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第19話 幼馴染だけじゃない

 六華に告白した翌日。


 俺は……特に何事もなく、学業に勤しんで放課後を迎えていた。


 まぁ、学校では顔を合わさないってのは前々からだしな……。


 だから、ある意味本番はここから。

 今日も、六華は校門で待っててくれるんだろうか?


 なんとなくだけど……今日は、いないような気がする。

 というか、たぶんしばらくは俺と顔を合わせようとしないんじゃないだろうか。


 幼馴染の勘ってやつだ。


 果たしてその勘は正しいのかと、窓の外に目を向け……ようとしたところで、まだ沢山残っているクラスメイトのうち何人かから黄色い声が上がった。


 なんかもう、来訪センサーみたいになってるよな……。


「やぁ天野、今ちょっといいかな?」


 果たして、こちらに向かってきているのは峰岸紗霧その人だった。


「……別にいいけど」


 なんとなく出鼻を挫かれたような気分ではあったけど、断る程の理由じゃない。


「単刀直入に聞くけど……キミ、月本さんに何かしたの?」


「っ!?」


 ドンピシャでさっきまで考えていたことを言われて、思わず目を見開いてしまった。


「ははっ、図星みたいだ」


 たぶん、『何かした』ことを確信させるには十分なリアクションだったころだろう。


「いやぁ、今日の月本さんったら。ずっと上の空で、珍しく先生に指されて慌てたりもしてたしさ。本人にはなんだか聞きづらくて、何も聞いてはいないんだけど……」


 そして、六華の方も『何か』があったのは明白だったみたいだ。


「何があったか……っていうのは、キミにも聞かない方がいいのかな?」


 六華が話してないなら、俺から話すってのも良くないだろう。


「……悪い、そうしてもらえると助かる」


「心得た」


 そう考えて謝ると、峰岸は胸に当てて軽くお辞儀する。


 こんな仕草は、王子っつーか騎士みたいだよな……なんて、ぼんやり思った。


「ところで、今回の本題はそれじゃなくてね」


「あっ、そうなの?」


 思わず聞き返しちゃったけど、確かに考えてみれば他人の恋バナについて掘り下げるためにわざわざ来るような下世話な奴じゃないか。


 そして、だとすればこの後の話の流れもなんとなく読めた。


「前言を翻すようで恐縮なんだけど……部活のことでね」


 果たして、峰岸が口にしたのは予想通りの話題だ。


「今度、一年対二年三年の校内戦があるんだ。実質、一年のレギュラー候補選定だね。だから、それまでに……というか、そのためには今日にでも入部した方がいいと思うんだよね。ほら、チームに馴染む期間も必要なわけだしさ」


 峰岸が言ってることは、全く以て正論で反論の余地はない。


 それでも。


「んあー……悪いけど、今ちょっとそれどころじゃないっていうか」


「いや、キミにも事情があるのは理解しているよ? だけど流石にそろそろマズい時期に差し掛かってきてるのはキミだってわかってるでしょ?」


「まぁ……」


「まさか今後もずっと入部しないわけじゃあるまいし、どうにか折り合いを付けて……」


「んー……今後も、どうだろうなー……」


「………………えっ?」


 俺の言葉に、峰岸はキョトンとした表情で目を瞬かせる。


「……今の件が片付いたところで入部するかどうか、そもそもそこから迷ってんだよな」


 熱心に誘ってくれるから言い出しづらかったんだけど、流石にそろそろ伝えとかないとマズいだろう。

 そういう意味では、ちょうどいいタイミングだったのかもしれない。


「えっ……?」


 もう一度、峰岸は呆けた声を出した。


「キ、キミほどのプレイヤーがどうして……?」


 それから、信じられないものを見るような目で問いかけてくる。


「別に、俺なんて大したことないだろ」


「そんなことはない!」


 普通に思ったことを口に出しただけなんだけど、やけに反応がデカくてちょっとビックリしてしまった。


 つーか、峰岸が大声出すなんて珍しい……。


「そりゃ、スキルだけで言えばキミより上も沢山いるかもしれないよ? だけど、私が何より敬服しているのはキミの心の在り様なんだ!」


 んんっ……?

 なんか、よくわからんことを言い出したな……?


「正直に言うよ。中学時代……キミがバスケ部に入部してきたのを見た時、私はきっとすぐに辞めるんだろうなって思ってた」


「まぁ、だろうな」


 ウチの中学は、そこそこの強豪だった。

 ミニバスでの経験もない……それどころか禄にジャンプすら出来ないチビデブが入部してくりゃ、誰だってそう思うさ。


「実際、当初は酷いものだったよね。シュートはゴールに遥か届かない。パスだって、てんで明後日の方向にばっかり投げてさ。アップの時点でめちゃくちゃバテてたし」


「だなぁ」


 懐かしげに目を細める峰岸に、俺も同意を示す。


 いやぁ、最初の頃はホントに酷かった。


「だけど、キミは腐ることなく努力を続けた。そして、少しずつ……本当に少しずつだけど、進んでいった。一つ一つ、出来ることを増やしていった」


 まぁ、死ぬほど頑張ったのは事実ではある。


 ていうか、当時は割とマジで死ぬかと思った。

 我ながら、よく耐えきったもんだ……。


「そしてついにはレギュラーの座を射止めて、キャプテンにまでなった」


「レギュラーもそうだけど、俺なんかをキャプテンに指名したってのは今思っても正気の沙汰とは思えねぇよなぁ」


「それは自己評価が低すぎるよ、天野」


 峰岸は、どこか慈しむみたいに微笑む。


「キミの努力は部内の誰もが知っていた。女バスの私でさえそうなんだから、男バスのみんなはもっとよく理解してたろうね。特に我々同級生は、キミが最初どれだけ出来なかったかを……そして、キミがどれだけ出来るようになったかをずっと見てきたから。そんなキミにならみんな付いていけると思って、満場一致でキャプテンに決まったんだ」


 まぁ確かに、キャプテン就任時にそんなようなことは言われたけど……その上で俺なんかが相応しいとは思えなかったんだよなぁ……。


 ……ところでこれ、何の話なんだっけ?


「キミほどに努力を出来る人を、私は他に知らない。キミほど折れずに前に進み続けられる人なんて、なかなかいないと思う。得難いキミの才能だよ」


「あー……うーん……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……」


 これは、あんまり言いたくなかったんだけど……まぁしゃーないか。


「俺がバスケ続けてたのって、すげぇ不純な動機だったんだよ」


「……? 不純な動機って?」


「……ダイエット」


 恥ずかしくて、そう口にする声はだいぶ小さくになってしまった。


「だいえっと?」


 知らない言語でも聞いたかのように、峰岸はコテンと首を傾けてオウム返し。


「………………ふっ、ははっ」


 少し間を空けて、今度はおかしそうに破顔した。


「き、キミ、そんな動機だったの……!?」


「そうなんだよ……あと、あわよくば身長も伸びればって思いもあった」


「ははっ、なるほどそれでバスケってわけか。あ、はははははっ!」


 峰岸、笑いすぎてちょっと涙まで出てるじゃねぇか。


「ふふっ……だとしても」


 それを拭いながら、峰岸は徐々に笑いを収めていく。


「私の天野に対する敬意は変わらないよ」


 そして、そんなことを言い出した。


「いや……むしろ敬意が増したとさえ言えるかも?」


「どこにその要素があったんだよ……」


「私なら、そんな動機だったらとくに辞めていたと思うからね」


 まぁ、普通はそうだろうとも思う。

 というか、俺だってガチでダイエット自体が目的だったら早々に辞めてた。


 正確に言えば、俺の根底にあったのはとにかく変わりたいって気持ちで……だからこそ、どうにか続けられたんだ。


「なるほど……? だけどダイエットっていうのはあくまで表面上の理由で、根底の動機は別のところにある……って感じの顔をしているね?」


 ……この人、察し良すぎでは?


 顔の良い奴は、人の顔色を読むのまで上手いもんなのか……?


「まぁ、それについては尋ねないでおくよ」


 その気遣いは、正直ありがたい。


 特に今の状況じゃ、六華関連のことはあんまり言いたくないからな……。


「本題に戻ると……ダイエットの問題も身長の問題も解決したから、もうバスケを続ける意味はないってこと?」


「そこまでは言わないけどさ……今はもう、バスケのことも好きになってるし」


「だったら、むしろ」


 峰岸の目が、真っ直ぐ俺を射抜く。


「だからこそ、やっぱりキミはバスケを続けるべきだよ」


 言わんとしていることは、なんとなくわかった。


「キミは今まで、いわばハンデを背負った状態でやってきた。だけど、ようやく身体が出来てきたんだ。ここからが、本当の意味でバスケの面白さを感じられるところだよ? 今辞めるなんて、もったいないことこの上ないじゃない」


 これに関しては、俺もまぁそうなんだろうなとは思ってる。


 だからたぶん、何もなければ「あーまたあのしんどい練習やんのかよー」とかブチブチ言いながらもさほど迷わず入部してたはずだ。


 実際、六華が現れるまではそのつもりだった。

 そして、きっとなんだかんだで楽しく部活生活を謳歌していたことだろう。


 ……いや、六華を言い訳にするのは卑怯か。


 結局のところは、俺のバスケに対する気持ちがその程度だったってだけの話だ。


「だから、今日から入部しよう? それがベストな選択だよ」


 俺なんかのことを買ってくれて、こうして親身に誘ってくれるのは本当に嬉しい。


 それは間違いなく本心だ。


 とはいえ……。


「ていうかさ……別に、俺が入部してもしなくても峰岸には関係なくないか? 女バスの戦力が増えるわけでもなし。なんで俺の入部にそんなにこだわるんだ?」


 ちょっと拒絶するみたいに聞こえてしまうかもしれないけど、ストレートに疑問をぶつけることにした。


 これは、前々からずっと思ってたことだから。


「それは……」


 峰岸は、一瞬言葉に詰まった様子で。


「……確かにそうだね?」


「いや納得すんのかい」


 あっさり認められて、思わず素でツッコミを入れてしまった。


「どうして私は、こんなにもキミに入部してほしいと思っているんだろう……?」


「それを俺に聞かれてもな……」


 えっ……もしかして峰岸さん、特に何も考えずなんとなくでこんな熱心に俺を勧誘してたっていう天然ムーブでした……?

 いやもうホントに貴女、たまーにそういうとこあるよね……王子様は気まぐれだな……。


「どうして、私は……あれ? そもそも、なんで今日になって急にこんなことを言い始めたんだろう……? 天野の意思を尊重して、見守ろうって決めたはずなのに……校内戦があるから……? いや、それこそそんなものはもっと前からわかっていたことだし……」


 ブツブツと思案顔で呟く峰岸。


 いやだから、ただの気まぐれの類だろ……?


 ていうか俺、そろそろ帰ってもいいかな……?

 六華がどうしてるのか気になるし……って、あれ?


 なんか今、廊下からチョロっと六華の顔が覗いてたような……?


「……あっ」


「ん?」


 何かに気付いたような峰岸の声に、廊下の方に向けていた意識を目の前へと戻す。


「今日の月本さんの様子を見た……から?」


 なんでここで、六華の話が出てくるんだ……?


「だとすれば、この間二人が話しているのを見た時に胸に湧き出た感情はもしかして……? なるほど、そう考えると以前から……あぁ、そういうことだったのか」


 徐々に、峰岸の表情から迷いが晴れていく。


 なんだなんだ、今度はどうした王子様……。


「今、唐突に理解したよ」


「何を……?」


「キミと月本さんの間に『何か』があったと悟った時……正直に言うと、なんとなくのところも察しているんだけどね。それに気付いた時に、妙な焦りのようなものを感じて……それで、こうして前言を翻してまでキミを勧誘しに来たらしい」


「……?」


 らしい、と言われましても……。


「私は、キミのプレイをまた近くで見たいと思ってる。また、キミの傍でプレイしたいと思ってる。また、キミと一緒に切磋琢磨したいと思ってる」


「だから、なんで俺なんだ……?」


 やっぱ、理解出来てなくない……?


「ごめん」


 や、謝られても困るんだけど……というか、なぜ突然の謝罪……?


「一つ、訂正させてほしい。私は、自分でも知らないうちに嘘を吐いてたみたいだ」


 本格的に、何の話だよ……?


「私は、好きなんだ」


「いやまぁ峰岸がバスケ好きなのは今更言われるまでもなく知ってるけど、それの何が嘘を吐いてたってことに繋がるんだ……?」


「違うよ」


 何が違うって言うんだ……。


「キミのことが、好きなんだ」


 ほーん? 黄身が好きと?

 なんで急に卵の話になったの?


 ……いや、流石にそれだと文脈がおかしすぎるな?


 この場合の、『きみ』ってのは……素直に考えるなら、『君』で俺のことでは?


 つまり……?


「やーっと、自覚したか」


 いつの間にかシンと静まり返っている教室内に、鈴木の呟きが妙に大きく響いた。


「ずっと、私はこの気持ちを友情だと思っていたけれど……どうやら、違ったみたい」


 峰岸は、愛おしげに自分の胸に手を当てる。


「キミとの繋がりを失いたくないと……より強く繋がっていたいと願うこの想いは。他の誰でもない、キミにだけ抱くこの感情は」


 ゆっくりと目を閉じて。


「恋、と呼ばれるものらしい」


 もう一度開かれたその大きな目が、真っ直ぐに俺を射抜いた。


「私は、天野照彦のことが好き」


 はー、なるほどね?

 そこまでハッキリ言われちゃ誤解の余地もない。


 峰岸は、天野照彦のことが好きだと。

 恋愛的な意味で。


 いやー、ついに『王子』にも想い人が出来たかー。


 都合三年の付き合いになるわけで、俺としても感慨深いものが………………んんっ?


「へ?」


 思わず、間抜けな声が漏れた。


 天野照彦のことが、好き……?


 流石の俺も、この場面で同姓同名の別人の可能性を疑うほどアホじゃない。


 つまり……峰岸が、俺のことを?


 は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?


「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 いやちょっと待って、今の叫び俺のじゃないんだけど!?


 俺より先に叫んだの誰!?


 おかげで、完全に俺が叫ぶタイミング逃しちゃったんだけど!?


 ……って、あれ?


 今の声って、まさか……?



   ♥   ♥   ♥



 ──時は、少し遡り


 まさか、テルくんが私に……告白、してくれるだなんて。


 そんな可能性は考えてすらなくて……いやまぁ正確に言えば妄想では何度も想像したけども、そんな場面が実際に訪れるだなんて思ってもみなくて。


 結局、昨日は思わず逃げ出しちゃった……。


 うぅ、今でもテルくんの顔をまともに見れる気がしないよぅ……!

 だけど……お返事、しなきゃだよね……!


 とはいえいつもみたいに校門で待ってたら心臓が破裂しちゃいそうな気がして……放課後、テルくんのクラスに行くことにした。


 教室の中を覗き見て……ひぅ!?

 今、テルくんと目が合っちゃったような!?


 ……って、何を引っ込んでるの私。


 別に、隠れることなんてないよね。

 その……私とテルくんは、両思いなんだから。


 堂々と……そう、「私も好き!」って答えればいいだけ。

 付き合ってください、って言ってくれたテルくんに「オーケーです!」って。


 もちろん私の気持ちはとっくにテルくんには伝わってるだろうけど、やっぱりこういうのは形式が大事だもんね。

 それで晴れて、テルくんと恋人同士かぁ……。


 にへへ、恋人同士。

 ずっとずっと、夢見てた関係。


 フラれた時は、もう絶望的だと思ったけど……努力し続けた甲斐も、ちょっとはあったってことなのかな。


 だとすれば……。


「今日の月本さんの様子を見た……から?」


 ……うん?

 なんか今、私の名前が出たような?


 ていうかさっきチラッと見た時、テルくんと話してたのって……。


「だとすれば、この間二人が話しているのを見た時に胸に湧き出た感情はもしかして……? なるほど、そう考えると以前から……あぁ、そういうことだったのか」


 あっ、やっぱり峰岸さんだ。


「今、唐突に理解したよ」


「何を……?」


「キミと月本さんの間に『何か』があったと悟った時……正直に言うと、なんとなくのところも察しているんだけどね。それに気付いた時に、妙な焦りのようなものを感じて……それで、こうして前言を翻してまでキミを勧誘しに来たらしい」


「……?」


 何のお話してるんだろう……?


「私は、キミのプレイをまた近くで見たいと思ってる。また、キミの傍でプレイしたいと思ってる。また、キミと一緒に切磋琢磨したいと思ってる」


「だから、なんで俺なんだ……?」


 ……正直に言えば。

 私は、今でも峰岸さんにかなり嫉妬してる。


 だって、私の知らないテルくんのことを沢山知っててズルい。

 そんなの、言いがかりだってわかってるけど……まるで、私の居場所が取られちゃったみたいで。


 私に優しく接してくれる峰岸さんには申し訳なく思いつつも、醜い嫉妬の炎を消すことがずっと出来なかった。

 峰岸さんはそんな私に気を使って、「私と天野の間にあるのは決して恋愛感情なんかじゃないよ」ってハッキリ断言してくれてるのにね。


「ごめん」


 ……だけど。


「一つ、訂正させてほしい。私は、自分でも知らないうちに嘘を吐いていたみたいだ」


 テルくんは、ハッキリ言ってくれたもんね。


「私は、好きなんだ」


「いやまぁ峰岸がバスケ好きなのは今更言われるまでもなく知ってるけど、それの何が嘘を吐いてたってことに繋がるんだ……?」


「違うよ」


 私のことが、好きだって。


「キミのことが、好きなんだ」


 そう、こんな風にハッキリと。


 だから、もう峰岸さんに嫉妬する必要なんて………………んんっ?


 あれ、何かの聞き違いだよね……?


 なんか今、峰岸さんがテルくんに告白したように聞こえたような……?


「ずっと、私はこの気持ちを友情だと思っていたけれど……どうやら、違ったみたい」


 いやいや、まさかそんな……。


「キミとの繋がりを失いたくないと……より強く繋がっていたいと願うこの想いは。他の誰でもない、キミにだけ抱くこの感情は」


 まさか……。


「恋、と呼ばれるものらしい」


 そんな……。


「私は、天野照彦のことが好き」


 はー、なるほどね?

 そこまでハッキリ言われちゃ誤解の余地もないよね。


 峰岸さんは、天野照彦のことが好きだと。

 それも、恋愛的な意味で。


 つまりは、テルくんのことが……んんっ?


『へ?』


 私の間抜けな声と、ほとんど同じ響きのテルくんの声が重なった。


 いや、だって……峰岸さんが?


 テルくんの、ことを?


 そ、そ、そ、そんなの……。


「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 聞いてたのと違うんですけどぉ!?

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