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Misty ~霧の牢獄~  作者: 葉月風都
第4章 『終わり、もしくは始まり』
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第四章 第四話

4.誰かが誰かを殺してる


 広間に戻った一同が、まず初めにやったことは彩香の死体を2階の彩香の部屋へと運ぶことであった。広間に置いておくわけにはいかない事ははっきりしているし、さりとてどうしたらいいのか判断も付かないので、とりあえずということになったのである。

 死体というものは実は案外重いもので、男4人掛かりで部屋まで運んでいった。


 それが済んだ後、一同は広間で顔をつきあわせていた。


「とにかく、雨がやむまでは動きようがない。仮に止んでもぬかるんだままでは危険すぎる。何とかしてここで過ごすしかない」


冬馬が切り出す。


「1人になるのは危険だ。なるべくなら全員で一緒にいる方がいい。動くにしても2、3人で連れ立って動くべきだ」

「で、お互いに監視させるのか」

「佳月、そんなことを言っている時じゃないだろう」


 皮肉な調子の佳月に静かに怒りを表す冬馬。


「冬馬、お前は目を逸らしているんじゃないのか。この7人の中に殺人犯がいることを。それにも目をつぶって一緒にいろって言うのか」

「だからこそだろ。全員で一緒にいれば次の殺人だって起こらない、違うか?」


 早口で一気にまくし立てる冬馬。表情に焦りが感じられる。


「違わない。誰にだって毒を入れるチャンスはあったんだから、誰が犯人でもおかしくないからな。それなら全員でお互いを監視した方がいいに決まっている」

「僕ら以外に何者かがやったという可能性は本当にないんですか」


 智博が何かにすがるような目で一同を見回す。

 一同は沈鬱な表情のままで智博を見返すだけだ。

 佳月が首を振って、


「この雨だ、ここまで来るのも大変だろう。よしんばいたとしても、何の痕跡も残さずにキッチンに忍び込んで毒を入れてまた逃げるなんて事ができると思うか?」


 諦めろとでも言いたげに静かに話しかける。

 黙り込んでしまう智博。

 たしかにキッチンには濡れた足跡などは見つけられなかった。


「でも、でも、誰がそんな・・・」


 風雅がうっすらと目に涙をためている。


「俺だって信じたいさ。この中に犯人がいるはずがないってな。だが・・・」


 風雅の潤んだ瞳から目を逸らす佳月。


「なら信じようじゃないか。俺たちは、7人でここから脱出するんだ。それまではなんとしても助け合って生き延びなきゃならん。そのためには、やっぱり一カ所に固まってお互いに注意するしかないんだ、次の事件に」


冬馬が強い意志を表情に表す。のろのろと頷く残った6人。


「なら、早速始めようじゃないか。男4人と、風雅プラス女性2人に分かれてそれぞれ必要な荷物を持ってホールに集合だ。制限時間は15分としよう」


 全員がちらりと時計を見る。

 時計の針は11時42分を示していた。


 それからきっかり15分後、誰1人かけることなく広間に7人のメンバーが集まっていた。毛布やタオルケット、身の回りの品物などとりあえず必要な物をそれぞれまとめると、ソファーに腰掛ける。


「全員揃ったな」


 1人1人の顔を見回して冬馬が口を開く。


「確認しておきたい。俺たちの目的はなんだ?」

「ここにいる7人全員が生きて帰ること、そうだろ」


 西都が小さい、しかしはっきりとした声で言う。みな、こくりと頷き返す。


「そうだ。とにかく単独行動は禁止だ。何かあるなら2人組かそれ以上の人数で行動すること、それは徹底して欲しい」


また全員が頷く。


「何か質問は?」

「メシはどうする? 一応安全は確認したが、100%ではないかもしれんぜ」


 佳月が手を挙げて言う。先ほどまでのふざけた調子ではない。


「食わなくてもある程度は持つだろうが、この雨がいつ止むかわからん以上、いずれ食わなきゃならんだろう?」

「とりあえず、確認しやすい缶詰から使っていけば大丈夫だと思いますけど・・・」


 姫香が自信なさげに答える。

 彩香が死んでしまった以上、食事を作るのは姫香と琴音しかいないわけだから心配も大きかろう。


「とにかく、なるべく食べないにこしたことはないだろう。犯人が毒を持っていることが分かった以上は用心した方がいい」


 冬馬が結論めいたことを口にする。

 実際その通りではあるのだろうが、食べないということは言うほど簡単なことではない。ましてやもうすぐ昼時だ。


「さすがに水道水は大丈夫だろう。貯水タンクではないから毒を混入するのは不可能だろうからな」


これは西都。水が飲めるとわかっただけでも僥倖だ。


「それじゃあ、その通りに行こうか。寝たりするときも必ず半分ずつぐらいは起きていて交代で寝ることにしよう」


 冬馬の言葉には全員が頷き返すだけ。

 そして沈黙。

 誰もが楽しく歓談できるような精神状態ではなかったのだから当然だ。体力の温存とばかりに風雅が琴音に寄りかかるようにしてぐったりとなる。


「ボク、ちょっと寝ちゃってもいい?」


 眠そうな目で訴える風雅。本当に眠いのだろう、すでに上と下のまぶたがキスしている状態だ。


「ああ、寝てていいぞ。今のうちに寝ておきたい奴がいれば寝ておいた方がいい。今んと ころは俺が起きてるから」


佳月が言うと、『俺も起きてるよ』と西都。冬馬も同様に頷く。


「じゃあ、寝ちゃう・・・よ」


 そう言ったきり、すうすうと静かな寝息を立て始める。深夜まで起きていたのだろうし、朝っぱらからこんな事件では神経も参って当然だ。それにつられるように琴音もこっくりこっくりし始める。


『しかし、一体誰が・・・』


 誰もがそのことを考えていた。

 楽しいはずの“合宿”に紛れ込んだ殺人鬼。しかもその殺人鬼は“メンバー”の中にいるかもしれないという。信じたい気持ちともしかしたらという疑惑が心の中でせめぎ合っているのか、誰もお互いの顔を見ようとはしない。今のところ奇妙な共同認識ができあがっているのだから、壊すようなことはしたくないといったところだろうか。


 そんな中、たった1人だけは別なことを考えていた。




『次は・・・』

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