外出 sideデボラ
投稿ミスで前話が数分、こちらと入れ替わっていました。申し訳ありませんでした。
サリーが目を丸くしました。
何か物珍しいものでも見たのでしょうか?
私はそれを確認したいのですが、サリーのお母様と話していることもあり、目も動かせません。
もどかしいです。
「いつもサリーがご迷惑をお掛けしております。サリーはちゃんとやっておりますでしょうか?」
「迷惑なんかかけていませんわ。寧ろ、私のほうがサリーに世話を焼かせてしまって」
私は自嘲気味に小さく横に首を振りました。
私が至らないばかりに本当にサリーには世話をかけています。
甲斐甲斐しく世話を焼くその姿はまるで第二の乳母。乳母のマリーベルが仕事を取られて鼻を鳴らすこともあるくらいです。
こんなに不出来な私に、よく見限ることもなく仕えてくれていると思います。優秀なサリーなら他にも引く手あまたでしょうに。
「レディ・デボラ。サリーは使用人ですから、お気になさらないで下さいませ。そう仰って頂けるとサリーも使用人冥利に尽きます」
「そうですよ。そんなことを仰って頂けただけで私は果報者です」
サリーとそのお母様は笑顔でそう言ってくれました。
美女二人の微笑みは眩しすぎて、周囲が輝いて見えます。
その上、二人の言っていることが本当のような気もしてきました。
これは一体どんな現象なんでしょうか?
凡人な私にはわかりかねます。
「・・・」
気が付くと私は首振り人形のように何度も頷いていました。
今まで似たようなことはあっても、それはとても恐ろしいものだから逆らえないというものでした。
しかし、これは違います。
この二人の言うことは信じられる、そんな気になるものでした。
どうして、そんな気持ちになったのかわかりません。
何が起きたんでしょうか・・・?
私は内心、首を捻ってしまいました。
「サリーは幸せ者ね。こんなに褒めてくれる女主人がいて」
「ええ。とても幸せです。幸せすぎて、何か悪いことでも起こらないか心配なくらいです」
「そうよ。気を付けなさい。良いことがあれば、その後は悪いことがあるものだから」
「確かにそうですね。良いことが遭った後には良くないことが起こるもの。今度もそうなって欲しくないんですが・・・」
「人生で使える運は決まっているというから、運が良い時と悪い時は同じだけ来るものなのよ。運が良い時ばかりを選べないわ」
「選べたらこんなに苦労はしないのに。不公平だと思いませんか?」
「サリー。苦労しないですむことのほうが不公平よ。人生は酸いも甘いもあるから輝くの。片一方だけだと輝くことはできないわ。それだと歪みきってしまうか、自ら壊れていくことでしか自分を守れなくなるのよ」
「それでも選べていたら、と考えられずにはいられないんですよ、母上」
「考えるだけ無駄よ、サリー。あなたは考えて、選択した結果が今なんでしょう?」
「ええ、そうです。今の結果は私が選んだ末のもの。別の選択肢を選べば良かったと今は後悔しています」
そう言うとサリーは俯きました。
「なら、文句なんか言えないじゃない」
その言葉が頭にきたのか、顔を上げたサリーの目に憤りが宿っていました。
「こうなるとわかっていたなら、私は選ばなかった。だって、そうでしょう? 私の選択がお嬢様をここまで苦しめるとは思ってもみなかったんです」
「あなたがいることで救われた面もある筈よ、サリー。直接的に関与していないなら、あなたが気に病むことじゃないわ」




