デートと指輪、あとお風呂〈真璃の恋人2日目〉
……なんぞ、これ。下駄箱に紙とか、ちょっと前にもあったけど。あれか…ここ最近、鳴りを潜めていたいじめ…じゃない、いがらせがまた始まったのか。でも前のと、手口は似てるけど、違う奴のようだ。だがまぁいい、気にしなければいい話だ。
俺はそう思い、紙に書かれた内容を見ずに捨てた。この紙が、ちょっとした事件を巻き起こす事になるとはな…。
そして何事もなく、昼休みを迎える。
「やっはー!一緒にご飯た~べよっ!」
久しぶりに聞いたような声の発生源は早稲田だった。今日は珍しく雫は休みらしい…どうでもいいが、竜成も休みだ。何してんだ?バカップルめ…。
「いいよ…別に…」
「やったぁ!!」
「最後まで聞け。アホが…」
俺は遠慮して、一人で食べるから…っていうつもりで言ったのに…ポジティブ思考め…。
なし崩し的に一緒に食べることになった。
「ねぇ…なにかあった?」
「いや…別に…」
そういや、さやかはともかく、真璃まで来ないとはな…珍しいな。いつもなら真っ先に来て食べ始めるのに。…気になる。探しに行こう。
昼飯もそこそこに、席から立ち上がる。
「どこに行くの?トイレ?」
「うるせー女装男子」
それは言うなって…なんだーかんだーと騒いでいる奴は放っておき、校内で聞き込みをすると、どうやら屋上に向かっていったらしい…。
屋上のドアに手をかけ、開くと…普通に飯食ってた…。
「あれ?スズどうしたの?お昼もう食べた?」
真璃にそう言われ、中途半端に食ってた事を思い出す。
きゅぅぅうぅぅう…
くっそう…なんで今鳴るんだよ!恥ずかしいよ、ちくしょう…。くすくす笑うな…。
「おいで、スズ。食べさしてあげる」
「いや…いいよ。気にす…」
きゅぅぅうぅぅう………
「ほら…、あーん♡」
「…はむ…」
恥ずかしがる必要ないじゃん…だって、真璃とさやかの弁当作ったの俺だし…うん、違った。恥ずかしいよ…人が口に入れた箸で食べるのはなぁ…食べた後で気づく。痛恨のミスだ。しかも、真璃は俺が食べた後の箸を舐りだすし…何これ。
「…ふぅ。ご馳走さまでした」
「お粗末様でした…と、このあとどーする?」
俺が聞くと真璃が
「うーん…デートしよっか」
「…おう」
確かに、“今”は恋人だからいいけどさぁ…恋敵がいる前で言うかなぁ…牽制の意味とかかな?
と、いうわけで今は大型複合施設に来ています。
……すまん、真璃。デートって何したらいいんですか…。
「なぁ…真璃、すまん…デートって何したらいいんですか…」
「うーん…確かにデートって何するんだろうね?」
「とりあえず、どこ行きたい?」
「服…見に行きたいなぁ…」
ちょっとだけ、恥ずかしそうに言う。うん、かわいい。
「んじゃ、行くか!」
「やった…」
小さくガッツポーズ。思わず頬が緩む。
服…を見に来たのはいいんだけど…俺はどうしたら…。だってここランジェリーショップ…死ねと!!うわぁああああぁん!もう帰りたい…。店員さんの視線がヤバい…。
「これなんかどうかな?」
原色の赤に近い朱色の下着を見せてくる。
…なるべく見ないように…
「ちゃんと見て!!」
「はいっ!!」
何この拷問…新しすぎでしょ。ほんと何これ…。
「いいんじゃないでしょうか…」
反応を見て一通り満足がいったのか、笑顔で
「じゃあ試着してみるね」
うわぁああああぁああ!!あぁぁぁあああああ!!
なんというアドベンチャーを!やめて…精神崩壊しそうになるから…。
「絶対に覗かないでよね!絶対なんだからね!!」
わかりましたよ…覗かないよ?絶対に。
試着を終えて出てくると…うわぁ…なんともいえないな…これ。似合っているには、似合っているのだがな…。なんてコメントしたらいいのか…。
「むぅ~、普通覗くでしょ~!もうっ!!」
「…なんかすみません…」
覗いて欲しかったようだ…ニホンゴ、ムズカシイ、デス。
そして、試着した朱色の下着は買わないらしい…次の下着を探し始めた。
…うん…今だけでいいから竜成来てくれないかなぁ…。
「これはどう?」
今度はピンク色の下着だ。
「いいんじゃない?」
「もう…さっきからそれしか言ってくれないじゃない」
語彙力の低さを思い知らされた…。
試着室に入る真璃………だぁ!わかったよ…行くよ、行けばいいんでしょ!!もうどうにでもな~れ!
覗くとそこには、一糸纏わぬ生まれたままの姿の真璃が…
「きゃあ!!もう…スズのえっち…」
なんで!?理不尽だ!覗けと言ったのは、真璃なのに…店員さんの目が犯罪者を見る目と、ほのぼのとした目で見る人に分かれた!ヤバい…超逃げたい。
結局、ランジェリーショップでは何も買わないで出てきた。真璃は、慌てまくる俺を見て満足したようだ。俺は心臓がつぶれるかと思ったけどな…。
その足で、ゲームセンターの前まで来た。なぜか、恋人つなぎになっていて手汗がヤバい気がする…。ゲームセンターの前を通り過ぎようとしたが、左手がついてこない。真璃が立ち止まって、一つのUFOキャッチャーを見つめたまま動かない。
「…どれが欲しいんだ?……!?」
じっと見ていたのは、先着3名限定の本物のダイヤのついた指輪だった。まじか!?
「これ…」
わかってるよ…。
「…うしっ、やるか?」
パァっと真璃の顔が笑顔になった。逃げれない…。
とりあえず、一回やって失敗したら諦めるだろう…。
と、思ったのだが…このUFOキャッチャーのアームが意外にしっかりしていて、あっさりとれた。よく見ると、指輪は二つ入っていて……。
「うわぁあ!!すごーい!ありがとう!」
「お、おう…」
「はぁ…きれい…」
ダイヤに見とれているようだ。
「あのね…スズ、ダイヤの石言葉って永遠の絆なんだって…これからも一緒に居られるかな?」
「………………」
俺は答えられなかった。真璃も知っているはずだ。ウイルス《グラン》のせいで、いつ居なくなるのかわからないのに、無責任な約束はしたくなかった。でも…
「…居られるだろ。今、一緒に居るんだから大丈夫だ」
「そっか…そうだよね…これからも一緒に居ようね」
「ああ、ゲームセンターでとったこの指輪に誓うよ」
すると、真璃は笑いだしてしまった。ゲームセンターは余計だったか…。
「じゃあ、家に帰ろっか…」
「そうだな」
家に帰ってきた俺は風呂に入ることにした。
はぁ…湯が染みるぜ…ふぅ………。
明日にでも瑞穂に相談しに行こっかな…。
湯船に浸かってリラックスしていると…
ガチャ…!?
風呂場の扉が開き、真璃が入ってきた…!?
なるべく見ないように…
「…まだ入ってるんですけど…」
「…し、知ってるよ?」
緊張してるのか、若干裏声になっている。
「別に…スズにならいいもん」
「お前が困らなくても、俺が困る!」
「…今日見たくせに…」
「あれは、真璃が…覗けって…いうからじゃん」
「…いいの!!」
そう言って湯船に入ってきた。
今の状況を整理すると、湯船に男女が対面で浸かっている…
「アウトだぁあああああぁあああああ!!」
勢いよく立ち上がると、
「はわわわわわ…スズ、前、前」
あ…。
すぐに湯船に浸かった。てゆーか、なんで対面なの?いろいろ見えちゃってるし…。
結局、真璃がのぼせちゃったので、湯船から運び出し、体を拭いて、パジャマに着替えさせた。もちろん、下着もな…。
…今日の感想
指輪、下着、湯船、しんどい…。
えと…鵺織深尋です。いつも読んでくださってありがとうございます。先日、10月29日に視聴者数200人突破、視聴回数500回突破いたしました!!まだ投稿して1ヶ月も経たないのに、ここまで伸びるとは思いませんでした。本当にありがとうございます。このことを深尋に教えるとすぐに復活いたしました。次回からはまた、深尋が書き始めます。
ではでは、ばいにゃら~