召集
捧げるレクイエム
歌われるカプリッチオ
摩訶不思議なコッぺリア
グランギニョル
奏でるのは暗がりの王女
灰色の長い髪、整った顔立ち、黄色い双眸の吸血鬼の男が、城を歩いている。
彼が目指すのはアリアの職室だ。
彼が障子の前に立つと、スーッと勝手に戸が開いた。
「おはようございます、ルカ。私が最後ですか?」
戸を開けたのは、黒の長い髪に黒い双眸、着ている物も黒一色の、綺麗な顔をした者。
「お待ちしておりました、ロンド。いいえ。最後はドランです」
ルカはにっこりと笑って答える。
すると、上から声が降ってきた。
「私で最後?おかしいな。夜叉が最後かと思ったのに」
見上げるとそこには、灰色のローブを纏った、女の子に見えてしまう可愛い顔をした半獣のオス、ドランがいた。
口調の割に慌てて来たらしく、いつもは半ポニーにしている灰色のロングヘアを全部下ろしている。
「夜叉はもう来てます。姫様と談笑中ですよ」
「あらら…」
ドランは口に手を当てる。
本当に女にしか見えないが、ルカはそれを可愛いと思っているのでやめさせようとはしない。
それはロンドも同じのようで、決して「女っぽいぞ」的なことは言わない。
「入口の殿方~、早く入りなさ~い」
奥からアリアの声がする。
さんにんは入って、鍵を確かめると奥へ進んだ。
✝
奥にいたのは、さっきも話していた夜叉という男。
紫がかった黒髪は腰まで長く、その整った顔には刀矢族特有の紅玉色の眼が光る。
魔力は刀矢族にしては強い、東の刀矢の二番目の(末っ子)王子である。
以上が“四大修羅”と呼ばれる、アリア女王配下最強のよにんで、女性の人気は勿論、夢見る男たちからも人気の高い、アリア込みの“モテ集団”である。
アリアはとりあえず座っている。
お仕事中なので、軽く結われた髪にちゃんとかんざしをさしていた。
「え~、皆ももう知っているとは思うが、Armageddon使用の世界大戦がはじまる」
アリアはサラっと言いのけた。
「「「えええええええ!!!マジすかぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
これにはルカ、ドラン、ロンドが反応する。
ちなみに今その場は、美女ひとり美男さんにん?の美形空間が建設されていて、宝石箱のような状態にある。
勿論、本人たちは自覚していないが。
「え?知らなかったの?」
「知りませんよそんな話!」とルカ。
「ロンドさんは知っていたんじゃないの?王佐なんだし」とドラン。
「いえ。あ、もしかして寝てたんですかね。私?」とロンド。
これは本格的に知らなかったのかとアリアは溜息をつく。
「何で兵は勿論、民まで知っているコトをキミらは…」
「俺は父上から聞いてたけどね。朱雀(兄)なんてヤル気満々だったよ」
夜叉もバッサリと言ってくる。
「あ、もしかして、だから夜叉王子は泊まり込みしだしたの?」
昨日から聖安に滞在中の夜叉に、ドランが言う。
「その通りさ」
「夜叉…ありがとう」
何かふわふわした空気が漂った.
「とにかく、要は戦前の集会というワケですね?」
ルカが空気をブチ破って言う。
「チッ」
「そうよ~。夜叉、どうかした?」
「別に」
「ふ~ん?」
ややあってアリアは、愛刀の“フィアン”を持って言った。
「たくさん、死ぬんだろうね。今日は、コレを言いたくて呼んだんだけど…」
本件来たか、と、皆が姿勢を正す。
「みんな、死なないでね」
え?となった。
え?それだけ?みたいな。
「姫様、あの、それ…だけですか?」
ルカが代表して聞く。
「うん。それだけよ?」
アリアはきょとんと返してきた。「当り前でしょ?」と。
「そうですか。陛下らしい」
ロンドが言うのを筆頭に、そうだそうだの声が上がる。
「ほえ?何?何?」
戦争前とは思えぬ爽やかな笑い声が、そこに満ちた。
「な・何なのぉ~?」
美形フェスタは続くのであります。
次回、闇の王現る。こっちは美形か?否か?
作者的には不明。