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王宮夜会 sideデボラ

私の婚約が壊れた後も世界は変わらず動き続けています。

王宮で行われる夜会にも変わりはありません。


まだ婚約式を済ませていない妹ですが、コーネリアス様のエスコートで出かけているので事実上、婚約者第一候補と目されています。

以前からコーネリアス様は婚約者である私の妹ということでエスコートして頂くことはありました。

しかし、今は私と婚約破棄をし、妹だけ(・・)をエスコートしているのです。

それを遠くから見る私。


遠くから(・・・・)見ることになる(・・・・・・・)私ではありません。

何故なら、コーネリアス様にエスコートされている妹を虐める為に私は彼らの出かける先に出没しているのです。


今夜、既に虐め終わった私はコーネリアス様に慰められている妹の姿を目に納め、両親と共にいます。

私の役目を知っている両親は、私の外出する際には必ず付いてきてくれます。仕事の忙しい父は正式な夜会など社交的に重要な催しでしか一緒になることはないのですが、母は昼の散策だろうが小さな集まりだろうが一緒です。

両親が側にいれば風当たりも表立ってはきつくありません。


前なら妹がいつも側にいて、王太子の婚約者だからという妬みから守ってくれました。

今は王太子に捨てられた婚約者という嘲りから、両親が守ってくれます。


ザワザワと妹のいるあたりが騒がしくなります。

コーネリアス様がいるというのに、妹に嫌味を言いに来た令嬢たちがいるのでしょうか?


「ああ、陛下がお見えになった。私たちは挨拶をしてくるからここにいなさい」


父の言葉で、国王夫妻がおなりになったことを知りました。

そんな父の眉間にはいつものように深い縦皺。

これがなければ金髪の美丈夫だったことが窺えるのですが、豊かな金髪をした眼光鋭い人物にしか見えません。

対する母もやはり金髪の一種の白金髪プラチナブロンドで、妹に似た目鼻立ちのしっかりした美人です。母に妹が似ているのでしょうが、私にとっては母が妹に似ているという印象があります。

そして、私は父に似ています。


「一人にするけど、大丈夫かしら?」


私を残して挨拶に行くことが心配なのか、母は顔を曇らせます。


「お気になさらないで、お母様。今の私は妹イビリのデボラですわ。家柄だけの婚約者のデボラではありません」


母を安心させようとニッコリ笑ってそう言うと、母に涙ぐまれました。


何故でしょう?


母は私の手を掴みます。


「デボラ・・・。やはり置いていけないわ。一緒に行きましょう」


ああ、母はやはり妹に似ている。

妹もこう言って、いつも側にいてくれました。

二人は親子だから言動も似ていると考えさせられます。


「駄目です。私は王家のご不興を買った身。陛下に会わせる顔がありません」

「何を言っているの。ご不興は買っていないわ。婚約を取り消されただけなのよ?」

「私は婚約を取り消されるような何かをしてしまったのよ、お母様」

「貴女は何も悪くないわ、デボラ」


それは王家への批判とも受け取れる言葉です。

このような場で口にしていいものではありません。

私はすぐさま打ち消さなければいけません。

我がマールボロ侯爵家が王家への叛意を僅かとも持っていると噂されれば、お父様の政敵以外にも引きずり降ろそうと考える慮外者が出てきてもおかしくありません。


「それはお母様が私の母親だから、そう見えるのです」

「お母様はいつでもデボラの母親よ。娘が辛い思いをしている時に何もしてやれなくて辛いのが母親という生き物なの。だから、一人で抱え込まないで――」

「行くぞ、チェルシー」


父は有無を言わせぬ一言を放ち、私の手を取る母の手を自分の腕にかけさせ、さっさと歩き出しました。

こうなると母は父に従う以外、方法はありません。

エスコートを振り払って、私のところに戻るのは目立ちます。

私は母の失言がこれ以上出なくなったことにホッとしました。


しかし、まだ安心はできません。

周囲のおしゃべりに耳を澄ませます。


どうやら、先程の母の発言は気の毒な令嬢とそれを心配しすぎる神経質な母親の会話だと好意的にとられたのか、誰の耳にも届いていなかったのか、周りでは取り上げられていません。


まだまだ油断できませんが、一先ひとまず、目に見える危機は去りました。

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