特別な日
2028年10月14日。年に一度の、私の誕生日。
ピロリン♪
通知音が踊り、画面にメッセージが現れる。母からのお祝いだ。
『 誕生日おめでとう、優芽。一人暮らしには慣れましたか?時が経つのは早く、いつの間に24歳になりましたね。会社はどうですか?なにかあったら、いつでも連絡するんだよ。 母より 』
他にもいくつかのメッセージが届いていたが、そろそろ出社の時間だし、と思いスマホの電源を落とす。
「いってきます。」
誰もいない家にそう告げてから、駅への道を歩いた。
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はじめは大変だった満員電車も、そろそろ慣れてきた。
いつものように改札を出ると、同僚の神楽さんが声をかけてくれた。
「山瀬さん、おはようございまーす。」
「神楽さん、おはようございます。」
神楽さんとは時間帯が被ることが多く、こうして朝会うことも少なくはない。
「あ、そういえば今日誕生日でしたっけ?おめでとうございます。」
会社の人たちに誕生日を紹介したのは新人歓迎会のときだけ。
神楽さんは覚えてくれているうえに、毎年祝ってくれるのだから本当に嬉しい。
ちなみに、他の社員さんの誕生日も全部把握しているんだとか。
「毎年ありがとうございます。」
一人暮らしの私にはこういうお祝いがめちゃくちゃ沁みる。
「いえいえ。今日も仕事がんばりましょう。」
こうした言葉にたまに好意を抱きそうになる人もいるが、彼は全員にそうなのだ。
「はい。」
いつもより、明るい声を意識して、エントランスに入った。
今日は、いい日だ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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