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第1話 幼馴染がやってきた

「テルくんっ!」


 高校の入学式からの帰り道、校門を出たところで懐かしい声色が鼓膜を震わせた。


 直後、ありえない(・・・・・)と心の内で断ずる。

 あいつ(・・・)が、こんなところにいるはずないんだから。


 いや……仮にいたとしても、こんな風に弾んだ声で俺に呼びかけてくるはずがない。


 だって三年前、俺はあいつのことを……。


「っ……」


 脳裏に蘇ってきたあの時の光景を、頭を軽く振ることで掻き消す。


 それから、声が聞こえてきた方を振り返ると……果たして、そこにいたのは見知らぬ女子だった。

 より正確に言えば、見たことがないくらいに可愛い女子だった。


 ミディアムショートの髪色は、明るいブラウン。

 パッチリと大きな目は、俺の方へと真っ直ぐに向けられている。


 綺麗な線を描く鼻梁の下、桜色の唇が笑みを形作っていた。

 健康的に日焼けした肌が、目に眩しく感じられる。


 制服のリボンの色からして、どうやら俺と同じ新一年生らしい。


 入学早々制服を着崩すとは、なかなか良い度胸だ。

 いやまぁウチの高校規則クソ緩いらしいし、彼女の他にも似たような格好の女子は結構いたけど。


「いやっはー、どもども! ザ・感動の再会ってやつですねぇ! 映画ならまさにここがクライマックスシーン! 全米も大号泣ですよ! テルくんも、遠慮なく泣いてくれてオッケーですからねっ! あっ、でも残念ながら私の涙はお預けですっ! 女の涙は武器なので、こんなところで安売りするわけには参りませんっ!」


 さて問題は、そんな見知らぬ美少女がなぜ俺にこんなクソハイテンションで話しかけてきているのかってことなんだけど……まぁ、たぶん俺の自意識過剰だな。

 『テル』なんてあだ名はありふれたもんだし、きっと近くに彼女の知り合いでも……。


「………………は?」


 いや、違う。


 違う違う違う!


 見知らぬどころか……!


 えっ、ていうか、嘘、マジで?

 なんで?


 なんで(・・・)六華がここにいる(・・・・・・・・)


 確かに、印象はガラッと変わった。


 でも、面影はある。

 見間違えるはずはない。


 なにせ、物心ついてからずっと一緒にいた幼馴染だ。


 いや……幼馴染だった(・・・)、と言うべきか。


 いやいや、そんなことより今はなんで六華がここにいるのかってことで……。


「おりょりょー? テルくん、フリーズしちゃってどうしましたー? 愛しの六華ちゃんですよー? ほらほら三年ぶりのこのお顔、よーくご覧くださいっ?」


 ていうか、近いなコイツ!?

 なんで目の前まで寄ってくるんだよ!?


 睫毛長っ!?

 それは昔からか!


 って、そうじゃなくて……!


六華(りっか)……だよな?」


 疑問の言葉は思わず口を衝いて出たもので、考えた結果ではなかった。


「あっはー、だからそう言ってるじゃないですかー!」


 六華は、ニッコーと明るく笑う。


「ただ白馬の王子様を待ち続けるだけのお姫様なんてナンセンス! 運命の赤い糸を力づくで手繰り寄せる系美少女、貴方の月本(つきもと)六華(りっか)です!」


 そして、横にしたピースサインを右目の前に持ってくるという謎のポーズを取った。


「おま、えっ……なんでここに……!?」


 俺の頭は未だ絶賛混乱中で、脳内に浮かんでいた疑問がそのまま飛び出す。


「そりゃ、テルくんを追っかけてきたに決まってるじゃないですか?」


「なっ……!?」


「ていうか今の、『自分で美少女って言うなよ!』とかツッコミ入れてくださいよー。私が自信過剰の馬鹿みたいじゃないですかー。あっ、でもでも! 『貴方の』って言葉を否定しないってことはぁ……やっぱり、私はテルくんのモノってことでいいんですねっ?」


「いいわけあるか!」


 これもまた、反射的に出てきた否定の言葉だった。


「だって俺は三年前、お前のことを……!」


 また、脳裏にあの時の光景が蘇ってくる。


「こっぴどく、フッただろうがよ!」

ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。

本作は、ファンタジア文庫から発売された同名作品に加筆してWeb掲載していく形となります。

商業版未読の方でもお楽しみいただけるようになっておりますので、よろしくお付き合いいただけますと幸いです。

本日中に、3話目まで投稿致します。

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