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ダンス sideコーネリアス2

「デボラお姉様はまだ見付からないのでしょうか、コーネリアス様? デボラお姉様に会いたい・・・。デボラお姉様に出席して頂けない結婚式なんかには出たくない・・・」


 涙ながらに嘆く白金髪の美少女。

 私との結婚が迫り、王宮で暮らすことになったオーガスタだ。

 幸せいっぱいの筈の彼女は何故か泣き暮らしている。

 原因は貴族籍から除籍され、王都を追放された姉の行方がわからないこと。

 その姉デボラを守る為に社交的な彼女オーガスタを正妃にと望んだのに、今日も私たちの結婚式に参列しにきた他国からの王族や使者との会談や園遊会を欠席し、こうして宮殿中の布を濡らそうとしている。


 今のオーガスタには私を心安らかにしてくれるところはない。

 それどころか逆にその美しい容姿を見ても心がすさむばかりだ。

 こんな筈ではなかった。

 こんなことになる筈ではなかったのだ。


 想定外の事態に舌打ちしたくなるのも仕方がない。

 舌打ちをどうにか抑えて、優しく諭す。


「私だけではなく、マールボロ侯爵も手を尽くして探してくれている。明日の結婚式までに見付かれば、連れてくると約束する。だから泣き止んでくれ、オーガスタ。愛らしいお前の目が真っ赤じゃないか」


「でも、コーネリアス様。デボラお姉様がいらっしゃらないんだもの。デボラお姉様のお顔が見たいわ。デボラお姉様に大丈夫よと髪を撫でて貰いたいわ。どうして、デボラお姉様を追放してしまったの? デボラお姉様から貴族籍を取り上げて、私の侍女にしてくれたらよかったのに・・・」


 貴族籍を取り上げて自分の侍女にして欲しい?

 どこまで常識を知らないのだ。


 貴族でなくなった途端、他の貴族の女性からデボラがどんな仕打ちを受けるのか考えたこともないのか?

 高位貴族の令嬢からただの平民の身分になったデボラは男爵令嬢にすら逆らえない身分になる。今までの妬みからどんな嫌がらせをされるかわからない。結果的に死に至る真似をされるかもしれない恐れがある。

 だから私は側妃にできなくなったデボラを愛妾ではなく、愛人として王都の外に囲うことにしたのに。


 それを自分の侍女にして欲しいなど、自分の兄弟を使用人にできるその神経が信じられない。

 その上、更にそのような屈辱的なことをどうしてしたいと思うのか?

 表裏もなく、明るく愛らしい性格だと思っていたが、本当は性格が悪いのではないだろうか?

 デボラのことを姉と慕っていたのではなく、都合の良い相手だと利用していたのではないのだろうか?

 姉の婚約者だった私に婚約破棄をさせ、自分を選ぶように仕向けていたのではないだろうか?


 疑惑が次々と浮かんでくる。

 とてもではないが、これ以上、平静を装って話してはいられない。


 この悪魔は私を騙して、デボラと別れさせ、デボラの立場に成り代わったのだ。


 今、口を開けば責めるだけでは済まない。


 明日はもうコレとの結婚式だ。

 今更それを取り止めるには遅すぎる。


「済まないが、コレを頼む」


 私は扉の傍に立っていた侍女に悪魔の世話を頼むと、ソレには言葉もかけずに立ち去った。

 頭の中で怒りがグルグルと回り続ける。


 本当なら、私と結婚するのはデボラだったのに。

 悪魔のせいでそれができなくなった。

 あの悪魔のせいで。

身勝手の一言に尽きます。

実際はゲームやストーリーの強制力なんかありませんでした。

本日もクズ王子はクズ王子です。

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