ラムダ王子領
ヤルダート第二の都市ダムラを納めるは第一王子ラムダ
「ダムラとはふざけたネーミングの都市だなぁ」
「ラムダ王子がこの地を賜った際自分はまだ未熟だとあえて領都名をダムラにしたそうです」
「それなりに意味はあった訳か」
「他国の事を揶揄するのはどうかと」ケン
「別に揶揄などしてないよ」
倉庫の扉を開けて外にでてみると、そこは見事な倉庫街、前も後ろも右も左も同じ作りの倉庫が見渡す限り続く・・・一体何のため?
「なんじゃここは・・これでは部外者が秘密の通路など発見出来るわけないわな」
「と言うかなにか印を付けておかなければここに戻ってこれませんぞ」ケン
「大丈夫さ、そのためのズメルのカオスイーターなんだから」
「ふ、我が迷うなど絶対にない安心せよ」
「我が倉庫の中に無色透明の魔方陣おいておきましたからズメル使うまでもなく」ケン
「移動魔方陣便利だよな、どこにいっても一瞬でもどれるな」俺
ケンがアイテムBOX使って同じ魔方陣を無限にコピーして使ってる。ばらまき放題
「紙みたいな魔方陣置いて雨風で大丈夫なのか?」
「紙に見えますがこれはれっきとした魔道具。一度置いたら定着するのでいたずらとか誰かが勝手に動かすとか出来ませぬ。設置した者のみが解除出来る上級魔道具ですぞ」
「成る程、簡単にしてのけてる風でも奥が深いという訳か」
「そこらへんの木っ端魔道士ごときにこのような移動魔方陣など作れませぬ」ケン
「欠点は一度でもそこの場所に行かないと使えない事だな」
「さよう」
「どっかのネコロボットみたいなどこでもなんたらには劣るか・・」
「どこでもなんたらとかいう魔道具は存じませぬがこれ以上便利な魔道具などありませぬ」
「他の移動魔法とかはないの?」
「ムーブメントという中級魔法ありますがあまり役に立ちませぬ」ケン
「それは視界の範囲でしか移動出来ないやつだろ」俺
「しかも詠唱が必要なのでとっさの移動にはワンテンポ遅れてしまいます」
「危険回避にもならんな」
「どこの牢獄でもアンチマジックエリアと地下に作るのは移動系魔法防止の措置ですな」
「あのピカって発光する魔方陣は常設型なので後付けの魔法は通じませぬ」
「あ、ダンジョンでよく見かけた発光型はアンチマジックエリアを無効にする訳か」
「常設型と後置き型の違いですな」ケン
「後置き型でも一度設置出来て機能すれば常設型になります」ケン
「アンチマジックエリア内で発動する魔方陣が光るのは無効化を無効にしてる証です」
「なんだかややこしいな」
「そんなもんだと思ってればいいだけですので」ケン
「早い話がケンとズメルがいれば絶対に迷子にならないって事だね」俺
「平たく言えばそうですな」ケン
前にも述べたがケンとズメルは主人であるタイジに紐付されてるので意図的行為以外では絶対に離ればなれにならない。タイジの命令で瞬時に戻ってくる
「ケンこれ作って」タイジが思念通信でケンに概念を送る
「これは?なんでござるか」
「ドローンだよ、無駄に動いてもしょうがないから上空で現在位置と進路を決める」
「でしたら主人のGoo○leマップとやらでも可能なのでは?」
「地形と道は分かるけど建物の高さとか種類がわかりずらいんだよ」
「なるほど適材適所ですな・・・出来ましたぞ」ケン
「ブゥーーーン」空高く舞い上がるドローン
「これはなんと便利な・・戦闘時の偵察に使えますな」ケン
「まあ、使おうと思えば使えるね」
「良し、方向が分かったしGoo○leマップにも書き込んだ」
「なんど連動するのですか」ケン
「一応元の世界で俺はプログラマーの端くれだったからねこれぐらいは朝飯前だよ」
「恐ろしい兵器になるぞそれ」ズメルも驚いてる
「主人の自動マップとやらAMAから解かれるとこんなに広大になるのですな」ケン
以前AMAが効いてるダンジョンでは5M範囲程度しかマッピング出来なかった
「俺も驚いたよダムラの街のほどんどカバーしてる。もっと早く気がつくべきだった」
「帰り方もわかったし方向も分かったので先に行きましょう」ズメル
「うん、地図によると倉庫街は続くが東方向のほうが賑やかな感じだ、そっち行こう」
「主人の言う事に間違いありませぬからな」シュウ
あまり役に立たないと言ってたムーブメントを使い一行は見える範囲での瞬間移動を繰り返し倉庫街から抜けた
「問題は我の所持する金貨がこの国に通じるかどうか・・」
「前の主人はここの通貨は備蓄してないのか?」俺
「主人・・知ってるくせに我を又試してる・・あくどいですぞ」
「お前の口からその件なら大丈夫ですと言ってくれるのを期待してるんだが?」
「こ、これは我の防衛本能にて自分の口からはアイテムBOXの中身は明かせないのです」
「俺のことを主人とは完全に認めてないって事だな」
「そんなことはござらん・・主人いじめないでくだされ」
「金貨があるかないか位の事でフリ長過ぎだ」ズメル
「有るのかと言われればあります・・・5万枚位しかありませぬ」ケン
「そんなに使えるか!」俺
「わかってる事とは思いますが・・・」
「ハイハイ、耳タコ」
「宿は倉庫に戻るから必要ありませんね」シュウ
「折角だから領都にお土産でも買っていこう」
「本当に物見遊山なんですね」シュウ
「だから、そうだって初めから言ってる」俺
「やれやれ両国は今大変な時期だというのに暢気なことだ」ズメル
「だってラムダ殿下がそう言うんだから従うしかないだろ」
「多分我が村ザビルの時と同じで窮状を見て欲しいのでしょう」シュウ
「百聞は一見にしかず、か」俺
倉庫街から出ると一応町並みが見えてきた
「おお、比較的整理されてるし魔灯も整備されてて思ったよりも文明度高そうだな」
「隣国ヤルダートの情報はほどんど知らされてませぬが文化水準は我が国と同程度なのはある意味当然かと」ケン
「まあ、魔法とか科学は人づてに伝わるからとんでもない圧政とか経済危機でも無い限り自然に横並びになりますな」ケン
「変な話かもしれないがコトミの組織はこの国に食い込んでるかな?」
「コトミの話だと虐げられてる民による自然発生的な組織と聞きましたから国境を越えてる可能性はありますな」
「だとしても我々は暗号も合い言葉も知らないので接しようが無いとみるが?」ズメル
「コトミ君と連絡付かないかな」
「我のカオスイーターを最大出力にすればこっちからの一方通行なら可能かも」
「コトミ君からの返事がなければ全く意味がないな」
「ですのでやりとりは不可能でしょうな」ズメル
「国の街の繁栄を知る一番は市場に行くか屋台に行くかだ」俺
「飲み食い、お土産ですな大賛成です」シュウ
「どの町でも中心か城門に市か屋台と相場は決まってますな」ケン
「良し、では一番近い東門を見に行こう」ゾロゾロ
「主人しばしお待ちを」とケンがクルクル巻かれてる移動魔方陣を広げて設置
「ここなら誰にも目立たずに移動可能になります」
「おいおい勝手に余所の国に移動魔方陣設置して良い物なのか?」
「黙ってれば誰も分かりません」ケン
「それにちゃんとした魔道士がいればそもそも移動魔方陣など設置出来ない」ズメル
「しらっと言うがお前がこの国の魔道士やっつけたんじゃないのか?」
「あはは、そうでしたな、多分この国に大魔道士皆無ですな」
「とんでもないことをサラっと言ってるな」ケンも呆れてる
「外堀埋め放題・・・まさにヤルダートは丸裸危機状態」俺
「生臭い話は視察終えてから総括しましょう」ケン
「だな、しかし・・移動魔方陣一つでその国の窮状を知れるとはな」俺
市を訪れるが予想通りまったく活気がないというか店の半分以上が開店休業状態
「これはあきらかな食糧不足・・・並んでる品物もかなり傷んでますな」ケン
「まさかとは思うがタラン副政務官が横流ししていた備蓄食料の行き先って」俺
「ですが前辺境泊って手ぶらで密会していたのでは?」ケン
「ケンと同じでアイテムBOX使ったのだろう」
「そもそもが抜け道が倉庫街ってのが証拠ですな」ズメル
「よく分からないが我が王が派遣した副政務官と前辺境泊が結託してヤルダートを支援してた?なのになぜ我が領をオークロードに襲わせたのだ?」
「その辺はラムダ殿下にお聞きせねばわかりませぬな」ケン
「ナゾは深まるばかりか・・」
「それにしても闇取引をあてにする国って酷くないですか」シュウ
「もしかしたら長年の慣例なのやもな」俺
「だとしたら正義を押しつける主人は両国にとって邪魔そのものって事?」ケン
「まあ、世の中に正義も悪もないのだろうけど明らかに歪んでるな」ズメル
「もしかしてですがこのような癒着状況、国王陛下は知らぬのでは」
「うむ裸の大将、お山の大将の可能性は拭えまいな」ケン
「もしかして癒着やワイロを通じて国を守っていたのは前辺境泊やタラン達?」
「世間知らずの俺は何百年掛けて築いたバランスをぶち壊してる?」
「そうかも知れませんが腐敗や癒着、ワイロが横行する政治はいずれ破綻します」ケン
「それが今ってか?」
「世直しですな」
「嫌だよ、そんな責任俺もてねぇ」逃げ出したい俺
「何を今更、それに大暴走嬢コトミを子爵に任命したのは主人ですぞ」ケン
「うむ、血を見ないで無事監査が終わるとは思えないな、今頃どんだけ首が飛んでるか」
「ばか、ズメルまで調子に乗ってなに言ってるんだよ、アケミもいるんだぞ」俺
「いや我の勘では100%コトミは使命を果たしてますな」
「え、縁起でも無い。万が一コトミがそんな事していたらもう引き返せないぞ」
「引き返してどうする」ズメル
「うむ、ズメルと同意見だ」ケン
「コトミ君と通信再開するのがこわひ・・・」俺
「今度は中心地に行きましょう」ケン
「遠いなぁ・・」
さすがに町中でムーブメント魔法は使えない
「あ、主人あれ、あそこに乗り合い馬車がありますな」シュウ
「こんだけ広い街ならそれぐらい当然か」
「中心地~中心地行き馬車だよ」御者が大声で乗客を募っている
「料金はいくらだ」シュウが訪ねる
「一人銅貨3枚(600円)だよ」おおっかなりリーズナブル大人3人で1800円か
当然だが小銭は持ち合わせてない。仕方なく俺が金貨一枚(2万円相当)を出すと
「駄目駄目金貨なんて両替出来ないよどこかで崩して来てくれ」
確かに個人経営つまり個人タクシーみたいな商人に金貨は大きすぎるかw
「分かったじゃ残りはお兄さんにあげるよ」
「へ?いいんですか?大損ですよ」
「いいよ、実はこの街は初めてなんだ。次会ったらは只で乗せてくれ」
「合点だ!ほらみんな乗りな」
急に愛想が良くなった御者、他に乗客はいないので貸し切り状態
ゴトゴトと動き出す馬車・・・ん?この馬車
「旦那、おどろいたろ?この馬車の車軸は他国からの技術なんだぜ」
最近ノンが発明したリーフスプリング。馬車の乗り心地を劇的に改善した画期的発明。まさかここまで技術が流れてるとは思わなかった・・特許もへったくりもないんだな
「折角知り合いになったんだからいくつか聞いてもいいか?」
「おうよ、なんでも聞いてくれ」正に鼻薬効きまくり・・これもワイロと言えるかも
「見た所食料事情が悪い様に見えるが?」
「へい、仰る通りでさあ・・つい先日とんでもない化け物が現れて国中を荒らしまくり国は立て直しに奔走中なのでさぁ国が乱れてるので流通形態がおかしくなっちまってよ」
「その化け物はどうしたんだ?」
「わが国王までやられちまったがなぜか忽然と姿を消した、ほんの10日前だ」
「で、この国はどうなる?」
「平民のおいらにゃ分からんが、なにやら第一王子が跡を継ぐとか第二王子がどうとか」
ケンが思念を飛ばす
「あ、主人もしかして跡継ぎ問題中なのでは」
「間違いなさそうだな、ラムダ殿下は俺を引き込みたいのだろう」
「これはややこしくて面倒ですな」ズメル
「だから俺は逃げ出したいと言ってるんだ」
「もう引き返せませんぞ」ケン
「旦那?旦那どうしました?黙りこくって」御者
「いや、なんでもない俺も一介の商人風情お国のことなんて興味ないさ」俺
「でも、おいら含め一般市民の生活が困窮してこのままでは暴動が起きかねませんぜ」
「なにやら物騒な気配だな」
「なにしろ軍隊が全滅状態の今、なにが起きても不思議じゃありません」
「それはヤバいな・・」全部ズメルがまいた種。
「街の治安はどうしてるのだ?」
「へい、おいらを含めて有志が自警団を作りかろうじて治安を守ってます」
「おまえ見かけによらず良い奴なんだな」
「とんでもねえ、おいらはこの街に生まれこの街で育ちこの街で生活してる街を愛する気持ちは誰にも負けねえだけでさぁ」御者
「野にも人はいるか・・・」関心しきりのタイジ
「のにも?なんでさあそれ」御者
「いや、なんでもないこの街のために頑張ってくれという事さ」
「自分の街を自分らで守らなくてどうするんでさぁ」
「うん、もっともだな」
「我はとんでも無い事をしたのだな」ズメルが思念で俺に返す
「知らなかったのだから仕方がないさ。問題はこれからどうするかだよ」俺
「民を守りたい」ズメル
「ああ、同じだ」俺
「旦那、着きましたぜ、ここが中心地、普段なら屋台が建ち並ぶのですがね」
「まったくないな・・」
「さみしい限りでさ」
「ありがとう、助かったよ」
「しかし、ここにはなんにもありませんぜ。もし旦那がこの街で商売するのならギルドに行った方がいいと思いますぜ」
「ありがとう、そうするよギルドは何処?」
「へい、この街はとても広いのでギルドは四カ所ありますが一番近いギルドに行きましょう、ほい乗って」御者
「いいのか?営業ルート外の場所に運んで」
「乗り合い馬車は定期便ですがそれ以外でも頼まれれば何処にでもお客さん乗せますぜ」
「そっかじゃお手数だけどお願いするよ」
「へい、合点ってもすぐそこですけどね」今度は10分も掛からず到着
「用がすむまでまってますぜ」人よすぎ
「ありがとう、じゃこれ待たせ賃」俺は更に金貨一枚を渡す
「旦那も俺に輪掛けてお人好し・・」
「まあ、いろいろ聞けたしお世話してもらったしね」
「おいらにもカワイイ子供と女房がいます、有り難く頂きます」思わぬ上客でほくほく
「人の金だと思って大盤振る舞いしすぎですぞ」ケン
「生きた金を惜しんでは駄目ってことさ」
「確かにケチってたら聞けない情報ばかりだったな」ズメル
「で、主人はギルドでなにするのでござるか?」ケン
「現地通貨調達しないとケンが怒るからな」
「他国に利益あたえて金儲けですか?」ケン
「なんか俺が悪い事でもしてる言い方だな」俺
「他国の利益は我が国への反逆ですぞ」
「あのな、これから世直ししろと言ってる口がいまの国に忠誠尽くしてどうする」
「ぐぬぬぬ・・・それはそうですが」
「そもそも主人は前辺境泊とヤルダートの癒着不正を正す為にのこのこここまで来たのではないのですか?」ケン
「ああ命がけでな」俺
「なのに不正を暴くどころかこの街を救おうとしてませぬか」ケン
「ああ、それのどこが悪い?民に罪はないぞ」
「ですが確か主人は臭い物は元から絶つとかなんとか言ってましたぞ」ケン
「だから、それはラムダ殿下をもっと知らなければ判断出来ないと言ってる」
「むう・・そのための物見遊山でしたな」ケン
「分かってるのなら俺のやることに口出すな」俺
「ぐぬぬぬ・・・」ケン
「確かギルドは国を超えた組織と聞いたギルドカードはそのまま通用する筈だ」
「ギギギギ・・」中に入ると閑散としてる
「やけに人少ないですね」シュウ
「俺の予想だが自警団として徴用されてるのだろう」ズメルが思念を送る
「なるほど・・」
「ご免よ」当然だが一番美少女の受付嬢に声を掛ける、これは俺の趣味だから
「ギルドカード提出お願いします」
「はいこれ」
カードに記載されてる名前を読んだだけで受付嬢テンパりだす
「ぎえーー、ちょっとお待ち下さい」奥に引っ込こもうとする受付嬢
「あのー個人情報は内密にお願いしますね」
「は、はひー承りましたぁ」ダッシュして引っ込んでしまった
「ど、どうぞこちらに・・」ギルマス部屋に案内されてしまった
「た、タイジ様・・このたびは当ギルドにお越し頂き恐悦至極に存じます。」
「いえいえ」
「じ、実はラムダ殿下から知らせが来てまして・・・」
「はあ」
「万一ここに訪れたら便宜を図るようにと命じられてまして」
「おお、そうでしたかじゃ天下御免で通ってたんですね」俺
「ははい、どのようなご要望にもお応えせよとの命にて」
「はは、大げさな・・私は普通に商売したいだけですから」
「で、どのようなご用命でしょう」
「はい、私のアイテムBOXに収納されてる商品を少し売りたいのです」
「それは大歓迎ですが・・・もし、あのその」
「??なんでしょう」
「もしかして食料品などをお持ちでしたら相場以上で買い取ります」
「この国の窮地は存じてます。ですが足元を見るような商売はしません」
「どうかこの国をお救いください」
「残念ながら食料支援に関してはラムダ殿下との交渉次第なので今売却は出来ません」
「とても残念です・・ですが貧困層に犠牲者が出始めてまして」ギルマス
「主人、緊急事態です食料援助するべきです」ケン
「ケチなお前の意見とは思えないな」俺
「普段ならそのようなこと言いません」
「昔の偉人伝だが本当に窮してる民に食料援助してもその場限りなんだよ。それよりも二度と飢餓が起きないような教育が大事と学校を作りと教科書を援助したそうだ」
「ば、馬鹿な・・・」ケン
「話はわかりますがこの緊急事態でその話は無慈悲すぎますぞ」ズメル
「お前は兵隊2万どころか数十万の民を殺そうとしてる、自覚あるか?」
「やってしまったことは取り返せない、主人頼む食料援助してくれ」ズメル
「ばか、話をちゃんと聞け。金をいとわず買い取った食料はどこに行くと思う?」
「う、貧困層には届かぬ・・」ケン
「ここで食料を売ってボロもうけしたらそれこそ大罪人だ」
「う、ここで冷静なのは主人だけです」シュウ
「さっき作成した地図によると我らの拠点の倉庫街の西側はスラム街だったな」
「はあ?それが」
「天下御免のお墨付きを利用してお救い所と寺小屋を作る」
「???」
「教育を受ける者のみに炊き出ししてやるのだ」
「そ、それはこの国への干渉ですぞ・・いくらなんでも」ケン
「天下御免のお墨付きを発行したのはヤルダートだぞ。なんの不都合がある」
「とんでもない越権行為」
「大義名分はこっちだよ」俺
「タイジ様?」思念通信してる俺を不審がるギルマス
「とにかく政治が絡むので食糧支援は我慢してくれ」
「仕方がありません諦めます、それでそれ以外の御用おありで?」
とたんに冷たい態度のギルマス。分かりやすいやつ、というか欲に目が眩んでるのは間違いない。手に入れた食料を貴族に法外な値段で売り逃げるつもり満々だ。いつの世もどさくさに紛れて財をなす不届き者は絶えない。コ○ナの時のマ○ク転売ヤーとかと同じだ
なんかこいつと商売する気なくなったな・・こいつはギルマスに向いてない
「いや、今日はやめておくよ」
「そうですか、又のご用命お待ちしてます」
「危うくぶった切るところでしたぞ」ズメル
「お前は黙ってろ、もうこれ以上この国に関わるな」俺
「ぐ・・・わかった、主人の言う通りにする」ズメル
「ケンとズメル!間違っても闇から闇へなんてするなよ。やったら破門だ」
「な、なぜあんな悪党を庇うのですか?」ケン・・やる気だったんだな
「あんな奴でも一応貴族と市民とのパイプを持ってる、成敗なんてしたら又この街は大混乱だ。ケンが言う内政干渉そのものだぞ」俺
「う・・・確かに」ケンとズメルが不服ながらも承知する
「お兄さん待たせたね、倉庫街まで運んでくれるかい?」
「おう、遠目で見てたんだが実は旦那が相談した受付嬢、俺の娘だったんだ。選球眼高いな」御者
「へーあんなカワイイ子がねぇ」
「言ったろ俺にはカワイイ子供と女房がいるって」
「確かに、大事にしないとな」
「おうよ、でも娘はやらないからな」
「お父さんて呼べないのか」ちゃかす俺
「まあ旦那ほどの器量なら許すかもしれないけどな」
「俺はまだ10歳だぞ」
「娘は11だよ」
「ははは、縁があったらよろしく頼むよ」
「旦那はこの国を救ってくれるんだろ?」
「え?」
「こんな大変な時によそ者が来るはずがねえよ」
「お前見た目以上に油断ならんな」俺
「こんな商売してるには理由があるのさ・・今は言えないがな」
「ぎょ・・・」全員がぎょっとする・・・ま、まさか?
「倉庫街に送るのはいいけど、今日泊まるところあるんですかい?」御者
「いや、まだ決まってない」あえて嘘をつくタイジ
「実はおいらは宿経営もしてるんだ。良かったら」
「近いのか」
「西側のスラムの中だが安全は保証する、凄腕の用心棒を傭ってる」
「ふ、御者で宿主で用心棒ってか」
「ぎょ、なぜわかるんでさあ」
「お前さんは隠してるつもりだろうがその鍛えられた体と油断のない構え」俺
「旦那も10歳にしてはただ者ではないな」
「わざと荒っぽい口振りだが品は隠せないよ」俺
「・・・・」黙り込む御者
「とにかく泊まらせてもらう、3人で一泊いくらだ?」
「三人部屋なら少し割引で銀貨7枚(14000円だ」
「これで3日分頼む」タイジは金貨3枚を渡す
「いくらなんでも多すぎでさあ?」
「情報料と用心棒代だ遠慮無く受け取ってくれ」
「分かった、だが食糧不足だから飯の量は期待しないでくれ」
「食料は持参してるから必要ない」
「すまねぇ、それは助かる」
宿につくとタイジ達は部屋に案内された
「俺が初めて泊まった宿と同じ臭いだ・・」
手入れの行き届いてる部屋は毎日新鮮な空気を入れ換えてるのがわかるしベッドメーキングも完璧。一時が万事。間違い無くこの宿は当たりだろう。
「まさにここは盗人宿風の忍び宿」ケン
「まさか里の忍軍に会えるとは思ってもなかったよ。コトミに連絡つけば、仲間に引き込めるのになあ」俺
「いや、あのそぶりだと向こうから寄ってきますぞ」ケン
「だといいが・・」
「それよりも我は一旦倉庫に戻り食糧支援と寺小屋の準備をしたく」ケン
「お、それ頼もうと思ってたんだ、さすがケンだ」
「万事お任せを、免状もコピー持っていきます」ケン
「怪しまれるから朝までには戻ってこいよ、それと夕飯おいてけ」
「主人容量は少ないですが我もアイテムBOX得てます」ズメル
「ほう、いつの間に?」
[ケンから亜空間をほんの少し間借りしましたし主人がが我を常備するのであればアイテムBOXは不可欠でござろう]ズメル
「今後我は別行動増えますので緊急措置でござる」ケン
「とりあえずレーション数日分頼むよ」俺
「くれぐれも無駄遣いせぬように」レーションの他に珍しく現地金貨百枚渡してくれた
シュウも先日来広大なアイテムBOXを手に入れてる。これはいろいろと便利
コンコン
「どなたですか?」なんか既視感
「先ほど無礼しましたギルドの受付です」
「どうされましたか」俺がドアを開ける
「どうかギルマスのことをお許し頂きたく」
「なんとも思ってませんよ」
「あんなギルマスでも普段は調整役として辣腕ふるえる方ですので」
「ほう」
「実は内情を話す様なのであれなんですが貴族様からの突き上げが酷くて切羽詰まってます」
「金に物を言わせて食料の買い占めですか?」
「心苦しいのですがその通りです」
「それだけの用でしたら了解しましたので」
「いえ、他に相談があります・・・」
「はい、なんでしょう」
「わたしをお嫁さんにしてください」
「い、いきなりなんですかそれ?」シュウもビックリ顔を上げる
「父上がどうしてもと・・・・」
「さっき冗談でそんな話をしたけど。困ります突然」
「この窮地を救って頂くためには私を捧げるしか方法はないと父上が・・・」
「ばかな事いうのやめなさい。そんなこと必要ないから」
「私では不足ですか?・・ならば双子の妹も」どっかのコトミとアケミか!
「いや、話が全然みえないので返事のしようがないです」
「実は・・・わたしと父はタイジ様の事を存じてまして」
「冒険者と商人ギルド登録以上の個人情報ってこと?」
「はい、父上はあそこで乗り合い馬車を装ってタイジ様をお待ちしてました」
「そこからか・・」
「はい、我らの情報網から・・・つまり」
「コトミ君と同じ組織ってことだね」
「はっ里の忍軍です・・」
「予想通りだったよ。助かるし大歓迎だが君が身を捧げる必要はない」
「で、ですが・・・タイジ様は若い子が大好物との情報が・・」
「いったい誰からの情報だよ」
「いや主人は若い子好きだよ」ズメル、つかシュウもうなずいてる
「そりゃ若くてカワイイ子は誰だって好きだろ」
「私のことをロリ○ンとか言っておいて・・」シュウがつぶやく
「だからそれは謝るって」
「ともかくこれからはご主人様と一緒です私の名はリン、妹はメイです」
「はあ?なに既成事実にしてるのしかも妹さんまで」
「コトミとアケミは一緒に修行した仲でよーく知ってます」リン
「それがなんか意味あるの?」
「ご主人様はこんな哀れな娘をむげにはしませんしかわいさでは負けません」
「君の里という所はいつもそんな感じ?」
「タイジ様だけです」
「主人今はそんな色恋話する事態ではありませんぞ」ズメル
「知ってますよ。貴方がこの国をグチャグチャにしてくれたこと」リン
「知ってるのなら顛末も知ってるのだろ?ズメルを責めるのは俺が許さんぞ」タイジ
「は、仰せのままに・・」リン
「いや、万民の苦しみの元凶は我、逃げるつもりはない」ズメル
「主人が許すのであればもう問いません。お許しください」リン
「君たちの嫁入りは却下だけど協力してくれるのは有り難いと思ってる」
「は、今日の所は引き下がりますが我ら姉妹の気持ちは変わりませぬ」
「で、これからどうするのですか」シュウ
「うん、今ケンがお救い所と寺小屋建立のため動いてくれてる。全員でサポートする」
「御意」
「ところでそこに隠れてるメイ君もういいから出てきて」タイジ
「ばさっ」なんとも古めかしい隠れ蓑の術
「完全に気配を消していたのに・・」メイ
「いやリン君が部屋に入って来たときから知ってたよ」
「で、我らは何をすれば」
「うん、とにかく周知徹底と協力者をもっと募って欲しい、俺達は一週間しか滞在できない。持続的に支援体制を敷く準備が必要なのに時間が殆どない」
「それでは早速」シュッと二人は忍者消え
「なんだかなあ・・・」苦笑いの俺
「主人女難の相出てますな」シュウ
「全くだよ、俺10歳だぜ」
「羨ましい限りです」
「冗談でもよしてくれ」
「主人、いいですか?」すぐさまケンからの通信
「おう、早いな」
「天下御免の免状の効果は絶大ですぞ・・何言ってもへへっと受け入れてくれます」
「それは気持ちよさそうだ俺もそっち行きたかったな」
「は、そちらで何かあったんですか」
「全く聞いてくれよ。かくかくしかじかだ」
「それは大変でしたな。しかし思ったよりも事が運びそうで逆に幸運ですぞ」
「それはそうなんだけど・・」
「万民を救う為の小事とお考え下さい」ケン
「小事で済めば良いんだけどな」
「で、報告つづけて」
「は、免状を盾に空き倉庫を10程無期限で借り受けました賃料無料です」
「それは借りたとは言わない奪い取ったと同じだろ」
「ですがちゃんと賃貸契約書交わしましたので」
「まあ多分賃料は殿下に回すのだろう」
「殿下も覚悟の上でしょう」
「で?」
「は、食料倉庫を5つ、炊き出し所を2つ寺小屋を3つ設置しました主人からアイデアを頂いたコンテナハウスとやらを改造し倉庫内に設置しました」
「おいおい、ケプラー製のコンテナハウス一体いくら金と材料使ったんだよ」
「さあ、主人が後から苦労するだけで我は知りません」
「く、ケンも言うようになったな」
「主人の薫陶の賜です。絶対に掛かった分は取り返します」ケンは何処まで行ってもケン
「なぜ食糧倉庫の中にそんな頑丈なコンテナハウスが必要なのだ?」ズメル
「こんな状況だぞ安全対策だよ」
「なるほど・・くだらない役人の横流し対策ですな」
「ですが我らだけで維持管理は不可能です協力者が絶対に必要かと」ケン
「うん、今そっちも動いてもらってるから心配いらない」
「さすが主人、万事抜かりなくですな」
「実際は綱渡りだけどね」
「上手くいけばそれでいいのです」ケン
「折角だけどもう一つコンテナハウス用意して」
「は?これ以上なにに使うのでしょう」
「衛生管理が大切なんだよ」
「はあ・・」
翌朝
倉庫前にとんでもない人だかり
「飯くわせろ・・・」貧民が集まって大騒ぎ
とんでもない一日の予感
「全員整列」リンが第一声
「なんだぁお前は」騒ぐ貧民
「これから我の言う事を聞く者のみ食料支援をする騒ぐ奴には食わせない」
「ぐっ・・・」脅しがきいたのか全員が黙り込む
「いいか!これは篤志家による無料支援である。只で飯を食わせるのだから当然条件がある」メイ
「じょ、条件ってなんだよ。おいら腹が減りすぎて働くなんて出来ねえ」
「今から食料を配るが明日以降食べたければ順番に従って行動せよ」リン
「はあ?進むだけでおまんま食わせてくれる?」
「二言はない」メイ
「おらはやるぞ」「おらもだ」全員がゾロゾロ順路を進む
「ここはなんだぁ」全員がびっくりする
「おまえら臭すぎる、まずは体を洗うのだ、そして着替えだ」
「おらは着替えなんてもってねえ」
「安心しろ、これも援助だから無料だ」メイ
ゾロゾロと順路を進み皆はボロ着をゴミ箱に捨てつつ真っ裸、当然男女は別れてる
「ここはなんだぁ」
「ジャア・・」とコンテナハウス中からシャワーのお湯の湯煙もくもく
「順番に進めば綺麗になるのだ、さっさと進め」男湯はケンの声
ドロッドロの貧民がみるみる綺麗にスッキリ
「おおおっ湯浴みなど生まれて初めてじゃあ」こいつら不潔すぎ
順路を進むと今度はタオルが皆に渡される
「これで体を拭くのだ」「へいへい」皆が従う
「これに着替えるのだ」「へいへい」皆がまあたらい服に着替える
「おら、こんな上等な服初めて見るだ」全てケンが前日に作成した服
「主人わかってると思うが・・」
「はいはい、耳たこ耳たこ」
順路を進むと長テーブルと長椅子がズラーその前にはバイキング式で料理が並ぶ
「おおおおっ」皆が歓喜をあげる
「好きなだけ食らうがいい、制限などないぞ、ただし食べ残しは御法度だ」
「おおおおおっ」皆が列を作り山の様に飯とおかずを盛る、いや飯はパンなんだけど
「ぐおおおっこんな美味い飯はじめてじゃあ・・」犬のように皆ガツガツ
「慌てなくても飯はいくらでもあるぞ」リン
「ありがてえありがてえ」なんと皆がリンとメイを拝み出す
みんな腹一杯になったのか落ち着きを取り戻す
「皆、聞くが良い。今日は只で飯を食わせたが明日からはそうはいかないぞ」
「へい、覚悟してやす。どんな重労働にも耐えてみせますだ」
「いや、明日からは読み書きしてもらうだけだ」リン
「ばかな・・読み書きを教えて貰った上に腹一杯食べさせて貰える?」
「二言はないと言ったはずだ。だが読み書きの成果は試すぞ。駄目な奴は放り出す」
「一生懸命がんばるだ」
「もう一つ協力してもらう、見ての通りここの運営に人手が足りなすぎる協力してくれる奴はいないか」メイ
「誰でもいいのだか?」
「勿論だが悪事を働く奴は厳罰だぞ」リン
「命を救ってもらったのに悪事などとんでもねえ」
「うむ、信じてるぞ、だが悪事を働いたものは絶対に厳罰を受ける」
「魔法とか呪いですごぜえやすか?」
「うむ、なにもしなければ天国を保証する。悪事をすれば地獄行きを保証する」
皆で協議の結果公平に交代制となった。全員に教育の場が設けられたわけだ
「この御恩は一生忘れねえだ」皆がリンとメイを拝む、まるで教祖様
「読み書きすれば腹一杯飯が食える」噂は噂を呼び貧民街に広がっていく
「主人、予想以上の反響でコンテナハウスが全く足りません」
「倍の規模にしたら足りるかな」
「なんとか足りますが・・費用はとんでもありませんぞ」ケン
「先行投資さ、これから貧民達には手に職を覚えて貰う」
「と言いますと」
「工業化の推奨と農業改革さ」
「しかし、ヤルダートの国は土地がやせすぎていてとても農業改革など」ケン
「ちゃんと農地に見合う作物を選べばそんなことはない」
近代的農業を取り入れれば食料生産は劇的に改善するはず
とりあえずザビル村で実践した早期収穫が見込める品種改良したサツマイモを作る
続けて小麦とトウモロコシの大量生産で一気に食糧難解決を図る作戦
「主人が言うのでしたらそうなのでしょう」ケン
「あと工業化を進めて豊富な鉄鉱石を活かす」
「ぎょっ、主人はそこまで」
「我が国とヤルダートを隔てる山脈、とんでもない鉱山が連なってるのだ」
「なぜ、そんなことを?」
「国境の反対側、ザビル村は今や農業だけではなく豊富な鉱山で知られてる」
「恐れいりました・・主人そこまで見越していた?」
「国を救うというのは生半可な事ではない、総合的な政治が必要なんだよ」
「余計な事だとは思いますが鉄とやらの生産はそのまま軍事力の強化となります」
「当たり前の事をしたり顔で言うなよ」
「主人はそこまで見越してる?」
「振り出しに戻るんだよ。なぜ俺がラムダ殿下と協力関係を結ぼうとしてるのか」
「わかりません」ケン
「第一王子がこの国を治めれば俺のオウカー王国奪取に協力してくれるからだ」
「なんと」ケン
「いくら何でもそれは都合がよすぎる」ズメル
「じゃあどうやってラムダ殿下はこの恩義返せるのだ?」俺
「で、ですが殿下の人となりなどなにも知りませぬ」ケン
「そのための里だ、全てを調査させた」
「なななんと・・・」絶句するケン
「主人の才計り知れぬ」もはや畏怖の念のズメル
「里の忍軍が俺に近づいたのは全て殿下擁立の為だ」
「どこまで陰謀を張り巡らしていたのだ忍軍は」ケン
「俺が初めてエドモン街で宿に泊まった瞬間からだろう」
「つ、つまり質屋のオヤジと用心棒も?」
「ああ、多分な」俺
「全てあの調子で腕を試し使えそうなのは宿に送り込んだのだろう」
「今考えるとあの質屋の用心棒どもも忍者?峰打ちにしてよかった」ケン
「多分命がけの腕試しだったのだ討たれても本望だろう」
「まさに情けは人のためならずでしたな」ケン
「すっとぼけやがって・・・」俺
「我はなにも知りませぬ」
「まあ今はそれでいい・・」
タイジが巨大な支援体制を築き上げて予定の一週間が過ぎた
タイジの前に現れるラムダ第一王子すぐさま土下座
「このたびは我が国の窮地を救い頂き感謝しか有りません」
「殿下が土下座などしてはいけません、それに今度の支援は私の勝手な判断です」
「いえ、そうなる前提で動いたのは我です。どうかお許し下さい」
「許すもなにもこれはお互いのため。全ては殿下が王になって頂く為の策にて」
「この恩義は私が王になって返さなければと思いますしタイジ様の大願成就の足がかり」
「WinWinです」
「はっ」
「随分こちらに長居しすぎました。そろそろ自領に戻らねば」
「本当に長いあいたお疲れ様でした。なんとしても恩に報います」
「最後のお願いなんですが」
「は、なんなりと」
「帰り方おしえてください」w
「はは、確かにそれ大事ですね」ラムダ
ラムダは皆をを最初の密会の間に案内する
「実は前任辺境泊とここで度々密会し農作物を受け取ってました」ラムダ
「なぜ殿下が我が領の看守に?」
「前任辺境泊は自らの最後を悟ってまして直前に看守として新辺境泊の人となりを伺う機会を得たのです」
「もしかしてセバスともグル?」
「いえ、それは知らないはずです」
密会の間につくとズメルが両断したガラスが床に四散したままだった
「ここの壁を回すと棒が置いてありまして」
「あ、また天井ですね」
「はい、この棒を扉に引っかけると・・」
「また、元のダンジョンに戻されて最低一週間は徘徊させられます」
「罠ですか・・」
「こちらのヤルダートにもいろいろ間者がいますので用心なんです」
「では本当は?」
「先ほどの隠し扉をもう一回転させると扉の奥に見える本棚のカギが解錠されます」
「おおっ今度こそ戻れるのですね」
「ご注意下さい左に回すとダンジョン行きです、必ず右に回します」
「どんだけ厳重なのか」
「で、右に回した後中に入るとながーーーい廊下が見えます」
「うわ、これは無限直線ダンジョンでは?」
「絶望させる罠でして10mも歩くと壁に突き当たります」
「あ、本当だこれはだまし絵」
「先程の棒の反対側」
「こっちは輪っかですね」
「天井に見える扉はダミーです」
「ははは・・これも罠ですか」
「突き当たりは左右に分かれてます」
「左右どちらかなんですね」
「いえ、左右どちらにも輪っかをさせるカギ穴ありますが罠です」
「これでは脱出は不可能ですな」
「入って来た扉を閉めるとカギ穴がありまして」
「そこにこの棒の輪っかを挿すんですね」
「はい、差し込んでください」
「ガチャ」
「はて?なにも変化有りませんが」
「隣にある扉が自動的にあきますので外に出てみて下さい」
「ああっここは!」
「はい、辺境伯領館地下二階階段向かって右隅の独房です」
監獄なのに内カギが掛かっていて中から解錠出来るwなんじゃこれ
「って初めからここが出入り口?」
「はい、皆様を天井ダンジョンに誘導したのは私です本当に申し訳ありません」
「いや、全ては過ぎた話です、まんまとやられました」
「これをどうぞ」
「これは?」
「面倒な仕掛けを全部無効にする魔方陣です、ここに置けば相互通行自由自在となります」
「決定権をわたしに任すと?」
「ただしこの魔方陣は契約したパーティのみ通行可能ですので」ラムダ
「成る程、ここにいるメンバーだけの特権ですね」
「これだけタイジ様を試した私です。信用を失ったとしても文句などありません」
出来レースだと思いつつもその場にタイジは魔方陣を設置
「これで友好関係は揺るぎない物になりましたぞ」
「ありがとうございます」
長い長いダンジョン攻略とその後のヤルダート訪問はこうして終わった
「で、なんでリンとメイが俺にしがみついてる?」




