ラスボス退治
先のみえなかったダンジョン探索が・・・
ダンジョン探索四日目
朝飯をレーションで素早くすます一行
「コトミ君たちの働きが気になる」俺
「主人、彼女達は主人の思う以上にしっかりしてます。きっと大成果を上げてる事でしょう、それよりも一刻も早くこのダンジョンから脱出することが大事ですぞ」ケン
「うむ、ケンの言うとおりだ」ズメル
「普段力不足だと彼女達を叱咤してるケンが、一体どうした?」俺
「実際は彼女達格段の成長を遂げてます、主人の活躍に刺激を受けたのでしょう」ケン
「ほう、ケンがそこまで言うのは珍しい」
「彼女達が所属する里の強力サポートがありますので」ケン
「なるほど」
「本人の前で褒めると増長しますので控えてます」ケン
「ダンジョン内ではコトミ君と思念通話出来ないのがもどかしいな」
「出てからのお楽しみって事です」シュウ
「さ、出発しましょう」ケン
一行は休憩所から再びダンジョンに戻る
「む、今まで通ってきた向かって右側の通路が壁になってしまってる」
「もう来た道には引き返せませぬな・・・つまりこの先はラスボス部屋でしょう」
案の定左側を進むとすぐに突き当たり壁一面に鉄の扉がそびえ立つ
「ここを開けたら最終決戦か?」
「最終かどうかは分からぬがこの階層クリアなのは間違いない」ズメルの経験談
タイジが扉の前に立つと足元から魔方陣が浮かび上がり青白く光る
「ゴゴゴゴゴ」扉が自動的に観音開きを始める。気温?湿度?の差なのか重々しい黒い空気が廊下に吹き込む
「行くぞ」
部屋の中は30畳位の大広間、中心に魔方陣
タイジ達が入室すると扉が今度は自動的に閉まり出す。扉が閉まると同に魔方陣が光る
「ブウウゥゥ・・ン」魔方陣から浮き上がる様にラスボス出現
「これはミノタウロスか?」
「我と同じダンジョンでの淘汰に打ち勝ったSSS級魔物だな」ズメル
「主人、こいつは普通のミノタウロスとは違う様ですぞ油断召されるな」ケン
素早く3人は前衛、後衛、後方支援と体型を作る。魔剣ズメルどこまで通じる?
「グオオオオオ」主に物理攻撃主体のミノタウロスが機先を制してきた。振り下ろす斧攻撃、普通の戦士クラスなら自分が切られたと感じることなく両断されて終わりだろう
「ふ、遅い!」ズメルには遅く見えるのだろう、ひらりとかわしタイジと一心同体の剣捌きを見せる日々鍛錬の成果が出てる。
「おっズメルが初めて俺に同調してくれてる?」
「今は戦いの最中、余計な考えは無用ですぞ」ズメルが思念で返す
「うん、無の境地だな」
タイジは全ての動きを魔剣ズメルに託す覚悟を決めた、切られたらそれはその時
「主人、行くぞ」 「応」
ミノタウロスの斧をひらりかわしてる刹那、お互いの意思疎通が行われてた
ミノタウロスの初撃をかわしつつ懐に入ったタイジ、すでに構えは「無」心眼に身を捧げてる
「シュ」無意識に突き出す魔剣ズメル・・「ススス」と剣が伸びる
「サク」切っ先がミノタウロスの脇腹に刺さる
「カオスイーター」ズメルが同時に発動、いままで阻まれていた黒いニュルニュルが四方に伸びてあっというまにミノタウロスを包み込む
「ウガァ」乾坤一擲ミノタウロスが叫ぶとなんとニュルニュルが霧散してしまった
「こ、こやつ・・状態異常無効をあやつるか」ズメルの切り返しは失敗
だがケンとて黙って見ていたわけではない。ズメルの一撃に同じてケンも光速剣を振るっていたのだ。「エイッッ」雑魚ゴーレムを7枚おろしにして見せた目にもとまらぬ早技
「手応えあり!」
だが暫撃された筈のミノタウロスだがそばから高速再生されて傷一つ残らない
「我が奥義が効かぬ・・・」ケン
今度はミノタウロスのターン、素早く今度は二人めがけて斧を水平になぎ払う、間合いの中にいるケンと俺、どう見てもかわすことは不可能・・だが
「キーン」魔剣ズメルは正面から堂々と斧攻撃を剣で受けた
だが体格差は歴然吹っ飛ばされる、斧攻撃の勢いが落ちたのでケンにまでは届かなかった
吹っ飛ばされた俺だが今は無我の境地、くるくるっと空中で体制を整え無事着地
「手強いな」ズメル
「だが主人、ほんの一瞬だがカオスイーターが通ったぞ」
「なにか吸い取ったのか?」俺
「HPとMPを一割ほど」ズメル
「つまりこの攻撃を繰り返せば倒せるのか?」
「理論的にはそうだが、すぐに高速再生されてしまうのでキリがないと思う」ズメル
「主人、初撃ではこちらのダメージの方が多かったですぞ」ケンが分析
「つまり、同じ攻撃を仕掛け続けたらこっちが詰む?」
「敵から吸い取った力を相殺してもこちらが不利ってことか」ズメル
「残念ながら」ケン
「しかも伸びる剣を見せてしまったので次からは対処してくるでしょう」ケン
「うむ、何度も使える技ではないな」ズメル
「敵の弱点は?」
「次はこの手で」とっさにケンがアイテムBOXから武器をとりだす
「おお、これは卑怯技」ズメルが脊髄反射
「卑怯もへったくれもあるか。勝てばいいんだよ」俺
「これで同胞達は次々と倒れたのだな」ズメル
「戦争だから仕方が無かったんだよ」
「戦争責任は我にある今更そんなことは問わない」ズメル
「論じてる暇などないですぞ」ケン
出てきたのは当然の狙撃銃、これなら間合いの外から攻撃出来る、だがSSS級いやダンジョン仕様のミノタウロスはもっと上かも知れない。通じるか?
構えるタイジ、狙いは当然のヘッドショット「ターン」一撃必殺弾がミノタウロスの頭部を貫く・・「タタタタタ」連射する
「グオオオオ」訳の分からない攻撃を食らったミノタウロスは悶絶するが・・
「高速再生の方が攻撃を上回ってますな」ケン
「お前はこんなときでも冷静に分析するのな」俺
「身は熱く、心は冷たくが我の心情でござる」ケン
だが頭部攻撃によりミノタウロスは再生に忙しく攻撃の手がゆるんでる
「好機でござるぞ」魔剣ズメルは俺の手から離れ単独で再びミノタウロスに剣撃を始める
タイジは銃撃を続けてサポートしてる
「カカカカカ」だがミノタウロスは思った以上に固い?
「これは身体強化でござるな」ケンが分析・・正確な分析は助かるんだけど
見た目は二人でミノタウロスをボコボコにしてる風だが実際は全く通ってない
擬人化してるケンは今回は一緒に攻撃を仕掛けてない、なにやら算段してる
「ズメル、一旦戻れ、弾薬がつきた」俺
「主人、やはりこの攻撃は有効でしたぞ」ケン
「だがあいつはピンピンしてるぞ?」
「高速再生に能力を振った影響で反撃出来ぬ上、身体強化で一時凌ぎしてましたぞ」ケン
「身体強化は時限魔法なのか」俺
「左様、ミノタウロス自身の魔力は尽きかけてますぞ」ケン
「だが、こちらもかなり削られてしまってもう余力は殆どないぞ」俺
「私はまだなにもしてませぬ」シュウ
「お前の気持ちはわかるが適う相手ではない」ケン
「足止めなら出来ます」シュウ
「おお、確かシュウはライトニングが出来たな」俺
「はい、伸びる剣を利用して剣先さえ敵に届きさえすれば・・」
「だが、敵の暫撃をかわせるのか」
「我の命などいつでも捨ててます、ですがやられるつもりなど有りませぬ」シュウ
「多分、次の総攻撃が我ら最後の力だ・・こうなったらすがるしかない」ズメル
「いくぞ」
シュウは助走をつけてミノタウロスに肉薄、ミノタウロスはそれをみて斧でなぎ払う
「タタタタ」なんとシュウはなぎ払って来たミノタウロスの斧を足がかりに高ーくジャンプ・・とんでもない高さからミノタウロスの頭頂部めがけて剣を突き刺す、更にぐいーーんと伸びる伸びる剣先
「ガッ」当然だがシュウ程度の暫撃では身体強化されたミノタウロスは貫けない
刹那
「ビカビカビカ」ギャグ漫画などでよくある雷を受けて骸骨だけが見えるあの光景
すさまじい電撃ショックを受けたミノタウロス、全身が硬直して金縛り
「今だ」
俺とズメル二人の全力が乗り移った剣がミノタウロスの強化された筈の腹をえぐる
同時にケンはミノタウロスの首を跳ね飛ばす
「ウガアアアア」断末魔をあげてミノタウルスが悶絶・・・やったのか?
跳ね飛ばした首が再生されない。どうやら今度こそ仕留めたようだ
「ブワン」突然ミノタウロスは消滅してしまった。後にのこる宝石箱とドロップアイテム
「やった、やりましたぞ主人」ケンが絶叫
シュウはその場に力尽きて倒れてるが命に別状はない単なるMP切れだ
「こっこれは」ケンが驚く
「うーむ、これは伝説のサジタリウスの矢だな」ズメル
「文献によると神格化されてる弓矢だぞ?」ケン
「普通ならありえないな」ズメル
ドロップアイテムを見て二人が唸ってる
「あの、これそんなに凄いの」俺
「主人持ち上げてみて下され」ケン
「お、応・・・ってなんだよこれ重すぎて無理だ」
「シュウ、もってみよ」ケン
やっとで起き上がってきたシュウに冷たい仕打ち?
「ば、ばか俺でも持ち上げられない上にシュウは精根尽き果ててるのだ無理に決まってるだろ」
ひょいと持ち上げるシュウ
「え、これとても軽いのですけど?」
「やはりな・・」したり顔のケン
「なんでだよ、説明してくれ」俺
「この弓は別名従者の弓、サポート専用の弓矢なので主人は持てないのです。更に言えば持つに値する資格が必要なのです。シュウは資格を得たのでドロップされたのでしょう」
「今我が的を出すから射貫いてみよ」ケン、アイテムBOXから標的を出す
「この標的は丁度オーク一頭分に調整されてる、射抜ければオークを倒せる実力だ」
「しからば」シュウは5mの距離を取って試射
「ビュン」風切り音とともに標的は射抜かれた。不思議なことに射抜いた矢が自動的にシュウの矢筒に戻ってる。矢筒には常に矢が5本、ケン曰くどんなに連射しても尽きないとかなんやそれ?
「サジタリウスの矢は一種の魔道弓、矢が尽きることはありませぬ」ケン
「やはりな・・」ケン
「なにがやはりなんだよ説明してくれ」俺
「アンチマジックエリア内であっても矢は標的を貫けたという証明です」
「な、なんと我ら魔剣と同じ効果が得られたのか?」俺
「しかもMPがほぼ枯渇してる状態でも使用出来る神級アイテムですぞ」
「ちいとチートすぎないか?」俺
「この武器を操れるのはシュウのみでしょう」ケン
「だな、と言うわけでこの武器はお前専用だ」俺
「なんと恐れ多い・・」
「多分我らの魔剣と同じシュウの言う事しか聞かないだろうし意思もあるはず」
「はい、今この弓矢から挨拶受けました」
「其方の一生の相棒が出来たな」ズメル
「な、なんとアイテムBOX機能がどうとかの説明受けました」
「ばか、魔剣とのやり取りは外に出す必要ない、お前だけに止めておくのだ」ケン
先輩魔剣として貴重なアドバイス
「やったなシュウ、一段階昇ったんだ、お前の勇気で得た戦利品だ」俺
「うううう・・」涙して喜ぶシュウ
「で、?ラスボス倒したのになにも変化ないぞ」ズメル・・なんか冷めてる?
「いや、よく見ろ、あそこに別の魔方陣が出現してる」俺
全員が魔方陣に乗ると・・・・「ボワッ」一瞬の目眩の後景色が変わる
「こ、ここは」シュウが第一声
そこは10畳程度の小部屋、だが真ん中が透明な板で仕切られているまるでドラマでよく見る刑務所での囚人との面会室みたい、やばい差し入れ持ってきてない、いや問題そこではない。
「もしかしてここは隣国ヤルダートとの密会の間か?」
「成る程」
「しかし、相手がいませんぞ」ケン
「ふ、我が兵どもを全滅させてしまったし王も倒したから部外者にはここの存在すら知らないのであろう」ズメル
「じゃ、ここにいても無駄ではないか」
「ですなぁ」ズメルは他人事のようにしれっとしてる
「密会する相手がいないのなら堂々とあっち側に行こう」俺
「大丈夫ですか?」ケン
「分からないけど他にする事もないしな」
「ならばまず我が」ズメルがカオスイーターを発動させるが当然の様にニュルニュル霧散
「やはり駄目ですな」
「これどうみても普通のガラスだろ」と俺は無造作に魔道剣ズメルでなぎ払う
「うわ、主人一体なにを・・」ケンが絶叫
「シュッ」いとも簡単にガラスが両断され床に落ちて割れた
「深く考えすぎなんだよ」俺
「主人は勇敢なんだか無謀なんだか」ケンが恐れ入る
未知の国ヤルダートに不法入国・・じゃがでるか蛇がでるか




