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④章[メイカバッド★テクノジャンキーのヘブンズドアでアキレス腱切り注意報! 体育祭で優勝目指せ! 電波を気にする天才の苦悩! 私は関係ない…… ――№1フランフォン]   其の二

④章


★メイカバッド★


[テクノジャンキーのヘブンズドアでアキレス腱切り注意報! 体育祭で優勝目指せ! 電波を気にする天才の苦悩! 私は関係ない…… ――№1フランフォン] 其の二






 5月20日 手座高校体育祭開催日――天気は雲ひとつない晴れ! 絶好の体育祭日和だ!

 そして、僕はと言うと……さっきまで地味に自分の出場競技の障害物競走を終え、後はぼっーと、しながら体育祭が終わるまで競技観戦に徹しようと、売店で買ってきたポテチとコーラを味わっていると――僕にとある呼び声がかかってしまい……体育祭最終競技である『男女混合各組代表4人のチキチキ500メートルリレー』の大トリであるアンカーをする破目に陥った……。

 なんで僕がこんな目に……僕はただ地味に……普通の人間でいたかったのに……でも仕方ない! 僕は選ばれし者なんだ! 今こそ力を解禁する時だ――そんな中二病な呟きを頭の中でして、僕は首にかかるドクロのネックレスを握りしめてから、バトンを妹から受け取った。

「さぁ! このエンゼル園の運動広場を貸し切って毎年行われる手座高校体育祭! 今年も沢山の生徒の保護者の皆さま方にも集まってもらい応援合戦が火花を散らしました! その楽しい体育祭もこの競技で最後……そして――アンカーの生徒は200メートルを駆け抜けます! 今年一番速い生徒はいったい誰なんだ!? いよいよ、3人目のトップがゴールし、4人目のアンカーにバトンが渡ったぁ! 1位でアンカーにバトンを繋いだのは……やはり白組だぁ! 1年生のスポーツ推薦入学の金木君、それに3年生の野球部、サッカー部キャプテンの大野君と杉山君の3人のリア充男子で繋いだバトンを最後ゴールに届けるのは……我が学園のアイドル! 女子に大人気雑誌チョキンチョキンガールの読者モデル! そしてその抜群なプロポーションを保つため、毎朝ジョギングを欠かさない、目黒川沿いをジョギングする保護者の方々はお馴染みでしょう! 独特なフォームで目黒川沿いの直線上に現れる最速スプリンター目黒の直線鬼に異名を持つは――形良けいりょうリンゴ選手だぁ! その1位の白組に遅れて2位でバトンを繋いだ対抗馬は……うん? わぉ! なになになに! 目黒の直線鬼に立ち向かうのは! 赤組3年現 アヤさんが体調不良、そして補欠でエントリーしていた生徒も欠場しておりまして……代打の代打として白羽の矢が立ったのが! 赤組でただ一人一つの競技にしか出ていなかった男! 羽屋里天元選手だぁ! 神々しいオーラを放って今、妹である一年羽屋里モコ選手からバトンが繋がれ、今、先行するリンゴ選手を追いかけます! 熱い! 熱いぞ! さぁ最後に笑うのはどの組みだ! 実況は引き続き私、氷見メイカがお送り致します」









 現先輩は意外にも足の速さがA組女子最速であり、僕と違って運動会では重宝される貴重な存在であった――№3を彼女の中から追い出していこう、彼女に恐怖を感じる生徒はおらず、鉄仮面のクールで優しく綺麗なお姉さんと、いったキャラで彼女はおさまっていた。

 障害物競走を終えた僕は、現先輩が出場するパン食い競走の観戦をしていた――現先輩は大トリの競技である『男女混合各組代表4人のチキチキ500メートルリレー』のアンカーを赤組代表として勤める為、足をタメとかないといけないとかいう理由で、他に出る競技はこのパン食い競走だけであった。この種目にはメイカちゃんも参加しており僕としては、観戦が楽しみな種目の1つであった。そのメイカちゃんが、まずはトップバッターとして現れた。

「なになになに! この私が最初の組みですか! リスナーの皆さん! 見えていますか! この競技も実況配信していきますよ~と、この競技はあそこにぶら下がる7つのパンの内1つを完食してからゴールに行くというものです! そのパンの中には1つだけ激辛唐辛子ジョロキアで作った餡が入っているパンがございます! ひぇ~、題して『チキチキロシアンルーレットパン食い競走』でございます! それでは私! 食レポの方にいってこようと思います!」

 そう言いながら、スマホを片手に撮影しながらヘブンズドアで配信を行うメイカちゃんがスタートした――その豊満な胸を揺らしながら、彼女は吊るされたパンに1番でかぶりついた。

「ぱっく……う……なになになに! これは……嘘でしょ! か、か、辛いぃぃ! 水、水! こんなの食べられるわけないわよ……うぅ……辛い! し、失礼しました! リスナーのみなさん……私、ジョロキアパンをツモってしまったみたいです……うう……」

 どうやらこの組みのジョロキアパンはメイカちゃんが当てたようで、それを見た残りの生徒たちは1口で吊るされたパンを食べゴールへと向かった――そのみんながパンを1口で食べる光景をメイカちゃんが見た瞬間だった……彼女は小さく拳をあげた。

「ブアアアアアアアアアアアアアア! フウウウウウウウウウゥゥ! ハァァァァ……」

 と、火を吹き気絶した生徒が現れた――その生徒は先程、パンを1口で食べた生徒の一人であった。その生徒を見て皆が呆気にとられている中、メイカちゃんはこの組みで1番にゴールテープを切ったのであった。胸を揺らして、イエイと両手でピースをしてゴールしたのだった。

 僕を含め、配信を見ていた誰もがその勝利に驚いた……たしかにメイカちゃんはジョロキアパンを完食できずリタイアになるはずだったのに、口から火を吹いた生徒が現れた瞬間、彼女は残ったパンをペロッと、食べあげ、皆の混乱する中、颯爽と1位でゴールしたのだからだ。

「なになになに! リスナーの皆、驚いたって? メイカちゃんのペテンにまんまと驚いてくれたか! ハハハハ! あの男子生徒にはジョロキアパンを1口で食べさせてしまって悪かったけどね、今回私が皆に伝えたかった思いは『油断大敵』って言う事だよ! そういう含蓄のある配信なんだよ、私の配信は! あーあー、パン甘くて美味しかった、ご馳走様でした!」

 そんな事を涼しく言って、彼女は放送部の実況席に戻って行った。自分がジョロキアパンを食べたとペテンをはり、油断させて誰かにジョロキアパンを丸のみさせて、異変が起きた事に皆が驚いているスキにクレバーにゴールを狙うなんて……恐ろしい事を考えるなぁ……。

 そして何もなかったように、実況席で今度は観戦実況配信をおこなっている。

「ジョロキアパンが当たった人は完食せず、リタイアしてくださいね」

と、涼しく言い。それからの組は皆恐る恐るパンの中身を確認してからゴールを目指す、チキンしかいないチキンレースになってしまった――しかし、最終組で登場した、我らの鉄仮面事、現先輩がそれを破ったのであった。










「さぁ! 最終組最後にどんなドラマを見せてくれるでしょうか……って、なになになに! 一瞬で決った……き、決ったああああ! 光の様な速さで体育祭の大トリのアンカーも勤める、我らのお姉様! 現先輩がクールにパンを食べて、完食し、ゴール! その無表情な綺麗な顔を見るからにはジョロキアパンではなかったのでしょう! 引きが強い! まぁ、私としては、現先輩が辛いものを食べて顔を乱す姿も見て見たかったのですが……流石、現先輩! クールでしたね! おや……どうしたんでしょう……現先輩に続いて他の生徒もみんなパンの中身を確認後、完食し、誰もリタイアせずにゴールです……。えっ、今、入りました情報によりますと……この組みの生徒は誰もジョロキアパンに当たってないそうです……おそらく、スタッフが入れ忘れたのでしょう……最後は意外な形で幕が閉じましたが……『チキチキロシアンルーレットパン食い競走』これにて、終了です! では、次の競技に移ります~……」

 電光石火の身のこなしで、ジョロキアパンを恐れずに一速く、ゴールした現先輩の美しさに誰もが見惚れパン食い競走は幕を下ろした。

 現先輩にお疲れ様ですと、一声かけようと僕は彼女を探すが、見当たらず、諦めようとした時――モコちゃんが、オーイと、手を振り僕の方へと近づいてきた。

「やっほ! お兄ちゃん! さっきトイレで現先輩に会ったんだけど、なんか調子が良くないみたいで、お兄ちゃんを呼んできてほしいと頼まれたんだ! 運動広場を出た所の自販機の隣のベンチで休んで待っているって言っていたよ! じゃあ! 伝えたから! よし、私も次の最終競技に第3走者として出るから頑張らないと! 足の充電もばっちりだし! でも……現先輩もアンカーとして出るのに大丈夫かな……パン食い競走の時はあんなに元気だったのにね」

「現先輩気分が悪そうだったのか……心配だな、急いでいってみるよ! モコちゃん! 最後のリレー応援してるぜ! 頑張れ! じゃあ、行ってくる」

 モコちゃんを激励し、僕は急いで現先輩の待つベンチへと向かった。

「現先輩どうしたのですか! こんなにグッタリしちゃって……さっきは元気だったのに……」

 ベンチには気分が悪そうにぐったりと、横たわる現先輩がいて、僕の方を見て安心したような顔をして、手を伸ばし僕の顔に触れて摩ると、僕にお願いをしてきた。

「悪いわね……呼んじゃって……お願いがあるの、羽屋里君あなたにしかできない事よ……」

「お願い? 何ですか、現先輩! しっかりしてください! 僕にできる事があるなら何でもいってください! どうしてこんなにグッタリしているんだ……なぁ! ケロベロス! この状況は、なにか№が関係しているのか!」

 僕はケロベロスを鞄から取り出し、尋ねると、ケロベロスはたじたじ答えた。

「いや、魔力は何も感じない、恐らくただの体調不良なんだが……いったい何があったんだ!」

 ケロベロスの問いかけに、現先輩がゆっくりと答えた。

「さっきのパン食い競走で……私はカッコつけ過ぎたのよ……フフフ、笑えるわ。実はあの時……私が食べたパンはジョロキアパンだったのよ……でも得意の鉄仮面で周囲を欺いて、何事もなかった様な顔でやり過ごしたけど……すぐに吐き気と、お腹が痛くなりトイレにかけこんだわ……そうしたら、この有様よ……恥ずかしいは、全く。恥ずかしすぎてこんな事は羽屋里君にしか言えないわよ、だから他の人には内緒にしていて頂戴……」

 そう苦しそうに言う現先輩を僕らはさっきまでのシリアスな展開が嘘の様な目で見つめた。

「そうですか。わかりました……お大事に! じゃあ、僕行きますね!」

「ちょっと、待ちなさい! 羽屋里君……まだ話は終わってないわ……羽屋里君! あなたにお願いよ! 私の代わりに最終競技のリレーのアンカーあなたがやって頂戴……」

「え!? いや、ムリムリムリ絶対無理ですよ! 現先輩! ごめんなさい! 勘弁して下さい! 他の人に頼んでくださいよ……」

「いや、無理よ……他の人にはジョロキアパンの話しなんてできないは……キャラが崩壊するじゃない……。羽屋里君……カジノでのあなたの言葉を借りる訳じゃないけど……あなたに任すわ……私はここまでよ……あなたがリレーで勝つの! 私とあなたで勝つのよ! 天元突破してちょうだい羽屋里君! 大丈夫、あなたなら勝てるわ……」

 そんな根拠のない、しかし僕には思い入れのある言葉で、現先輩が言うものだから、僕の心の中の中二病魂が疼き――調子のいい中二台詞を僕は吐いてしまった。

「現先輩……かっこ悪いよな、僕……このまま現先輩を見捨てて体育祭を最後まで地味にやり過ごすなんて……かっこ悪いよ……かっこ悪すぎるぜ! 大丈夫ですよ……安心してください現先輩! あなたは僕が救います! この体育祭の主役に僕がなります! 相手は恐らくですが僕と同じ2年の最強リア充のリンゴちゃんのはず! 相手にとって不足無しです! 天元突破かまして必ず勝ってきます現先輩! 最後の表彰式で会いましょう! では行ってきます!」

「羽屋里君……信じているは! 飛んできなさい! 中二の如く! 行け!」

 そんなこんなで、僕は上手く嵌められ……最終競技のアンカーとなり今に至った。









 一番インコースを陣取るリンゴちゃんこと、目黒の直線鬼がスタートをきった5秒後に僕にも2位の順位でバトンがまわってきた――僕には秘策があった。チート能力と言ってもいいだろう秘策が……僕は体育の時間に本気で走った事がない、まぁ厳密には体育で走る僕の速さは本気で走るのとそこまで大差がないのだが、僕は本気を出せば実はこいつは速いのではないかと、他人に思われたくて、いつも汗をかかない程度の走りを見せていた。なので、僕はそれを利用しようという事を考えた! ここでチェス盤をひっくり返すのである! 本気で走ったとこで、なんの覚醒もしていない僕は、リンゴちゃんに追い付くどころか……後ろで僕を追い抜こうとする各組の猛者にも抜かされるだろう……だからここは、現実的な僕とは離れるのだ! そう、特別な存在になった僕の使える力を使えばいいのだ! この№2から取り返したスカルの羽で飛ぶように加速して走ればよいのだ――そう、この翼が生えた姿は天使もしくは悪魔に触れた人間にしか見えない。恐らく殆どの生徒がこの僕のチートアイテムに気づかないだろう、即ちそれは僕の本気を初めて見てやはり速かったんだと錯覚するはずだ! 僕が覚醒したのだと、羽屋里は本気で走れば速いんだと、皆は思うしかないのだ! 最強のロジックだぜ。

「ごめん! お兄ちゃん! あと一人抜けなかった! 後は頼むよ!」 

「モコちゃん! 後は僕に任せろ! 必ず1位でゴールしてやる! いくぞ、ケロベロス! 不自然にならない程度に飛ぶように走るぞ!」

「待て! 天元! 何で俺を握っているんだ! 邪魔だろう! 鞄に入れとけよ!」

「いや、やっぱりこの羽で飛ぶ時にお前がいないと僕は心細い! 一緒にこのリレー勝つぞ! 200メートルもあれば5秒差ぐらいひっくり返せるはずだ!」

「まぁ……好きにしてくれ……だが、やるからには勝つぞ、天元! 行こう!」

 僕はスカルが眠るドクロのネックレスに祈りそして、翼を大きく羽ばたかせ前を走るリンゴちゃんを抜かすべく、モコちゃんからバトンを受け取りスタートした。

「なになになに! すごいぞ! すごい羽屋里兄妹! 妹のモコちゃんが3人抜きで一気に2位まで順位をあげて兄にバトンを繋げると! それに答えんとばかりの走りを天元選手は見せております! 速い! 速い! 飛んでいるような速さだ! 飛ぶように駆け抜けているぞ! リンゴ選手にもう少しで追いつきそうだ……残り100メートルのスプリント対決だああ! いったい勝つのはどっちだ! リンゴ選手その可愛い顔からは想像できないような、舌を出しながら体を大きく振り走るこのフォーム速い! 速すぎる! 必死に先行しております!」

「ゼェハァ! ゼェハァ! ガアアア! グアアアアア! グハァアァア!!!」

 と、雄叫びを上げるリンゴちゃんの本気スプリントは普段の彼女の印象からはとても想像できない、直線上の鬼そのものであった。

「ケロベロス! 絶対に刺すぞ! あと20メートルでゴールだ! うおおおお!」

 僕が両手を挙げながらゴールラインを切った瞬間――氷見の実況が悲鳴のように響き渡った。

「なになになに! か、勝ったのは……凡そ0.08秒! 天元選手の方が先にゴール!! 最後の戦い! 『男女混合各組代表4人のチキチキ500メートルリレー』を制し、両手を挙げたのは……赤組! 羽屋里天元選手だ! おめでとうございます! 皆様拍手をお送り下さい」

 僕はゴールした瞬間、両手を挙げ勝利を確信すると、その場に横たわり、息を切らした――するとモコちゃんと現先輩が来てくれ、タオルと飲み物をくれ、僕らは拳を合せた。

 形良リンゴも息を切らし、そして信じられない様な顔をし、近づいてきた友達に言った。

「ぜぇ……はぁ……私負けたのかぁ……って、ちょ、ちょと、待ってくれ、ぜぇ……ぜぇ……今私を抜かした彼……翼が生えていなかったか!? 飛んできて抜かされた様な気がしたぞ!」

 驚いたような顔で、そんな事を言う彼女に友達は笑いながら優しく言った。

「翼なんて生えてないよ? あ、リンゴちゃん言い訳なんてしなくていいよ! すごくかっこよかったよ! 速かったし! ただし、彼が速すぎたそれだけだよ! さぁ、表彰式行こう!」

「ハハハ、本当だ……なにも生えていない……羽屋里天元君か……速いな……覚えておこう」

 そんなこんなの体育祭もこれで終わり。表彰式も終え、結果はと言うと――僕達赤組は優勝を飾り、現先輩も喜んでくれた。代表としてメイカちゃんが優勝トロフィを受け取った。閉会式も終え、こうしてこの学校に入学して僕が学校行事で一番活躍した日が終わったのであった。

 余談なのだが、現先輩に聞いた話だと最後のゴールスプリント対決をみんな見ていたのは生のリンゴちゃんと僕ではなく、氷見メイカの配信の画面に映るリンゴちゃんと僕だったと言う。











其の三に続く――――。



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