③章[モコバッド★悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の三
③章
★モコバッド★
[悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の三
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ! って……痛くない――なんでだ? ハッ! 切れてなかったのか! いや、右腕の感覚がない……右目も……僕はどうなってしまっているんだ……死なないのか! こんな体になっても……」
右目の視界がない――僕は確かに石榑に斬られた。なのに、こうして生きている。僕の腕が斬られた時、ケロベロスは腕と一緒に転がっていってしまった。僕には今、誰もついていない。
「ケケケ、すごい姿だね、天元君! 君は死なないよ、厳密にはまだ死なない。これはデーモンの魔力を使った能力だからねぇ……君から右目と、右腕をディスコネクトの羽同様に奪っただけさ、ほら、君の目と腕はここさ! 僕の住む六本木ヒルズの部屋の水槽で、この腕と目を飼おうかな? ケケケ! 君とケロベロスと戦いたいってどうしてもデーモンがうるさいんでね、腕一本あればこの銃を握れて戦えるだろ? 生憎、きき腕ではなさそうだけど、ケケケ」
僕の左目の視界からいきなり石榑は姿を現し、僕の右手と右目を地面に投げた――そして、石榑は足元でケロベロスをスタッズの沢山付いた靴で踏みつけていた。
「天元、大丈夫か! 俺とした事が……まんまと罠にはまってしまった……おい! 石榑お前はやはり悪魔にとり憑かれていたのか……それも、デーモンなんかに! ちくしょう!」
「フフフ、久しぶりの再会なのになんかとは失礼じゃないか、ケロベロス! 俺の事を覚えていてくれて光栄だ! まさかこんな所で会うとわねぇ、現世にお前まで来ているとは思わなかった――俺は『上級悪魔でもどこでも行ける変身セット』を使って地獄から現世に遊びに来たんだが、お前は何でそんな格好でオモリなんかしているのだ? 昔からモノ好きな奴だとは思っていたが……まぁいい、これも何かの縁だ。地獄トーナメント以来の再戦だな! お前その姿でも戦えるんだろう? まぁ、今度は俺が勝つからな! でもがっかりさせるなよ、俺のとり憑いたこいつもまぁまぁ強いぞ、お前の方のその死にかけの少年はいかがかな……フフフ」
「おい、デーモン。悪いが俺は今、お前とやり合って地獄に帰る訳にはいかんのだ……俺はまだ現世でやらなくてはならない事があるんだ、キスメットを救わないとならんのだ、それがグラシアスに俺ができる唯一の罪滅ぼしなんだ……今は見逃してくれ、頼む、埋め合わせはする」
「フフフ、駄目だね。俺は今、お前はと戦いたいんだ。こんな姿でお前と戦うなんて、滅多にできないからな――そんな面白い戦いお預けにできるか! まぁ、お前がもしも、俺に勝てれば地獄に帰るのは俺の方だ……勝てるよう頑張りたまえよ、ケロベロス! さぁ次で決着だ!」
ケロベロスはこいつを知っているみたいで、日本刀の悪魔と喋っている。もう、この戦いを終わらせるにはここで勝つしかない手段はない……。ケロベロスはスカルを天使に戻したい、そして、僕はモコちゃんを死の運命から救いたい――僕達はこんな所で負けられないんだ……手がなかろうと目がなかろうと、まだチャンスが残されているのなら、僕らは戦うんだ。
「石榑鬼旗! その足を退けろ! あとそこの性格の悪そうな日本刀! こっちにきやがれ、クソ悪魔! この僕が相手だ! 必ずお前を倒して僕は救うんだ……全員!」
中二病な僕が、この恐怖でいっぱいの状況で強がる正義の台詞を吐く事で、その恐怖心を捨てて自分を無理やりクレバーにもっていった。こんな時こそ、こちらは冷静になるべきなのだ。
「ケケケ、なぁ~デーモンこの少年面白いなぁ! よし、最終決戦だ……銃を拾いな!」
「フフフ、実に減らず口な人間だ……こいつは粉々に切り刻んでそのまま生かそう! その方が面白い――さぁ、ケロベロス。今の俺ができる最高の戦い方で徹底的に叩きのめしてやるよ!」
ニッタと、笑う石榑鬼旗とデーモンが黒い霧となって消え、姿を消した。僕達の周りを黒い霧が包み始めた――僕は残った左腕で地面に落ちた相棒を拾った。突如、現れた黒い霧そしてその中に姿を消した石榑鬼旗、この未知の相手の行動に混乱しないように、そして、負けないように、魂の思いを言葉にこめてケロベロスに僕の思いをぶつけた。
「頼むぞ……ケロベロス! 今、勝つんだ。今、僕らで未来を変えるんだ! 結末を変えるぞ!」
「おう、天元! デーモンを捕えたら『カラス』と呪文を叫べ、恐らくチャンスは1度きりだ!」
僕とケロベロスVS石榑鬼旗とデーモンの悪魔と人間ペア同士の今宵最後の戦いが始まった。
徹底的に叩きのめす――狙った獲物は逃がさない、情けをかけない、そして油断をしない。先の手を読み、それに対応できる準備をする。不意討ち、追い討ち、だまし討ちと言った石榑鬼旗の専売特許の戦闘スタイルは全て読み切ってこそ光るのである。
どんなに相手に勝てる自信があろうとも、相手をベストの状態では戦わせない、削るだけ削って、疲れるだけ疲れ果てさせて、混乱させるだけ混乱させて、恐怖を与えるだけ与えて、そのものとで、戦うのである。
今回も石榑鬼旗の戦い方は自分の売り文句通りであった――羽屋里天元の右側の視界を奪い、右腕での行動も奪った。そして散々狂気をみせ、一番戦いやすい自分のホームの結界で戦っている。この結界の中では石榑鬼旗はデーモンの魔力を使い霧隠れができるのである。それゆえ何処から攻撃が飛んでくるか全く分からない状態で、囲まれている状態で、天元達からの攻撃手段がない状態で、天元達からは見えないが、石榑鬼旗からは様子が丸見えの状態で、天元達は戦わなくてはならなかった。この全てにおいて爆アドの状態をつくるのが石榑鬼旗である。
「いったいどうなっているんだ……この霧は……石榑はどこからくるんだ! くそ! なんだかこう、四面楚歌をくらっているみたいだな……こっちからは攻めようがないし……どう!?」
僕がどうする? と、言いかけた瞬間だった、ケロベロスが声を張り上げた。
「天元! 後ろ、後ろから来ているぞ! もう無理だ! 避けられない……歯をくいしばれ!」
無法者の一撃が僕へと迫った時、結界の外ではディスコネクトがスカルに石榑鬼旗の話をしていた――この石榑鬼旗という男、悪魔に完全にとり憑かれている。
こんないじめの様な事をする石榑鬼旗だが、元々の石榑鬼旗は気の良い優しい男だったという。それが今や、見る影もなく残酷で卑劣、そして欲深い男になってしまったというのである。全てが狂ってしまったのはあの日本刀に触れてしまいデーモンと出会ってしまったからだとディスコネクトは話す。
「僕が鬼旗と出会ったのは元々、僕が調査していた悪魔がとり憑いた先の人間が鬼旗の親友だったんだ。その人を助け出すため鬼旗は色々な行動を起こしていた――悪魔に憑かれ豹変した鬼旗の親友は、周りの人にもうこんな奴とは関わらない方が身のためだと見捨てられ、誰もが変わり果てた鬼旗の親友を気味悪がり相手にしなかった。だが、鬼旗は違った……親友がおかしくなった理由を追及したんだ。周りの人達にはそんなものはない! 無駄だからやめろ、お前もあいつにはもう関わるな! 殺されるぞ! と言われても、あいつはそんな奴じゃないと鬼旗は言い、親友を絶対に見捨てなかった。その執念と思いが重なって奇跡が起きたんだ――そして、神様が僕に言ったんだ、あの青年と仕事をしてこいと。そうして僕と鬼旗は出会った」
そう石榑鬼旗との出会いの話をするディスコネクトにスカルが尋ねた。
「その親友はどうなったのだ! まさかこの話がデーモンと関係あるのか? デーモンといえば有名な上級悪魔だぞ! そんなのを相手にして、もし日本刀にでも封じ込めたのなら石榑鬼旗はただ者じゃない! むしろヒーローだ! あの日本刀は手強いが本来のデーモンの力には遠く及ばない魔力だったからなぁ!」
「スカルちゃん……残念だが、封じ込めたとかそういう話じゃないんだ。勿論、親友は僕と鬼旗で救ったよ、だけどそれにデーモンは関係ないんだ――そのあと鬼旗を僕らの会社で正式に雇う事になったんだ。僕と鬼旗のツーマンセルで悪魔を狩っていたある日、とある悪魔を倒した時、地面からあの日本刀が出てきたんだ。僕はそれに触らない方が言いと言ったんだが、鬼旗が『大丈夫! RPGなんかでは敵を倒すとアイテムが出てくるのは常識だからね』と言う意味不明な理屈であの日本刀に触れてしまったんだ……そしたら鬼旗は豹変してしまった……」
ディスコネクトが悲しげにそう話すその女子会に、2人の背後からとある男がやってきた。
「そのはなしホンマか……えらいこっちゃ! 鬼旗をはよ助けんとなぁ……と、その前に……えろう待たせたなぁ……やっと見つけたで――キスメット」
外でこんな女子会が開催されている事も露知らず――ケロベロスの声により僕が石榑の攻撃がくる事に気づいた途端だった……時、すでに遅く鬼の形相で目を光らせた石榑鬼旗が大きく蹴りを振り上げたのだった。
僕の背後から恐らくディスコネクトの羽を目一杯に使った低空飛行で最高速を飛ばしての助走をつけたであろう、その蹴りは僕の背中にクリーンヒットした。あえて日本刀でケリをつけにこないで、まずはジャブからと言わんばかりの攻撃だった。徹底的の石榑鬼旗だからこそのまずは様子見の攻撃と、言ったところだったのだろう。
「うっ!! ぐあ!!! がはあああああぁあっぁあ……」
ドドドドドドドドドドドドドドド! ズッドン!! と、僕は壁まで豪快に蹴り飛ばされた――体中が痛い……絶対に肋骨も何本かやられている……僕が当たった衝撃で壁のステンドグラスが割れた事がこの蹴りの破壊力を示している。
ステンドグラスの破片がいくつも、僕の体に刺さってしまい、切ってしまったカ所の出血が酷い――そんな中僕が大事に左手で握りしめるケロベロスが、大量出血で頭が冷えて、逆に冴えてきた僕にヒントを言った。
「天元、大丈夫か! だが攻撃する瞬間、石榑は姿を現したぞ! これは反撃の大きなヒントになる……奴はこの空間では霧になれるが攻撃する時は姿が現れるんだ……天元しっかりしろ! この情報が俺達に知られた以上……次の攻撃で奴は決めにかかってくる筈だ……そこを討てるかが、俺達の勝ち筋だ……お前に任せるしかない……立ってくれ! 天元!」
「僕は大丈夫だ、ケロベロス……さぁ、ゲッホ!! 絶体絶命だが……ウエッ! 一点読みで……確実に1発当てるぞ! 石榑は僕達を徹底的に叩きのめしにくる! そこを狙おう……お前の力が必要だ……頼むぞ、ケロベロス!」
ケロベロスは天元が考えている事が解った――天元の心はまだ折れていない、眼がそれを物語っていた。残った左目は希望に満ちた良い眼をしている……この読みに全てを賭ける!
「おう! 勝つんだ……俺達の未来を繋げる為に……そして、妹を救いに行くために!」
ケロベロスが天元に応えると――天元はゆっくりと、立ち上がろうとした、その途中だった!
「カラス! とらえた……僕の勝ちだ……はぁ――」
と、呪文唱えた。ケロベロスが弾丸を撃ち込んだ先は――日本刀を振り降ろす瞬間の動きをとっていた石榑の握る日本刀の姿をした悪魔『デーモン』だった。
「な……なんで、俺が出てくる場所がわかったんだ……かっ……――」
バン! と、弾丸が命中したデーモンの日本刀は粉々に砕け散り、黒い霧となり消えた。
「――はぁ、はぁー、勝ったんだ、僕達……終わったよ! やったよ、モコちゃん……良かった……これで……これでモコちゃんを助けられる……僕は運命に勝ったんだ……」
「天元、良くやってくれた! 徹底的に叩きのめす――まさに石榑のその言葉を信じた天元の勝利だ! 敵の事を信じられた天元の大勝利だ! これで、モコを救いに行けるな……」
石榑鬼旗の戦闘は完璧である――上手すぎる、上手すぎるゆえに読めた一手を突き弾丸を撃ち込めたのである。手負いの僕が立ち始める瞬間の僕の右の視界――その奪われた見えない視界に向かって僕は最高のタイミングで、そしていかにも相手に気づいてないフリをして攻撃を誘ったのである。右死角から徹底的な攻撃をしてくると予測がつけられた石榑鬼旗を狙ったカウンター作戦だった、その作戦は見事成功した。
とことん徹底した相手の弱点を突く石榑鬼旗の戦闘スタイルを見逃さなかった。そして天元がどんなに手負いの状況でも悪魔にとり憑かれた石榑は最後まで徹底した攻撃をしてくると天元は彼と悪魔を信じた。そしてズバリ的中した。
「フフフ、とんだ人間だ! このデーモン様が読まれるとわねぇ……ケロベロス、お前は実に面白い奴と一緒にいるなぁ! 羨ましい限りだよ……じゃあ、負けた俺は仕方ないから地獄に先に返るとするか……ケロベロス、お前もさっさと帰ってこいよ、次はトーナメ……おっともう、魔力がねぇわ……それじゃあ、あばよ!」
黒い霧からそんなデーモンの声が聞こえたが、直ぐに霧が晴れその霧がなくなると同時に僕の斬られた右半分である、目と腕が戻ってきた――同時に刀が粉砕された瞬間に気を失って倒れた石榑鬼旗の背中から羽が消えた。どうやら、ディスコネクトに戻ったのだろう。
「よし、決着もついたし……スカルの元へ……あ……あれ……体が……」
僕の体は戻ったものの、切り傷による大量出血と、体の至る所を負傷している僕は、そのまま力尽きた様に石榑鬼旗が倒れる横に崩れ落ちた――体が思うようにもう、動かない……。
「おい! 天元! 大丈夫か! 返事をしてくれ! 頼むから死なないでくれ! おい天元!」
ケロベロスが必死に僕の名前を呼んでいるが、もう返事をする気力すら残っていない――安心してくれケロベロス……僕はまだ死なない……モコちゃんを助けるまでは絶対死ねない……。
「こ……これは! 鬼旗の方は気絶しているだけやからまだしも、こっちの天元君とか言う少年の方は、ちとヤバいかもしれんなぁ……アカン……残念やが、かなりの深傷や……このままやと死ぬで……しかし、唯の人間がこんなになるまでよう戦ったわぁ……尊敬するわ、ホンマ」
メガネを掛けていてカラス色の髪をしている細身のスーツを着るエセ関西弁をしゃべる男が倒れている天元と石榑鬼旗をみながら頭を抱えてそう言った――戦いが終わった後すぐに、スカルとディスコネクトそしてこの謎の男が結界の中に入ってきてケロベロスがいる2人が倒れる場所に駆け寄った。天元は辛うじて息はあるものの、呼びかけにはもう応じられない状態だ。
「忍足さん! それは本当か……うゔ……くそぅ……天元……こんなに頑張ってくれたのに私は天元に別れの言葉も言えないでバイバイなのかよ……う、うゔ……涙が……ちくしょう……」
ボロボロの天元の姿を見て、崩れ落ち泣きじゃくりながらそう言うスカルに、ケロベロスが寄り添って今、自分達が天元にしてやれる事をスカルに伝えた。
「スカル……天元は最後まで必死に戦ってくれた……そして、俺達の未来を変えてくれた。№を追える機会を与えてくれた。お前はこれからきっとこのチャンスを無駄にはせず天使に戻れる。さぁ……次は俺達が天元との約束を守る番だ――スカルの骨オリの魔術を使ってくれ、天元がまだ生きているうちに、天元の骨を使って彼が歩んできた過去へと飛ばしてやろう、そして天元の願い通りに、妹を救わせに行かせてやろう……俺達にできる事はそれだけだ!」
ケロベロスがそう言うと、スカルは頷きながら――歯を食いしばり、そして涙を止めて立ち上がり、微笑みながら手を広げ天元の体に呪文を放った。
「ありがとう天元……そして、さようなら。骨オリ――――」
バキボキバキ! ボキバキボキ! ――骨の折れる音が響き渡った。
「ハッ! あれ? 生きているぞ……ピンピンしている! え、あれは……――モコちゃん」
辺りは暗く、目黒川に咲く桜が綺麗だ。さっきまで傷だらけだったはずの僕なのだが、見る限り、今は傷一つない。そしてみんなの姿も見当たらない……。ケロベロスもスカルもデーモンもディスコネクトも石榑鬼旗もここにはいない。いるのは……本来いるはずのない――僕の最愛の妹であるモコちゃんがいるだけだった。
モコちゃんと深夜徘徊にでたあの忘れられない日の……この日の僕のままで、僕は今ここにいる――ありがとう、スカルとケロベロス、約束を守ってくれたんだな……本当にありがとう。
「なぁ、モコちゃん……元気でね」
僕はそう言うと、犬を助けようと道路に飛び出そうとした妹の後ろ髪を思いっきり引っ張り、道路の端に引き戻した――その瞬間だった、僕が救う役目を終えた瞬間、僕の体の中の全ての骨が折れ、対価として消えたのであった。僕は死んだのか……。だけど、良かったよ……モコちゃん。これで良かったと、僕が心から思った時はもう、僕は地面に散乱する肉辺なっていた。
もうなにも感覚がない……。何も感じる事のできない空間……これがこれから永遠と続くのだろうか……と、覚悟した時、感覚のない筈の僕を温かく包む神々しい光が現れた。
「誰が僕の中に――僕の生肉の中に骨を入れてくれたんだ……」
突如、戻った感覚。そして復活した事への驚き、いくら輪廻転生だとしても早すぎる戸惑い、それを全てひっくるめて吐きだした言葉、感謝と驚き――そして、目の前に見えるのは僕の最高の仲間ケロベロスと、最愛の妹モコちゃんだった。僕はまだこの世界で生きられるのか……。
魔力の大半を、僕の中に骨を入れる事に使い果たしたスカルがその代償として、ドクロのネックレス姿へとなってしまい僕の首にかかった。そしてなんとか、残りの力で喋り、僕の中に入れてくれた骨はケロベロスが天使の頃の骨だと教えてくれて、これから僕にスカルとケロベロスの運命を託すと伝えると、眠ったようにドクロのネックレスは静かになってしまった。
この日、僕の中に天使の骨が入った――なるほど、しっくりくるものだ。
僕はドクロのネックレスを胸にあて、心をこめて感謝し、決意した。
「スカル……任せろ! ケロベロスありがとう……僕も本当は生きたかったんだ、妹と……僕のこれからの人生をスカルとケロベロスを救うために使わせてくれ、ってモコちゃん!?」
「スカルはこの姿ではもう、しばらく喋れないが……天元には俺がついている! また俺達と一緒に戦ってくれ、№を捕まえるのを協力してくれ、早速何だが話したい事がある。明日天国に一緒にきてくれないか? って……うん? モコ……」
僕とケロベロスが再開の挨拶をしていると、2人の目線はモコちゃんの方へ向けられた。
「くかぁぁ……ぐううう……くかぁあああ……がるるるる……がるるるぅぅくかぁあ……」
モコちゃんはいつの間にか、道端で深い眠りにつき横たわっていた――気持ちよさそうに。
「ははは、よかった……モコちゃん……しっかり生きている! ケロベロス、まずは家に帰ろう。モコちゃんを布団に入れたいしな、明日、その天国に行こう! 色々聞かせてくれ」
「わかった。明日、天元には忍足というスカルの上司に会ってもらう、そいつから色々話が聞ける筈だ。今日はゆっくり休め……本当に良かったな、天元が救ったんだ」
こうして僕達は家に帰り、モコちゃんを死の運命から救い、そして僕もケロベロスとスカルによって復活させてもらい、僕は№達に挑む事になった――モコちゃんを部屋の布団に寝かせ、僕もスカルとケロベロスを絶対に天使に戻すと誓い、明日は天国に行くとの事だったので今日はもう眠る事にした――救いがあったこの日、それは僕の忘れられない日になった。
其の四に続く――――。