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選択 sideコーネリアス含む

全年齢の短編の後半部分です。変更点はほとんどありませんので、お読みになった方は飛ばして下さって構いません。

「どうかしたの、サリー? お客様?」


サリーが玄関先で何やらもめているようです。


「大丈夫です、デボラ様。ただの押し売りです。すぐに追い払います」


私は心配でしたが、サリーが大丈夫だというので編み物をします。

この近所に住むご婦人方から、編み物を教えて頂いて以来、私はそればかりしています。

嗜みとしての刺繍も好きですが、編み物は格別です。


妹の結婚式には出られませんでしたが、甥か姪が生まれる時に使える贈り物はできそうです。

でも、今は――この子の物を。


大きさの変わらない自分のお腹を撫でると、自然に笑顔が浮かびます。


やはり愛する人との子供っていいですね。

子供は愛し合う者同士の間に、誕生を待ち望まれて生まれて来るのが一番です。

どこまでこの子に幸せを与えられるかわかりませんが、せめて生まれてくる前くらいは幸せでいさせたいです。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□




「と、言うことでお引き取り下さい」


豊かな胸に細い腰、そして肉付きの良い臀部。そのどこをとっても女性にしか見えない侍女がコーネリアスの気に障る。

どこがどうして、と明確にわかるものはない。

襟ぐりからチラリと覗く胸の膨らみからしても、相手は女性のはずだ。

涼やかで、どこか少年のようにも見える顔立ちのせいだろうか。


「デボラに会わせてくれ」

「それはできません。お嬢様は今や貴方様の婚約者ではございませんので」


その通り。

デボラは元々王家に入るには繊細すぎた。

大胆不敵でも、冷静沈着でもない内気な彼女では無理だったのだ。


「ああ、お前の主の妹の夫だ」


それはデボラを守るために得た繋がり。


「それなら尚更にございます。お嬢様は既に侯爵家とは縁の切れたお方。天涯孤独の身でございます。素性の知れぬ方と会わせるわけにはいきません」

「私ほど身許が確かな者はいない」

「お嬢様はとても欲張りでそれでいて謙虚な方です。今更、貴方様のお目にかかりたいとは思わないでしょう」

「それはお前が決めることではない」

「嫌いではないとは仰っていましたが、妹と浮気するような男と結婚せずに済んだとお喜びでしたよ」

「!!」

「お帰り下さい」


女にしては長身の侍女は優雅に頭を下げる。

その身のこなしはただの女のものではない。

明らかに騎士と所作が似ている。

しかし、その中にどこかで見た覚えがある。

よくよく顔立ちを見てみると確かに片鱗が窺える。


「お前はローランド卿の――」

「庶出の娘にございます」


優秀な人物が独身のままでいることは少なくない。

特に貴賤結婚すらできぬ相手がいる場合は、結婚していなくても庶出の子供がいる。

両親に死に別れているくらいならまだいい。

親の顔や名前すらわからぬ、貴族以外の相手との結婚を許してくれる貴族社会ではない。


ある意味、自分とデボラもそうだった。

王家に嫁ぐにはふさわしくない性質を持つ女。


「お帰り下さい」


この侍女は自分の両親の例から、わかっているのだろう。


「わかった。帰る」

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