表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

経験者は語る

作者: こうじ

 おぅ、元気そうだな。


 え? やっぱりここにいた?


 はは、ここは俺にとっては居心地が良い所だからな、こうしてギルドが見渡される場所にいるとなんとなくだが問題を抱えてそうな奴やパーティーがわかるんだよ。


 それで、今日はどうした?


 え、初めてダンジョンに行ったのか?


 そりゃ良かったじゃないか、ダンジョンを攻略するのは冒険者のステータスだからな。


 でも浮かない顔してるな。


 え? もしかしてパーティーの足を引っ張ってるんじゃないか?


 自分はまだ実力が無くて他のメンバーとの力の差に悩んでいる?


 そうか……、でもな実力ていうのは個人差がある。


 お前はこれから成長するんだ、腐らずに前を向けば道は必ず開く。


 俺は実際に道を開いた奴を知ってるからな。


『群青の翼』ていうパーティーは知ってるよな?


 そう、冒険者の中でもS級ランクの冒険者パーティーで今や憧れの存在だ。


 そのリーダーを務めているサウルていう奴、アイツは俺の幼馴染で一緒にパーティーを組んでいたんだ。


 意外だろ? 俺だって当時は若手のエースと呼ばれていた頃があったんだよ。


 でも、その慢心が命取りになって冒険者を辞めざるを得なくなっちまった……。


 今から話すのは俺の失敗談だ。


 当時、俺はサウルの他に同じ村の幼馴染2人とパーティーを組んでいた。


 順調に依頼をこなしてダンジョンもいくつか攻略して俺達は調子に乗っていた。


 で、ある時にサウルに追放を言っちまったんだ。


 アイツはサポート役に徹していてダンジョンの事前情報を仕入れ何処に罠が仕掛けているか、強いモンスターがいるかを調べて効率的にいけるダンジョンを攻略出来るルートを提案して俺達はそれに乗っていた。


 でも、それが当たり前になってきた時勘違いをしたんだ。


 自分達の実力があるから攻略出来た訳で別にサポートなんていらない、て。


 冷静に考えれば初めて入るダンジョンなのに何処に何があるかわかるなんて異常だったんだよ。


 サウルは幼馴染である俺達に追放を言われて悲しい顔をしていたよ。


 俺達はこの決断をすぐに後悔する事になる。


 今まで順調に行っていたダンジョンの攻略が失敗する様になった。


 何回も失敗すれば仲だって険悪な物になってくる。


 頭の中ではわかってたんだよ、サウルを追放したのが原因だって。


 でも、それを認めたくなかった、自分の間違いを認める事になるからな。


 そして、俺達は遂に決定的な失敗をしてしまったんだ。


 なんとか挽回しようと思って実力より上のダンジョンに挑戦する事にした。


 もう後が無かったんだよな。


 結論からすれば俺達は大怪我を追うことになった。


 パーティー仲間だった魔導士は毒にやられ目が見えなくなった。


 戦士は腕を斬られ片腕が無くなっちまった。


 俺はドラゴンの炎の息吹で大火傷を負った。


 今でも後遺症で杖が無いと歩けない状態だし偶に全身を痛みが襲うんだ。


 俺達は結局別のパーティーに助けられ病院に担ぎ込まれた。


 そのパーティーが群青の翼で助けてくれたのはサウルだったんだ。


 しかも、俺達が連絡が取れなくなった、と聞いて真っ先に助けに行く、と言ってくれたのはサウルなんだ。


 その事を聞いて俺は本当に涙が出てきて止まらなかったよ、そして見舞いに来てくれたサウルに謝ったよ。


 俺達が間違っていた、お前のサポートが無ければ俺達はここまで上手くいってなかった、全部お前のおかげだ、て。


 サウルは謙遜しながらも謝罪を受け入れてくれたよ。


 結局、俺は冒険者を続ける事が出来なくなり一線を退いた。


 まぁギルドには所属していて今は相談役としているんだけどな。


 他の2人もリハビリを頑張ったけど残念ながら引退した。


 今は故郷に戻って健やかに暮らしているよ。


 これが俺の人生最大の失敗だ。


 そんな経験をした俺が言えるのは仲間とこまめにコミュニケーションを取れ、そして自分が出来る事を一生懸命頑張れ、例え仲間が評価してくれなくても必ず誰かが見ている。


 だから腐るなよ、そして驕るな。


 驕ったが最後、命取りになるからな。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ