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太陽の勇者、満月の騎士、そして天秤の守護者  作者: 星を数える
第1章 冒険の始まり
15/47

15. ウサギの魔獣狩り

 翌日の明け方、クラレンスの後に続く一行は、前日よりも増えていた。主に10代後半から20代前半の木級・鉄級の駆け出し冒険者たちで、中には10代前半と思しき子どもの姿もあった。


 クラレンスは彼らを率いて、前日とは異なる方向へと向かった。

 その日は野生キノコの群生地を発見し、たっぷり採集した帰り道、大型の蛇型魔獣と何匹も遭遇して討伐することになった。


 普段は雑用など一切しない〈黄金の騎士〉も、この時ばかりは蛇の頭に大剣を突き立てて固定し、ガントレットをはめた手で器用に皮を剥ぐという怪力を発揮した。そうしたのは、皆に蛇の肉を分け与えるためだった。


 結局、4人で食べる分だけを残し、残りは人々に均等に配られた。前日の教訓から、肉に対する欲を早々に捨てたラリサは、蛇の頭部と皮を手に入れられただけで満足だった。



 3日目には、また別の方向へ進んだ。かなり歩いた先には、緩やかな丘と小さな森が点在する地形が広がっていた。クラレンスは、何かをじっと見つめたかと思うと、ある丘の周囲を回りながら丹念に観察し始めた。


「このあたりにウサギ魔獣の巣があります。今日はこいつらを狩りましょう。全ての穴を塞いで、中にいるやつらを捕まえますから、皆さんにも手伝ってもらいます」


 そう言ったクラレンスは、人々を連れて歩き、巣穴を一つずつ見つけ出し、石で塞がせていった。どうやって探し出しているのか、茂みに隠れている穴まで見逃さず見つけ出し、2つの穴を残してすべてを封鎖した。


 そして、比較的幼く、装備の整っていない子どもらを、封鎖した穴の前に立たせて見張らせた。狩りが始まったら、塞いだ穴の前で石や木の棒などを叩いて大きな音を出し、ウサギ魔獣がそちらから逃げ出さないようにする役目だった。


 残した2つの穴のうち一方には、周辺から集めた枝や枯れ草をびっしり詰め込み、もう一方には、それなりに装備を整えた初心者の冒険者たちを配置した。


「火をつければ、しばらくしてウサギ魔獣がこちらから飛び出してくるはずです。私も一緒に戦いますので、できる限り頑張って捕まえてみてください」


 クラレンスは、枝と枯れ草を詰めた穴に、深紅の大剣を突き刺し、火をつけた。瞬く間に勢いよく炎が立ち上がった。クラレンスはすぐにもう一方の穴へと戻り、初心者らの前に立った。


 シャルとザヴィクはメイスを手に、人々の援護のために近くに構えた。ラリサは皆に加護を与え、冒険者たちは棍棒を握りしめ、緊張した面持ちで待機していた。


(今回は、私がやってみる。ウサギ魔獣くらい、自分の力で倒してみたい)

 ― わかった。やってごらん。ただし、後ろに人たちがいるのを忘れるな。


 しばらくすると、キィィ、ギャッといった短い鳴き声を出して、ウサギ魔獣たちが穴から飛び出してきた。ウサギとはいえ魔獣なので、体は大型犬ほどもあり、頭には鋭い角が生えていた。


 クラレンスは大剣を素早く振るい、なるべく刃ではなく、幅広の剣身でウサギ魔獣を強く叩きつけて倒していった。初心者冒険者たちは、メイスや棍棒を振るって果敢に飛びかかった。魔法使いらは少し離れた場所から、石を飛ばしたり火の玉を放ったりして支援した。


 クラレンスがすべての穴をきちんと塞いでおいたおかげで、他の方向に逃げ出すウサギ魔獣はいなかった。煙が立ちこめる巣穴の中から、次々と魔獣が飛び出してきた。


 徐々に腕が張って筋肉痛を覚える頃にはなっていたが、クラレンスは気を引き締めて耐えた。せめてこの狩りだけは、自分の力で最後までやり遂げたかったのだ。


 終わりの見えなかったウサギ魔獣の脱出劇がついに収まり、2、3分ほど経っても、巣穴から魔獣が出てこなくなったのを確認したクラレンスは、ようやく動きを止め、後ろを振り返った。


「わあ〜!やったー!」

「私たちで倒したんだ!」

 冒険者の間に歓声が上がった。抱き合って跳ね回る子もいれば、感極まって涙をぬぐう者もいた。


 そのときだった。

 キィアアアッ――! 裂けるような叫び声とともに、巣穴を破って巨大な影が飛び出し、クラレンスに襲いかかった。その額には長く鋭い角があり、それがクラレンスの身体を狙って突き刺さろうとした瞬間、クラレンスの大剣がその頭を真っ二つに斬り裂いた。


「クラレンス、皮っ!」

 思わずラリサが叫んだ。


 その声が届いたのか、クラレンスの大剣はちょうど大兎魔獣の頭で止まった。巨体がドサリと地面に倒れ込むと、しばし沈黙していた人々は、また歓声を上げ、勝利の喜びを噛みしめた。


「皆さん、お疲れさまでした。力を合わせて狩ったものですから、皆で平等に分けましょう」

 クラレンスの言葉に、人々は最初はきょとんとしたが、すぐに少し申し訳なさそうにしながらも、心から喜んでいる様子だった。


 ラリサがクラレンスに近づき、大兎を指さして聞いた。

「これはあんたが仕留めたんだし、私たちがもらってもいいよね?」


「そうしよう」

 クラレンスがうなずくと、ラリサは嬉しそうな声でザヴィクを呼んだ。

「ザヴィクおじさん、これから処理してください!」


「わかりました」

 ザヴィクが大兎の解体を始め、他のウサギたちも、解体に慣れた冒険者たちが手際よく作業に取りかかった。


 黄金の騎士は、自分の役目は終わったとばかりに、深紅の大剣を地面に突き立て、静かに周囲を見張っていた。


(うわぁ〜、つかれた……)

 外見は頼もしい姿を保っていたが、クラレンスは鎧の中でぐったりしていた。


 ウサギ魔獣の数があまりに多かったうえ、人たちを危険にさらすわけにはいかないという思いで、無我夢中で戦ったせいで、かなり体に負担がかかっていたのだ。


 ― チッチッ、少し動いたくらいでへばるとはな。とはいえ、よくやった。人たちに経験を積ませようとは、考えたものだな。

 珍しく、鎧がクラレンスを褒めてくれた。


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