表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

③章[モコバッド★悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の四

③章


★モコバッド★


[悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の四









「おっはよ~ん! みんな、今日は我が家の可愛い娘の高校の入学式だよ! 若い娘のだよ! きゃぴきゃぴのJKだよ! なんせ、今日入学するんですからねぇ~! 若いたら、ありゃしないよ! 若くて可愛いこの、旬な妹! お兄ちゃんも、お一ついかがですかい?」

 意外に早起きである僕が、モコちゃんより先に食卓に着き、朝食にありついていると、2階のモコちゃんの部屋から、モコちゃんが階段をご機嫌で降りて来て、僕に押し売りを始めた。

「おっ! 大将、やってるね! へぇ~、今日は入荷ならぬ入学式か、まったくめでたいね! 僕の愛でてきた妹がこんな立派になったのか……よし! 全部貰おうか!」

「お兄ちゃん! それはいくらなんでも、江戸っ子すぎるだろ! お一人様1つまでだよ! レア商品なんだよ! て言うか、やっぱり売らないよ! なんかしらの法律に引っ掛かるよ!」

 僕とモコちゃんが朝っぱらから、こんなコント染みた絡みをしていると、家族で囲む食卓が和んだ――一度は失ったこの団欒風景……。

 そこにモコちゃんが本当に返ってきた、そして僕も運のいい事に悪魔2匹に骨を借り、復活することができた――この恩を僕は返していかなければならない……そして、僕には非日常がこれから当り前のように続くのだ。スカルとケロベロスに出会ったあの日から、僕が日々妄想していた特別な人間、主人公補正のかかった選ばれし人間と言ったら大袈裟だろうが、これから僕を取り巻く世界は大きく変わるのだろうと思うと、不思議と不安はなく嬉しくて、妄想が膨らみワクワクして、本当に妹が生きている事の奇跡に感謝して、そして僕が今、生きている奇跡に感謝して……必ず、スカルとケロベロスを救うと覚悟を決めると、僕があまりにも恵まれている事に感激し、笑いながら少し涙がこぼれた。

「あ、お兄ちゃん! 泣いてる! そんなに妹の入学式が嬉しいか、そんなんじゃ、私が結婚式をあげたらお兄ちゃん笑いながら死ぬね! 笑いながら自殺しちゃうよ! 成人式でも笑いながら急性アルコール中毒で入院しちゃうよ! もう、お兄ちゃんは私に弱いんだから! って、あれ……なんだろう……私も涙がこぼれてきた――」

 モコちゃんの頬にも一筋の涙が流れていた――そんな彼女が、微笑みながら僕に言った。

「変なの、悲しくないのに涙が……あれ、嬉し泣きなのかな……てへぺろ! って……茶化さないね……ヘヘヘ、本当はね、今日、夢で私が死ぬ夢を見たんだ。そしたらお兄ちゃんが死ぬほど助けてくれたんだ……死ぬほど助けに来てくれるの、代わりに死んだりもするけど、そんな悲しい世界はやっぱり神様は許さなかったんだね、全て解決して、今日、私は元気で入学式を迎えられる。これもどれも夢の話しなのだけど、昨日は早く寝たから、夢なのだけど……朝覚めた時、私は涙をボロボロ流していたんだ……。夢のお兄ちゃんに感謝していた、ありがとうってね。今日、入学式が迎えられて今日という日が私にくる事はあたりまえなのだけど――そのあたりまえの奇跡に私は感謝しているよ。そんな清々しい気持ちだよ! そしてお兄ちゃんに感謝しているよ……ありがとう。私にこんな良い日をくれて、あたりまえのありがとうだ!」

 そんな感謝の言葉が僕の心を温かくした――片側だけ腰まで長く獣の手の形の様にハネ上がっている個性的な形で、前髪は短く可愛らしいアシンメトリースタイルのおしゃれさんであり、丸々と大きな瞳は優しく、そして健康そうな滑らかなボディーラインを持つ、僕の妹がそんな事を言うものだから、僕はさらに涙が零れた……。僕こそ、ありがとうだ、モコちゃん。

 こんな事があった幸せな朝食が終わると、モコちゃんと両親は入学式の支度にとりかかった。その隙に僕は簡単な身支度だけして、ケロベロスに話しかけた。

「さぁ、ケロベロス天国に連れてってくれ、今なら妹の入学式参列を上手い具合にバックれられる! どうやったら天国に行けるんだ?」

 自分の部屋に戻り、僕の部屋にいたケロベロスに、約束を守るべく天国への行き方を尋ねた。

「ふむ、いいのか? モコの入学式に出なくても……俺なら待てない事もないが……」

「いや、大丈夫だ。これから先は僕の優先すべき事はケロベロスとスカルを天使に戻すことだ。僕はもう十分幸せだ、入学式を見せろとまでは望まないさ、それは欲しがりすぎだ。僕の願いは全て叶った――さぁ! あとは、ケロベロスとスカルの願いを叶えることが僕の願いだ! そう心から思うよ……このドクロのネックレスに誓って、必ずスカルを救う!」

「天元……ありがとう、すまない! よし! 天国に行こう! ん……――おっ、来たか!」

 ダッダッ! と、僕の部屋の窓ガラスを外から叩く音が聞こえた――ここは2階だぞ……いったい誰が! 窓を覗くとそこには……。

「やっほー、天元君! 僕だよ! クリスマスはすっかりデーモンから助けてもらっちゃってありがとう! お礼に今日はお迎えに来たよ。さぁ、僕に掴まって、飛んで向かうから天国に」

 そこには、その純白の羽で飛び交う天使ディスコネクトの姿があった――ケロベロス曰く、スカルが前日、天国への迎えを忍足さんに頼んでいたらしく、その役目をディスコネクトが買って出てくれたのだという――にこりと、笑う彼女が窓から僕に手を差し伸べた。

 こうして、僕とケロベロスはディスコネクトに掴まり、部屋の窓から天国へと向かって飛んだのである――天使の羽を持っていれば誰でも上昇を3分続けると天国に行けるとの事だった。










 天元達が天国に行くところを部屋のドアの陰からこっそりと、見ていた者がいた――そいつの体は包帯でぐるぐる巻きにさせており、包帯の隙間からギラリと光る妖しい眼、鋭く尖った大きな牙が見えている。そして、そいつは天元達に姿を気づかれない内に仕掛けていた。

「がるるるぅ……俺が睨む限りでは、あの男の存在は俺がとり憑いた女を最高のミイラに仕上げるのに立ちはばかる……邪魔者以外の何者でもない。がるるるる! 邪魔はさせない……――まずはあいつの記憶から、妹が関連する物を全て噛み切ってやる……ちと膨大で、思いの強い記憶だが、今の俺はコンディションが万全なのだ! 魔力を最大限に使用してお前の記憶を頂くぜぇ……そして、お前の妹からも記憶を頂く! 噛み砕いてやる……運命とは残酷なものよ、変えたところで無駄、無駄、無駄! 少し遅れて絶望がくるだけで何も変わらないのさ、ついでにケロベロスの目的も噛み切ってやる! がるるるる! 俺達№はお前らごとき、いくらでも対処できるんだよ。忘れた記憶を果してお前たちは取り戻せるかな……ガブッ!」

 リビングデッド・ロストメモリー! と、そいつが呪文を唱えると、天元とケロベロスから記憶の欠片が扮した綿菓子状の塊が出てきた――二人はそれに気づいていない。天国に向って、今は天空を上昇しているので、落ちるのではないかと言う恐怖との戦い中で気づけるはずもない。速やかに、そして静かに記憶のかけらは、そいつの方へ行きガブッ! と、噛み砕かれた。

「がるるるる! 美味だな、これ! この№2マミーがるる様は無敵だ、お前らみたいななんちゃってヒーローにどうこうできる相手じゃない……さぁ、これをゆっくり食べた後はゆっくりと……ミイラ作りに安心して励むとするか! ガブッ!」

 そんな風に№2が仕掛けてきていたとは夢にも思ってない天空を上昇する天元達は、天国まであと少しの所まで来ていたのであった。

「おい、ディスコネクトさん! 絶対に手を離さないでくれよな! 落ちたら僕は確実に死ぬ……ん? ケロベロス、今何か変な違和感がなかったか……不思議な感じがしたんだが……」

「うん? そうか? あ、天元……それは俗に言う、タマヒュンとか言うやつじゃないか? おっ! 天元、見て見ろ! 3分経ったんだ! 着いたぞ……ここが天国だ!」

 3分間の空中上昇が成功し、天元とケロベロスは――天国のオフィス街に到着した。

「僕の役目は一旦ここまでだ、ここが目的地の株式会社オリハルコンだよ。忍足さんが中で待っている、さぁ行っておいで、また帰りは迎えにくるから」

 ディスコネクトがそう案内をしてくれ僕達はここに辿り着いた――とは言っても、何だ? このオフィス街は! 周りは見渡す限りのビル、ビル、ビル! って! 歩いている人達が天使になっただけで、現世と差ほど違いは見当たらない……しいて言えば、皆、羽を所有しているので車が通ってないと言った所だろうか、兎に角僕の思い描いていた天国とは異なっていた。

「ああ、ディスコネクトさんありがとう。行ってくる! ところでケロベロス、天国ってこんなにビルがいっぱいあるところだったんだなぁ……予想と大きく違ってびっくりしたよ」

「まぁここは、特別区だからな。天国にも色々ある、たぶん天元が思い描いている通りの天国も存在するぞ、ここはそういう不思議な世界なんだ。さぁ、中に入ろう」

 夢と現実がある場所こそ天国、そう僕は認識する事にし、ケロベロスと会社の中に入った。










 会社の中に入りオフィスを覗くと、オリハルコン株式会社の社訓が貼り出されてあった――『先制して上から殴る!』ふとその社訓を読み上げる声がした。

「これを守れればお前さんは最強や、おはようさん、羽屋里天元君。アドバンテージを取るには先をこされたらアウトや……相手より先制して上から殴れる知略、瞬発力が必要や、たとえば栄養ドリンクがいい見本や、タウリン1gをタウリン1000mgって書くだけで全然インパクトがちゃうやろ? それは店頭に並んだ瞬間から先制しとるってこっちゃ、そういう含蓄のある話やでこれは、申し遅れたわ、わしが忍足鋭兎と申すものじゃ、天元君、まっとたでぇ!」

 忍足鋭兎――でたらめな関西弁でヘラヘラと話すこの男がスカルの天使だった頃の上司であり、この会社での指揮を執る人物だという。僕の意識がある状態では、初めてお目にかかった。

「おはようございます! あの~いきなりで大変失礼なのですが、忍足さんって、もしかして現世のかたですか? 僕みたいにどうみても人間ですし……それに羽もついてなさいませんし」

 僕がさらっとそんな事を聞くと、忍足さんは笑いながら答えた。

「ゲラゲラゲラ! ホンマ鋭いわ、天元君! その通りや、わしは例外中の例外で常時天国に居て指揮をとっている、天国の会社で雇われているタイプの人間では珍しい仕事内容をしているんやけど、わしは元々、大阪で精神科医やっとたんやが、ある悪魔が、いや、ジャンキーが患者として、連れてこられてもうてのぅ……。色々あって廃業してもうたんや。でも、わしは廃業してからも、辛抱強うその患者について診察を続け、なんとか治したったわ。そしたらいきなり神様ってのが現れよってな、わしをヘッドハンティングしにきたんや、それで今のポストに至るちゅうわけや――まぁ、偉そうな事言ってしまったが、今回の事件で己の無能さをわしは知ったわ……。キスメットをあんな目に合わせてしまったあげく、見つけ出すのにもかなりの時間を費やした……ようやく天元君が鬼旗と戦っとる時に外でキスメットが悪魔にされた姿のスカルを見つけて、再会できたんや……。ホンマに申し訳ないわ、スカル……ごめんな、こんなドクロのネックレス姿にさせてしまって……わしも全力で天元君のサポートをさせてもらうわ! よろしゅう! ちなみに、鬼旗も何かあれば力を貸してくれるとのことや、天元君には感謝しとったよ……あいつは完全に悪魔に操られていたさかい、許してやってくれや」

 自分の経緯を語ってくれた後、忍足さんは神妙な顔をして自分のミスを反省しながら、僕に力を貸してくれる旨を伝えてくれた。

「わかりました! 忍足さん、僕はスカルとケロベロスを天使に戻したい! 協力よろしくお願いします。で……僕はいったい――何そすればよろしいんでしょうか?」

 忍足さんは二コりと笑い、立ち話も何なので、ソファーに掛けるよう言ってくれた。

「天元君、話はとても簡単なんやけど、えらい残念な話しなんや……心して、そしてクレバーに聞いて欲しい……と、その前にや、こいつの説明からやな! これが、わしの天国で支給された武器や! 題して、魔法のシャボン玉や――フゥーー、とな」

 突如、忍足さんは持っているストローを吹かし、シャボン玉を吹き始めたのだった――石榑鬼旗が能面だったので、物理攻撃主体の道具ではないかもしれないとは思っていたが、まさか忍足さんの武器がシャボン玉とは思いもよらなかった……。シャボン玉が武器ってなんだよ! こいつらは波紋でも練れるのか? 受け継がれし魂の誇り高き血筋なのか? 

 プカプカと、浮かぶ綺麗なシャボン玉をバックに――手座高校に降り注ぐ儚くて、恐ろしいそして、選ばれし境遇をもったジャンキー少女達を救うべく、その作戦が発表された。








「これ1回や……わしは№達との因縁にここ1回でケリをつけようと、思っとる。だからキスメットが居なくなってから残念な話しやけど、天元君が通う手座高校に№達を集めようとし、成功したんや。わしのシャボン玉は悪魔の餌や、どうやらこのシャボン玉は悪魔共にこの上ない中毒性をもつ匂いを発するらしい。だから、わしはこのシャボンで手座高校に№達を集めた。なぜ手座高校に集めたのかいうとな――№達は若い人間を好むんや、この絶好の条件で№達を全員駆逐する、そう考えたんや、そしてこの手座高校は日本で唯一、天国が経営している高校なんやで、だからこの高校で№達を集める事になったんや、そしてこの学校には近いうちにわしらの仲間になってくれであろう選ばれし少年が現れると、神様御用達の占い師である天使ヘブンスが予言したんや! そう、それが天元君、君ちゅうことや!」

「ぼ……僕が予言された選ばれし少年だって……なんだ、その中二な設定! 不運にも№達を呼び集める場所に選ばれた手座高校……それを救うのが――僕……いい! すごくいい!」

 忍足さんがヘラヘラとせず、真剣に今後の対応について語る。

「アフターケアとして、迷惑のかかった生徒やジャンキーになってしまった生徒には神様からそれなりの対価が支給される。学業のケアは勿論、退学には絶対させない、だから天元君! どんなやり方でもええ……君のやり方で、全員救ってやってくれや!」

 もとより僕も、何があろうと引くつもりはない――手座高校の生徒には迷惑がかかるだろうが、僕には好都合だ。そして、全員僕が救えば全く問題のない事だ……終わらすぞ! 僕の手で! どんな未来が待ち構えていようとも、僕は何度でも抗ってやる……骨が許すかぎり。

「よし、天元! 俺と天元で必ず№を捕まえよう! 忍足、話はそれだけだな! じゃあ俺達は現世に戻るぞ! 早速、悪魔狩りにいくぞ……悪魔を狩ればそれ相応の対価を忍足に言えば神様が与えてくれるとのことだ! 行こう、天元!」

「おう! 頼むぞ、ケロベロス! 早速、帰って悪魔狩りだ! では、忍足さんまた!」

 ガブッ! ご馳走様――その時だった。現世ではマミーがるるが、天元とケロベロスの記憶の欠片を全て平らげたのであった……そして、マミーがるるは、とり憑いたモコのもとへと帰って行った。そして、天元とケロベロスは大事な記憶をもっていかれたのだった。

「あ……ああ、そうや、悪魔を捕まえても神様から対価は出るが……お前さんたちは№に集中してくれ……って……もう行ってもうたか、若いのぅ……」

 この時、忍足は2人の切り替えの早さに妙な違和感を覚えたが、もう時はすでに遅かった――そして彼はもう1つ天元に本当は伝えたい事があったのだった。

「天元君……わしはあいつを知らんのじゃ――親父殿とか、悪魔になったキスメット、もといスカルは言っていたが……お前の親はとうの昔に亡くのぅとるやないか……地獄で仕事中に殺された『グラシアス』という天使だと聞いとったが……あいつは誰や……あんなのがそばにいとったら、わしもスカルがキスメットだと気づけんわけや……ケロベロス、お前は何者なんや」

 そんな伝え忘れた事を一人で呟く忍足の声は、誰にも届かなかった。

 そして、記憶が失われた事に、№2によって記憶の欠片が噛み砕かれた事に気づいていない天元とケロベロスは、呑気にディスコネクトに運んでもらい現世へと帰還した。

「よし、ケロベロス……まずは、どこから悪魔狩りをしようか?」

「天元! 恐山とかいう山があるらしいが、そこはどうだろうか!」

 二人の失われた目標に気づくものは誰もいなかった――スカルはドクロのネックレスの中こんな事が起きているとも知らず、ただただ、魔力が回復するのを待っていた。





其の五に続く――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ