〈大告白大会〉にて…
やはり俺はどうにもいじられる立場になってしまったようだ。雫も距離感をつかんだのか、入学初日ほどべったりひっついてこなくなった…ふぅ、いろいろ助かった反面まだ慣れない。朝学校に来て下駄箱の中を覗くと、手紙が入ってた。中身は…〈すきです〉と書いてある。差出人不明だ。くしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てる。ここ最近、こんな手紙が頻繁に入っている。やっぱり俺も男の子だ、〈すきです〉というワードに反応してしまう。まぁ、その反応が面白いからいじっているのであって、だから終わる気配がしない…つらいよぉ~…泣きたいよぉ~……………マジで辛い。
「はぁ…引きこもってやろうかな……一応高校で習う範囲はもうとっくの昔に(実際には小五の時点で)終わってるしな。」
「そんなこと言うなよ~なぁ~なぁ~スズ~。」
「うわっ…と、なんだ流れ星くんか…驚かせんなよ。」
朝から若干へこんでる所に、変な奴(自称俺のトモダチを語る人物)がやってきた。うぜぇ。
「だから…違うってば!た・つ・な・りだってば!!もうこれで何回目だ?」
「さぁ?三回目?」
「違ーう!これで十回目だッ!!」
「んー?そうだっけ?まぁいっか」
「よくねーよッ!!」
なんてやりとりをもう十回も繰り返している。なんだかんだで、これは仲がいいと言うのかな?まぁ…いいや。
「おはよー、スズ。…と、誰?」
「た・つ・な・りだッ!!」
「あはは、おはよう雫」
なんてやりとりを交わす。この時には分かんなかったんだよな~…マジで。
んで、今言葉を交わした二人がこの学校における俺っちの友達…おい誰だ、友達が少ないのをバカにしたやつは。許さんぞ。
「おっはー!なんだ!?この乱れた空間は!!」
「乱れてねぇっての。えーと…はやいなださん?」
「ちっがぁーう!わ・せ・だ!早稲田だってば…いい加減覚えてよ!もう…」
「ごめんごめん。ちょっとふざけてみた。」
げきおこプンプン丸だね。誰のせいだ!俺のせいだ!!
「まぁ…いいよっ!別に。いつもいいもん見せてもらってるし。」
何を見てるかは、聞かないでおく。
キーンコーン、カーンコーン
「うおっと、じゃあな、スズ!雫!」
また、風のように去っていった。
「あいつ~!!どさくさに紛れて名前呼んだな!」
「別にいいんじゃない?減るもんじゃねぇしな」
ガラガラガラガシャン
「はーい、みんな席に着いて~。ほーむるーむをはじめま~す。」
佐津川先生が、今日の予定について話す。
「今日は、なんと一年生のレクがあるので体育館に移動してくださ~い。」
◇ ◇ ◇
というわけで、体育館に全七クラス約三百人近い生徒が集まった。むさ苦しい。元々、人混みは苦手だ。得意な奴もそういないと思うけど。
「なぁ、雫。レクっつても何するんだ?」
「さぁ…まぁ、こんな学校だし…何するんだろ?」
『はーい。整列…してるな。えー、ただいまより一年生恒例の〈大告白大会〉を始めます!』
…………………。
「えええええぇぇぇぇぇ!?どうゆうことだよ!」
『もちろん皆さんは分かっていると思いますが、この学校では卒業資格の一つに結婚する事、という項目があります。卒業資格の項目が一つでも満たされないと永遠に卒業出来ません。なので、昨年よりこの企画をさせていただきました。ということで、頑張ってください。我々教師一同、一組でも多くカップルが出来るのを祈っています。』
マジかよ…この学校頭おかしいんじゃねぇの?ははは…どうしよう………。
「月村さん…結婚を前提に付き合って下さい。お願いします!」
「え?え?」
おっ、早くも雫は告白されたようだ。確かに、雫はスタイルもいいほうだし、顔もいいほう…っていうか美人だ。気配りもできて……あれ?カンペキじゃね?スペック高すぎだろ。
で、告白してきた相手は……………え?おいおい、嘘だろ?マジかよ…相手はー、その、竜成だった。何考えてんの?ほら…雫もパニックになってるし…あと、雫さん…なぜ俺をちらちら見てるんだ?
「え?あー、じゃあその…よろしくお願いします。」
「「え!?マジで!?」」
なぜハモる。竜成くんよぉ。
『おー!早くもカップル成立だぁぁぁ!』
「おい、そこの教師。何実況してんだよ!」
っていうかほんとに?それ(竜成)でいいのか、雫よ。
「まぁ…イヤになったら別れればいいしね!」
雫さん…カッコ良すぎだな。
「そうか…雫は竜成と付き合うんだな…」
「なにその意味深発言。大丈夫だって!スズにもちゃんと来るから!」
「いや、別にいいんだけどよ…っていうかむしろ、来ないで欲しい。」
「なんで…って…ああ……ごめん…」
「まぁ…幸せになれよ。俺の分まで。」
「どうしたんだよ~スズ。まるで死ぬ前みたいじゃん。」
「事実だからなぁ…。んじゃ、お邪魔虫は消えますわ。」
そう言い残して俺は、体育館の端へと去っていった。
◇ ◇ ◇
で、例の〈大告白大会〉で大半の生徒がカップル成立していた。ま、関係ない関係ない。
「んで?今日は終わりか?」
雫に問いかける。
「多分もう終わりだと思うよ。みんな疲れてるし。」
「そうか…じゃあ、俺帰るわ。行くとこあるし。また明日。」
「うん…バイバーイ。」
さて、どうすっかな?行くあてはない。今家に帰ろうとすれば、雫に会うかもしれない。久しぶりに本屋にでも行くか…。
本屋に向かい歩き出したところで、ケータイがなる。珍しいな…電話がかかってくるなんて。
「はい…もしもし。どうしたんだ?帝翔…」
『あ!兄さん?ちょっといいかな…』
「なんだ?もったいぶるなよ。」
『驚かないで聞いて…兄さん。父上が…』
「クソ親父がどうしたんだ?」
『今朝、いなくなったんだ。遺書と思われる手紙を残して、ね。』
「ふーん。で、なんて書いてあったんだ?」
『えーと…要約すると、父上は僕に王位を譲るってさ。』
「またえらく短いな…」
『そーいうことだから、王城に来て!』
「なぜだ?俺が行かないといけないんだ?俺は、あのクソ親父に追い出されたんだぞ?戸籍上だって、家族でも何でもないんだ。だから俺は行かない。じゃあな…」
『え?ちょ…待ってよ!兄さん!!…ブツッ…ツー…ツー…ツー…ツー…。』
あんな奴知ったこっちゃねぇ!!
もういいや…帰って寝よう。
今日は、いろいろありすぎた。これで疲れない奴いたら、よんでこい。
猫背でトボトボ歩いていると、
「お!スズじゃん。やっほー」
「ん?ああ…竜成か…どうしてこっち側に?お前んち向こうじゃなかったけ?って…ああなるほどな。」
「おい、スズ。何を察した?」
「いや…なにも」
「そうか…」
「そうだ…」
会話終了。
「まぁ…その、なんだ。雫をよろしく。結構竜成の事気にしてたみたいだし。ガンバ。」
「言われなくてもそのつもりだってば…」
「で?雫はどこへ…」
「先帰るって、帰った。なのに、家には来いと。期待しちゃってもいいのかな?」
「さぁな」
なんて、会話をしつつ思い出す。雫は一途なのだ。恐らく、イヤになったら別れると言ったのも建て前だろう。俺は、もう少しだけこの二人の行く末を見てみようと思った。
すみません。2日に一本出したかったのですが、私は学生…しかも受験生なので今後さらに不定期更新になると思います。申し訳ありません。
誤字脱字がありましたら、ぜひ報告していただけるとありがたいです。