②章[うつつトゥルー☆冷血吸血鬼ギャンブルジャンキーの鉄仮面を撃ちぬけ! 戦慄の豪運キングとインディアンポーカー対決!? 僕はここまでだ…… ――――№3黒色ブラッド] 其の三
②章
☆うつつトゥルー☆
[冷血吸血鬼ギャンブルジャンキーの鉄仮面を撃ちぬけ! 戦慄の豪運キングとインディアンポーカー対決!? 僕はここまでだ…… ――№3黒色ブラッド] 其の三
「ほう、面白い事をするねぇ! 天元、ギャラリーの皆さんには見えてないのが残念だ。ほらよ……レートアップだ! 8億円! さぁ、君のターンだ!」
「なら僕もレートアップだ! 9億だ! 2戦目のキングさん同様、僕の命も1億の値でいいんですよね? ならレートアップだ! さぁ、キングさんのターンですよ」
レ、レートアップだと!? おかしい、キングである俺様の手は恐らく……いや、きっと紛れもなく『K』のはずだ。なのに……今額にあてているカードが『9』のこいつがレートアップだと?
さっきブラフは通じない事を教えたはずだ……奴は何かイカサマをしているのか……そうでないと『K』が見えているのにレートアップをする筈がない。ここで僕に勝負されたら彼の負けだから、こんな事をする筈がないんだ! となると……あの時、自分の額に弾丸を放った時に、何かしたんだ、こいつは……察するんだ!こいつの表情で――う……なんだ……さっきまでとは違う、何か違う……無表情の冷たい目をしている。何を企んでいるんだ……。
「キングさん良ければ現先輩も買って貰えないでしょうか? 1億円で! そうすればあなたは10億でレートアップして勝負できる……いかがですか?」
な、なんだ! いきなり天元の野郎が雪の女王を売りやがった……。雪の女王もそれに対して、一度だけ頷いただけで、無表情だ……だが、いい! その条件乗ってやろう。それにここで僕がコールをしなくても、次の彼のターンで降りる事はできない。僕が勝ってしまうからね、必ずオープンして勝負してくる! イカサマにしろ、ブラフにしろ、お前のやり方は2流だ――。
「今まで俺様が養分としてきた……屈強なギャンブラー達の死屍累々の屍の下に僕は毎回勝負の選択をしているんだ! 見えない事をいい事にイカサマを続けて、今も何か仕掛けたのだろう君には分かるまい! その中二病な銃はもうしまえ……目障りだ、野良犬! 10億までレートアップだ……吠え面見せるといい、勝負でいいな! 羽屋里天元!」
熱く叫んだ俺様は……一番周りが見えてなかった。
天元は終始クレバーだった――この誘いに乗る事によって、天元に隙を見せてしまった。ギャンブルをさせる隙を与えてしまったのだ。
「ええ、勿論勝負しますよ……僕はカードチェンジをして勝負します! ここで狩る!」
この勝負での俺様の敗因は、自分のターンで勝負をしなかった事……。いい勉強になったぜ!
第4回戦――天元『A』キング『K』によって、天元WIN。これで2勝2敗勝負は最終戦へ。
「ははは、これは……驚いたねぇ……命を賭けて、こんな薄い所を引かなければならないギャンブルをするなんて……正気かよ、さっきまでイカサマしかできなかった野郎がよぉ……」
「キングさん、やっぱり賭けてこそギャンブルですね……ハッ! 良かったよ、ケロベロスぅ……僕がまだ自分自身にヘビを撃ち込んでなくてよかったぁ……あそこでヘビを使って自分を騙せてなかったら……僕はとてもじゃないがこんな駆け引きは――ギャンブルはうてなかったなかったよ」
「天元良くやった! キングにヘビを撃ち込まなくとも、自分に撃ち込んだ事で、キングを疑心暗鬼にしたお前の勇気と覚悟に幸運の女神が微笑んだのだ! さぁ……いよいよ、最終戦だ」
「すごい……すごいわ、羽屋里君。 なにが起きたか分からなかったけど……あなたに私の命もベットして正解だったみたいね……次の勝負で全てが決まるわね……勝ってみせてね!」
現先輩がその無表情の鉄仮面から久しぶりに少し、イキイキとした声が聞こえた――僕も期待答えたかったのは山々だったが、もう自分にヘビの呪文は効かない……それはこの5戦目勝ち筋が、物凄く薄い事を意味する。だから僕は最後の賭けに出た。この長い戦いを終わらすため、現先輩を救うため、№3を追い出す為、そして、この因縁にケリをつける為に……。
「現先輩……僕はここまでだ……。後は頼みました……第5戦目のギャンブルは僕の代わりに現先輩が打ってください。僕はあなたに全て託したい……頼りたいんですよ、先輩を――」
天才でもない限り、変に考えた言葉では絶対に心には届かない――だから僕は言った。この絶体絶命な状況で、凡人な中二病である僕が絞りだした真実の気持100%の言葉を……嘆いた。助けてくれと、頭の中で考えていない言葉で、机上のことより、ありのまま出てきた魂の思いを僕は口にした。この勝負を現先輩に託したいと僕は言った。それが彼女を救うと信じて。
「――大丈夫ですよ。現先輩ならキングに勝てますよ、だから――僕と、アヤで一勝しようぜ!」
「えっ……天元君。何言っているのよ……何で急に弱気になって私に代われとか、言い出すのよ! あなたを助ける義理はないし……それに! このゲームってそういうゲームじゃないでしょう? ――自分で相手を打ち負かして虚栄心を満たしてよ! 打ち負かしてさげすんでよ! 金を奪い取ってよ! そういうゲームでしょ……これは……だから、あなた一人で最後まで勝負をつけるしかないのよ……孤独な戦いよ! だから、私にはあなたに手を貸す事はできない! 私にはできない! そんな……助けるなんて、聞いた事がないわ!」
現アヤが背負う闇は孤独――その闇が今どんどん膨れ上がり、№3が姿を現した。
「ハテャッハッツ!! 少年、無駄だ! 無駄、無駄……吾輩が彼女の中から孤立せよと、言い聞かせているからね! 孤立せよ、孤立せよ、孤立せよ、ハテャッハッツ!!」
嘲笑う№3の顔元へと、ケロベロスは飛んで行った。そして№3に向かって言った。
「お前はもう黙っていろ! 不撓不屈の精神で人に接し、机上の事だけの薄っぺらい言葉ではなく、魂の思いを届ける! 天元にはそれができる! それを他人に平気で、できる男なんだ!」
「ふん、無駄、無駄……お前も少年も、俺がやらなくてもこの、キングとか言うガキに殺されるだろうな! そして、この後……俺が――現アヤがキングを殺る!」
僕はケロベロスを手に取った。そして、現先輩の顔をよく見て、目と目を合せて言った。
「アヤ! これは唯のトランプゲームだ! アヤが昔、家族でしたババ抜きとルール以外はなんらかわりのないトランプゲームだ! トランプゲームはそんな腐ったゲームなのか? アヤのお母さんを唯一、助けられた素晴らしい――優しいゲームだろう? 過去にどんな苦しい事があっても、ギャンブルに呑みこまれ、居場所をなくしてこの事を忘れても……素敵な思いでが、あったこのトランプで、昔みたいに、今度はお母さんじゃなくても、後輩の僕を助けてください! 優しい先輩になってください……一度死んだ星は何度でも蘇ります! それがアヤの求めていた……ゲームだ! 腐ったゲームじゃない! その鉄仮面は人を守る強いものだ!」
「羽屋里君が……なんで母の事……家族でしたババ抜きの事知っているのよ……ふぅ……。あの時の私は……確かに、この鉄仮面を母に頼られ、そして母を助けられた……気持ちよかったわ、それは、私が今狂っている……依存しているギャンブルなんかよりずっとね……――」
その時確かに……現先輩が笑ったのが分かった――そして彼女はゆっくりテーブルに着いた。
「そうね、私もあなたに1度ベットしたこの命、あなたに期待した、あなたに救いを求めていたのよ……ここで後輩を見捨てるのは……天元を見捨てるのは……たとえ、救われる側から救う方にシフトチェンジするからって! 気持ち悪いわ……気持ち悪すぎるわ! ここで天元を助けられない私なんか救われる価値がないわ! 腐り過ぎて、気持ち悪いわ! そんなのは私じゃない! 本当の私じゃない! ここは鉄だわ、鉄で引き受けるそれが正解! そうでしょう? 天元! これが私の最後のギャンブルだ! 別の居場所を今、貰ったわ……ありがとう天元……さぁ! 私は雪の女王! ――キング! 凍えなさい! 私は必ずあなたに勝つ!」
私は人に頼られる事が嬉しかった。だから、私はこの勝負、必ず勝つと――彼女が強く思った時だった……彼女に笑顔が戻り、体から№3が彼女の闇から救いを感じ、魔力が弱まり堪らず飛び出て来た――№が憑いたものから出ていく条件はジャンキーの心ではなく、本来の心で救いを感じた時である。前にモコちゃんが発見され手を差し伸べられた事に救いを感じて№2が飛び出してきたように、アヤの場合、自分の事を信じてくれる仲間を作る事だった――天元とケロベロスはこのチャンスを逃さなかった。奴はもう、小さな猿の姿だ。
「ようやく現先輩の体から出てきたな! №3! 逃がすかよ――番犬!」
最後の呪文『番犬』この弾丸は№を完璧に捕えれば絶対に逃げられないように拘束する。
「無駄だったのは……お前の方だったな――黒色ブラッド! これで終わりだ! くらえ!」
「ハテャッハッツ!! まさか……この吾輩が捕まるとは……笑わずにはいられないな……」
ケロベロスが見事に『番犬』で№3完全拘束捕獲を成功に決めてくれた時――テーブルでは僕の代わりに、戦う――現アヤVSキングのインディアンポーカー最終戦が始まっていた。
「ふへ! な、雪の女王に……悪魔集団№の黒色ブラットがとり憑いていたのか……マテリアルウーマン! お前そんな事、お前言ってなかったよな……って、あいつ……カード引いたら逃げやがった! 今頃は天国か……とんでもない奴を俺はここに入れていたのか……俺様の城でギャンブルジャンキーの悪魔を育てていたって言うのかよ! 胸糞わりぃな……天元に借りができちゃったなぁ……天元の方はもう№を捕獲したみたいで一段落ついたみたいだから……この勝負は空気をよんでやってもいいが……まぁ、これは真剣勝負だ! 俺様はここのキングだからなぁ!! 負けたままじゃ終われないんだよ!」
天元の目的はこの悪魔の捕獲だったか、鬼旗の奴が教えないから俺様は知らなかった。雪の女王のカードは『A』かい……引きが強いな! カードを引く前にはマテリアルウーマンがいたから俺のカードは『K』のはずだな、このまま勝負したら俺の負けだ……なら!
「俺は『権利』を使う! 1枚引いて数字を見るぞ……Kか、さすが俺様! 最強のカードをひいたぜ! じゃあ、今引いたカードで勝負する! レートアップだ、10億! さぁ、雪の女王のターンだよ? どうするかな! ハハハ! AかKをそんな細腕で引けるかなぁ!」
雪の女王はカードを引く筈だ……願いを込めて『A』を引きにくるはずだ。自分のカードが『A』とは知らずにね――そんな甘い思考をしていた俺様はこの後震えるはめになったのだ。
「私はこの額に当てたカードで勝負するわ! キング……下品な表情が出すぎていて、簡単に読めたわ……私の額のカードAなのね! 教えてくれてありがとう……あなた意外に面白い人だったのね、それに引きも見事だわ。さすがにキングね――どうしたの? 寒そうね、キング」
最終戦――――勝者は現アヤ。従ってこの勝負3勝した羽屋里天元側の勝利で幕が閉じた。
「ハハハ! 凄いわ、雪の女王! それに天元……参ったよ! 俺様の完敗だ――約束通りキングである俺様からトロフィを渡そう……カジノ最大のトロフィを、俺のプライドをくれてやる……出禁だ! 出禁! お前ら二人は、強すぎて当カジノを出禁にさせてもらう! 学生らしくヒルズで映画でも見にいけ! ほら! 二人共もうここでの目的は全て果たしただろ? はい、お疲れさん! ほら、映画のチケット持っていけ! それやるから! ラブロマンス映画でも、ホラーパニック映画でも行け! こんな所にいるな! 金は鬼旗に渡しておく! 早く出てけ……おい! ちょっとスタッフゥゥ! スタッフゥゥ! こいつ等をここからつまみ出せ! あ、だが丁重に扱え! 出禁だが、当店最大のVIP様だからな! 2度とくるなよ!」
こうして、全ての決着がつき、僕達はカジノを後にした――これは後日談になるが、不良や現先輩のお母さん、その他現先輩に敗れたギャンブラー達の体調はこの日を境に素晴らしいほど回復し目を覚ましたという事だ。そして、現先輩はパソコン部に戻った、優しい部長として。それで僕はというと、№3からスカルの血液を回収し、天国のオリハルコン株式会社に№3を届け、忍足さんに今回の活動を報告した後、石榑さんの所に行くと彼はキングと六本木で呑んでいた……お金は全て石榑さんに渡す事にした、元々は彼の資金から増えたお金だ。
「羽屋里君、今日は本当にありがとう! 久々に清々しい気分だわ、早く部活がしたいし、お母さんにも会いたいな――あ、そう言えばさぁ、さっき私の事……『アヤ』って呼んでいたわね……そんなふうに年下の後輩に呼ばれたら――天元をこれからの私の居場所にしちゃうぞ! ハハハ! とか冗談、さぁ羽屋里君! 今から映画行こうよ! 高校生らしい事がしたいの!」
カジノから出ると、現先輩はそんな事を笑顔で言った。
彼女にはもう冷たいあの鉄仮面の様な表情は見る影もなかった。って!? 何だ……最後の冗談は……また、お得意のハニートラップかな!? ――こんな良い表情をする彼女はもう、どう考えても僕なんかにはキャパ不足のように思えた。
そんな素敵な笑顔を彼女はしていた。
☆うつつトゥルー☆――完。