一歩進んだのかな……
「ったく…で、何の用?」
机を下から這い出してきたのは、竜成だ。
「いや…べっつにぃー。」
うざい。まぁいいや。
「たーつーなーりー!!何してんの?」
ほらきた。雫が竜成に問いかける。
「あんた、隣のクラスでしょ。」
「えぇー…友達に会いに来るのはだめなのか?」
「てゆーか何イチャついてんの?新手の嫌がらせかい?」
「「そ…そんなわけじゃ……」」
二人してうつむく。へぇー、竜成が顔を真っ赤にするなんて、珍しいもんが見れたんでよかったです。
まぁ、今みたいなやりとりを続けて、気づけば早くも五月に入っていた。あいも変わらず下駄箱偽ラブレターは続いている。いつになったらやめんの?
俺はさっさと帰りの支度を整えて、
「んじゃ。おさきにー」
「え?ちょ、あっ…待てよ!スズ」
「竜成まで!?待ってよー」
「竜成こっちじゃないだろ…」
なんだかんだで、並んでエスカレーターを降りる。俺も最初は驚いたが、もう慣れてしまった。順応って怖い…。
「ん?なんだこれ…なになに?四時に屋上に来い………今度はなんだ?」
「あれ?スズどした?」
「ああ…用事ができた。先帰ってていいぞ、雫。」
「俺は!?」
「知らん。」
「スズ…用事って、また偽ラブレター?」
「そう…だけどさ。もし、ホンモノだったらその人に申し訳ないじゃん。」
「……さすが、スズ。どうせ断るくせに」
「ああ…」
「まぁいいわ。好きにしなよ。スズの自由だし…じゃあ、帰るね…」
「お、おう。またな」
俺は、元来た道を引き返し屋上へ向かう。時間は、四時二分ちょっと遅刻だ。
「遅いなぁ…村上くん。もう、帰っちゃったのかな……変な手紙ずっと入ってたし……。」
「あ……あのー…」
「!?ひゃ、ひゃい!」
なんだこの反応は…。
手に持っていた手紙を広げ、
「この手紙を書いたのはきみですか?」
「はい…そうです。」
「そう…で、何の用かな?」
「えっと、その…」
……なにこの空気。甘すぎて咳き込むレベル。
「……。」
「………。」
「……………。」
どうしたらいいん?死ねばいいのかな?それとも爆発かな?俺は短気だから帰るね…。
「村上くん!」
「はいっ!?」
急に呼ばないでくれ…。
「その…うまく言えないんだけど、あなたの事が好きです。付き合ってください。で、でき…れば……結婚を前提に………。」
はい?今、結婚を前提に…とか言わなかった?
「い、いや!その…嫌でしたら、フってください。」
と、言われてもどうしろと…え?断るんじゃなかったのかって?バカいえ。今断ってみろこの子絶対泣くぞ。女の子の涙は見たくない。誠に自分勝手だけどな…。
「ふぅ…あー、考える時間をください。」
「分かりました。いいお返事待っていますね。」
めっちゃかわいい笑顔で言って、去っていった。
「ん?そういや…あー!!あの子の名前聞いてなかった…。まずいな…。」
◇ ◇ ◇
あの事件の翌日、昼休みにて昼食をとりつつ聞く。
「なぁ…雫、どう思う?」
昨日の放課後あったことを洗いざらい全て話す。
「…まぁいいんじゃない?」
「どうゆう意味だっ!!」
「お似合いだって言ってんの。」
ふーむ…怒ってる?でもしょうがないか…昨日勝手に突っ走ったんだし。
「その子、誰かわかったりする?」
「当たり前じゃない、スズと違って人気者だから、私。」
やっぱり怒ってらっしゃる。リア充爆発しろ!
「えーと…名前はね、」
「小花衣真璃っていう名前でー、何でもいいとこのお嬢さんらしいよー。」
「なんで、セリフ取ったの!早稲田さん。」
「えー…なんとなく、絡むと面白そうだったから、かな?」
「………スズ、何で告られたの?」
「え!?無視っすか。」
「早稲田、めんどくさい。」
「鈴之介くん…あんたには、言われたくないよ!」
「何だと!この女装男子!!」
「ギャー!それは言うなって言ったろ!」
「もうみんな、知ってるぞ。」
「ウソ…だろ?もう帰る……もう帰るぅー!!うわーん。」
あ、帰っちゃった。ま、いっか☆
「はぁ、女子の目線が痛いから。浮気なの?みたいな目はちょっとアレだから、じゃあね。」
「あ、ちょ…待って!」
くっそ、無視られた。しゃあない、腹くくるか。
入学式の時にもらったクラス分けのプリントを取り出す。えーと…小花衣、小花衣っと、あった。へぇー、隣のクラスなんだ。あと、竜成も同じクラスらしい。気づかなければよかった…。
「失礼しまーす。小花衣さん、いますか?」
なんか、俺の姿を見て反応したやつがいるけど、それは無視してトコトコ歩いてきた少女に
「昨日と同じ場所でいいかな?昨日と同じ時間で。」
少女は、「やった」と小さくガッツポーズ。かわいいなぁもう。
俺は「じゃ」と手を振る。自分の教室へ戻る途中、ふと考える。
どうして彼女のようなかわいい子がなぜ俺に?数少ない交友関係をフル活用して何とか集めた情報によると、告白してきた男子全員をフってきたのだという。なぜ俺?
放課後、待ってもなかなか来ないので、教室へ迎えにいくと、机に突っ伏して寝ていた。教室に入り、揺すってみると
「むにゃ…ん?ひゃ!あうあうあう…」
うん…かわいい。
「す、すみません!昨日はなかなか寝付けなくって。」
「いや…別に気にしなくていいよ。俺も寝られなかったから」
そのまま屋上へ向かう間、無言で過ごした。おかげで、心臓が痛い。なんかやたら、鼓動が速い。後で病院行こう。
そうこう考えていると、屋上に着いた。
昨日と全く同じ位置に着く。
「昨日の返事をしようと思う。」
「…。」
「昨日の告白は、勇気を持って言ってくれたのは分かる。だけど、俺は…」
いや、やめておこう。この事は容易に話すべき事ではない。だから代わりに
「俺はきみの事をあまりにも知らなさすぎる。」
はぁ?何言ってんの?コイツ……俺です。そして、目の前にいる少女は涙を落としていた。そんなつもりじゃ……。
「そうか…もう、覚えていないんだね……。」
「あー…だから、その…なんだ、こんなクズではありますが、よろしくお願いします。」
「え?」
そう言って少女は泣き顔のまま顔を上げる。
「うぐっ、ひっぐ…ありっ、ありが、とう。フられちゃう、と思っ、てたから、ひっく、ありがとう。」
ありがとう、ありがとうと少女は何度も繰り返した。
「なんか、ごめんな…。」
「いいの、いいの…私の早とちりだった訳だから。村上くん…よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
…果たしてこれでよかったのだろうか?俺の選択が間違っていないことをただただ望む。
「あの…下の名前で呼んでもいいですか?」
「ん?ああ…いいよ。」
「じゃ、じゃあスズ…くん」
「何?どした?」
「えと…名前で、呼んで欲しいです。」
うわーお…マジっすか!?なんてアドベンチャーを…まぁいっか。
「…真璃……さん。とりあえずさ、寒いから帰らない?」
「そうですね。では帰りましょうか。あ!あの…メールアドレス教えてください。」
「んじゃ、ほら…寄越せ。」
「へ?あっ、はい。」
俺が差し出した右手に、真璃の右手…お手?
「いや…ケータイ渡して欲しいんすけど…。」
「え!?あっ、ああ…そうでした。すみません…。」
ケータイを受け取り、ちゃっちゃか打ち込む。
「はい。試しにメール送ってみ。」
頷き、メールを打っている…。
テロレロリン☆
なんだこの着信音は…最後に星みたいなのが付いてた気がする。
「おし…オッケーだな。じゃ、帰るか。送って行くよ。」
「ありがとうございます。」
てなわけで、家に向かっているんですが…どう考えても、俺も住んでるマンションです…。何これ?
「一応聞いておこうと思うんだけど、部屋番は?」
「一八〇四ですよ!お隣ですね。」
「え!?知ってたの?」
「はい、毎日見かけてますよ。だから、告白…したんですよ。」
そうだったんだ…両隣が同じ学校の女子かぁ……なんか、嫌な予感がする。
「というわけで、着きましたし…では、また明日…。」
「お?おう…また明日な…。」
これで、さらにおかしな事になっていくとはねぇ思わなかったんだよ。俺も。
すみません。テストで投稿が遅れてしまいました。この小説を楽しみにしてくださっている方、いつも読んでくださってありがとうございます。これからも、日々精進いたします。
追伸
失踪するときには、ちゃんと報告します。なので、次回もお楽しみに~。