表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最強アイテム  作者: kou2199
16/26

身の上話

明日に備え今夜は早めに寝ることにしたがいくら何でもまだ午後7時早すぎなのでたき火を囲み談笑する事になった


「過去を聞かないという約束だったが少しくらい身の上を話さないか?」俺が提案

「ほう、主人の過去でござるか興味ありますな」ケン

「俺の過去なんてきいてどうするの?」

「いや、大天才タイジ様の身の上話とても興味ありますぞ」シュウ


「皆知ってると思うが俺は転生者さ」

「初耳だが」ズメル

「初耳です」シュウ

「以前になんとなくほのめかしてましたが」ケン


「そうだったかな、そうだな今までキチンと話す機会などなかったな」

「で?」ズメル


「多分、ズメルと同じでどこかのだれかに勝手におれは召喚されたと思う」

「我と同じであったか・・・」ズメル

「元の世界とはどんな世界だったのでしょう」シュウ


「うん、俺が暮らした日本という国は法治国家で物事の考え方が先進的だったのだ」

「だから主人は法、法とウルサイのですな」ケン

「うん、俺の生まれ育った環境に影響されてるのは確かだ」

「主人の世界は理想郷だったのですな」ケン

「そんなことはない。日本という国はまだまともだったが狂ってる国や利権主義の国、人種差別や排他的な国、独裁国家や軍国主義の国とかばかりだ、あと宗教観を巡って数千年以上争ってる地域もある」


「なんと、それではこちらの世界と同じではないですか」シュウ

「元いた世界では魔法や魔物は存在しない。その代わりに魔法級の科学が進んでる」

「成る程主人の作り出す魔道具はその科学とやらなんですな」ケン

「ご名答、つまりあれは元世界の科学であって俺の創造ではない」

「主人、その件は何度も議論しましたがこちらの世界にない物誰も知らない物、主人が作り出した以外を証明出来ませぬ。つまりは主人の力なのです」


「ありがとな、ま、そういう事にしておこう」

「話を戻す」

「訳がわからずいきなり召喚されてしまったが俺は元の世界では35歳の平凡なサラリーマンだったんだ」


「さらりーまん?」ケン


「うん、人に傭われて仕事をこなしそれの対価で給料を貰う職業って事だ」

「なるほど傭われ人と言う訳か」ケン

「ほとんどの日本人はその給料でつつましくも豊かに平和に暮らせる」

「なんという理想郷・・」

「だがな比較的平和な日本だが中にはあくどい雇い主がいて従業員を酷使する」

「法治国家と言う割りには悪人も存在するのですな」

「法には限界がある、ずる賢い人間はそこをすり抜けて人を騙し搾取するんだ」

「酷い話ですな」

「だが、日本では生かさず殺さずでなんとか生活出来るから黙認されてるのさ」

「許せませんな」


「だが労働者側にも職業選択の自由ってのがあってな、あまり酷い仕事だと辞める事も出来るんだ」


「なんと、主人やといぬしはそれを許すのですか」ケン

「法治国家だからね、あまり理不尽な主人は処罰される事もあるのさ」

「矛盾もあるが我々の世界よりも遙かに進んだ思想のようですな」ケン

「ああ、日本はね」俺


「で、なぜ俺のような平凡なサラリーマンが召喚されてしまったのかが不思議なんだ」

「いや、我には分かる」ケン

「うむ、我にもわかる」ズメル

「私にも分かります」シュウ


「なんだよ、みんな揃って、なにが分かったんだよ」俺

「なにより図抜けてるのは人を従わせるカリスマですな」ケン

「うむ」ズメル

「ですね」シュウ


「俺にはわからん」

「自分でわかる事ではありません」シュウ

「あと、人外級の剣技」ケン

「それはケンが鍛えてくれたからだろ」

「素質が無ければこんなに強くなれません。我は手助けしただけです」ケン

「だけど一度たりともケンに勝てたことないぞ」

「我の魔法で主人よりほんの少し強くなるように操作してるからです」ケン

「つまり、あと少し頑張れば手が届くように錯覚させて稽古させる手口?」

「誰でも目の前にエサがぶら下がっていれば努力するのです」ケン

「酷い奴」

「主人の為ですぞ、その成果が今の主人」

「うむ、多分人間で主人に適う者はいないど思うぞ」ズメルも認める俺の剣技

「魑魅魍魎のこの世界。俺より強い者はいくらでもいるだろうよ」

「ですので日々精進しかありません」ケン


「あとは卓越した政治力、統率力、達観した先をみる目ですな」ケン

「あまり褒めるなよ、慢心していまいそうだ」俺

「なにを言いますか、でなければ10歳で平民から辺境泊などへ登れる訳有りませぬ」

「それはたまたまの僥倖さ」


「あと、謙虚で誠実な所ですな」シュウ

「こらこら褒めても何も出ないからな」俺


「我の考えですが元の世界ではその才能を発揮出来なかったのだと思います」ケン

「いや、多分それは自分自身のせいだよ。元の世界では平凡が全てと思ってたからな」

「多分、平和な日本とやらでは主人は必要なかったのかと」

「?つまりこの世界では俺が必要?」


「勇者、大魔道士、大賢者クラスの大天才かと、多分主人は全部を有してますな」ケン

「同意する」ズメル

「間違いなく」シュウ


「なんじゃそりゃ、俺はそんなもんとは無縁だよ」

「自覚のない大英雄・・すごいな」ズメル


「ま、俺の身の上話はこんなところだ、次はケンの番だ」


「わ、我などは話すことはありませぬ」

「俺も明かしたんだ、少し位いいだろ」俺

「確かにケンの出自は気になるな」ズメル

「なりますね」シュウ


「く、仕方がない少しだけなら話そう」ケン

「で、お前はどこから来たの?」俺


「我は初代主人から生まれた魔道具、歴代の主人に仕え成長した」

「成長する魔道具となると国宝級の最上位魔道具だが?」ズメル

「ぐ、なぜそれを知ってる?」ケン

「以前、最強を名乗る冒険者がラスボスの俺の前に立ちはだかったのだ」


「ま、結果はきくまでもないって事か」俺

「うむ、我の身の上話は後でする、今はケンの事だ」

「その冒険者から聞いたのか?」

「いや、いくらなんでもその冒険者とやらは弱すぎて瞬殺したから何も聞いてない」

「とんでもないやつめ」

「われはオークロードである、ま、それはどうでもいい、それでな」

「戦利品が魔道剣だったのだな」ケン


「うむ、その剣の話ではこの世に生まれた歴代の魔道剣の中でも最上位があるとの話多分お前の事だろう。」


「捕らえたその魔道剣はどうしたのだ?」ケン

「それを聞くか」

「つまりカオスイーターで吸い取ったのか、確かに野暮な質問だった」ケン


「夜な夜な稽古を続けて我は確信していた。其方の無限アイテムBOXはつまり亜空間を自在にあやつる最上位種だとな、亜空間など我でも操れない」ズメル

「ば、ばかそれは口外無用と申しつけたはず」ケンが慌てる


「今更隠しても仕方ないだろ。身の上話とはそういう事だ主人もちゃんと話したぞ」

「ぐ・・確かに」

「あーケンが亜空間を操作してるなんてずっと前から知ってたよ。そうじゃなきゃ無限大のアイテムBOXなど出来るわけがない」俺


「バレていたのですな」

「言ったろ、ケンのアイテムBOXの中身は全て把握して魔道書は全部読破してるって」

「はあ、魔道書を全部読破だと?」ズメル

「やられてしまった」ケン


「ありえない、人間が出来る事ではない、普通は適性属性のみの筈」ズメル

「お前はどんだけ冒険者を殺してるんだよ。全部吸い取った知識だろ」俺

「のこのこ自分で危険なダンジョンの最深部に来たんだから本望だろうよ」ズメル

「まあ、自業自得ではあるけどな・・一方的にズメルが悪いわけではないな」

「この世界に善も悪も存在しない見方をかえればどちらも善だし悪だ」ズメル

「そんな哲学までチュウチュウ吸い取ったのかよ」


「悪いな我はカオスイーターでしか知識を得られないからな」ズメル

「この万能魔法め」俺

「ともかくケンの身の上話をつづけよ」ズメル

どうやらケンの身の上話はここからが核心のようだ





「左様、我が最後の主人とお別れしたのは・・200年前」

「そんな長く眠っていたのか」俺

「我には時間の感覚などないが暦を見たら確かに200年経過してた」

「前の主人の話を聞いても良いか?」俺


「本当はあまりにも忌々しい事だったので封印すべきなのだが・・・」

「話してもいいと?」


「主人の今後を考えたら話しておいたほうが良いと感じました」


「あれは220年前我は初めて前の主人と出会ったその時主人は10歳今の主人と全く同じ歳だったのだ」


ケンの回想録が始まった


どうやら俺と同じで前主人との出会いも偶然だったらしい

「我はある街で盗品専門の雑貨商の片隅で長いこと埃を被っていた」

「今回と同じで長く眠っていたのだ」

「すると我は突然目が覚めたのだ・・・途方もない引力に誘われて目覚めた」

「つまりお前はメガネに適う者に出会うと自動的に目覚めるのか?」俺

「途方もない条件を満たさなければ目覚める事などはありませぬ」ケン

「で?」ズメル


「目が覚めると親子二人がこの雑貨屋で冷やかしをしていたのだ」

「つまり買う気などない冷やかし?」

「そう親子はここが盗品専門の雑貨商であることすら知らない通りすがり風」


「だが我は手を引かれてる子供に果てしない才能を読み取ったのだ」

「で?」


「我は必死に考えてどうにかして我が剣に興味をもってもらうべく画策した」

「なんとなく俺との出会いに似てるな」俺

「ははは、あの時も主人に気に入られようと必死でした」


「どんな手を使った?」ズメル

「簡単な事、店主を洗脳したのだ」

「卑怯な」ズメル

「なりふりなど構ってられるか」

「我に洗脳された店主は手もみしながら普段は一見お断りなのに親子にスリスリした」

「お客様なにかお求めでございましょうか」

「普段は無愛想で無口な店主なのだがな」ケン


「うむ、実は旅先で立ち寄っただけだがこの手の店は盗品ばかりなのだろ」

「ははは、よくご存じで」

「ま我は男爵ながら旅好きの変わり者でな、旅先でいつも珍しい物を手に入れるのが趣味場合によっては転売もする。掘り出し物は盗品の中に埋もれてるのが世の常だろ?」


「成る程、そこまでご存じでしたか」

「それにな、この手の店の主人は普通一見などに声を掛けたりはしない。魂胆見え見えだ」


「へへー、恐れ入りました」

「で、なにが売りたい?事によっては相談に乗るぞ。資金もほれ、金貨100枚はある」

「ぎょっ」場末の雑貨屋風情では見たこともないめもくらむ大金


「お客様、それでしたらこれなどはいかがでしょう」我の洗脳通りに店主を誘導してる


「ほう、ショートソードか我が息子テンマに丁度いいやも」ドーマ男爵

「ドーマ父様私はこれ欲しいです」テンマ

「うん、そうかそうか・・ならば願いを叶えてやりたい所だ」

「これ、店主、これはいくらだ!」


「へ、へい、これは随分長いことここに置きっぱなしの売れ残り、勉強させて頂きます」

「だからいくらだ」

店主はドーマの顔をみつつ値踏みしてる・・「いくらで売るか」元々が盗品、はした金で買い取ってるだろうが先代が買った品物、元値は知らない。


「へい、それでは金貨50枚では?」

「なんの宝飾もないこんな古ぼけたショートショートが50枚とはボッタクリではないか」

「ですが、旦那もここは盗品の店と知ってる訳でして」

「子供のおもちゃに50枚など法外すぎる、分かった余所をあたる」


「おっ冷やかしではなく本当に買うつもりはあるようだ」脈ありと店主はほくそ笑む

「ちょ、ちょっとお待ちください・・それでは40枚」

「我の目利きではせいぜい15枚だな、それ以上は出せん」

「わ、分かりましたそれでは出血大サービス、30枚」

「歩み寄る気配なしか・・・邪魔した」

「えーいこれ以上は無理です25枚!」

「買った!」ニコニコ笑顔のドーマ、彼にしてみれば掘り出し物なのだろう

「もう、旦那勘弁してくださいよこれでは経営出来ません」

「馬鹿を申すな本当は金貨2~3枚で仕入れたのだろう?盗品買い付けなんて大概足元を見る商売だ、実際は店主大儲けのはず」ドーマ


「正直にいいますと先代が買い付けたもので買値知らないのです」店主

「でも長年の感で大儲けしたとほくそ笑んでるはずだが」

「うひゃひゃ、旦那にはかないません。在庫処分出来て太助かりでさあ」店主


「本当の本当は我が勝手にこの店に忍び込んで埃を被っていたのだ前の店主もその前の店主が買い付けたと思い込んでた」ケン


「ともかくお前は無事テンマの手に渡った訳か」

「うむ、テンマ様のほとばしる才能に我は酔いしれた」


「ドーマ男爵は自己紹介した通り貴族としてよりも商人としての才があり実際あちこちを旅して珍品、名品を買いあさって遠くまで息子をつれて旅をしていたのだ」


「なんかロマンチックではあるな」俺

「知らない所へ旅行なんて夢のようですな」シュウ

「実際は路銀も掛かるし野宿ばかり、結構過酷な旅だったな」ケン


「で、長旅の末在所に戻って来た・・エドモンの街だ」

「つまり?」

「男爵の名はドーマ・フォン・エドモン初代エドモン統治者だ」

「話が面白くなってきたな」俺


「当時のエドモンは人口1万、男爵が収める小都市って事だ」

「そんな都市を有する男爵が旅行三昧?」

「いや違う、本来の目的は民の為の資金作りだ」

「なるほど男爵の目利き能力で転売で稼ぐと言う訳か」

「目利きというのも才能の一種、とてつもない知識が必要、下手したら大損」

「俺などに出来る商売ではないのはわかる」俺


「彼は手に入れた掘り出し物を王都や貴族達にで転売したり時には税金代わりにしていた」

「民からの徴収はどうしたのだ?」ズメル

「拝領間もないエドモンでは向こう五年間無税として移民を募ったのだ」ケン


「普通の男爵のできる真似では無いな」

「実ははその政全てテンマ様の手腕だとしたらなんとする?」ケン

「ば、ばかな10歳児に???ありえない」俺

「主人も10歳ですぞ」ケン

「あ、そうだが俺は実際は35歳の中年だよ」俺


「誰がどう見ても10歳です、証明が出来ませんから」

「ぐ、それはそうだけど。それにしてもテンマ少年すごい」


「つまり?」

「領地経営に悩んだドーマ男爵がテンマ様に相談したのがきっかけとか」

「ドーマ男爵の目利き能力は本当だったんだ」俺

「はい、目利き能力は抜群ですが男爵自身は人付き合いが苦手でした」

「テンマ君も俺と同じ召喚者なのか?」

「それは分かりません。本人の口からは生涯語られてません」


「とにもかくにも二人三脚が功を奏し領地経営はみるみる順風満帆」

「分かってきたぞ」

「他の貴族達からの妬み嫉みか」

「好事魔多し」ズメル

「ことはそんなに単純ではない」ケン


「テンマ様は才能溢れる方政も武芸も達者でした」

「つまり他の貴族に潰されるようなたまではなかった?」

「はい、その手の根回しにも長けていたので決して他貴族とは争いませんでした」

「すごいな・・・」


「またタイジ様と同じ卓越した剣技にて我の稽古にも弱音ひとつこぼさず修練に励んだのです」


「だが、才能がありすぎると周囲が黙ってはないはず」

「仰る通り万民に好かれるテンマ様に何時しか叙爵の声が内外から起きてしまいました」

「ドーマ家を継ぐのでは無く?」

「はい、男爵では能力に則してないと内外からの声テンマ様は否定したのでが」

「さすがに他の貴族からの拒否感が生まれるだろうな」


「周囲が騒ぐ程テンマ様は困惑したのです」


「で、どうなった?」

「あり得ない事にテンマ様は出家されました」

「はあ?ありあまる才能を拒絶したのか」

「当時はそれしか方法がなかったのです、高まる熱気はいつしか反体制を疑われ」


「な、なんと・・・ここだから(だんじょんない)言うが王家は無能なのか?」

「なりませんぞ、そんなことを言っては」ケン

「まあ、場の雰囲気で察せるな・・」ズメル

「つまり王家と言うのは今も昔も変わらないのです、出る杭は打つ」ケン

「それがこの世界の実情で限界って事か」

「頭の中だけでとどめておいてください。いずれ主人は上り詰めるのですから」

「知らんわ、そんなこと。勝手に思っとけ」俺


「で、その先は?」

「テンマ様が出家したことで男爵の罪咎は不問エドモン街統治のみを許されました」

「ばかな、罪咎とはなんだ?男爵親子がなにをしたと言うのだ?」俺が激高する

「理不尽なれど王様の命令は絶対なのです」ケン


「民衆が騒いだのがまずかったな」ズメル

「それすら敵対貴族の差し金であろうかと」ケン

「無知な民草を陽動、扇動、洗脳・・お貴族様らしい卑怯技って事か」俺

「分かってるのならそんな卑怯技に絶対はまってはならないのです」ケン

「過去を見続けてきたケンの貴重な体験談か・・」

「ですから主人には極力陰謀や策略については秘匿したのです。主人はあくまでも王道を歩み美しき流れでなければなりませぬ」


「高潔で清貧であるべきはケンの望みだったのだな」

「は、主人は理想の人物、過去仕えた主人達の頂点、到達点なのです」

「かいかぶりすぎる」


「で、志半ばで潰えたテンマ様はどうなったのだ?」ズメル

「以降政から一切身をひき聖職者として高みに昇るべく努力したのだが・・」

「おいおい、そこでも妬み嫉みか?」

「どこまで行っても人間の世界は汚い」ケン


「身を潜め天涯独身を貫き住人100人にも満たぬ辺境の村に宣教師として派遣されその地にてひっそりと生涯を全うするつもりだったのだが・・」


「才能がそれを許さなかった?」

「残念です・・溢れる才能はいつしか村民の心をつかみ信仰を生んでしまいました」

「聖職者で宣教師なら当然の行為だろ?」

「行きすぎなければ、です」ケン


「漂うオーラは隠せずか」俺


「いつしか噂は噂を呼び、その地は聖地化されて巡礼者が絶えず」ケン

「圧政に救いを乞う民草の心境はわかるが・・それは破滅への道」

「悪い予感しかしない」ズメル

「いらぬ信仰は邪教と同じ・・・王都正教会が危機感を覚えてしまった」


「なんという救われない人生・・」

「我が全力をもって武で応じたのがまずかったのです」

「ばか、それは逆効果だろ主人の身がますます危なくなるだけだ」

「当時の未熟な我にはそれが分からなかった・・・」


「まるで天草四郎を担いだ島原の乱だ」

「人を救うはずの宗教が血で血を洗う凄惨な戦争へと・・」

「どんなに抵抗しようが国家にかなうはずない」俺

「御意・・・戦意盛んなれど兵糧攻めには耐えられず」ケン


「顛末はきくまでもないな」ズメル

「最終的に捕らえられた主人は・・・」

「でお前は主人を失い200年彷徨った」

「悲しき事実です」


「つかお前のせいだろ、責任とれよ」タイジが怒鳴る

「今度こそは・・との思いです」ケン

「そうやって歴代の主人をたきつけ滅ぼし時代を無責任に渡ってたのがお前の本性だったのだな」


「違います、我は良かれと・・・・確かに主人の言うとおり」ケンしょぼん

「俺も同じ目に遭わせる魂胆か?」

「め、滅相もなく」ケン


「じゃあなぜ高みをめざすのだ」

「主人は選ばれし者、それをする資格と使命があるのです」ケン

「誰の命令かは知らないが歴代の主人達は志半ばで散ったと知りつつか?」

「それでもです」ケン

「初代主人の命令か?」

「かもしれませんが・・我の意思でもあります」ケン


「主人が破綻するのを覚悟でか?」

「今度こそはと常に思ってます」


「つまり大願成就のためなら主人の命はいとわない?」

「そ、そんなことはありません」

「願いが叶わないのは主人の力不足だからと思ってるのが?」

「けっ決してその様には思ってませぬ」ケン


「まあいいやいざとなったら俺は逃げるから」

「そんなぁ・・・」

「なんでケンの無理難題に付き合わなければならなんだよ。お前に借りなどないぞ」

「この世界をよくするためです」


「ズメルの言葉を借りればこの世に善も悪もないそうだが?」

「民草が飢えで果てる御政道が善なわけありませぬ」ケン

「いやそれは人間の都合、人間が栄えると不都合の生物だっているはずだ」

「宗教じみてるな」ズメル


「悪党にも親兄弟はいるんだぞ」

「し、しかし・・・世を正す能力があるのなら全力を尽くすのが人の道かと」

「知らんよ。俺はこの世界とは無縁の異世界者だ」


「ふ・・」なぜか笑うシュウ

「む、何がおかしい」

「そんな無責任な主人に一体何人の従者が募ってるのか」シュウ

「それはお前達の勝手だ」

「いえ、我らはそんな無責任な主人に絶対仕えたりしませぬ」シュウ

「激しく同意する」ズメル


「我が村ですごした一週間、主人の本質を見ましたぞ」シュウ

「うむ、我もみた」ケン

「我もみたかった」ズメル


「ここで押し問答してもしょうがないな」俺

「ともかく我の身の上ばなしはここまでです」ケン

「お前の無責任な生い立ちはしれたよ」俺

「そんなぁ・・・」

「ここから挽回して見せろって事だ」俺

「覚悟します」ケン

「人破れて山河あり。先人達が残したアイテムは無念に散った者の怨念だ」

「返す言葉もありません」ケン

「お前がアイテム供出を極端に嫌うのはそのためだったのだな」俺

「・・・・」


「まあいいさ」


「で、どうする身の上話はつづけるか?今度はズメルの番だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ