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外出 sideデボラ

短くてすみません。

「ここは・・・?」


連れて来られたのは一軒の家の前。

周りのレンガ造りの建物に埋没するような家で庭は裏にあるようです。


馬車の中では行き先をはぐらかされ、教えてもらえませんでした。


「ここはどこなの、サリー?」


そこは慰問で訪れる孤児院のある地域とは空気は違いますが、我がマールボロ家のような貴族の邸宅が多く立ち並ぶ地域でもありません。庶民的ではなく、王侯貴族を相手に商売をする地域や図書館、王都の中心に広がる公園の付近のような印象があります。

エヴァンス川の貴族街こちら側、なのでしょうか?


「私の実家です」


「サリーの実家? どうして、ここに?」


「今、遠い親戚が他国から来ていまして、親戚の話でも聞けばお嬢様の無聊が慰められるかと」


「他国の?!」


貴族と言えども、他国にはおいそれとは出かけられません。特に私のような未婚令嬢はそんな機会もありません。

貴婦人の話し相手(コンパニオン)でもなければ、未婚の婦人が外国に赴くことなど大使のご令嬢でないかぎり、嫁入りの時だけです。


「はい。しかし、如何いかんせん、親戚は貴族ではありませんから、お見苦しい点もあるかと思います」


サリーはそう、申し訳なさそうに言いますが、他国の土産話は貴族や平民の区別なく、人気があります。

吟遊詩人が引っ張りだこなのもそれが理由です。


「気にしないで、サリー。楽しみだわ」


「そう言って頂けると助かります」


玄関前の短い階段を上がり、サリーはドアに付いているドアノッカーを叩きました。

中で足音がし、近付いてきたのが聞こえてからサリーが大声で言いました。


「私です!」


「どちら様ですか?」


高い女性の声が返ってきました。


「サリーです」


「すぐ開けるから、ちょっと待ってね」


サリーが答えると女性がそう言い、ドアの鍵を開ける音がしました。


ドアの奥から出て来たのは見事な金髪のややたれ気味の目をした美女。年齢はサリーと同じくらいに見えます。着ているドレスは質素な物ですが、彼女の美貌を曇らすどころか引き立てています。

そして、どことなくサリーと似ている顔立ちをしています。

サリーの姉妹でしょうか?


「サリー。お帰りなさい」


彼女は満面の意味を浮かべて、サリーに抱き付きました。


「只今、戻りました。母上」


「?!」


母上?!

母上ということはサリーの母親、ということですよね?!

姉妹ではないということですよね?!

姉妹にしか見えない、この美女がサリーの母親なんですか?!

義理の母親とかではないんですよね?!


驚きのあまり、私は何度か瞬きをしてしまいました。

目が丸くなっていたり、口を開けていたり、思ったことが声に出ていないことを祈るしかありません。

サリーの言う「貴族ではない」は貴族の常識を知らない人、という意味です。

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