湧なくなっていた――それどころか、楽しいデート前の待ち時間にこんなくだらない時間を過ごしてしまい、私は自分を不幸だと思い始めた。なんで私は普段しないようなこんなくだらないダベりに参加してしまったのだろう。

 私は不幸だ……なんだ? かき氷カフェって……私は今からデートなんだ! そんなところにはいけないだろう……そうか、この子が言う皆には私は入っていないんだ! なんだ……この扱いは……不幸だ! それに地味に『彼氏と行った』とか言うワードで自分の格を上げている様で嫌な感じの子だ……彼氏と行ったのか、しかし私はそのかき氷カフェに行ったことがない、その前を毎日の通学で通るだけだ――不幸だ、なんの奇遇もない。頭がモヤモヤする。

 そんな風に私がネガティブな気持ちに落ちていると――私を呼ぶ声が聞こえた。

「リンゴちゃん……お~い! リンゴちゃんってば! ちょっと……リンゴちゃん! 大丈夫? 聞こえている? なんか、A組の変な男子がリンゴちゃんの事呼んでいるみたいなんだけど……まさか! リンゴちゃんのデートの相手って……嘘! あいつと!?」

「あ…ああ……ごめん! ぼっーと、していた……ん? ようやく迎えに来てくれたか!」

 そこにいたクラス中の女子達が驚く中、私を呼び、手を振る彼の笑顔のおかげでさっきまでの不幸な気持ちがなくなり――私は救われた。天元君はまぶしい優しい笑顔をする人だ。

「リンゴちゃん! お~い! お待たせ、タイムイズマネーだからね! 急ごう! ハハハ!」

「不幸だ! なにそれ……つまんな! フフ、天元君! 行こう、今日は沢山楽しませてねっ!」

 こうして天元がリンゴちゃんを迎えにくると、リンゴちゃんは雑談グループから抜け天元のもとへとやってきた――そして2人の初めてのデートが開演したのである。

 私は教室の女子達に別れを告げると、天元君の手を掴みそのままダッシュで教室を出て、廊下を駆け抜け、念願のデートに向かった――天元君の手を引き駆け抜ける私のスピードは、さすがに目黒の直線鬼の異名を持つだけはあると、自画自賛できる素晴らしい走りだった。これから私達がデートをするのだとは手座高校の生徒には殆んどばれる事なく高速の走りで学校を通過し……そして、私達はオシャレの聖地である原宿に到着したのであった。








「ケバブ! ケバブ! ケバブ! ケバブ! ナゾノトルコリョウリ! フシギナミセ! ケバブハウスダヨヲォォ! オオモリダヨ! オイ、イケメン! オオモリケバブタベテケヨ! ケバブオイシイヨ! オイ、ビジョ! オオモリニスルヨ!」

 六本木でも前にカジノ狩りの時に見かけたし、秋葉原や上野に遊びに行った時にも見かけた事があり、都内に広がる謎のトルコファーストフード店である、ケバブハウスの前で国籍不明な外国人のオジサン客引きに僕らは、たどたどしい日本語で声をかけられた。

「ケバブかぁ~リンゴちゃん! 折角だから食べてみない? 僕一度もケバブ食べた事がないんだよなぁ~原宿に来て早々に食べるべきものなのかは微妙だけど! ここは奢らせてよ!」

 今日の僕は気前がいいのには理由があった――勿論かっこつけたいと言うのが本音ではあるが、アルバイトもしていない僕が、余分なお金をもっている訳もないので、とても奢れる金銭感覚は持ち合わせていないのだが、放課後リンゴちゃんを迎えに行く前、僕は石榑鬼旗のもとに電話を入れていた。

 電話の内容はいたってシンプルなもので、№4がとり憑いた女の子らしき人物を見つけたと、言う事と、その子と今からデートに行くという2点の事だった――なんだかんだ石榑さんも僕の事を心配してくれる事があるので、取り急ぎ報告までに僕はこの事を彼に話したのだ。「ケケケ! 面白い事になっているね~ちょっと待っていてくれ、ケケケ」

 と、言い。学校の屋上で電話をする僕の居場所を聞くと、2分ほどで――ディスコネクトが飛んで来たのであった。

 手には石榑さんから貰って来たという、一万円札一枚、五千円札一枚、千円札、五枚の計二万円を握っていて僕に渡してくれた。このぐらいあればいいデートができるだろうと、言って石榑さんは電話を切った。僕はそのお金を有り難く頂戴し、二万円もあれば、今日のデート代は全てこれで賄えるだろうと言う余裕が、今日の僕は気前がいいと言う経済的余裕の正体であった。

「わ~い! ありがとう、ご馳走様! 私もまだケバブって食べた事なかった! 最近ここにできたんだよね、この店!」

 僕は財布から千円札を取り出し、ケバブを2つ買った。ケバブ屋のオジサンは大喜びでお金を受け取り僕らにケバブを渡した。

「オオ! オニイサン、イケメンデオオガネモチ! オオモリケバブフタツ! チキントビーフハカッテニチキンニシテオクヨヲォ! ソースハアマクチカラクチカンケイナシ、オリジナルソース、オオモリネェ! ケバブ! ケバブ! ケバブ!」

 そのケバブを片手に食べながら、僕達は賑やかな竹下通りを抜け、裏原宿に向かった――その道中、僕は彼女に№4について、こころあたりがあるか探りを入れたいと思っていた。

「ケバブって結構ボリューミーだね、野菜もいっぱい入っていて美味しいね、リンゴちゃん!」

「うん……ああ! ダメだ! それより、もう味云々じゃなくて、不幸だ……なんだ……あの店は……あのこんがり焼けて回転する肉の塊はなんだったんだ……」

「うん? 不幸って……どうかした? ああ、あの店先にあった、大きな肉の塊か! あの肉を削ぎ落して、パンに入れているんだろ? なんか不思議な事あったかな?」

 リンゴちゃんが僕の顔を、な……何を言っているんだ……こいつ! と、いうような顔で見てその不幸と彼女が嘆く理由を説明してくれた――。








「天元君は……気づかなかったのか? この不幸な私達に! 信じられない! あのケバブハウス! 明らかに私達の事を舐め腐っていたじゃない! 普通はあの肉の塊から削ぎたての肉をその場で削いでパンの中に入れてくれると、あそこで買う人全員が信じて疑わないと天元君もそう思わない?」

「うん……まぁ、そうだな。あの肉の塊から削ぎ落すのが美味しそうなところでもある料理だもんね、ケバブって」

「でしょ! なのに……あのオジサンは、削ぎたての肉じゃなくて……私達のケバブの肉は店の中の奥にあった炊飯器みたいのから取り出してきた、前に削ぎ落した肉を使っていたじゃない! これはとても不幸な裏切りだ……もうそれを見た瞬間から私は味とかどうでもよくなってしまったわ……不幸だ」

「ハハハ、そんなことぐらいで気をおとさないでよ! 大したことじゃないよ! 全然不幸の内にはいらないよ」

「うむ……そうかなぁ……最近、私は何かと不幸に見舞われる事が多い気がする。こんなことばっかりだ、まぁ……いいか! 今日は楽しいデートだしね! こんなトラブルに台無しにされたら、困るってね! 早く目的地に向かおう! この辺の筈だ」 

「トラブルって! 大袈裟だなぁ……。最近、不幸が多いのか……それってやっぱり。あ、ここじゃないかな? リンゴちゃんの行きたかったって言う、お洒落なクレープ屋さんって!」

 不幸に見舞われる事が多いと言う言葉が、この学園のアイドルであるリア充のリンゴちゃんからでてくる辺りやはり、彼女は№4に憑かれているのだろうと断定できた。どうにか彼女の中から№4を追い出さなければ――そんな事を思っていると、僕達は裏原宿に来た目的である、今、高校生達に人気のお洒落なクレープ屋さんに辿り着いた。

「ここ! ここだよ! ここのクレープとろけるんだって! 一度食べて見たかったんだよね! 一緒に来てくれてありがとう天元君!」

 店内に入ると――そこは甘さを感じさせるキュートな飾りや、店員さんが可愛く書いたお手製メニューのポップ付き各種クレープの見本が並べられており、木を感じさせるアンティークな家具達が囲む空間でキュートとアンティークの落ち着いた癒し空間がコラボし、ソファーが並べてあり中で食事ができる仕様になっている。可愛い店員さんがこれまた可愛い制服で、クレープを作っており、今まで僕が生きていた人生でここよりお洒落なお店は知らないと言っていいだろう、とても感じの良い店だ。

「良い店だね! まさか、学園のアイドルリンゴちゃんとこんな店にこられる日がくるなんて……絵に描いたような夢が現実で起きている!」

「も~う! 大袈裟だな、天元君は! で、天元君はどのクレープ食べる?」

「うん、そうだな~……あ、これにするよ! 『苺マシュマロホイップデラックスバニラの幸せチョコシロップのあったかふわふわ』ってやつにする! リンゴちゃんは?」

「なにそれ可愛い! えっと、じゃあ私は……あっ! この『がっつりWチーズピザポテトサラミマシマシにんにくカレーカラメアブラカタマリチョモランマ』に、し~よう!」

「ハハハハハ……え!?」

「え!?」








 な……なんだ! その、大行列ができそうなラーメン屋のコールみたいなメニューは!? そんなパワー系のクレープをリンゴちゃんは選ぶのか!? 僕みたいにメルヘンチックなメニューにしないのか!? そんな馬鹿な……デート中で来たクレープ屋さんで、そんなパワー系のクレープを選ぶ女子がいる訳がない! みんな、メルヘンチックに攻めるぜ! って感じのチョイスをするはずだ……。これは、もしや! 何かの間違えか? それか、リンゴちゃんの悪い冗談にきまっている! そうだ、ツッコミのチャンスを逃すな、天元!

「またまた~面白いな、リンゴちゃんは! ハハハハ、愉快、愉快。本当はこの『ぷるぷるキャラメルプリンアラモードチョコバナナマカデミヤナッツアイスのスプーンで食べるピラッミットクレープ』がいいんでしょ! 分かりやすいな~! よし、それにしよう!」

「いや、私は本当に『がっつりWチーズピザポテトサラミマシマシにんにくカレーカラメアブラカタマリチョモランマ』が食べたいんだ。それか、この『ソーセージにヴァイブス感じたからベーコンのカルボナーラとカマンベールチーズのせミートソースのWソースパスタ』がいいかな!」

「マジかよ! しかも、後者に至ってはクレープでもねえ! パワー系パスタもやっているのかよこの店は! リンゴちゃん! さっきケバブ食べたのにそんなにがっつりなのを選んでいいのかい? それにこのクレープ屋さんに来たかったんだよな? ならもっと可愛いのを選ばなくて悔いは残らないのかい?」

「いや、私はこういうがっつりとしたデザート感覚じゃないピザ系クレープしか頼まない事にしているんだ! 好きなのを食べない方のが、悔いが残ってしまうじゃないか!」

 キラキラとした目でそう言う彼女を見て僕は悟った――この子は素直な子なのだと、素晴らしい……誰にもできる事じゃない。他人の目を気にしないで俺流を貫く彼女に僕は感服し、僕の抱いた女の子はメルヘンチックなクレープしか頼まないと言う幻想を捨てた。

「よし、それならいいんだ! 買って席に僕が持っていくから、リンゴちゃんはどこかソファーをとっといてよ! 飲み物はタピオカミルクティーでいい?」

「悪いね! じゃあ、お願いします! 楽しみ! 席のソファー取っておくね!」

 僕らは役割分担をし、レジで分かれた――リンゴちゃんは店の窓際のソファーに座った。

 そして、彼女は天元を待ちながら今日1日を思い返した――ああ……やっぱり、私は不幸だ……折角のデートなのに……私と天元君はあまり趣味が合ってなさそうだ……不幸だ、なんで私ばかりいつもこんな目に会うんだ! 折角のデートで馬が合わないとは何事だ……不幸だ、不幸なのだが……なぜだろう……少し楽しい。

 そう思い更けて、惚気ていたリンゴが微笑んでいると、ソファーの隣に誰かが座った。

「お、天元君はや~い! もう買えたの? って……天元君じゃない……あ、あなたは……なんでここに……不幸だ……。なんで私ばかりこんな目に会うんだ……嫌だ……助けて天元君……ちょっと放して! 友達とクレープ食べに来ただけよ……」

「ふ~ん、友達ねぇ……。読モ仲間か? まさか……彼氏とかじゃないだろうね? それだと困るよ! てか、殺すよ! まぁ、いい……本人に直接聞いてみるよ、おい、お前ら! リンゴちゃんをクラブに連れて行け、俺はここに残る。それと暇な奴は手を貸せ……」

 クレープを注文する途中、僕は妙な気配を感じていた――誰かに監視されている様なそんな気配だ……。すると、鞄の中にいたケロベロスが僕に声をかけた。

「天元! №の魔力の気配だ! 何か起こっている……急げ! リンゴの元へ行くんだ!」

 予感は的中し、僕は注文の途中に列を抜け出し、慌ててリンゴちゃんの待つ席へと向った――そこには先程ソファーに座ったはずのリンゴちゃんの姿はなく、体格のいい太った髭面の中年男性が座っていた。

 そして、そいつは僕を見ると、不気味に笑いながら汚い歯を見せ、僕の前に立った。すると、咄嗟に僕は後ろからその男の仲間と思われる人物達に取り押さえられ、頭に袋を被され、拉致された。いきなりの事に混乱する僕を見ながら僕の前に立つ男が言った。

「ぐっ! なんだ、お前ら! いきなり……リンゴちゃんは何処だ! 放せ! お前達は何者だ! なんで……こんな事をするんだ!」

「君はリンゴちゃんのなんだい? フフフ……まぁ、いいや。よろしく……てか、俺は君を殺すけどな! おい、お前! こいつもクラブに連れていけ! 俺の大事な玩具に手を出したくそガキだ……ただじゃすまさねぇ!」










其の三に続く――――。


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