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青薔薇の花泥棒 ~神隠しの街の怪盗と狙われた花嫁~  作者: 暁光翔
二章「手蔓への渇望、知ってしまった真実」
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青薔薇の花泥棒 五話「曖昧な羅針」

 朝目覚めてやることを済ませていく。

 着替えや洗顔を終わらせた後、朝イチでやっている店に買い出しに行き、朝食を作る。

 食後の片付けをして、リビングで珈琲を啜りながらサフィールを待つ。

 重低音が響く、玄関がノックされた。出迎える。

「おう、呼ばれたから来たぜ」

「悪いな、いきなりで」

「全然ヘーキ」

 リビングに連れて行く。

「おはよう、サフィール」

「おう、リュビス。おはよ。昨日聞いたぜ、相当ヤバい目に遭ったってな」

「うん」

「大丈夫、何とかする方法一緒に考えようぜ」

「ありがとう」

 立ち話もそこそこにダイニングテーブルチェアに腰掛ける。

「で、アメティスとしてはこれからどうしたいんだ?」

「そうだな」

 昨日考えたことを纏める。

「まず、リュビスが奴らに襲われても逃げ切れるようにしたい。俺かサフィールのどちらかが側にいれば、少なくとも雑魚は追い払える。二人には申し訳ないが相当の負担を掛けると思う」

 リュビスは俺達に常に監視されることになるし、サフィールは自分の時間を減らされるし怪我を負うリスクもある。

「成程。リュビスがアイツらに捕まったら終わりだからな。リュビス一人でもなんとかなるかもだけど、念には念をってか」

「あぁ。俺が常に見張れればいいが、そうはいかない。盗みや危険な場所に調査に行く時どうしても一人にしてしまう。だから」

「それは別にいいんだけどよ、ずっとそのままってわけにはいかねぇだろ?」

 彼女に自由の無い生活を送らせ続けるわけにはいかない。すぐにでもこの状況を打破しなければ。

「勿論、奴らを潰すつもりだ。奴らの調査を二人にも手伝ってほしい」

「了解。他にやれることは何かあるか? 衣装別の場所に隠すとか」

「衣装を分散させて隠すのか。向こうは大勢いて俺達が移動できる範囲内なら、いつかは全て発見されるだろうな。魔法にも限界はある」

「そうか……」

「でも、一度に衣装を全て持って行かれるのを避けることはできる。奴らの手元に衣装とリュビスが揃わなければ厄災は起こせない。まぁ、盗品だから俺達以外の誰にも見られてはいけない。隠す場所がお前のアパートだと近隣の住民に被害が及ぶ可能性もあるが」

「うーん、要検討って感じだな。無関係の人間を巻き込むわけにはいかねーし、セキュリティ強え場所も限られるしな」

 街の人がいる中刃物を大量に投げてきたらまずい。重傷者が多数出ることになる。此処も近所の人は随分減ってしまったが、人がいないわけではない。

 人気の無い場所に埋めておくのが最適か? リュビスをそこに近付けなければすぐには気付かれない筈。

「とりあえず、隠し場所とかいろいろ探してみるか。駄目なら別の方法考えようぜ」

「あぁ。頼む」

 一呼吸置く。二人が俺を見つめる。

「ちなみに調査ってどれくらい進んでるの?」

「今のところ確定した情報は殆ど無い。今あるのは父さんの手記の情報と俺の推測だけだ。推測はかなり突飛な内容だ」

「それでもいい、どんなのか教えて」

 昨日の妄想を整理する。

「レオトポディウムさんが、奴らと関係しているんじゃないかって。確証は無いが」

 俺は何故その考えに至ったのか説明した。昨日の夕方のこと、花嫁衣装の機能、その他諸々。

 二人とも何度も言葉を失いながら俺の話に耳を傾けた。

「以上が俺の考えなんだが、流石に無い、よな」

 自分の発言に自信が無くなっていく。

「なんつーか、信じられねぇな。あの人が悪の組織の一員だとか……」

 リュビスは無言のままだ。そんなこと言われたらこの反応をせざるを得ないだろう。

 レオトポディウムさんはかなりの人格者だ。美術館や孤児院などの施設へ積極的に寄付をしたり、神隠しで親を失ってしまった子供達の保護や援助をしたりと、常に人の為に尽くしている。

 そんな善人が奴らの仲間など耳を疑うような話だ。

「ちなみに、リュビスの近くに衣装を近付けると霧が出るって話だけどよ、どんな感じなんだ?」

「ちょっと待ってろ、ネックレス取ってくる」

 席を外し、地下からネックレスを持ち出して戻る。辺りに黒い霧が漂い始める。

「成程なぁ……大学で起きたのもこんな感じだったな。レオトポディウムさんが敵かどうかは分かんねーけどこの事件に関わってる可能性はあるんじゃね?」

「あぁ。だが偶然かもしれない。大学内に花嫁衣装があったとは思うが、それをレオトポディウムさんが持っていたとは限らない。ただあの場にいただけの無関係な人物の可能性もある」

 自分の声が徐々に小さくなっていく。元々そんなに無い自信が更に無くなっていく。

「でも」

 リュビスの声が俯いた俺の顔を元の位置に戻す。

「アメティスはレオトポディウムさんについて調査したいんでしょ、今までの方法じゃ、満足な情報が得られなかったみたいだし」

「あぁ」

「あの人はこの事件に関係無い可能性が高いかもしれない。でも白とも黒とも言い切れる証拠は無い。少なくともアメティスは腑に落ちないんでしょ? ならやるだけやろう。あの人を疑うようなことはしたくないけど、皆を助ける為に必要なことなら。何も無ければそれでいいし」

「俺もそうした方がいいと思う。片っ端から当たっていかねぇと手掛かり見つかんねぇだろうからな。少しでも怪しそうなら調べた方がいいんじゃね? 善はいそげだ。早速聞き込みしようぜ」

 こんな妄想をすんなり受け入れてくれるとは、もう少し渋るかと思っていた。

「それじゃあどの辺りに行く? とりあえず大学?」

「あぁ。そこであの人の家とかよく行く場所の情報を得て、そこで次の情報を手に入れる」

「なんか、探偵とかストーカーみてーな感じだな」

 ストーカーは一言余計だ。周りからしたらそう映っているかもしれないが。

「大学を俺とお前らの二手に分かれて調べる、それでオーケー?」

「あぁ、それで構わない」

「私もそれでいいよ」

「じゃ、善は急げだ。行くぞ!」

 サフィールは一人先にリビングを飛び出していった。

 全く、慌ただしい奴だな。

 俺達もアイツの後を追った。


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