ダンジョン
地下一階、宝物庫
「良かったまだ手つかずみたいだ」
「つかセバス命拾いしたのやもです。ここにどんな罠が仕掛けられてるやら」
「よし手分けしてさがそう」
「しばし待たれよ」ズメル
「なにか策でもあるのか?」
「カオスイータを使い魔力感知を致す」
「成る程カオスイーターは魔力を吸い取るのだったな」
「は、吸い取った魔力には各種情報がありカギのありかがわかるやも」
「カオスイーターにそんな便利機能があったとはな」タイジ
「まあ、これは応用技です主人から教わりました」ズメル
「賢くなったのは結構だが頭でっかちにはなるなよ」タイジ
「は、発動いたします。カオスイーター!!!」
只でさえ禍々しく黒光りしてるズメル剣から四方八方に黒い蛇の様な長いものがニョロニョロとあちこちに伸びていく・・超不気味
「シュルルルル・・」宝物庫にある各種調度品や天蓋付きベット、本棚、チェスト
黒いなにかが巻き付いては離れ別の家具にまた巻き付いては離れ・・・
「主人わかりましたぞ、ここの宝物庫にはカギの類いが54個ありました」
「多分正解は一つだけ、あとは関係無いカギか罠だろう」
「ジャラララ・・」蛇の様な黒いなにかが無数のカギ収まる大きな輪っかをを3つ持ってきた、ドラマとか映画でよく見るアレ。
「すごいなカオスイーター、物まで掴んで持ってくるんだ」
「それは我のSSS級の魔力の賜です他の者では不可能」
手元にきた大きな輪っか3つ、これのどれが正解なのか・・・
「そもそも隠し扉は一体どこに?」ケン
「二人の魔力検知でも発見できない?」
「それが・・・地下二階のほとんどがアンチマジックエリアでして」
「当然だろうねもともと監獄があった場所。魔法は使えそうもないか」
「我が無限牢獄に封印されてなければ発動出来るのだが」ズメル
「だが自ら望んでの封印だろ?」
「封印を解かぬには理由がありますがいまは明かせませぬ」ズメル
「もともと広大な屋敷なのに地下二階は狭すぎますね」シュウ
「地下一階に較べたら半分位しか無いね」
「監獄の他に小部屋とかないのかな・・・」
「普通は看守の詰め所とかあってもいいのにな」
信用してるセバスにだけはスマホを渡してるので連絡してみる
「セバス、私の元に残った従者の中で監獄の看守はいないか?」
「看守は6名程いましたが皆解雇した・・あ、いや一人だけ残ってました今すぐ地下二階に向かわせます」
「ハアハアゼイゼイ」息を切らして看守を務めた従者が降りてきた
「主人様一体何用でございましょう。私は一切罪は犯してません」元看守
「いや、そんなことを問い正すために呼んだのでは無い」
「では何用でしょう」
「なぜ地下二階に看守詰め所がないのか不思議でな」
「ああ、それでしたら突き当たりの壁は回り扉でございまして」
元看守は階段から向かって左側の通路を進み突き当たりに立って
「ゴゴゴゴ」扉を回すと詰め所の小さい部屋の扉だった、詰め所にはなにもない
「なぜなにもない?記録とか取らなかったのか?」
「申し訳ありません主人が斬首される前に全て焼却せよとの命令で」
「証拠隠滅か・・お前の記憶で前主人の事で何か覚えてないか?」ケン
「はあ・・特になにも・・あ、えっと何時も不思議に思った事はあります」
「なんだ?」
「はあ、地下室の階段は真ん中なのに主人は時々向こう側の突き当たりまで行くことがありました」
長い廊下があり真ん中の階段から左右に2つづつ独房がある左端がここの詰め所
「右側の囚人に用があったのでは?」
「ですがだれも収監されてないときも階段の向こうに行っていたような」
「む、怪しいな・・調べて見るか?」タイジ
「用心しつつ行きましょう、ですがその前に看守、このカギ類はなんだ」ケン
「は、・・・えーとあ、見覚えあります、こっちは屋敷全体の合鍵です」
「なるほど後の二つは?」
「へえ、ここの地下牢のカギが一つです、私もよく使ってました」
二つ目の輪っかには階段から見て正面に四つの独房、階段側に二つの独房そして隠し看守詰め所用の合計7つのカギがぶら下がっていた。看守の証言は間違いなさそう。
「なせそんな物が地下一階の宝物庫にあった?」
「用心深い旦那様でカギは必ず宝物庫の金庫に戻すよう命令されてました」
「あそこは宝物庫だぞ従者が宝物ちょろまかしたり、不用心だと思うが?」
「へい、ですが旦那様は用心深くて我らが宝物に触れたら呪いが掛かると脅かされてまして実際に呪いにより捕まり地下二階に送られて処刑された馬鹿が結構いました」
いや、多分この屋敷を探る間者がまんまと罠にハマり処刑されたのであろう
「そういうことか・・・で、最後の一つはなんだ」
「そ、それは見覚えありません。一体なんのカギなのか」最後の輪っかには10本位のカギがぶら下がってる
「最終的にはこのウチの一つが正解ってことか・・・」
「前辺境伯はこの10本からどうやって本物を選べたのだろう」
見た目は全く同じようなカギだが当然鍵山の種類は違う、しかしそれだけで正解出来たのか?まあ頻繁につかってればある程度は慣れるのかもしれん。
「ん、?」シュウ
「どうした?」
「この輪っか可笑しいです。」
「どこが?」
「普通はこの手の輪っかは二重螺旋になっていてカギを輪っかから取り出せるはずなのにこの輪っかには継ぎ目が一切ありません」
「確かに・・・一体どうやってカギの出し入れをするのだ?
「正に知恵の輪か」タイジ
「知恵の輪ですか?」ケン
「多分この輪っか自体に何らかの工夫がされていると言うわけだ」
「魔法でしょうか」
「わかんないがとにかく前辺境伯が行ったという反対側の壁を調べて見よう」
「確かに、まずはそこからですね」みんなでゾロゾロ、元看守も一緒
到着したが案の定なにもない・・タイジは壁を押したり引いたり端に力入れてみたり
隙間がないか探してみたりズメルがカオスイーター発動させてみたり・・・いやカオスイーターは案の定発動しなかった。アンチマジックエリアが効いてるらしい。
「どうにもなりませんな」
「まて」タイジが小さな異変に気がつく
「僅かだが空気が流れてないか?」
「む、確かに、一体どこから?」狭い廊下なので風向きが分からない
「あ、」またしてもシュウがなにかに気がついた、ホブゴブリンは感覚が鋭いのだろう
「上です」全員が上を見上げる
「なんと、天井に扉があるぞ」
「ですがハシゴもないのにどうやって扉を開いたのでしょう」
シュウがジャンプしてみるがゴブリンの跳躍力でも指先すら届かない
「普通の人間の辺境泊では絶対に届きませんよこれは」シュウ
「近くに棒とかないか?」
「なにもありません」
「いくらなんでもハシゴを持参したら看守が気づきますよね」
「そ、そんな物はもってきてませんでした。こんな狭い廊下で取り回せるハズもなく」
元看守の言う通りだろう
「折角扉を発見したのに残念だ」
タイジは諦め模様でつき当たりから向かって右側の壁に寄っかかる
「ん、なんか変だぞ」今度はタイジが違和感に気がつく
「なにかわかりましたか?」ケン
「いや、床の端が少しガタついた気がしてな」
床面を調べるると確かに床板が一枚だけガタガタしてる
「これはフタでは?」ケン
「フタかもしれないが迂闊に開けると罠発動かもしれない」タイジ
「しかし前辺境泊はなんども使っていたのですよね」シュウ
「多分開ける方向だ4方から開けられそうだが正解は一つであとの3つは罠だろう」
「1/4か・・どうしましょう」
「開ける前に他の手がかりはないか?」
「このフタの意味はなんでしょう」
「多分上の扉を開けるなにかだろう」
「こんな20cm四方の床板ではハシゴは隠されてないと思います」
「つまり鍵穴があって上手く合致すると天井の扉が開きハシゴが降りてくるか」
「多分」
「よく見ると天井の扉には鍵穴見当たりません」
「と言うことは外からハシゴもってきてもカギは開かぬという事か」
「それに外からではハシゴ自体階段から廊下を通れません」
「成る程、よく出来てるという訳か」
「やはりこの床板か・・」
「一か八かやりますか?」シュウ
「まて、人間には脳があるんだ、早まる必要はない。なんとか正解を導けないものか・・」
「ん、待てよ?」タイジ
「何か分かりましたか?」
「貴族で高貴で高慢な辺境泊がいちいちかがんで床板を剥がすか?」
「なんども行き来するのに面倒でしょうね」
「この輪っかの大きさは?」
「偶然でしょうか床板と全く同じ大きさです」
「わかったぞ」
「なにがですが?」
「かぎの開け方だよ」
「なんと一体どのようにしてですか」
「このカギに意味などないって事だ」
「はあ?」
「まあ、見てろ」タイジ
タイジはガタガタしてる床板をずらそうとする
「危ないですぞ」シュウ
「大丈夫なはずだこの床板はなにものでもないはず」
「右か!手応えあり」
なんと突き当たりから向かって右側に床板が数センチずれた?
「あ、細長い穴が出てきた2x20cm」
「ここに輪っかを挿すんだよ」グイッとタイジはカギの輪っかを差し込む
輪っかは吸い込まれるが当然カギがあるので全部は吸い込まれない
「つまりこのカギは輪っかが全部吸い込まれない様にしてるだけのダミーだろう」
「成る程高貴なる辺境泊、きっと足で床板をスライドさせて少しかがんで輪っかを差し込んでいたんですね」シュウ
輪っかが吸い込まれると「ギギギギギ・・・」不快な黒板を爪でこする様な音
「ゴゴゴゴ・・」天井の扉が開くのではなく引き戸状に横にスライドした
「あ、これでは強引にやっても絶対に開きませんでしたね」
「ズズズズズ・・」中からハシゴが自動的に降りてきた。多分輪っかを引き抜くと
自動的にハシゴは登り扉も閉まるのだろう、よく出来ている
「ズーン」ハシゴが完全に降りて静寂が戻った
「これでやっとダンジョンの入り口って訳か?」
「昇ってみないと分かりませんが多分・・・」
☆
「私が昇ってみます」先頭を買って出たシュウがトントントンと軽快にハシゴを登る
「上はそこそこの広さがありますので全員昇ってきてください」
魔剣ズメルを持った俺と擬人化ケンと看守が続く。上は3mx3m位の正方形の空間、四方に狭い通路が伸びている。これも正解は一つだけという事か。
「カオスイーター」ズメルが詠唱すっると黒光りする剣から無数の黒蛇がニョロニョロ・・、だが予想通り1mも伸びない内に先端が霧のように蒸発してしまった
「やはり魔法系は効きませんな」ズメル
「全く肝心なときにはへのつっかいにもらんな」ケンが毒づく
「ならば其方がやってみろ、なんか他に方法あるのか?」
「いや、ない」ケン
「なにか手がかりとかはないかな」俺
「主人、見てください床にうっすらと足跡が・・・」シュウ
「いや、怪しすぎるだろ、これ埃を踏んだ足跡じゃないよ。初めから書かれる足跡」
「いかにもですな」ケン
「うーむ・・・だが自分自身が迷わないようにわざと着けた足跡かも知れないし罠かも知れないし、判断に迷うな」
「なんとなくですが、ここにとどまってるのもなにか罠が発動しそうな気が」
「うーむ困った・・・当たって砕けてみるか」俺
「主人に任せます」ケン
「恨みっこなしだからね」俺
意を決した俺は足跡と反対の方向に進むことにしたスマホの磁石によると南側
「気をつけろよ」落とし穴対策にタイジは魔剣でこつこつ床を叩きながら進む
魔剣ズメルの切っ先は触れた物に限り魔法が通じる。罠などは簡単に感知出来る。
ケンとシュウはワイヤーとか吹矢等の罠を警戒し左右の壁をスリスリさすりながら進む
俺は気休めとは思いつつスマホのGoo○leマップを開いて見る・・・なんと範囲は狭いが自動マッピングが効いてる。
「おっすごいぞ、半径5m位ならダンジョンの形がわかる」
「多分主人の魔力を動力にに反応してるのですがアンチマジックエリアの影響でかなり制限をうけてますな」ケン
「無いよりはマシだ、その先のT路地の右側はすぐ突き当たりだから左側行こう」
残念ながら左側も10mも進まない内に突き当たってしまった。
最初の探索は結局スタート地点から50っも進まずに行き止まり。この方向ではなかったみたい。
「く、残念この方向は違ってた。引き返そう」俺は悔しまみれに突き当たりの壁ドン
「あ、あるじ余計なことはおやめください」ケン
おそかった!
なにやらイヤーな雰囲気、というか立ちこめてくる「殺気」
「なにか出てくるぞ」
「シュシュシュ」突然床が淡い光とともに魔方陣出現・・・
そこからわらわらと魔物が出現してきた
「スケルトンが現れた!」わらわらわらわら
とんでもない数だ。
すると後方からも魔方陣が出現しわらわらわら
挟み撃ちされた
「主人これは罠です」ケン
いや叫ばなくても罠だろみりゃ分かる
「こしゃくな、スケルトンごとき我が魔剣のサビにしてくれる」ケン
「シュン」とケンがひとなぎすると「ガシャガシャ・・」あっけなくスケルトン10体が粉砕される・・だが
「ムクムクムク」粉砕された筈のスケルトンが高速再生されてあっという間に元の数
「ケン駄目だよ魔剣ではスケルトンに通用しない」
魔力を帯びる剣はスケルトンには効かないようだ
「どうすれば?」
「ここは物理破壊しかない。普通のロングソード使え」俺
「はっ」素早くケンは全員に通常ロングソードを手渡す当然ケンも通常剣に持ち替えた
「おりゃあ」力任せにシュウが上段の構えでスケルトンを叩き切る
「がしゃーん」粉々になったスケルトンだが今度は再生しない。効果あり。
「主人通用しました!」シュウ
「よし、皆で皆の背を庇いながら正面突破だ」俺
「は、このノロマスケルトンめ我にそんな太刀が通用するものか」ケンの剣が冴える
「ドババババ・・」凄腕ケンの太刀筋は一人で十人力。こいつ一人で戦争してるよ
約200程いたろうか、弱すぎスケルトンでは我らの敵にもならない準備運動にすらなってない。
「ふう、疑似体は動きづらいでござるよ」それで動きづらいのか!
「お前一人でほとんど全部やっつけてしまったな」俺
「は、この程度朝飯前でござる、主人戦利品が山の様ですぞ」ケン
スケルトンの残骸の中に「魔石」と「低品質のロングソード」が大量にドロップされてる
「ケンあとで売り払うから全部アイテムBOXに入れておいて」
「まあ、大した金額は見込めませんがおおせのままに」ケン
「やれやれこっちの方向は外れだつた様だ」
「あてずっぽうですから仕方有りません次に進みましょう」シュウ
この進路はもう突き当たりしかないのでどうにもならない
「一旦振り出しに戻ろう」
「さて主人どうされますか残りは足跡を進むか左右です」ケン
「そのまえに少し腹減ったから食事にしようさっきみたいに突然戦闘になったら食事どころでは無くなるからな」俺
「なんども、いいますが・・」
「あとで補充だろ?もう耳にタコだよ」俺
「分かってるのならいいのです」
「毎回毎回同じ事言ってるけど補充分の方が遙かに多い筈だが?」
「備蓄などいくらあっても多すぎませぬ、いつぞやのダム建設みたいな突然の無茶振りとかもあるのですから」ケン
「お前はそーいって歴代の主人から備蓄溜め続づけたのだな」
「備蓄出来るときにしとけば後が楽です」
「分かったから飯出して」
「ったく主人は・・・ブツブツ」いつものお小言を言いつつも軍隊レーションを3つだす
「これは何時食べても美味しいですな」ほっぺたがほころぶシュウ
「く、俺も食べたい」羨ましがるズメル
「前は千人前とか平気で食べていたのにな、今は食事不要か・・逆に羨ましいけどな」俺
「うーん我も早くホムンクルスを仕入れてケンのように擬人化したい」ズメル
「そのうちにな」俺
「さて、次はどの方向行くか」全員素早くレーションをかき込み出発準備万端
「西側はどっちだ?」俺
「は?方角がなにか?」
「隣国のヤルダートは我が領の西側だったろ、出口があるのならそっちかなと思ってな」
「成る程一理ありますな」ケン
「だが主人よ、我が領都からヤルダートの国境はどのくらい離れてるのだ?」ズメル
「うん、山脈を挟んで100km以上は離れてるね」
「いくら隣国と連絡を取るためここを利用したとしても普通の貴族がそんな距離あるけるのでしょうか?」シュウ
「いや話を聞くと先任辺境泊は決してスマートではなかったと聞く」
「そりゃ贅沢放題で酒池肉林生活してればブヨブヨ間違いなかろうて」ケン
「と言う事はここのダンジョン内に転移魔方陣が仕込まれてるのでしょう」シュウ
「やっかいな・・・」
「どこに転移されるのかわかったもんじゃないからな」俺
「主人、今回はいかにも準備不足、勇気と蛮勇は違いますぞ時として引くのも英断」ケン
「うん、ケンの言うとおりだと思う。なにも切羽詰まってる訳でもないからね」
「いや、切羽詰まってる」ズメル
「なぜだ?」
「どうやらここは初めの部屋ではない。下に降りる階段がなくなってる」ズメル
「な、なに?」
「つまり罠が発動して引き返したときにすでに罠の移動魔方陣で転送されてしまってた?」
「多分そうでしょう・・・もう引き返せませぬ。このダンジョンに閉じ込められたのです」
「長期戦覚悟って事か」
「一月や二月で済まぬやも」ケン
「ケン、食料の備蓄は?」ケン
「む、それは秘密につき」
「ばか生きるか死ぬかの瀬戸際で秘密もへったくりもあるか、白状しろ」
「わかりました、おおよそ3ヶ月分でござる」
「それはレーションの分だろ、魔物肉とか獲物も沢山あったはずだ」
「は自炊するのでしたら半年はもつかと」ケン
「半年か、うん、俺の試算通りだ」
「って主人すでに我がアイテムBOXの中身存じてるのでしたな」
「うん、ケンは嘘つきだから過小報告するかなって疑った」
「主人こそこの生きるか死ぬかの瀬戸際に不謹慎でござろう」
「悪かった悪かった」ケンぷんぷん
しかし、半分興味本位の軽い気持ちで地下室探索したのがとんでもない事になりそうな気配・・・生きて帰れるのか?




