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第21話 幼馴染の会議風景

 これより、六華ちゃん脳内会議を始めます。


 各自、まずは自己紹介をヨロヨロ。


「は、はい……どうせ私なんて……が口癖、ネガティブ六華ちゃんです……」


 私の脳内で挙手したのは、 黒髪を丁寧に三編みにした地味な女の子。

 長い前髪によって、大きなメガネの半分近くが覆われている。


 小学生の頃の私のイメージである。


「はいはいっ! 蘇った六華ちゃんVer.2とはこの私! ポジティブ六華ちゃんでございますよ!」


 次いで手を挙げたのは、ミディアムショートの明るいブラウン髪のJK……まぁ、見た目は今の私かな。

 ただし……間違えた(・・・・)結果、本来の私とも異なる謎のハイテンション敬語キャラになっている。


 そして最後に、議長も務めますこの私(・・・)

 ネガティブ六華ちゃんとポジティブ六華ちゃんとの中間とも言える、一番フラットな六華ちゃんです。


 本日の議題は、『峰岸さんの告白に対して私はどうするべきなのか』。


 それでは議論に入って参りましょう。


「はいはーい、議長!」


 発言どうぞ、ポジティブ六華ちゃん。


「そもそもの話、ぶっちゃけ議論の必要さえも感じないのですがっ?」


 ほぅ? その理由は?


「だってこんなの、私たちの勝ち確(・・・)ですよね! 何しろ、私たち……」


 ニマッと笑うポジティブ六華ちゃん。


「テルくんの方から、告……こくこくこくこく……」


 ポジティブ六華ちゃんと言えど私ではあるので、どうやら過剰な照れには勝てないようです。


「こっ、告白してくれたんですからっ! はい、ウィーウィナー! 勝負は既に決着しているではございませんかっ!」


 なるほど、説得力のある根拠ですね。


 確かに事実として私たちは、テルくんからこくこくこくこく告白されたのですから。


「は、はい……議長……」


 発言どうぞ、ネガティブ六華ちゃん。


「それは……あ、あまりに楽観視が過ぎる……と、思います……」


 ほぅ? と、いいますと?


「あの時とは……もう、前提が違います……だって、テルくんが告白してくれた時は……私が、テルくんを独占していたようなもので……テルくんには、私しか選択肢がなかったに等しいんだもの……」


「はいはい、異議ありっ! 中学時代、テルくんは複数の女子から告白されてそれを断ったという情報を我々は得ているではないですかっ! つまり、テルくんは既に複数の候補の中から私を選んでくれたのですQEDぃ!」


「それは、告白された相手が好みじゃなかっただけかもしれないし……」


「ちょっとちょっとぉ! いくらネガティブ六華ちゃんといえど、少々ネガティブが過ぎるのではないですかっ? 私たちの記憶には、確かに刻みつけられているじゃないですか……『ずっと前から好きだった』と! あっひょぅ、何度思い出しても脳内が破壊されそうな威力ですねぇ!」


「でも……だけど……」


「ネガティブ六華ちゃん、これ以上はテルくんの気持ちを疑うという裏切り行為に当たりますよ!」


「私だって、絶対その言葉に嘘はないって思ってる……! テルくんは、こんな私なんかを……それどころか、調整を間違えてトンチキになっちゃった私まで受け入れてくれて……」


「あれあれぇ? ネガティブ六華ちゃん、何気にポジティブ六華ちゃんのことディスっちゃってますぅ?」


「どっちも、好きって言ってくれた……凄く凄く……人生で一番、嬉しかった……よ、ね……」


「無論、それには一ミリの異論もなく同意ですけどっ!」


 議長からも、心からの同意を示します。


「でも……それでも……」


 ネガティブ六華ちゃんの目に、涙が溜まっていき……。


峰岸さんに(・・・・・)勝てるの(・・・・)っ?」


「うぐっ!?」


 うぐっ!?


 全六華ちゃんに、痛恨の一撃っ……!


「ま、まぁまぁちょっと落ち着いてくださいなネガティブ六華ちゃん! よーく思い出してみてくださいっ? 他ならぬテルくん自身が、峰岸さんに対して恋愛感情なんて抱いていないとハッキリ言ってたじゃないですかっ!」


「違う……よ?」


「へ……?」


「議長……脳内メモリ、再生の許可を……」


 許可します。


 ──まさか、六華……お前、峰岸相手に妬いてんのか……?


 ──ぐむっ……!


 これでしょうか?


「もうちょっと先……はい、ここ……」


 ──だから、ありえないわけよ。そもそも、峰岸と俺じゃ釣り合いが取れなさすぎだろ


「……? ハッ!?」


 ま、まさか……!?


「テルくんは、たぶん……峰岸さんが、自分なんかに恋愛感情を抱くわけがないって思って……だから逆に(・・・・・)、男友達相手みたいに振る舞えてた……んじゃ、ないかな……」


「しかし、峰岸さんの告白によって状況は一変……ということですかっ……!?」


 峰岸さんがテルくんに恋愛感情を抱くことは、あり得る(・・・)と証明され……!


釣り合っちゃった(・・・・・・・・)……よ?」


 そんなの、私は元から知ってたけど……というか、たぶん釣り合ってないとか思ってたのはテルくんだけで……!


「他ならぬ、峰岸さんの言葉によりましてぇ……!?」


 テルくん自身も、今やそう(・・)認識してしまっている……!?


「私たちが勝ててたのは……テルくんが、私のことをずっと好きでいてくれたのは……」


 ネガティブ六華ちゃんが徐々に巨大に……!?


「峰岸さんがリングに上がってなかったから……って、だけじゃないの……?」


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 説得力しか感じませんっ!」


 あぁっ!? ポジティブ六華ちゃんがネガティブ六華ちゃんに飲み込まれた!?


「もう……全てがどうでもいい……」


「私は貝になりたいです……」


 ネガティブ六華ちゃんもがネガティブ六華ちゃんに転じ、私の中がネガティブ一色に染まっていく……!


 ちょ、ちょっと待って、その前に本日最後の議題の決を採るから!

 ていうか、むしろこっちが今日の本題だから!


 恋愛面での方針を決める以前の、大前提として……!


『大前提として……?』


 ポジティブ六華ちゃん的側面が、全て演じられた虚構であるとテルくんに知られてしまった以上!


「はいぃ……私、ポジティブ六華ちゃんはフィクションですぅ……」


「そう、か……だけど、ネガティブ六華ちゃんな私も今の私の全てではなくて……ポジティブ六華ちゃんも、本当の私じゃない……だけど、テルくんはその両方の私が好きだって言ってくれた……けど……なら、次から私は……」


 どの私(・・・)でテルくんと接すればいいの!?

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