はじめての・・
誰かがドアをノックする
「誰ですか?」俺がドア越しに訪ねる
「宿の者ですが、お客様に是非お会いしたいという方がいまして」声は給仕のサヤカ
「はて、この町に知り合いなどいませんが?」
「店の者の申すにはあやしくないので通してよいとの事です」
「ケンどうする?あやしくないそうだけど」俺
「宿の人間がそう言うのなら間違いなさそうでござる」ケン
「分かった、どこで会えばいいのですか?」
「はい、食堂でお待ちしてます。そこなら大勢いるので物騒な事は起きないでしょう」
「わかりました、今行きます」
「あるじ、この気配はさっきギルドで感じた気配と同じでござる、油断召されるな」
「勿論油断なんてしないがいざとなったら用心棒さんとケンが守ってくれるだろ?」
「当然でござる・・ですが相手は隠密スキルを擁する曲者」
「まあ、会って話を聞いてみないと曲者なのかどうかも分からないし」
食堂に降りてサヤカが用意してくれていた4人掛けの空きテーブルに座る俺
程なくサヤカ嬢がひとりを案内してきた
背は低そうだが顔を見られたくないのかフードをすっぽり被ってる・・・
フードの奥から見える鋭い眼光がただ者ではない様相を呈している
全体的に黒基調の地味な服・・なんとなくだが日本風の忍者服な感じもする。
「お初にお目にかかります」フードを取り挨拶する
そこにはうら若き少女?14~5才位に見える、対面に着座した
一瞬の沈黙の後俺が切り出す
「私に何用でしょう」
「は、失礼ながら今日偶然農村で狩りをしていたところ貴殿を見掛けまして」
「ほう、狩りの現場を見たのですね」
「拙者武者修行中の身ゆえ訳あって気配を消す術を使って貴殿を見てました」
「こっちも気配を消していたのに見えていたんだ」
「は、多分貴殿が使っていたのは魔物用の隠密魔法、人間には見える魔法かと」
「盗賊と間違われないようにわざとその様にしてました」ケンが思念を送る
「なるほど、で、ずっとギルドまでつけてきた?」
「は、申し訳ありませぬ、で、ものは相談なのですが・・・」
「なんでしょう」
「わ、われに剣術指南をしていただきたく!」
「はあ?知ってるのでしょ?私はランクGの超初心者ですが?」
「ランクなど関係ござらん、要はそのものに宿る素質でござる」
「駄目でござる、このものは近づけてはなりません」ケンが思念で話しかけてきた
「ん?なぜだ」俺がケンに思念で返す
「あるじの潜在能力を知る者を近づけてはなりません」
「たぶん、この子はそんなもんじゃないと思うけどね」俺
「し、しかし、あるじの修行に邪魔でござる」
「言っとくけど俺はケンの野望なんて知らないしケンの思い通りになんて行動しないよ」
「ぐ・・・それはそうですが・・・」
「秘密教えてくれたら言う事聞いてもいいけど?」
「いえませぬ・・・」
「じゃ、俺の好きにさせてもらうよ」
「ぐ・・・」なにも言えないケン
「で、武者修行って言ったけどどのくらい俺につきまとう感じ?」
「ご迷惑でなければ我に自信がつくまで・・長い期間ではござらん」
「見ての通り俺はいま宿住まい、ここがすみかなんだけど?」
「知ってます、ここの用心棒は我の父親故」
「なるほど、剣術一家って事だね」
「実のところ父が先生(勝手に呼びはじめた)に見所があると知らせてくれたのです」
「先生って誰?」
「は、先生は先生です」
「あ、俺かwそれ照れるから止めて」
「では、なんとおよびすれば?」
「その前にまずは自己紹介からじゃないの?」
「失礼つかまつった我の名は「コトミ」でござる以後よろしゅう頼みます」
「はい、わかりました、俺の名は「タイジ」よろしく」俺
「は、それではタイジ先生、修行をつけてくれるのですね」
「修行をつけるって言ってもなに教えて良いかなんて知らないよ」
「勿論でござる師に教えを請うつもりはござらん、技は見て盗む物」
「つまり?なにしたいの」
「は、パーティ登録していただければ共同でクエスト請負可能になります」
「なるほど、狩猟の場に一緒に行きたいって事だね」
「は、この目で先生の技を見たく」
「大げさだね・・そんなたいした物じゃないけど」
「いえ、今日の剣技のすさまじさはこの目に焼き付いてますれば」
「それはそうとして君の生活はどうするの?」
「は、実は先日この町に戻って来たばかりですがこの宿の従業員として勤めます」
「なるほど、住み込み従業員で俺の狩りの時には同行するって話ですね」
「は、先生が許して頂けるのならばそうしたく」
「勿論だよ。じゃ明日から宜しくね」
「年上の手下などおこがましいのですが宜しくお願いします」
「君歳いくつなの?」
「は、今年で12になりました」
「ケン、俺っていくつに見られてるの?」ケンに思念を送る
「見た目では10位にしか目えませんな、事実ギルド登録書にも10才と記載されてます」
「げげげ、若返った感覚はあったけど10才かぁ・・・幼すぎる気がする」
「容姿はどうにもなりませぬ、受け入れるしかないですな」
「わかったよ」
「先生?」不思議そうにコトミがこっちを見てる
「い、いや何でも無い」
「とにかくこれからは仲間としてよろしくね」俺
「は、よろしくお願いします」
「ところで俺は済ましたけどコトミ君は食事取ったの?」
「いえ、まだでござる。この後この宿で仕事して終わってからの予定です」
「折角出会ったんだから俺がおごるよ。なんでも好きな者食べて」
「し、しかし先生にご迷惑が・・」
「なにいってるの遠慮なんていらないから。おーいサヤカ君」
「はーい」
「コトミ君に食事頼みます」
「コトミは私と同じ従業員です。仕事が終わってからです」
「若い子がお腹すかせるのは見てられない。君も一緒に食べよう」
「え?いいんですか」サヤカもやっぱり若い子お腹はすくのだ
「みんなで食べれば美味しいから。でも俺は飲み物だけでいいからね」
「そっかお客さんはさっき超大盛り食べたばかりですもんね」
「超大盛りって・・・サヤカ君が気を遣ってくれたお陰だよ」
「お客さんみたいにいつもいつもお駄賃くれる方なんていませんから」サヤカ
「あ、とにかく飲み物と二人分の食事もってきます」バッと動くサヤカ身が軽い
「先生は若い子には優しいのですな」コトミ
「なんか人聞き悪いね。俺は若い子だけじゃなく誰にでも優しいの!」
「うむ、あるじの言ってる事は本当だ、あるじ程の人格者はそうはいないぞ」ケン
「うん、・・・父上も同じ事言っていた」
「え?君の父とは一度も会ったことないし話もしたことないのに?」
「ここの宿の事でしたら父上は全て把握してます。宿泊客の性格もです」コトミ
「おまたせ。さ、忙しいから遠慮無くいただきます」快活なサヤカ
「でも、君ひとりでこのお店回すなんてすごいよね」
「慣れです。とにかく体が勝手に動くのでナにも考えなくてもいいの」サヤカ
「プロって事だね」
「わたし、この仕事合ってるの。毎日お客さん見てるだけで楽しい」
「でもこの間の酔っ払いとか嫌な客もいるでしょ?」
「そんなの大丈夫、店主(用心棒)が人睨みすれば誰もちょっかいださないの」
「あ、初めて聞いた。用心棒さんて店主でもあるんだ」俺
「勿論です。ウチは殆ど家族経営みたいなもんです。私は傭われですけどね」サヤカ
「つかぬ事聞くけど、なんでここの宿は深夜遅くまで営業してるの?」
「あらやだ、ウチは年中無休の24時間営業の宿なんですよ」サヤカ
「あ、そうか24時間営業なんだ」
「はい、まあ昼間は暇なんでほとんどの従業員は寝てますけど営業はしてます」
「あやしい輩が宿泊しても不干渉だよね」
「うん、ウチは宿と客に迷惑掛けさえしなければ不問が掟なの」
「この町の宿ってみんなそうなの?」
「うーんこの町の宿っても10軒ぐらいしかないけどね。大体そんなもんですよ」
とかなんとか話してるうちに二人は食べ終わっていた
「さ、食事も済んだしコトミもこのまま仕事よ」
「はい、じゃ先生明日から宜しくお願いしますね」
やれやれ、コトミは昼間狩りをしたというのに深夜遅くまで仕事なのだそうだ
日本だったらブラック企業+未成年者就労で大変なお咎め受けるだろうに
「さ、あるじ話はおわりましたさっさと部屋に戻り寝ましょう」ケン
「うん、狩りで大漁だったり突然弟子出来たり宿の事知れたり忙しい一日だったよ」
翌日コトミを従えて冒険者ギルドに行くと
「タイジさん、もう若い子をたらしこんで・・・不潔ですわ」
なぜか受付嬢のリサが怒ってる
「はあ?この子は武者修行のため従事する事になっただけで他に理由ないよ」
受付のリサは一体なにが不服なのだろう?
コトミもなぜか不機嫌になる
「師匠、そんなことよりも早く登録済ませて下さい、早く狩場に行かないと出遅れますよ」
「はいはい、それではパーティ登録お願いします」俺
「パーティ登録は登録料として一人当たり銀貨3枚必要です」
「そっか人数ふえたら馬鹿にならない金額だね」
「ご安心下さい大口契約制度があり1~5人までは一人当たり銀貨3枚ですが
5~20人だと一人当たり銀貨2枚。それ以上の登録だと一人当たり銀貨1枚です」
「なるほど、多ければ多い程割安になるんだね。将来は大人数でブイブイ言わせてみたいね」
「頑張って下さい。人数が増えると管理運営が大変ですが収入も格段に増えますので」
「だけど、人数増えるとそれに従って個々のランクも違うよね?その場合はどうなるの」
「はい、基本パーティーリーダーのランクがそのパーティーのランクです」
「なるほど」
「ですが場合によっては外部から高ランク冒険者をゲストに呼ぶ時もありますよね
その時は一番高ランクの冒険者のランクが適用されます」
「なるほど、高ランク冒険者を呼んで一攫千金を狙う事も可能って訳ですね」
「すべては自己責任ですのであまり欲張ると命取りの可能性もあります」
「身の長けに合った運用も大事です。命あっての物種ですからね」
「パーティと言ってもいろいろ思惑次第って事なんですね勉強になります」俺
「はい、これで登録終わりましたで、今日はどんなクエスト受けて頂けるのですか?」
「確かパーティ人数次第ではより高いランクのクエストも受けられると聞きました」
「はい、可能です」
「では、改めてこのゴブリン討伐受けたいのですが?」
「残念ながらゴブリン討伐となるとGランクでは3人以上のパーティが必要です」
「そっか、でも僕には周知の通りこの魔剣が相棒だから、実質3人パーティと同じ」
「確かに・・・うーん、どうしようかな!」多分に受付嬢の裁量権があるようだ
少し考えたあとリサが交換条件を出してきた
「じゃ、今度夕ご飯誘ってくれたら特別に許可します」リサ
「は?お姉さんと食事?」
「失礼ね、私だってまだ12才なんだから大して変わらないわ」
なんとリサもコトミと同じ12才、大人びてるのでもっと年上に見える
この世界の人達ってちょっとみんな大人びて見えるなぁ
まあ日本人感覚だと西洋の人は実年齢より老けて見えるアレと同じなのかも
逆に西洋人からみると日本人は総じて子供っぽく見られるが
「どうするの?」リサ
「貴方の方がよほど不潔ね」コトミがぼそっとつぶやく
「はあ?なんですか?」な、なんか険悪?
「まあまあ、いいですよ食事ぐらいいつでも大歓迎ですから」俺
と言うわけ?でなんとか今回はゴブリン討伐の任を受ける事に成功した
ゴブリン討伐ばぐーんとポイントアップが期待できるのでなんとしても成功させたい。
「ではタイジさん今回は南門から出動お願いします」リサ
最初は東門、次は西門ときて今度は南門の様だ
南門から外にでるとすぐ目の前は樹林、田畑などはなく薄暗い感じ見通しも悪い
「先生、この先10分も歩けば結界外、ゴブリン巣窟はすぐです」コトミ
「いかにも化け物が出そうな雰囲気だね」
「結界範囲が偏ってるのは意味があるの?」俺がケンに訪ねる
「は、どうしても商人達が使用する街道の安全確保が優先なので主要道路がある
南側と北側の結界範囲は狭いのです」ケン
「街道沿いは安全が保たれてるって訳か」
「完全ではありませんし盗賊には魔除け結界は効きませぬ。旅は危険なのです」
「あるじ、今回も我は封印しますか。あるじの実力ならばゴブリン程度に遅れはとりませぬ」
「うん、今回はロングソード使ってみるよ」
「あるじの10才の体では少々重荷かもしれませんが何事も修行ですからな」
「それはそうとケン、いいの?コトミにケンが話せることばれちゃてるけど?」俺
「なにを言いましょう。魔剣が会話するなど日常茶飯事、驚くことなどございませぬ」
「先生、わたしの剣もあるじのもつ魔剣ほどではないですがその能力は有したます」コトミ
「あ、そうなんだ、そーいえばギルドの受付嬢もケンと話しててもまったく動じてなかったね」
「あるじは知らないようなので教えますが魔剣にも天と地ほどの実力差がありますし
我はすでにギルドカードに従者として登録済みでござる、カードの裏側に記載されてます」
「どれどれ」俺は改めてギルドカードの裏側を見てみる
冒険者 タイジ
従者 ケン
パーティメンバー コトミ
「で、あるじの名前の所を指でなぞってみてくだされ」
「うん、あ、なんだ能力値が出てきたよ!」
冒険者 タイジ
年齢 10
レベル 5 ランクG
体力 120
知力 132
魔力 118
固有スキル 無し
魔剣 ケンを従える
「この能力値ってどうなの?」
「は、一般的な10歳の人間よりはいくらかマシ程度です」ケン
「ケンが勝手に偽装してるんだよね?」
「ひみつです」ケン
「この数値は他者が見れるの?」
「ギルド保管の鑑定装置以外での測定は不可能でござる。なおコトミの能力も他人はみれませぬ」
「なるほど、最初に血液をカードに垂らしたのはDNAによる個別化か・・」
「でぃーえぬえー?なんですかそれは?」
「いやなんでもない」
「大賢者の存在といいあるじにも秘密は多そうでござるな」
「まあ、お互い様という事だね。」
能力値はその者の強さを数字で表す絶対数。まず他人の数値を知ることは出来ない
魔剣であるケンの魔法であっても測定は不可能。万一測定できたとしてもまず偽装
してるとみて間違いない(従者の魔剣が必ず関与してる)
果たしてギルドカードをまぶしく照らしたタイジの数値はどのくらいなのか?
物語が進むにつれ次第に明らかになっていくだろう・・・
新メンバーが加わりました。