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③章[モコバッド★悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の二

③章


★モコバッド★


[悲しい運命を変えろ! 僕と契約した銃と骨と株式会社オリハルコン! 悪魔集団№とデーモン登場! 最悪でキキなモコの1年間 ――――№2マミーがるる] 其の二









 この世の中には本当に天国と地獄という物が存在するという。

 即ち、それは地獄に住まう者達、つまりは悪魔や妖怪といった魑魅魍魎の数々が、僕達の住むこの現世で悪さを働く、そして、人間にとり憑き、呪い、または契約する者達が存在するという事なのだった――こうした事態に対処するべく、天国に存在する『神』は天国に複数の悪魔討伐会社を設立したという――この世の秩序を守るため、天国と地獄そして現世のバランスをとるため、神様は担当分野を分けて、複数の会社を設けたのだった。通常、この会社組織を任されて、日々悪魔と戦う社員になるのは天国に住む天使達なのだが、時に例外があり――何らかの形で悪魔や天使と関係した人間、縁を持った人間を天国の会社にスカウトし、働いてもらう事がある。

 神様曰く、それはバランスを取る事において、重要な事だという。悪魔の前で無力の人間に……悪魔に対抗するどころか悪魔を見る事すらできなく、そして時として悪魔にすがり、悪魔と化す無能な人間達に――武器を、異能力を、パートナー天使を、与える事により僅かな人間達でも戦うすべを与える事で、人間達自身に抗わせる事で大きなバランスの回復になるという。

 天国で働く天使達はどんなに働こうとお給料もなにも支給されない、実はどこもかしこもとんだブラック企業の天国の会社なのだけど、それは天使に産まれたからには、それ程たいした事ではないのであると言う。

 現世の人間達に対しては大変なことであるが、天使達には違うのだ――産まれたその日から、全てもっている天使達には違うのだ。美しさ、衣食住、知識、運動能力、そして欲しい物は全て天国には揃っている、全てを手にした形で最初から産まれてくるのだ、この国は先進国の常識を覆すほどの超絶豊かな、超絶先進国なのである。ゆえに、給料など支給されずとも天使達は、元から満ちているのである――そこでだ! 天国の会社に入社した人間もまた給料が支給されないのかと言うと……それは違った! そう、悪魔討伐の貢献度によってそれなりの対価が支払われるのであった――『神』によって願いが叶えられるのであった。

 全知全能の『神』とは言え、全てイエス! とは答えないのではあるが、可能な限り仕事のできによって会社に所属する人間の願いを叶えてくれるという――石榑鬼旗も自らの願いを『神』に仕事の対価として叶えてもらったのである。そうスカルが知っている事を僕に話した。

 ホワイトクリスマスだ――――家を出ると外は雪がこんこん降りしきり銀世界になっていた。ケロベロスとスカルを連れ、桜の木々が青くライトアップされ空が暗くなると、幻想的な洞窟になったように感じるこの素晴らしいイルミネーションを見つつ目黒川沿いをこの一番の見所な時間に見に来ているカップル達の間をすり抜けながら、石榑鬼旗が待つ時計塔広場を目指した。

「さっき私が話した人間のした仕事に対して神様がくれる対価なのだけど、私が推測するに石榑鬼旗は全ての対価を自分の社会的地位の底上げと、商売繁盛に回しているのだと思う! 天国には現世で内密に経営している機関や施設そして大手会社が実はいくつかあるんだ、『学校』、『マスコミ』、『病院』、『役所』、『出版社』、『広告代理店』、『食品会社』、『美容室』,『工場』、『ファーストフード店』、『ラーメン屋』など、まぁ色々だ。コネやツテは天国の専売特許なのだ! それを自由に使える神様にとって石榑鬼旗の願いは容易いよ! 奴は恐らくこの世界の№1のお菓子会社を築けるだろう。そう言えば私の僅かにある天使の時の記憶にライトノベル作家にしてくれと神様に願って本を出版させて貰った奴がいたなぁ……詳しくは思い出せないが」

 そんな申し訳程度に『ラノベ』というワードをいきなり突っ込んできたスカルが石榑鬼旗に会う前に彼の事で知っている事を全て教えてくれた。この物語でどんなに悪魔を討伐しようと僕がそれによりラノベ作家になるという夢は叶わないし、新人賞に応募して何千の応募者の中からデビューを勝ち取るしかないという厳しい現実は何一つ変わらないと、メタ発言をしておくが、そんな話は今のこの世界の僕には全く関係のない話だ――関係ないと言うと僕の活躍によって物語が面白いかどうか評価の対象になるのだから、厳密にいえば選考の大きく関わるので関係なくはないのだが、むしろ要なのだが、今の僕にはモコちゃんが救えればそれでいいのである。そんな雑談交じりで特に緊張感もなくすんなりと、目黒川沿いの時計塔まで着いてしまった。話に夢中になっていたからだろうか……いつのまにかさっきまで大勢いた筈の人達が……くぐってきた人の山がなくなっており、時計台の付近には僕達以外に人は誰も居なかった。

「天元これは……結界だ……結界が張ってある! あ……あそこだ……」

 さっきまで広がっていたイルミネーションは、時計台の辺りには展開されてなく、僕達の周りは暗闇と静寂が支配し、僅かに目黒川が流れる音のみがさざめいた。ケロベロスは結界が張ってあると言うが、単にここには観覧物がない事で人がいないだけではないのだろうか? そんな風に思った僕であったが――ケロベロスが驚き見つめる方向を見た僕は、これが結界だとすぐに理解し、そして驚いたのである――川沿いにある時計塔、そのすぐ前に川へと降りられる階段がある、通常は階段の前に門があり、その門の鍵が閉っていて入れないようになっている。その階段の先は普段、船乗り場という場所に繋がっていて、滝のオブジェがある川に面している大きな広場になっていて、地域のお祭りの時などの際に開放される場所であった。

 僕が驚いたのは階段の門の鍵が開いていたからということではない、その先の空間が、明らかに僕が知っている空間とは、全く違う物になっていたからである――階段の下り先が不気味で巨大な鳥かごの様な物に繋がっているからだ。こんなものが新しく立てられたというなら、間違いなく人気スポットになって見物人が沢山来るはずだ……なので間違いない、これが結界なのだと、僕は解釈した。

「降りよう。間違いなくあの中に石榑鬼旗がいる……天元、いよいよだ……覚悟はいいかな?」

 そうスカルに聞かれたが僕には選択肢はない。もうやるしかないのだ……――行こうと、僕は頷きケロベロスとスカルと共に、階段を下りって鳥かごの中に入った。

 外からは分からなかったが、鳥かごの中はとても神秘的だった――地面いっぱいに青い芝生が敷かれており、外の不気味な雰囲気と違い、中の骨組みは黒光りして輝くカラス色の深みがあり、周りにはステンドガラスが装飾されている。まるで有名な観光地にでもありそうな教会を彷彿させる神秘さだった。

 その素晴らしい鳥かごの中心部に、一人男がこっちに背中を見せて立っていた――ジャージ姿でダルそうな男、足のモモぐらいまで髪が伸びていて、手足が長く、高身長である。右手に日本刀を持っていて、左手には般若の能面を手にしている……1つ驚いた所があった。僕の知らない情報、それは今までの石榑鬼旗はないモノ、ケロベロスとスカルにとっても初見の事だった――背中に大きな羽が生えていたのである、純白の天使の羽が。

 そんなビジュアルの敵を前にしたシチュエーションに、僕の中で二病が発作を起こした。とりあえず決め台詞を石榑鬼旗かましたくて、しかたなくなってしまった。

「またせたなぁ!」

 そう僕が台詞を吐きだすと、石榑鬼旗がゆっくりとこちらを振り向いた。瞳孔の開いた様なギョロ目で不気味に僕等を見て、彼は笑った。

「ケケケ! 堪らないねぇ! 良い器を見つけてきたじゃないか……彼なら君達の力を引き出せるだろうねぇ! 久しぶりに魔神と……戦える! 最近は手ごたえがない奴ばかりが相手だったからねぇ……ケロベロス君と戦うのを俺は楽しみにしていた! 俺はロリコンの上にケミカルやっているクズだけど、楽しませてやるよ、悪魔と契約した少年! 君は俺にとても似ている……安心しな、怖いのはすぐに終わる……夜は敵が強いからなぁ! ケケケ!」










 もとより不気味なオーラを放つ石榑鬼旗であったが、能面を手にそんな事を言うものだから、ますます不気味なオーラを感じる奴であった――話が分かる相手だとはとても思えないが、僕は一応、話合いで終わらす提案を石榑鬼旗にしたのであった。

「えっと……あなたが石榑鬼旗さんですよね。こんばんは、僕の名前は羽屋里天元と申します。先程はいきなりの中二の登場で大変失礼しました。提案なのですが、石榑さんはスカルとケロベロスの命を狙っていると聞きましたが、この2匹は訳があってこんな悪魔の姿にされてしまっていますが、元々2匹とも天使だったのです! つまり石榑さんの仲間なのですよ! 争う理由なんて一つもないのですよ! ここは一つ話し合いませんか?」

「ケケケ、話し合いたい? 天元君、君はそもそも誤解をしているよ……幼女の方は天使かもしれないが、そちらのケロベロは……。ま、いっか……知らなくても。そもそも本人が自分の正体をどう君等に話しているかなんて、俺には関係のない話しだ――それより、天元君は面白い事を言うね……ケケケ、俺は戦いたいからここにいると言うのに、天元君達と話し合う事に何の意味がある? 俺の目的と違うこんな不毛な提案はもうやめて、徹底的にぶつかり合って今回でケリつけようよ。お互いのためにさぁ! まずはウォーミングアップだ……そちらにいる骨の幼女ちゃんからきなよ、遊んであげるぜ」

 そう言いながら、石榑は自分の両手を広げ始めた――そして左手に持つ能面を空中に放り投げたのであった。般若の能面はゆっくりと宙を舞い落下しようかという時だった、シュピッン! と、石榑は右手に握る日本刀で能面を細かく切断したのである。

 地面に無数に落ちた能面の破片達が、ボン! と、煙をあげたとおもうと、その破片の数々が8本の足を持つ、胴が般若の能面の姿で、まるで蜘蛛のような化け物がそこら中に現れた。

「なんだ! こいつらは……気持ち悪い! これが、奴の能面の力なのか……」

「天元! そんな悠長な事はもう言ってられない! 攻撃がくるよ! 私に体を貸して!」

 スカルはそう言うが、いきなり貸せといわせてもどうすればいいんだ! そう言っている間に僕達の周りを化け物たちが囲んだ……ヤバい、絶体絶命だ――終わったと、目を瞑った僕の中にその時、吸い寄せられるように、スカルが入ってきたのである。

 これが僕なのか? 身長180センチはあるだろうスレンダーな体で、シルバー色の髪は鮮やかに靡くロングヘアー、肌は小麦色に焼け、瞳は切れ目で眼孔鋭く吸い込まれそうな眼、黒い翼をもつ、お姉さんの姿に僕は変身した――頭には一角獣の角らしきものが生えていて、僕の中二病を刺激した。手には長くて鋭い恐ろしいオーラを放つ死神の大鎌とケロベロスを握っている。体が軽い、何でもできる気分だ! 感じる……僕は無敵だ、何だ……これ、最強かよ。







「ケケケ面白いね! 幼女ちゃん! さぁ、ダンスタイムの始まりだ! いくぜ」

 その石榑の合図を皮切りに、能面の化け物達が一斉にこちらに向かって突進してきた。

「退け」

 と、一言僕の体を支配するスカルが中二病なセリフを吐き、迎え撃つ――こうして、戦いの火蓋が切って落とされたのであった。






 能面の化け物達に囲まれ、もはや石榑の姿はこちらからは見えなくなっていた――能面の化け物らのスピードは異常に素早く、そして足1本1本がもの凄く力が強い、それが1匹につき8本も生えているのだから、手強いのも無理はない。さらにナイフの様に鋭い爪も確認できる。切れ味は抜群で、僕の一番近くにいる能面が、もの凄いスピードで僕の顔を足で攻撃してきた。スカルが反応し、掠ったものの、なんとか直撃は避ける事ができたが、頬からスッーと、血が垂れてきたのである。

 能面が一斉に僕を襲う、高速の動きで体の至る所を鋭い足で突いてきた。数か所刺され、出血したが、なんとか動きについていき攻撃を避けるうちに僕の中に入るスカルの目が慣れてきたのであった――素早く動く能面の動きに対応し、その胴体につく能面に大鎌を振り落とした。

「とらえた! 一発でいいのよ……私達は! さぁ、反撃開始だ!」

「よし! 天元、スカル! このままこいつ等を蹴散らして、石榑に一発入れに行くぞ!」

 僕らとケロベロスは腹を括り、この化け物達を蹴散らしながら、石榑に辿り着くのを目標に襲い来る鋭い攻撃をかわしながら、能面一体一体の胴体に大鎌を振り落とした。すると、能面の化け物が消滅するのである――完全なる弱点を見つけたのは良いが、この数を相手にするのは容易い事ではなかった。だが、僕の中のスカルは致命傷を貰わぬよう上手く立ち回り敵を次々と叩き斬った――そのうち敵の数が減り、敵の隙間から石榑鬼旗の姿を確認することができた。

「見つけたあぁぁ! げへへ! 今、私は最高の気分なのよ……もっと、楽しませてよね!」

 僕もとい、スカルの人格がその時完全に変わっていた事に気づいた。僕の知るスカル、そして僕自身は、中二な台詞は吐こうとも、こんな下品な言葉遣いはしないからである――スカルが言っていた言葉を思い出す――僕の体を借りて彼女が発動する能力は、『破壊と刺激の能力』だと、スカルはこの戦いの刺激による興奮に、呪われてしまったのである。

「ど……どうしたスカル! まだ能面の化け物達がいるぞ! 今、石榑に近づくのは危険すぎる! おい、スカル! 天元! 聞こえてないのか! な、なんだ……その恐ろしい目は……」

 そう心配するケロベロスをよそに、何も発言できず、自分の体を動かす事も、もうできない僕は、石榑に向かって飛んでいく狂ったスカルが操る自分自身を止める事は不可能だった。

 今までの眼とは違う鋭い赤い眼になったスカルもとい僕自身が、石榑との間合いを飛んできて一瞬で詰め、大鎌を石榑めがけて、振り落とそうとした瞬間だった――ボン! と、能面の化け物が出て来た時、みたく煙が上がった。能面の化け物達はその煙と共に消え、僕達が斬りかかろうとしていた石榑鬼旗は、僕には見覚えのない、可愛らしい女の子になっていた。その女の子の背中には羽の捥がれた傷跡があった。この子は天使だ……。

「な、なに!? 化け物達が消えた……そして、石榑鬼旗も……うん? この子は! 間違いない! この子は羽を捥がれているが、石榑のパートナー天使のディスコネクトだ!」

 ケロベロスが彼女の登場に驚くと、ディスコネクトは震えて僕の後ろを指さし言った。

「僕と鬼旗を助けてください! あの日本刀は天国の支給した物でもなんでもない……呪われた悪魔の日本刀なんだ……鬼旗はとり憑かれている! 悪魔デーモンに! あ、危ない! 後ろだ! あれに斬られると体の一部を奴に取られる! 僕の羽も奴に削がれた……逃げて!」 

 僕っ子のディスコネクトが指さす方を振り向くと、石榑が大きく日本刀を振りかぶっていた――時が止まったように感じた、もう逃げる事は不可能だ……確実にこの1発は貰ってしまう。

「デイスコネちゃ~ん! 余計な事は言わないでいいからねぇ? 殺されたいのか! ケケケ、まぁ、おかげでスキができた、勝手にコンボが繋がったわ! ケケケ!」








 電光石火の攻撃であった――不意を突かれた……。否、このトリッキーな戦い方こそ石榑鬼旗本来の戦い方である。そして彼は敵を徹底的に叩きのめすのだ、だから奴はこの一撃のチャンスを無駄にはしないだろう。確実に僕とスカルを仕留めにくる筈だ。

「夜は敵が強いんだ! さぁ、幼女ちゃんお前はここで終わりだ!」

 あれ……なんでだ……。僕は相手が脳天に向かって日本刀を振り落としてきているっていうのに、何でこんなに時間があるんだ? まさか、これって……死ぬ前に時間が止まったように感じるってやつなのか……モコちゃんも、トラックに轢かれる前こんなに無力な時間があったのかな――そんな事を考えながら僕はそっと目を閉じた、この攻撃は逃げられない――死んだ。石榑が決め台詞を言いながら、刀を振り落とす瞬間そう感じた。それはスカルも一緒だった、僕の中でさっきまで興奮状態に呪われていたスカルが、クレバーになり僕に言う。

「天元、すまない……私のせいで……まぬけだ……天使に戻りたい一心で戦っていたのに、自分の悪魔の能力に溺れるなんて……私は本当にまぬけだ……一番悔いが残る死に際だ……」

 僕とスカルが絶望に覆われたその時だった――僕の手の中の頼もしい相棒が僕らを救った。

「夜は敵が強いか、それは――こちらも言えることだ!」

 ケロベロスが己の一番尖った尖端で、石榑鬼旗の大きく開く眼孔に向かって体当たりを炸裂させたのであった――その攻撃で、目から大量の出血をする石榑鬼旗は激痛でもがきだし、日本刀を振りきれないままその場に蹲った。これはチャンスだ、ケロベロスと、僕らがこのまま石榑鬼旗を畳み掛けられるチャンスである……だが、僕らはそれを選択しなかった。

 僕の中からスカルが出てきたのである――天使に戻ろうとする者がこんな悪魔じみた戦いをこれ以上してはならない、させてはならない、特に親の前で……ケロベロスの前では。

「スカル! お前はディスコネクトを連れて外に逃げろ! もうお前は戦わなくていい……戦うべきじゃない! もうこんなのは沢山だ、もうこれ以上、幼女にこんな事をさせて堪るか! 後は僕とケロベロスでやる……頼むぞ、ケロベロス!」

「おう! スカル、後は俺と天元に任せろ、必ず俺達は帰ってくる! 外で待っていてくれ!」

 僕達がそうカッコつけると、幼女の姿に戻ったスカルが頷き、ディスコネクトを連れ急いで外にでた――僕達を信じきった強く優しい眼をして、スカルはこの場を退散した。

 外にスカル達が出て行き、僕はケロベロスを握りおそるおそる石榑鬼旗に近づいた――そして、異変に気づいたのである。いくらなんでも、眼からの出血が多すぎる。辺りに血の水溜りができているほどに、その血は止まらなく、葡萄の香りが漂ってきた。

 ボン! と、煙が上がり、さっきまで蹲っていたはずの石榑鬼旗が消え、そこには割れたワインボトルと、般若の能面が置かれていた――2手先まで読まれていた……この石榑鬼旗も偽物だったのだ……。奴は遊んでいただけだ、圧倒的な力の差がそこにはあった。

「あー、今年のボジョレーヌーボーはハズレ年だったから飲まないでとっといて正解だったわ。ケケケ、こんな使い方もありだわ! いい道化になったぜ、さぁ君を削ぎ取るよ! ケケケ!」

 日本刀を振りぬきながら僕の真上から本物の石榑鬼旗が現れた――僕の脳天から右肋骨に向かってナナメの線で綺麗に削ぎ落し、僕は右目と右腕を石榑鬼旗に奪われた。








其の三に続く――――。

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