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月姫と魔王

全てを超え


全てを凌駕りょうが


全てを統べ


全ての在るモノの下に在る

聖安国の夜。


アリアは闇の気を感じて、刀を抜いて振り返った。

銀色の刀身が、男の喉元で月明かりを反射して光る。


「…会うのは、明日ではなかったか?」


呆れたように、でも嬉しそうにアリアは言う。

刀を鞘に収め左手に持つ。


男は「ククク…」と乾いた声を出し、被っていたフードを取った。


顔が露わになる。

漆黒の眼と、肩に届かない程度のやや長い髪。

着ている物も黒一色で、暗がりに溶け込んでいる。


「俺が会いたいと思ったから来ただけだ。悪いか?」


彼は「闇の王宛」の手紙を掲げ、挑戦的な視線を投げてきた。


「別に。私は構わない。心配なのは貴方だ。グイル」

「俺が?」

「見つかったらどうする?流石に私でも庇えないよ」


アリアの言葉に、グイルは目つきを変えた。

自然な微笑みが顔に出ている。


「見つかったら、そうだな…お前を連れて逃げるか」

「ふざけるな。もしそうなったら、全力で逃げてやるわ」


軽く頬を染めながら、アリアは茶でも淹れてやろうとグイルに背を向ける。


「いいのかよ」

「何が?」

「いや、敵の大将たるこの俺、闇の王に背中なんか向けて」

「?」

「後ろから襲われて、ザックリ」


グイルは「カチリ」と音を立てながら、剣を握った。


「ふん。殺気も無しにどうザックリいこうというの」


アリアはグイルにローズティー(湯呑みは和風)を差し出す。

白い砂糖の小瓶も横に添えた。


「ま、確かに。いただくよ」

「どうぞ」


グイルはお茶を「うまい」と言いながら飲んだ。

今、このふたりは殺し合いを演じる気などは全く無いらしい。

アリアなどは、茶を飲むグイルの前に座り、堂々と髪をとかしている。


「相っ変わらず綺麗な髪してるな。アリア」

「そう?」

「ああ」


気づけばグイルの手が、アリアの髪をさらさらと撫でていた。



アリアはグイルの頬に軽く触れ、問うた。


「何故、世界を壊したい?グイル」

「ふっ。何度聞けば気が済むんだ。お前」

「知らない。ね、何で?」


すすす…と、アリアとグイルの距離が縮む。


「何でってねぇ、理由なんて無い。

 ただ、壊したいと一度思ったから壊す。壊れた世界を見たいと思うから壊す」

「…それだけ?」

「ああ。それだけだ」


アリアはグイルの胸に、軽く頭を乗せた。

グイルの心臓の音がよく聞こえる。



心地よい夜風が、部屋に入ってきた。




「会えて嬉しかった。グイル」

「また来るよ。で、こっちに来る気はない?」


グイルの問いに、アリアは笑って問い返した。


「グイルこそ。こっちに戻る気はない?」

「無い」

「じゃあ、私も答えは同じ」

「ふっ」


グイルは軽く笑うと、手すりから飛び降りて消えた。




「でも、待ってる。―――――ずっと」


このアリアの言葉が、グイルに聞こえたかはわからない。

アリアちゃんの恋のお相手の登場でした。

アリアちゃんより三つ年上のお兄さんです。


ん?そういえば夜叉はグイルと同い年ですね。

あッはッはッはッは!

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