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ステージ
社会人になった僕はまだなにもかもを知らない世界に飛び込んだ。
緊張する。
まだまだ思うように狙った音がでなくて、緊張する。
最初の音はなんだっけ?
どこを押さえれば良いんだっけ?
どれだけ唇を震わせれば狙った音が出るんだっけ?
最後まで演奏できるかな?
落ち着け。
いつもやっていることでしょ。
大丈夫、うまくいく。
そんなふうに思いながら、その手に光る楽器をかまえて息を吸う。
空気を目一杯にたくわえて、ドキドキする胸の鼓動を感じながらフッ、と吹きこむ。
唇で震わせた空気が、いま、目の前に広がる世界へと飛び出した。
ありがとうございました。