異国ヤルダート
仕切りを越えたらそこは隣国ヤルダート、国交もなにもない未知の世界
「扉がありますね」仕切りを越えたら突き当たりに扉が見えたがカギが掛かってる
「お任せあれ」ズメルがしゃしゃりでる
「解錠出来るのか?」
「カオスイーターを使えば容易いこと」
「アンチマジックエリア内だが?」
「主人も見たであろう1m位なら短時間ではあるが自身の魔力を削れば行使可能なのだ」
ズメルは切っ先をカギ穴に接触させると魔法発動
「お前のカオスイーターは固形化出来るんだったな」
「左様、カギ穴に充満させて固形化させて・・グイっとな」「ガチャ」開いた
「お前その技で大勢葬ったのだな」
「皆まで申すな。まあ寝込みを襲うは常套手段ですな」ズメルけろっとしてる
「改めてとんでもない奴だ」俺
「ふ、今更なにを」ズメル
「先にいきましょう」ケン
「多分ここを抜けたらアンチマジックエリアから抜けるが相手も同じ事だ」
「御意、警戒態勢で進みましょう」シュウ
扉を開けるとすぐに上がり階段。
「アンチマジックエリア外れましたぞ」ケンの報告
恐る恐る一行は階段を踏みしめるように昇るが全く人の気配を感じない
「これは拍子抜けだな・・」
「関係者がいなくなったので誰も知らないのでしょう、好都合ですぞ」ケン
「おっ階段の上はフタですな」
「隠し階段だから当然だろう、どこかの部屋にでれるはずだ」
「ボコ」とフタを押し上げると案の定どこかの小部屋?いや倉庫か?
「これじゃ部外者に分かるはずも無いな」
だが事態は急変。真っ暗だった倉庫にいきなり灯りが灯る
「しまった罠か?」
そこには一人の男がまちかまえていた
「ようこそヤルダートへ」にっこり笑う男あれ?
「お、お前は看守ではないか」ケン
「はい、皆様をここでお待ちしてました。まさかこんな短期間でダンジョンを制覇されるとは全くの想定外でしたけどね」
「いつ到着するか分からないのにどうしてお前は待ち構えているのだ」俺
「はい、タイジ様がこちらの国境を越えた時に検知しました、あそこの詰め所に待機してたので慌ててお待ちしていた次第」看守
「なんとも忍耐強いことよ」ズメル
「これぐらいのことなんでもありません」看守
「全てはお前の誘導だったのだな」
「わたしはヤルダートの間者として潜入しつつこの機会を待望していたのです」
「罠にはめて我らの命を狙ったのは何故?」
「勿論我が国と交渉するに足りるかどうかの試験でございます」看守
「メガネに適ったと言う訳か?」
「数々のご無礼どうかお許しください」看守
「ここまで策を張り巡らせると言うことは其方もタダの看守や間者ではあるまい?」
「さすが辺境泊様その通りでございます。我はヤルダート国第一王子ラムダでございます」
「第一王子となれば本名は長ったらしい名前なのであろう?」ケン
「ラムダで結構でございます」
「承った、して?」
「は?」
「我らをここまでおびき出した真意を聞こう」
「勿論友誼を深める為です」
「命を狙っておいて友誼とは片腹痛いな」ケン
「時には背を預けるかも知れない相手です。力関係の確認は大切です」ラムダ
「こわいのは有能な敵よりも無能な味方って奴か」
「左様にございます」
「ですが我は一介の辺境泊風情、貴公は王族なれば公爵でござろう?身分違いすぎかと」
「オウカー王国一番の実力者がなにを仰るのか・・」鼻で笑うラムダ
「ほう、我が一番と?」
「魔剣二つと魔弓を有する勇者が実力一番でなくて誰が一番と申されるか?」
「かなり知ってるようですな」
「前任辺境泊に従じつつ情報を得まくったのです」ラムダ
「確かに我が国の警備体制はザルそのものですな」
「我が国はそれ以上の酷さです」ラムダ
「ほう、いいのですか?国内情報を漏らして?」
「この窮状から脱するにはタイジ様の力なくては不可能にて」
「我が身につけてる魔剣ズメルが貴国を窮地に追いやったのですが?」
「全て存じ上げてます。愚かにも父上は謀略に果てたのです」
「実の親を愚かと?」
「愚かです、忠心の側近の言葉に全く耳を貸さず。己が欲に走り不逞の輩の言に惑わされたのですから」
「いろいろ複雑な事情のようですな」
「はい、立ち話もなんですので、応接室にてお話の続きを」
「うーむ、まだ其方を完全に信用したわけではない」
「ごもっともでございます、それでは誰も知らないこの倉庫に滞在頂き自由に王都を視察下さい、王家発行の通行手形をだします。これさえ見せれば天下御免にて」
「パンパン」ラムダが手を叩くとわらわらと人が沸いて来た
「これは?」
「この倉庫内滞在期間に全てのご用命に応じるメイドと給仕と執事と衛兵です」
「そんな事いって寝首欠くつもりでは?」ケン
「実はわたしもタイジ様辺境泊任命の際隊規遵守の魔法を受けてます」
「つまり、我を裏切れば無限牢獄行き?」
「は、そして今この場で従者達に同じ魔法をお願いします」ラムダ
「そんなことをして其方になんの利があるのだ」ズメル
「そこまで我が国は窮地に立たされてるのです」ラムダ
「とにかく分かった、それでは一週間ほどこの国を視察しよう。話はそれからでいいのですね」
「はい、どうかよろしくお願いします」ラムダは挨拶のあと退室していった
「今の所ラムダとやらの言に矛盾は感じられませんでしたな」ケン、なにかで計ってた?
「早く領都に帰りたいのにまた一週間延期かよ」すっかりホームシック状態のタイジ
「仕方有りませんなヤルダートとの交渉を望んだのは主人自身ですからな」ケン
「それはそうなんだけどね」俺
「もしかして我を操った黒幕とやらも分かるかも」ズメル
「分かったらどうするつもり?」
「しれたこと、闇から闇だ。勿論主人に迷惑は掛けない」ズメル
「おーこわ、お前に狙われたらマジ洒落になんないからな」俺
「ふふふふ・・主人の言うところの善とやらかと」
「正義の為に暗殺か・・確かにズメルの善悪無用論の通りだな」
「自分にとっての邪魔者は粛清しかありませぬ」ケンまでがズメルに同調する
「考えて見てくれ、志高く正義の名の下に粛清していたらイエスマンしかいなくなる」
「それに何か問題でも?」
「人間という者は常に正義でなんていられない。何時しか反対する者全て排除してしまう。そして行き着くのはヤルダートやオウカー王国」
「つまり、癒着とワイロと腐敗と深い闇?」ケン
「王様はお山の大将になり賢者を遠ざけ愚者を信じる・・・」
「我が主人にその様な結末はありえませぬ」ケン
「みんな最初は高い志なんだと思う」
「ぐ、つまり粛清は愚策と?」ズメル
「勿論犯した罪に関しては償ってもらうが意味の無い粛清は回り回って自分の首を絞めるって事さ」
「やはり主人は大賢者でござる」ケン
「王族が貴族が支配するなんて体制が諸悪の根源なのさ」
「体制批判は自らの否定ですぞ」ケン
「俺は初めっから貴族などに興味はないと言ってる」俺
「主人の志を通すには頂点を極めるしかないのも事実ですぞ」ケン
「おおいなる矛盾って事だな」
「で、結局のところこの先はどうするのですか?」シュウ
「話がすっとんだけど、早い話が物見遊山さ」
「なんかガクっとしますな」ケン
「せっかく天下御免の手形もらったんだ使わないとな」
「うむ、我を操った輩も探知出来るし」ズメル
「そっかカオスイーター使い放題か」
「我の特権ですからな」ズメル
「万能すぎて笑うしかないけどな」
「我はSSS級オークロード、当然の事」
「でも不気味だからその黒いニョロニョロはやめてくれ」
「はは、これはまさに不気味さを醸し出す為の策だが、今回は無色にする」
「そんな事まで出来るのかよ!」
「我はオークロード・・・」