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このたび殿下の婚約者となった身代わりの身代わり令嬢な私は、愛されない……はずでした  作者: Rohdea


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第24話 明かされる過去①

 


 ──ライザ・デ・リーチザクラウ


 今、確かに陛下は私の名をそう呼んだ。

 そして、私を正式な王女だ、とも。


「まぁ、この名はセオドア殿と婚姻するまでの間だけだから、名乗れる期間は実に短そうなのが残念だがな」


 そんな事を言いながら陛下はクツクツと愉快そうに笑う。


「ライザ。聞こえた? 君の名だよ?」

「セオドア様……」


 まだこの事態についていけなくてちょっと呆けている私に殿下が優しく囁いた。

 私の名前……


「───ライザ」


 そして陛下が私の名前を呼びながら近付いて来たので、私は姿勢を正す。


「は、はい!」

「よく顔を見せてくれ……あぁ、ルルの面影がたくさんあるな。よく似ている」

「……」

「これまで君のこともルルのことも……何も知らず、申し訳なかった。母一人子一人で大変だったろう?」

「い、いえ……!!」

 

 私は必死に首を横に振る。

 申し訳なかった……なんて国王陛下に謝らせてしまっている事に、むしろこっちの方が申し訳なくなってしまう。


「それに母と過ごした日々は幸せでしたから」


 私はそう口にしながら微笑む。

 これは本当だ。

 お母さんはいつも笑顔で楽しそうで……私にたくさん愛情をくれた。

 料理や家事が全般的にちょっと苦手そうだったのは、元王女様だったからかぁ、なんて今更ながら思う。


「そうか。君はルルの娘……私の姪だ。セオドア殿が望んだようにこれからは私のことも家族だと思ってくれると嬉しい」

「へ、陛下……」


 それは、なんて恐れ多い言葉なんだろう。

 それでも“家族”

 その響きにとても嬉しい気持ちになる。


「私の名はレイモンド……だ。そうだなレイ伯父様と呼んで貰えたら嬉しいぞ」

「レ、レイ伯父様?」


 私がそう口すると陛下……いえ、レイ伯父様はとても嬉しそうに笑った。


「リーチザクラウ国王として、そしてライザの伯父としてセオドア殿とライザの婚約を心から祝福する。セオドア殿、これがそなたから届いた書簡への返事だ」

「ありがとうございます」


 殿下がホッとした様子で頭を下げた。


「ありがとうございます」


 私も倣って一緒に頭を下げるとレイ伯父様はハハッと笑った。


「先日会ったあの日も思ったが、あれだけライザにベタ惚れな様子のセオドア殿ならルルの忘れ形見であるライザを幸せにしてくれると既に確信出来ていたからな。反対する理由などない」

「え? ベタ……」

「へ、陛下!! あ、あの日の事は……!」


 何故、そんな確信が? と疑問に思ったと同時に殿下が慌て出した。

 そんな殿下を見てレイ伯父様はニヤリと笑った。


「ライザ。セオドア殿がルルと君の話をしに我が国にやって来た時、セオドア殿は如何に君が可愛いかを散々私に向けて惚気けていたのだ」

「!?」


 そんな話は聞いていない!

 私は驚いて殿下の顔をまじまじと見つめる。

 殿下は「うっ……そんな目で見ないでくれ……」と言って恥ずかしそうに目を逸らした。

 何なら頬もほんのり赤い。


「私も負けてたまるかと、ルルの可愛さは存分に語らせてもらったが……それ以上だったぞ。これだけ大切に思われているならと、全く心配はしていない」


 ……お母さんの可愛さを語るレイ伯父様と、私の可愛さとやらを語るセオドア様。

 一国の王と一国の王太子が顔を合わせているのに何の話をしているのですか!

 無性に突っ込みたい気持ちになった。


(でも、お母さんも私もそれぞれ大切に思われている……そんな気がして嬉しいわ)


 だけど、そんなほのぼのした気持ちになった所を、またまたエリザベスが声を荒らげて水を差してきた。


「ちょっと待って下さい! 王女ってどういう事ですか!?」

「どうもこうもないだろう? 今、聞こえていた通りだ。ライザはリーチザクラウ国の王女だった! そして、正式に認められた」


 殿下が冷たく返すけれどエリザベスはその話に納得いっていないようだ。


「嘘よ! そんなの嘘に決まってるわ! あなたの母親が陛下の妹だって証拠は何処にあるのよ!」

「そなたは私の言葉を疑うのか?」


 レイ伯父様がエリザベスを睨む。


「……うっ! で、ですが、似ている、面影がある、というだけの話なら証拠とは言えません! 容姿だけなら似ている人間はいますから証明にはならないと思います!」


 よほどこの事実を認めたくないのか、レイ伯父様に睨まれてもなおその反論が出来るエリザベスは、どんな鋼の心臓の持ち主なのかと思わされる。


「エ、エリザベス! やめなさい!」

「お母様? 何故です?? だってあの女が王女だなんておかしな話ではないですか!」


 真っ青な顔をした侯爵夫人が慌ててエリザベスを止めに入る。

 侯爵夫人がこんなに慌てる姿は初めて見たかもしれない。


「……タニア。お前の娘は本当に躾がなっていないな」

「へ、陛下…………も、申し訳ございません」


 侯爵夫人はそう謝罪するもずっと顔が真っ青だ。なんなら身体も震えている。

 それはどこか怯えているようにも見えた。


「ライザ。セオドア殿から聞いている。ルルの指輪を持っているのだろう? そこのうるさい娘に見せてやれ」

「は、はい!」


(あぁ……こうなる可能性を考えて殿下は指輪を身に付けてくるように言っていたのね?)


 私はようやく今になって意図を理解した。

 そしてこっそり忍ばせていた指輪を手に取るとそれをエリザベスに見せる。


「エリザベス様、これはあなたがこれまで散々馬鹿にした私の母親の形見です」

「は? この指輪が?」


 エリザベスは指輪を見ながら訝しげな顔をする。

 なんでこんな物が? そう言いたそうだ。


「リーチザクラウ国では王家の王女が成人を迎えるとその瞳の色を模した石を使った指輪が作られます。これは国王陛下の妹で私の母であるルル王女の指輪なのです」

「は? バ、バカな事を言わないで頂戴、そんなの偽物の可能性だって……」


 分かってはいたけれど、エリザベスはやはり認めようとしない。

 なので私は続けて言う。


「リーチザクラウ国の紋章も入っていますから間違いありません。私の母はルル王女で、当時、この王家の指輪を持って失踪したそうです」

「……失踪?」

「エリザベス様にはこの指輪の石が偽物に見えますか?」

「…………っ!」


 まじまじと指輪を見たエリザベスの顔色が分かりやすく変わった。

 これは流石に理解したのかもしれない。

 けれど、すぐになにか思い至る事があったのか声を荒らげた。


「なら何で、その失踪した王女様が我が家に紛れ込んでお父様を誘惑したのよ!?」

「……その説明はタニア。お前の口から聞かせてもらおうか?」

「ひっ!」


 レイ伯父様の言葉に侯爵夫人が小さく悲鳴をあげてビクリと震える。


「お、お母様? どういう事です? 何か知っているの?」

「……」


 エリザベスの質問にも侯爵夫人は震えたまま答えない。


「それと、さっきからそこで呆然としていて微動だにしないマクチュール侯爵。貴殿にも話を聞きたい所だな。いったいそなたがルルに何をしたのかを!」


 ここまで不気味なくらいずっと沈黙を保っていた侯爵も顔が真っ青だった。

 しかも何故か「ルル王女? ……あの……ルイーゼ、が? ほ、本物……?」と呟いている。


(え?)


 私は侯爵のその言葉を聞きとって不思議に思う。


(ま、まさか、侯爵はお母さんの正体を知らなかった───?)

 

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