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カイルの日常


ある日、カイルは厨房の奥で大きな鍋を抱えて運ぼうとするレイラを見かけた。

「待って、持つよ」とカイルは軽く声をかけた。


手を差し伸べると彼女はちらりと横目でこちらを見たあと、ぴしゃりと言った。


「いらない。自分でできるから」


その声は冷たく、まるで鉄板のように硬かった。

カイルは一瞬言葉に詰まり、手を下ろした。そんなカイルの前をレイラは涼しい顔をして通り過ぎて行った。



またある日の仕込み中、カイルはデザートのフルーツカスタードの仕上げをしながら、ふと王都の流行りの店のことを思い出した。


「レイラちょっと手伝って。こうやって愛を込めるとおいしくなるから」


そう言って両手でハートを作った。


レイラは一瞬振り向き、カイルを見ると冷えた声で言い放った。


「面倒。冗談は勤務時間外にして」


……え。なにその返し。


カイルは唇を引きつらせながらデザートを仕上げた。


(この女、冗談通じねぇってレベルじゃねぇ)



その毅然とした態度にカイルははじめは戸惑ったが、次第にレイラという人物がわかってきた。


優しくしようとしても、必ず拒まれる。冗談は冷たく突き放されるか無視される。


生真面目でかわいげのない、おもしろくない女。


しかし、同時に肩の力も抜けた。仕事一筋で女の子らしい甘えも見せない彼女には気を使わないし、その反応も慣れれば楽しいものに感じられるようになっていた。







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