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夢幻泡沫

星の瞬く月無き夜に


響く遠吠え


遠く


遠く

カシャァァン


イイ音がして、幣が砕け散った。

床に、大量の水晶がころころと転がる。



「よ…読めないにも程がある。お主、気は確かか?」


青く光る蝶の上で、夢幻が言った。


「アレはワタクシを封じた物。ワタクシはこれで、いつでも真の力を発揮できるのじゃ」

「知ってる。その真の力とやらで、逃げ出せることも」

「なら何故?」


驚きを隠せないらしい夢幻に、幣を壊した張本人アリアは、大したことのないような調子で言った。


「別に、逃げればいいんじゃない?」

「は?」

「聞け。夢幻泡沫。

 私は誓眞様に、お前を調伏させるようにと命じられた。

 意図はわからないが、私は何も、貴様を無理に下に置こうとはしていない。

 だから、逃げたければ逃げてもいい。逃げられたら命令は果たせなかったことになるだけだ」

「何故?」


夢幻はなおも問う。


「私には既に、この世のモノと別世界のモノに、沢山の配下がいる。

 人間、エルフ、刀矢、悪魔、精霊、造られた者、魑魅魍魎など、様々に。

 私にとっては、配下が増えることは何も意味をなさないから、逃げてもいい」


当り前のように返してきたアリアに、夢幻は返す言葉も無い。

そんな夢幻に、「でも」と前置きし、アリアは言った。


「夢幻。お前は逃げても、決して自由にはなれない。

 追われ、やがては此処に戻ることになるでしょう。

 本当の自由を手に入れることができるのは、狭い“運命”の中、必死にもがき戦い、定めを変えられる者だけ。

 逃げてばかりの貴様には、到底得られぬものよ」


ややあって、アリアの顔に悪戯っぽい微笑が浮かぶ。


「そうせ自由が無いんだから、どう?一緒に来てみない?」


「一緒に来てみない?」まるで、友達に「遊びに行かない?」と聞く調子でアリアは問うた。


「運命に囚われたこの“咎人”と、自由の果てを見に行こう」


正直、夢幻には、アリアの言っていることがわからなかった。

だが、意味は容易に理解できた。


すなわち、この陰陽師は己に、選択をさせているのだ。と。


夢幻は一瞬躊躇った。

規模は小さいが“自由”を与えられたのは初めてだったから。

一瞬迷い、夢幻は選んだ。


「ワタクシは、ぬしの式神。

 我が唯一無二のあるじよ。この夢幻泡沫、滅びの時まで主と共にありんす。

 どうぞよしなに」




砕けた幣が、元通りになった。








空間が割れ、元の部屋にアリアは立っていた。

手には幣が、その傍らには夢幻がいる。


今や夢幻は、アリアのことを愛しいひとを視るように見ている。

心なしか、憑き物が取れたような清々しい表情をしていた。


「よ~し、アリア。おめでとう、合格だ」

「おめでとうございます」


誓眞と、その守護霊にして聖安国の名前の基である女性、聖安が拍手で迎えた。


「何がですか?何に合格ですか?」

「陰陽師の試験でありんす」


夢幻がすかさず答える。


「陰陽師になる試験は、いくつかありんす。

 主様がお受けになりんしたは戦闘試験。

 実際は、教え込まれた術で戦うのでありんすが、異例ということで」

「いや、何んでお前が仕切ってんだコラ。夢幻」

「黙りなんし。貴様には言われたくない」


夢幻は誓眞を睨む。

どうやら、アリアに気易く触られたのが気に食わなかったらしい。


それを察して、誓眞はアリアの肩から手をどけ、離れる。

意外と常識はあるようだ(by夢幻)


「では次に、幾つか式神を選んでいただきます。こちらへどうぞ」

「あっ。ちょっと待ちなんし」


案内に出た聖安を、夢幻が止める。


「主様の式神はワタクシだけで充分。それは要らぬ世話じゃ」

「しかし、使役する式神は複数持つのが陰陽師の起きてです。

 ちょうど、主人を亡くしたばかりの式神もいますので、どうか、是非」


聖安は、生むを言わせる気などさらさら無いらしい。

さっさと行ってしまった。


「悪ィな。昔からあんな感じなんだ」

「誓眞様と似ていらっしゃいますね」

「実は俺の曾おばあさまらしいからな。聖安は」

「なるほど」


納得していない様子の夢幻を引きずり、アリアは聖安の後を追った。

アリアちゃんと夢幻が戦ってる時、コイツらはこんなことをしてました。↓


ロンド=読書。挨拶。


夜叉=お兄ちゃんとケンカ。


ルカ=ドランとおしゃべり。


ドラン=ルカとおしゃべり。編み物。


誓眞と聖安=ひなたぼっこ。

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