交代、そして…
あれからすぐに帰り、さやかを呼び出す。
「おぉ、スズ。久しぶり~」
「久しぶりだな」
久しぶりに会った…とは言っても何も変わっていない。強いて言うなら…成長したな、どこがとは言わないけど。
「どした?」
「いや!全然、何も変わってないなぁ~って思ってさ」
「ふーん…で、何で呼び出したの?はっ!?もしかして、告白だなっ!!」
「ん?ああ…違うようで違わないからなぁ…うん」
確かにある意味では、告白かもしれん。
「へ?ほんとに?」
「ごめん。誤解だ。たぶん…じゃなくて、順番交代だ」
「まだ一週間も経ってないよ?なんで?」
「あぁ…俺の体がもたなさそうだから?」
「ふん…わかった。じゃあそっちに行くね」
即座に、回れ右をして家に戻っていった。
「あ!!明日からって言ってない…ま、いっか」
数十分後…時計の針は、7時を指す。
「あ、さやちゃん久しぶり~」
「お、まりちゃん久しぶり~」
「…飯どうする?」
「「…なんでもいいよ!!」」
うん。知ってた。そう返ってくるくらい知ってた。
何作ろうかなぁ…。ふーむ、スパゲティかな。
再びの数十分後…2人とも、よく話が尽きないなぁ…。
「ほい、ミートソーススパゲティだ。ソースとばすなよ?洗うの大変だから…」
「はーい」
「わかった」
スパゲティをおいしそうに食べている。俺も食べよーっと。
「んふふふ~、おいひぃ」
「さいですか…それは良かった」
「んーおいしいね~」
…我ながら、上出来だぜ。うまい。
「…ねぇ、どうして急に交代なの?」
「え、あー…、だから、アレだ。体がもたんと言ったろう?」
「ふん…そう?」
お、おう…なんだその疑う目は。まぁ、少し言ってない事もあるんだけどね…。
「ああそうだ」
「ふぅ…おいしかった」
「お、食べ終わったか。さぁ…一つ聞いておく。提出用の課題は終わっているか?」
反応がない…マジか!?やれよ…いくらお嬢様おぼっちゃま学校と言えどそれは油断しすぎ。
「俺は知らんぞ。自分でやれ。俺は寝る」
「いつからしていないと錯覚していた?」
「まさか!?すでに…」
「終わってるわけないじゃん」
スパァン!!
思いっきりはたいた。
「期待させんな、さやか」
「私は終わってるけど?」
「そうか。じゃ、心配ないな。というわけで俺は寝る」
後ろの方です文句を言っている奴はほっといて、今朝まで真璃と一緒に寝ていたベッドにもぐる。
ー同時刻…学校の屋上にてー
「………もう少し索敵範囲を広げましょうか」
人のようで、人間ではない何かがある人物を探っていた。
「だいたいの目星はついていますけど…」
そう言った瞬間…異常なまでの脚力で飛んでいった。
その頃…リビングでは。
「…ほんとは終わってるでしょ?課題」
真璃が問う。それに対し、さやかは
「あったりまえじゃん」
「…やっぱり」
「そりゃね…聞きたいことがあるの」
真璃はどんな質問が来るのだろうと、身構える。
「なに?」
「…スズとどこまで進んだ?」
「…………へ?」
予想の斜め上をいく、質問にこけそうになった。
もちろん、座っているのでこけれるはずがないが。
「全然、手、繋いだぐらい…かな」
嘘です。実は手を繋いだ事はありません。キスも、ハグも、いろいろしたのに手は繋いだ事はない。
「ふーん…あ、そうだ。ねぇ、まりちゃん。夜這いしない?」
「しません!!スズが許しません!」
「じゃあ、スズがいいって言ったら、する?」
「……………」シュー…。
オーバーヒートしてしまった。
「…する、と思う…」
「……寝よっか」
「……うん」
お互いに頭が冷えて、恥ずかしくなった。
こっちが恥ずかしいよッ!!ベッドにinしてても聞こえるって、そうとう大きい声だったんだよ?
などと、思考の世界へ旅立とうとした時、
キィィ…
ドアが開かれ、中断せざるを得なくなった。
「ねぇ…スズ。もう寝た?」
「………………」
寝たふりをする。が、気づかれてそうだな…。
「…一緒に寝てもいいよね……」
なぜ今になって確認するのだろう…ねぇ?真璃さん。
「……すまん、起きてる」
「起きてたんだ…あ、じゃあ聞こえてた?さっきの…」
ウソハヨクナイヨネ?
「ああ…はっきりと」
「あ…ああ、あああ……ああああ………」
シュー…バタン!!
「え!?」
何事かと思い、起きあがると床に倒れていた。それも顔を真っ赤にし、頭から湯気を出しながら…風邪じゃないよね?オーバーヒートだよね?看病はもう嫌だ…。
「おーい、さやか!!」
呼ぶと、
「なに?どうかした?」
「!?うわっ!?びっくりした…」
後ろから声が聞こえた。本当に心臓に悪いですやめてください。そのうち…じゃなくて、確実に寿命縮んでるから。
「真璃を介抱してやってくれ」
「りょーかい!」
またベッドに入って寝るわけにもいかず、真璃が復活するまでベランダで夜の空を見ていた。月は…満月である。月の周期が最近、早い気がする。まぁ…いっか。
そう思って、リビングへ戻ると…
「あっ…んっ……はぁ…さやちゃん…やめ、て…」
「ふっふっふ…そう言われて止めると思うかい?」
「お前ら、何やってんだ?」
「ん?真璃ちゃんの寝言に返事しただけ」
「ふ~ん…っておい。寝言に返事したら夢から覚めなくなるんだぞ」
「そんな迷信、信じてるの?」
「…たぶん」
今すぐにでも真璃を起こさないと…かなり、いやらしい顔になっている。取り返しのつかないこと…俺の真璃に対するイメージが、まぁ…すでに、崩壊しているからいいのか?いや、ダメだろう…。
「せいやっ」
真璃のおでこにデコピンをかます。
「あいたっ…あれ?夢か…」
「どんな夢?」
「それは…さやちゃんが…むにゅむにゅ」
なに言ってんだこいつ…。
「ほらね?」
「…確かにな」
「そろそろ寝ないか?明日学校だし…」
「そだね」
「じゃあ寝よう!」
…どうしてこうなった!?
状況はこうだ。まず、俺がベッドに入る。俺の右隣に真璃が、左隣にさやか…本来、一人用のベッドは悲鳴をあげ、ギシギシがとまらない。動けば、女の子の柔らかい体に当たるし、動かなくても、女の子特有のいい匂いがし、頭がクラクラする。そんな状態で寝れるわけもなく…。
「…………すぅ……………すぅ…すぅ」
「…すぅ……………すぅ…………すぅ………」
かわいい寝顔をしよってからに…。いじってやりたいが、両腕とも腕枕に持っていかれているからいじれない…くやしい。
「…ふぁあ…もうそろそろ寝ないとやばいよなぁ…」
そう、思って…いるうちに、ふぁあ…寝てた。
ー…ふむ。私の予想は当たっていましたか…。
暗闇のなか、ベランダに現れた少女だったモノは、窓の隙間に、手だった《・・・》液体のような黒い物質を流し込み、鍵を開けた。
スゥー…
ほぼ音もなく、容易に侵入した部屋番号は、一八〇三号室。普通の人間なら、気づくことはできない。そう…普通の人間なら…そして、気づいた人間がいた。
「てめぇは誰だ…」
「…私ですか?渡瀬です」
「そうじゃねぇ、何者だ?」
「村上くんのただのクラスメートですよ」
「ただの、クラスメートがこんな真夜中になんだ?」
「…それは、言えませんね」
「ああ、知ってる。お前については調べ終わってんだ。正体を明かせ」
「それはそれは…調べ終わってるのに、正体を明かせですって?よくそんなでまかせが言えましたね。とっさに思いついたにしては上出来ですよ?雪見さん」
「ちっ…じゃあ、それについては埒が明かねぇからな、別のことを聞く事にする。なんの用だ?」
「村上くんの寝顔でも伺いに…」
「…そうか、帰れ」
「なぜです?」
「てめぇからは、スズと同じ匂いがする。嫌な匂いだ」
「…!?」
渡瀬は、驚いたようだった。さっきまでの余裕は消え去り、焦っているのが分かる。
「…では、今日はこの辺で帰るとしましょう。またいつか…」
「…二度と来んな」
渡瀬は窓から飛び下り走り去っていった。
その様子をベランダからさやかは見ていた。
すると
「あれ?さやか、そこにいたのか」
「えへへ…夜風にあたりたくなってさ」
「そうか、風邪ひくなよ…看病めんどくさいからな」
「大丈夫、大丈夫」
と、さやかが言うと、スズは自分の部屋に戻っていった。
「さすが…危険人物に載ってるだけはあるな。危険人物に載っていながら、情報がいっさい無い人間は初めてだ…」
翌日…さやかが寝坊したのは言うまでもない。
はい、第三章突入です。
遅くなってすみません。
では、全く関係ない話を一つ。
筆者の書いている『後刻屋未来』の依頼を募集しております。依頼が来ない限り進むペースはかなり遅くなります。依頼が来たら、モチベーションもあがります。なので、じゃんじゃん送ってください。
以上、全く関係ない話でした。
では、この辺で…