風邪と誓い〈真璃の恋人4日目〉
うーん…風邪もどきは、治った。だけど、真璃が風邪をひいた。誰のせい…俺です、はい。
「へっ、くち…スズ…ティッシュちょうだい」
「ほーい、なんか欲しいものあるか?」
ティッシュを箱ごと渡し、聞いてみる。
「…うーん……スズの愛、とか?」
「なぜ疑問形…愛って、例えばなにすりゃいいの?」
うーん、と真璃が考え込み始めた。考えるな…熱があがるから。
「ちゅー、して?」
……真璃?確かに、病気にかかると人に甘えたくなるって聞いたことあるけど…なんか幼稚化してる気が…。
「ちゅーは、ちゅー、ちゅーしてよぉ!!」
「風邪うつっちゃうだろうが!!」
「いいもん!うつってもいいもん!!」
「俺がよくねぇ!」
「むぅー!」
真璃が頬を膨らませて、不機嫌を表している。
「…わかったよ…一回だけな?」
「んふふ…ぃやったぁ!!ちゅー、ちゅー」
真璃が顔を近づけてくる。目を閉じ、俺からちゅーするのを待ってる。
はいはい…しますよ、いいって言ったもんな。
ちゅっ…ちゅーーーーーー!!!?
長い長い長い長い長い長い長い!!
がっちりとホールドされているから、抜け出すのも至難の技だ。あと、このとてつもなく柔らかい2つの何か…の感触を味わっておきたい。のも山々なのだが、いかんせん俺も男だ。いろいろまずいことになる。あ、でも真璃は結婚を前提に…とか言ってた気がする…ならいいのかな?いやいや、ダメだろう…多分。
「…ちゅ…ん…はぁ…ちゅ」
真璃の息継ぎや熱が艶めかしすぎる。頭もだいぶおかしくなってきた…元からか。
「…ちゅ、ありがとうスズ。元気になりそう」
ようやく真璃のちゅーから解放された。嫌みの1つくらいは言ってもいいと思う。
「はぁ…俺がまた風邪ひくかもな」
「その時は、私が看病するよ」
「病人が何言ってんだ、自分の病気を治してから言え」
「はーい。じゃあお休み」
「よく寝て、さっさと治せ」
「すぅ……………すぅ…すぅ……すぅ」
返事の代わりに寝息が聞こえたのでよしとしよう。
さぁ…今日はどうしようかねぇ…、なんだかんだで外に出るときは真璃と一緒だったしなぁ。
そろそろ買い物にでも行こうかな?食材も切れそうだし。1つ、思ったんだが…どうして、医者がこない?小花衣家の跡取り娘だろうが…。まさか…いや、さすがにそれはない。そんなこと考えるのはあとだ、あと。とりあえず買い物に行かねば。
…結構買っちゃったな。明日はカレーにするとして…今日はおかゆだな。さっさと帰ってやらんとな。
マンションに向かい歩いていると、電柱にもたれかかっている…どこかで見たような…あれはうちの制服だ。なら、学校のどこかですれ違ったのかもしれない。
スルーしようと思い、通り過ぎようと前を通過する瞬間、世界がひっくり返った。のではなく、俺がひっくり返ったみたいだ。
「あら…不思議。目の前でこけないでもらえるかしら」
「え?あ…はい。すみません…」
「謝罪するのは、間違っているわよ」
「ああ…そうですね」
なるほど、俺と話がしたかったみたいだ。ならわざわざ、こかさなくてもよかったんじゃ…。
俺をこかしてまで、話したかった少女は渡瀬さんだった。あの光の見えない暗い瞳は忘れられない。
「その…少し、いいかしら?」
「えーっと…ちょっと待ってもらえますか?これ…置いてきますから」
「そう……ならいいわ。またの機会に…」
「ごめん…んじゃ、また今度」
マンションの方に振り返り、歩き出そうとする…なんとなく振り返る。…もう、渡瀬さんはいなかった。
マンションに戻ると、ちょうど昼時だった。
おかゆを作ってやらないとな。お腹空かしてるだろうし。にしても…俺の部屋の方から物音が聞こえるのは気のせいだ。絶対に気のせい…なのかな?気のせいだと信じたい。
「ふぁあああぁ…あれ?帰ってたんだ、っくしゅん!」
…なぜ俺の部屋から出てきたんだよ。
「おはようさん。もう少しでおかゆできるから、ちょっと待ってて」
「はーい」
元気…なようにも見えるけど、念には念をだ。まだ、外には出さないからな。
「ねぇ…スズさ」
「お?どうした」
「甘えても…いいかな?」
…朝から十分甘えてた気がするけど。
「うーん…まぁ、いいぞ。病人にはその権利があるからな」
「やったぁ!!」
さぁ…問題は、どんな風に甘えてくるのか、だ。
「よし…でけた」
おかゆを持ってリビングに戻る。
「ほら、食え」
「…食べさせて。ちゃんと、あ~ん♡って言ってね」
くっ…恥ずかしい事させてくれるじゃねぇか。普通に恥ずかしい。けど、多分真璃なりの甘え方なんだと思う。そうじゃないと、かなりヤバイ。
「…あ、あーん」
「違うよ!あ~ん♡って感じで」
ずいぶんと細かいですな。
「…はい、あ~ん♡」
「はむ…おいしいね」
恥ずかしい…悶え死ねる。
恥ずかしさを紛らわそうと、ぶっきらぼうに
「…ったりめぇだ。俺が作ったんだからな」
って聞いてないのか。まぁいいや。
ほんっとおいしそうに食べるな。真璃は。
くぅぅぅぅう…
「ぷっ…スズもお腹減ってるんでしょ?食べなよ」
くそぅ…鳴ったのは俺の腹か。
その音を聞いて、真璃が手元のおかゆに目をやる。
「…はい、あ~ん♡」
「……いや、いいから」
くぅぅぅぅう…
「はい、あ~ん♡」
「…はむ、うまいな」
自分で言うのもおかしいが、うまかった。
真璃の手が止まっている…さっき俺が口に入れたレンゲをじっと見つめている。ちらっと、こっちを見た後、レンゲをしゃぶりだした。
「うわぁぁぁあ!?何してんだよ!」
「ふえ?へふにへんへひゃふってふはへはほ」
「何言ってんのかわかんない…レンゲ出してからしゃべってくれ」
レンゲを口から出して
「へ?別にレンゲしゃぶってるだけだよ」
「…そうか」
「そうだよ」
今度は、俺をじっと見つめている。…なんだよ。
「ぎゅー、して?」
「…ぎゅー」
「そうじゃなくて、ハグ、ハグプリーズ」
…ダメか。ふざけて、無かったことにしようと思ったんだけどなぁ…。しゃあない、病人だしな。なるべく優しくしてやらんとな。
「…ほら…こいよ」
ダメだやっぱ恥ずかしい。
「ぎゅー!!」
口に出さんでいい!
…ああ、ヤバい。なんで女の子ってこんなにいい匂いがするんだ…頭がくらくらしてきた。それに、柔らかい。
「ふふふ…あったか~い…頭もナデナデして~?」
「わかったよ」
頭をナデナデしてやる。
「~~~~~~~~~~~~っ!!」
声にならない嬉しさらしい。あと、今更だけどね…顔がものすごく近い。彼女の嬉しそうな顔を見ると、思わず表情筋が緩む。かわいいなぁ…。
「…はっ…はっ…はっ…はっ…」
「どうした?真璃、息が荒いぞ」
あれ?さっきと顔が違う。目が血走っている。
「はっ…はっ…はっ、スズ…スズ…」
俺の胸に顔をうずめる…のはいいんだけど、ね?
「はっ!!まさか…やっぱり、熱あがってるな」
だから…あれほど言ったのに。
俺はそのまま抱きかかえて、ベッドに運ぶ。
汗、かいてる…拭いてやらないと。
パジャマを脱がせると、白く綺麗な肢体があらわになる。他意はない!
汗を拭いて、着替えさせる。
「…えへへ、ありがとう」
「看病するのは、当たり前だ。治ったら、何でも言うこと聞いてやるから、さっさと治せ」
「はーい……………すぅ…」
寝たか。ちゃんと治せよ。んじゃ…晩飯でも作るかな…ん?
若干引っかかりを覚えて、その発生源を見ると真璃が、俺の服の裾を握って寝てる。
ふっ…かわいい奴め。
「わかったよ…君がそう望むのならば、俺は君の傍にずっと居てやるよ…」
はい…お久しぶりです。十日ぶりの投稿です。
言い訳をさせてください!!
…活動報告でも、書いたとおり、いろんなジャンルを書いていました。そういった経緯で遅れてしまいすみませんでした。
次回も投稿が遅れそうな気がします…頑張って書くつもりですけどね…。
次回もよろしくです!
ではでは、ばいにゃら~